PASON
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買い手様向け
交渉マニュアル

Negotiation manual for buyers

ご利用の前に

はじめに

この「買い⼿様向け交渉マニュアル」は、買い手様向けに交渉の流れを記載したマニュアルです。
売り手様と交渉を進めていくうえでの、一助になれば幸いです。
なお、買い手様の代理人(M&A仲介会社等)は原則ご利用を禁止しております。

また、PASON事務局は当サービスやマニュアルのご利⽤により⽣じる⼀切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

交渉の流れ 買い手様向けチェックリストのダウンロード

交渉の詳細な流れ

01

秘密保持事項への同意及び実名交渉の申請

M&A案件の詳細情報を閲覧した上で、気になる案件があれば、実名交渉を申請しましょう。
実名交渉申請は、案件詳細画⾯にある「実名交渉を申請する」ボタンを押し、秘密保持事項※に同意すると申請することができます。申請の際には、売り手様に初回のメッセージを送信しましょう。
実名交渉申請が承認されると、売り手様の氏名(法人名)や、店名等の譲渡対象事業が特定できる情報が開示されます。なお、開示された情報の取り扱いには十分ご注意ください。
実名交渉の申請時に、PASON上で秘密保持契約の締結がされますが、必要に応じてPDF出⼒し電子契約等を行ってください。

※秘密保持事項とは、PASON内で得た情報及び売り手様から得た情報を、第三者に開示してはならないことを要求するものです。
秘密保持事項に違反した場合には、売り手様とトラブルになる可能性があり、また損害賠償請求される可能性もございます。そのため、情報の取り扱いには十分ご注意ください。

PASONでは、1つの売り案件に平均10人の買い手様が交渉を申し込みます。
そのため、交渉相手として、相応しい相手だと思ってもらえるよう、丁寧なやり取りを心がけましょう。
特に初回のメッセージは印象が強く残るため重要です。初回から譲渡条件や事業詳細についての質問はせずに、まずはあなたの自己紹介や興味を持った理由などをまずはお伝えしましょう。
一方で、どのように書けばよいのかわからない方も多いと思います。
そこで、下記において、初回のメッセージの良い例と悪い例をその理由と共に解説していきます。

良い初回メッセージの例

気を付けるべき点
初回メッセージは、売り手様にあなたのことを理解してもらうため、主に下記の点をメッセージの中に記載して作成しましょう。

  • ・個⼈か法⼈か
  • ・業種、規模、場所などの概要
  • ・事業承継までの期間(いつまでに承継を完了させたいか)
  • ・事業を引き継ぎたい理由
  • ・資金源(自己資金なのか、借入なのか)

売り⼿様に自己紹介を行い、事業承継への熱意をアピールしましょう。
また、良い初回メッセージの例を下記に記載しておりますので、メッセージを送る際の参考にしてください。

例)法人の場合

初めまして、株式会社(法人名)の代表取締役を務めております、(氏名)と申します。
突然のご連絡失礼いたします。

弊社は、2005年より千葉県において製麺工場を営んでおり、500店舗以上のラーメン店と取引実績がある企業でございます。

この度、売り手様が掲載されておりますラーメン店につきまして、弊社が営む製麺事業とのシナジーが非常に高いと考え、事業の承継をさせて頂きたくご連絡差し上げました。
なお、条件面については下記のとおりでございます。

資金源:自己資金
譲渡完了希望日:2023年12月末までに。
譲渡希望価格:1,000万円

ご多忙の折恐れ入りますが、弊社の条件に問題がなければ、具体的な交渉に移らせていただけますと幸甚です。
また、弊社についてご質問がございましたら、お気軽にお申し付けください。
どうぞよろしくお願いいたします。

例)個人の場合

初めまして、都内で会社員をしております、(氏名)と申します。
突然のご連絡失礼いたします。

私は、現在会社を退職し、かねてから夢だったラーメン店を経営したいと考えております。
この度、売り手様が掲載されておりますラーメン店につきまして、地元に愛され10年以上営業されていることを非常に魅力的に思い、事業の承継をさせて頂きたくご連絡差し上げました。
なお、条件面については下記のとおりでございます。

資金源:借入
譲渡完了希望日:2023年12月末までに。
譲渡希望価格:400万円

ご多忙の折恐れ入りますが、条件に問題がなければ、具体的な交渉に移らせていただけますと幸甚です。
また、私についてご質問がございましたら、お気軽にお申し付けください。
どうぞよろしくお願いいたします。

悪い初回メッセージの例

良い初回メッセージのポイントは理解できましたが、悪い初回メッセージの例も確認しておきましょう。
これらの例は、何を質問すればよいのかわからない方がよく送ってしてしまいがちなメッセージですが、売り手様からすると何を回答すればよいのか不明確で、悪印象なメッセージです。このようなメッセージを送らないよう注意しましょう。

  • ・「事業の詳細を教えてください。」
  • ・「事業に興味があります。」
  • ・「値下げはいくらまでできますか?」
02

M&A案件の詳細条件の確認

前のステップでは、初回メッセージで売り手様に対して自己紹介を行いました。このステップでは、売り⼿様へ詳細な事業状況を質問し、また資料(過去3期分の財務情報など)を依頼し提供してもらいましょう。
頂いた情報や資料を踏まえて、事業への理解を深めていきましょう。なお、売り手様から頂いた情報の取り扱いには十分ご注意ください。
また買収資金を金融機関からの借入によって調達する場合には、融資までに1~2か月程の期間を要するため、この段階から金融機関担当者との打ち合わせ等を行い、準備を進めるようにしましょう。
なお、PASONでは、融資にあたり必要な事業計画書等の作成や金融機関との面談をサポートする資金調達の専門家をご紹介可能です。
融資に不安な点がある買い手様はPASON事務局までお気軽にお問い合わせください。

必要な情報を入手しましょう

あなたが事業を引き継ぐべきかどうか判断するために必要な情報を売り⼿様から入手しましょう
以下は一般的に入手する情報の例です。

  • ・製品やサービスの詳細
  • ・事業運営のノウハウ
  • ・マーケティング戦略
  • ・従業員の引継ぎ可否
  • ・譲渡までの期間
  • ・競合について
  • ・一部事業譲渡か全部事業譲渡か(売り手が営む全ての事業を売却する場合は、全部事業譲渡)
  • ・直近の収益状況(売上⾼、売上原価、人件費、経費、営業利益などがわかる資料。譲渡対象事業に関する損益計算書があれば、入手しておきましょう)
  • ・直近の財務状況(銀⾏借⼊、純資産などがわかる資料。譲渡対象事業に関する貸借対照表があれば、入手しておきましょう)
  • ・譲渡対象に含まれる資産(⼟地・建物は⾃社所有か賃貸か、賃貸の場合契約の変更が可能か)
  • ・フランチャイズ加盟店やECサイトのアカウントの場合、譲渡が可能か運営者等に確認してもらいましょう。
  • ・事業の経過年数(事業が安定しているかどうかを確認するために重要です)
  • ・譲渡対象事業の強み
  • ・特許や許認可の有無
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03

面談

ステップ②で詳細条件を確認後、対面またはオンラインでの面談を行いましょう。お互いに日程をすり合わせ、売り⼿様との面談日を決めましょう。

初回⾯談で聞くこと

初回⾯談は、従業員等への情報漏洩を避けるために、外部の会議室等で使用しましょう。
⾯談で確認するべき内容は以下のとおりです。

  • ・直近の事業の状況や今後の見通し、事業のポテンシャルを説明してもらいましょう
  • ・オーナーが変わることによる弊害(従業員の退職、既存の取引先との取引停止)等がないか質問しましょう
  • ・事業承継によってどのようなシナジーが生むことができるのか、売り手様と議論しましょう。
  • ・事業の売却理由を質問しましょう
  • ・現状の事業の問題点と解決方法を質問しましょう
初回面談で伝えること

初回面談では、売り手様に下記の点を伝えましょう

  • ・事業承継の希望時期
  • ・資⾦の調達方法
  • ・事業を承継した後の計画(従業員の雇⽤や事業の戦略等)

売り手様の説明に不明な点があれば、納得できるまで質問しましょう。
もしも売り手様の説明に納得ができれなければ、交渉を中断しましょう。そのような場合、無理に交渉を進めても成約する可能性は低いため、早めに交渉を中止して別の案件に目を向けることも重要です。

面談後にすべきこと

必要に応じて2回目の面談を設定し、今度は売り手様の会社や店舗で面談を実施しましょう。
初回⾯談等が終了しましたら、売り⼿様に事業承継の可否をお伝えしましょう。見送る場合でも、丁寧にその旨のご連絡をすることが重要です。

04

基本合意の締結※実施は任意です。

ステップ②において、譲渡金額や譲渡時期についてお互いの認識をすり合わせ後に、独占交渉を行いたい場合は、基本合意書(MOU)を締結しましょう。
基本合意書とは、事業承継の交渉を進めていく中で、買収価格や買収の条件等の基本的な内容について、買い手様と売り手様の双方が合意に達した段階で締結する書類です。
基本合意書には、一般的にデューデリジェンス(買収監査)を行う権利や独占交渉権(交渉期間中、売り手様に対して、他の買い手様との交渉を禁止できる権利)が盛り込まれています。
基本合意書は、成約に向けての決意表明です。基本合意書書には、一般的に1~3か月の独占交渉権が付与されるため、締結できる買い手様は一人のみです。
基本合意書書で合意した条件については、その後正当な理由なく変更・破棄することは難しいです。そのため、基本合意書書の内容は全て理解しておきましょう。

基本合意書の内容

基本合意書のひな形は、PASONのM&Aガイドページからダウンロードできます。一般的には下記の項⽬を盛り込みます。

  • ・譲渡対象に含まれる資産
  • ・譲渡価格(又はその範囲)の合意
  • ・独占交渉権及びその期間
  • ・⽀払期日
  • ・譲渡後の売り手の引継期間
※基本合意書のひな形ダウンロード
05

買収監査(デューデリジェンス)の実施※実施は任意です。

買収監査(デューデリジェンス)とは、譲渡対象事業の財務情報が正しいかどうか等を調査する作業です。
PASONでは事前に財務内容について検証を行っていますが、さらに詳細な内容を確認するために、事業に関する資料(決算書や法人税申告書、店舗別の損益計算書等)を入手し、デューデリジェンスを実施しましょう。
デューデリジェンスを⾏う際には、一般的に以下の資料を入手します。またデューデリジェンスの実施には専門知識を要するため、必要に応じて専⾨家を活⽤することをおすすめいたします。なお、PASONと提携している専門家もご紹介可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

  • ・過去3年分の譲渡対象事業に関する貸借対照表、損益計算書
  • ・過去3年分の税金に係る申告書(売り手が個人の場合は確定申告書)
  • ・取引先別の売掛⾦、買掛⾦一覧
  • ・在庫リスト
  • ・固定資産の⼀覧表
  • ・リース、不動産賃貸契約等の事業運営に係る契約書
  • ・知的財産に関する⽂書
  • ・事業に係るマニュアル
  • ・従業員名簿
  • ・顧客名簿
  • ・取引先のリスト
  • ・事業の組織図
  • ・事業計画書

デューデリジェンスは時間のかかる作業ですが、最終的に買収するべきかどうかを決定づける重要なものです。
この時に売り手様がデューデリジェンスに協⼒的かどうかについても、重要な判断基準になります。売り手様にとっても負担は大きいですが、協力していただくようにお願いしましょう。
また、デューデリジェンスは専門的な内容も多いため各種専門家をご紹介差し上げることも可能です。ご希望の方は、PASON事務局までお気軽にお問い合わせください。

最終交渉

基本合意書を基に、売り⼿様と最終的な条件を決定しましょう。この段階で正当な理由なく条件を変更することは難しいです。お互いにご自身の希望条件を相手に押し付けるのではなく、譲歩できる部分は譲歩して進めましょう。

事業譲渡契約書の準備

事業譲渡契約書のひな形は、PASONのM&Aガイドページからダウンロードできます。
事業譲渡契約書は譲渡の条件を詳細に規定する重要な契約書です。
事業譲渡契約書の内容は、全て理解した上で締結しましょう。また、契約書を一から作成することは非常に難しいため、PASONが提供する事業譲渡契約書のひな形をご利用されることをお勧めいたします。場合によっては弁護⼠のレビューを受けることもご検討ください。
なお、PASONからもM&Aに精通した弁護士をご紹介差し上げることも可能ですので、ご希望の方はPASON事務局までお気軽にお問い合わせください。 事業譲渡契約書ひな形ページ (最終契約書に盛り込む項⽬)

  • ・表明保証 ※1
  • ・⽀払期日
  • ・譲渡対象資産 ※2
  • ・競業避⽌義務 ※3
  • ・負債の引き渡し ※4
  • ・譲渡⾦額
  • ・キーマンである従業員の処遇、雇⽤など
  • ・事業の引継期間に係る売り手様等への報酬など
※1 売り手様及び買い手様が、お互いに提供した情報について、誤りや虚偽がないことを保証するもの。
※2 譲渡対象資産の条項において記載のない資産は引き継がれませんので、ご留意ください。
※3 売り手様は、買い手様に譲渡した事業と同種の事業を、一定の地域及び期間内において営まないことを義務付けるもの。
※4 引継ぎ対象負債の条項において記載のない負債は引き継がれませんので、ご留意ください。
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06

最終合意、譲渡契約の締結

事業譲渡契約

事業譲渡契約の締結は、電子契約または書面契約で行いましょう。書面契約の場合、契約の締結場所は一般的に買い⼿様や売り⼿様のオフィスになります。
また、事業譲渡契約書上の代金決済期日までに、必ず事業譲渡代金の⼊⾦を完了させましょう。

成約報告

最終契約書の締結後、所定の期⽇内に、PASONに成約報告をお願いします。所定の期⽇を過ぎますと遅延損害⾦が発⽣する場合があるため、ご注意ください。

07

事業の引継ぎ

事業譲渡契約の締結が完了しても、まだ終わりではありません。
事業譲渡契約書の締結後、譲渡日までに名義変更等の⼿続きを行いましょう。特に、許認可や不動産の名義変更が漏れてしまうとトラブルになるため、ご留意ください。
また事業承継した後すぐにスタートダッシュを切れるように、売り⼿様に顧客や取引先の引き継ぎ等の事業の引継ぎをお願いしましょう。
事業引継ぎは一般的に3か⽉から半年程掛かります。場合によっては、売り手様と相談の上、それ以上の引継ぎ期間を設けましょう。
なお、引継期間の売り手様の給与や報酬がどうするのかは事前に相談をしておき、事業譲渡契約書に盛り込んでおくことが重要です。
事業の引継ぎを丁寧に行うかどうかで、引き継いだ事業の成功確率が大きく変わります。
そのため、引継ぎはより一層丁寧に行いましょう。

主な引継ぎ項⽬
  • ・顧客や仕⼊先などの取引先へのご紹介
  • ・契約の名義変更
  • ・運営ノウハウの引き継ぎ
  • ・その他、暗証番号、サーバーなどのIDやパスワード、店舗の鍵等
新たなスタート

ここまでで、事業承継の手続きが完了しました。買い手様が引き継いだ事業の成功を、弊社一同、心より願っております。
なお、PASONでは引き継いだ事業を成功させるためのサポートサービスを各種ご用意しておりますので、ぜひご活用ください。

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