売り手様向け
交渉マニュアル
		Negotiation manual for sellers
		ご利用の前に
はじめに
この「売り手様向け交渉マニュアル」は、売り手様向けに交渉の流れを記載したマニュアルです。
			買い手様と交渉を進めていくうえでの、一助になれば幸いです。
			なお、売り手様の代理人(M&A仲介会社等)は原則ご利用を禁止しております。
また、PASON事務局は当サービスやマニュアルのご利⽤により⽣じる⼀切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
- 01 - M&A案件の登録
 - 02 - 秘密保持事項への同意及び実名交渉の申請
 - 03 - M&A案件の詳細条件の確認
 - 04 - 面談
 - 05 - 基本合意の締結
 - 06 - 買収監査(デューデリジェンス)の実施
 - 07 - 最終合意・譲渡契約の締結
 - 08 - 事業の引継ぎ
 
交渉の流れ
				M&A案件の登録
まずはPASONに売却対象の事業を登録しましょう。
			基本的に、PASONに記載する情報は多ければ多いほど成約に繋がる可能性が高まります。例え赤字であったとしても、情報量が多ければ買い手様は事業再生の計画を立てやすいため、結果として成約につながりやすくなるためです。
			一方で、利益が出ていたとしても情報量が少なければ、買い手様は引き継いだ後でさらに伸ばせるかどうかを判断できないため、買い手様探しに難航する可能性もございます。
			ご登録いただいた情報を基に、PASONアドバイザーとの面談を実施いたします。なお、面談時において登録内容の確認を行い、加筆又は修正すべき情報があれば、PASON事務局からアドバイスさせて頂きますので、文章を書くことに自信がない方でもご安心ください。
また、面談の実施前に財務情報のご提出をご依頼いたしますので、事前にご用意頂けますと幸いです。
通常、面談が終了してからPASON事務局が2~5営業日で審査を行い、売り手様に掲載内容の最終確認をしていただいた後にM&A案件として公開されます。
公開された後には、多数の買い手様から交渉申請がされますので、ステップ③に記載のよくある買い手様からの質問について回答をあらかじめ用意しておきましょう。
				秘密保持事項への同意及び実名交渉の承認
買い手様は、あなたが登録したM&A案件の詳細を確認し、具体的な交渉をしたいと考えた場合に、実名交渉申請を行います。あなたは実名交渉申請をした買い手のプロフィールや初回メッセージを確認し、交渉相手として問題がなければ秘密保持事項に同意したうえで実名交渉申請を承認しましょう。なお、実名交渉申請を承認すると、あなたの氏名(法人名)等が相手方に開示されるため、ご留意ください。
買い手様が交渉相手として問題がないかどうかを判断する際には、以下のポイントに注目しましょう。
- ・買い手様は個⼈か法⼈か
 - ・買い手の業種、規模、所在地などの概要
 - ・譲渡までに要する期間(いつまでに承継を完了させたいか)
 - ・事業を譲り受けたい理由
 - ・資金源(自己資金なのか、借入なのか)
 
また、実名交渉申請が承認されると、あなたの氏名(法人名)や、店名等の譲渡対象事業が特定できる情報が開示されます。
				なお、買い手様は秘密保持義務に同意した方のみあなたの事業情報を閲覧することができるため、情報の秘匿性にも問題はございませんが、競合他社等の情報を提供したくない買い手様であれば交渉申請を拒否することも可能です。
				M&A案件の詳細条件の確認
前のステップでは、買い手が交渉相手として相応しいかどうかを判断しました。このステップでは、買い手に詳細な事業の情報(ビジネスモデル、直近月の状況、過去3期分の財務情報など)を提供し、あなたのビジネスに対する理解を深めてもらいましょう。
また、同時に買い手がどのような条件で事業を譲り受けたいか(譲渡価格、譲渡の目安時期、引継ぎ作業の期間及び方法)を聞き、基本合意締結に移るべき相⼿かどうか判断しましょう。
よくある買い手様からの質問買い手様は事業を譲り受けた後に運営していけるのかどうか判断するために、あなたの事業について何点か質問をすることがあります。よくある質問は下記に記載しておりますので、あらかじめ回答を用意しておくと交渉をスムーズに進めることができます。
- ・製品やサービスの詳細
 - ・事業運営のノウハウ
 - ・マーケティング戦略
 - ・従業員の引継ぎ可否
 - ・譲渡までの期間
 - ・競合について
 - ・一部事業譲渡か全部事業譲渡か(あなたが営む全ての事業を売却する場合は、全部事業譲渡)
 - ・直近の収益状況(売上⾼、売上原価、人件費、経費、営業利益などがわかる資料。譲渡対象事業に関する損益計算書があれば、データ等で用意しておきましょう)
 - ・直近の財務状況(銀⾏借⼊、純資産などがわかる資料。譲渡対象事業に関する貸借対照表があれば、データ等で用意しておきましょう)
 - ・譲渡対象に含まれる資産(⼟地・建物は⾃社所有か賃貸か、賃貸の場合契約の変更が可能か確認しておきましょう)
 - ・フランチャイズ加盟店やECサイトのアカウントの場合、譲渡が可能か運営者等に確認しておきましょう。
 - ・事業の経過年数
 - ・譲渡対象事業の強み
 - ・特許や許認可の有無
 
				面談
ステップ③で事業の詳細についてお伝えした後で、対面またはオンラインでの面談を行いましょう。お互いに日程をすり合わせ、買い手様との面談日を決めましょう。
初回⾯談に向けての準備初回⾯談は、従業員等への情報漏洩を避けるために、外部の会議室等で使用しましょう。
				初回面談に向けて準備するものは以下のとおりです。
- ・ビジネスモデルや直近の事業の状況を説明するために、簡単に資料を作成しておきましょう。
 - ・買い手様から資料の依頼があった場合は、その資料を用意しておきましょう。
 
初回面談では、準備した資料を用いて以下の内容を伝えましょう。
- ・ビジネスモデルや直近の事業の状況
 - ・事業の将来性
 - ・現状抱えている課題
 
また、買い手様は一般的に以下の質問をするため、質問に対する回答もあらかじめ用意しておきましょう。
- ・なぜ事業を売却されるのでしょうか。
 - ・現状事業が抱えている課題は、どうすれ解決することができるのでしょうか。
 - ・事業の成長可能性はどのような点にあるのでしょうか。
 - ・事業のオーナーが変わることによる影響を教えてください。
 
事業の状況等をお伝えしたあとに、買い手様はどのような条件で事業を譲り受けたいと考えているのかを知るために、下記の点について質問しておきましょう。
- ・事業承継の希望時期
 - ・資⾦の調達方法
 - ・事業を承継した後の計画(従業員の雇⽤や事業の戦略等)
 
買い手様の説明に不明な点があれば、納得できるまで質問しましょう。
			もしも買い手様の説明に納得ができれなければ、交渉を中断しましょう。そのような場合、無理に交渉を進めても成約する可能性は低いため、早めに交渉を中止して別の買い手様と交渉を行うことも重要です。
必要に応じて2回目の面談を設定し、今度は自社で面談を実施しましょう。
初回⾯談等が終了しましたら、事業承継の可否を買い手様に聞きましょう。複数の買い手様と面談をした後、あなたが一番事業を引き継いでほしいと思う買い手様と、次のステップに進みましょう。
				基本合意書の締結※締結は任意です。
ステップ②において、基本的な条件について合意できた場合には、基本合意書(MOU)を締結しましょう。
					基本合意書とは、事業承継の交渉を進めていく中で、買収価格や買収の条件等の基本的な内容について、売り手様と買い手様の双方が合意に達した段階で締結する書類です。
					基本合意書には、一般的にデューデリジェンスを行う権利や独占交渉権(交渉期間中、売り手様に対して、他の買い手様との交渉を禁止できる権利)が盛り込まれているため、締結の可否は慎重に判断しましょう。
					基本合意書は、成約に向けての決意表明です。基本合意書には、一般的に1~3か月の独占交渉権が付与されるため、締結できる買い手様は一人のみです。
					基本合意書を締結した時点で、他の買い⼿様とのメッセージのやり取りができなくなります。もしも基本合意書を締結した買い手様と交渉が決裂した場合は、他の買い手様とメッセージのやり取りを再開することが可能です。
					基本合意書書で合意した条件については、その後正当な理由なく変更・破棄することは難しいです。そのため、基本合意書書の内容は全て理解しておきましょう。
基本合意書のひな形は、PASONのM&Aガイドページからダウンロードできます。一般的には下記の項⽬を盛り込みます。
- ・譲渡対象に含まれる資産
 - ・譲渡価格(又はその範囲)の合意
 - ・独占交渉権及びその期間
 - ・⽀払期日
 - ・譲渡後の売り手様の引継期間
 
				買収監査(デューデリジェンス)の実施※締結は任意です。
買収監査(デューデリジェンス)とは、譲渡対象事業の財務情報が正しいかどうか等を調査する作業です。
			PASONでは事前に財務内容について検証を行っていますが、買い手様様はさらに詳細な内容を確認するために、各種資料(決算書や税務申告書、重要な契約書など)を依頼する場合があります。
			デューデリジェンスを⾏う際には、買い手様から以下の書類を依頼されるため、事前に準備しておきましょう。
- ・過去3年分の譲渡対象事業に関する貸借対照表、損益計算書
 - ・過去3年分の税金に係る申告書(売り手様が個人の場合は確定申告書)
 - ・取引先別の売掛⾦、買掛⾦一覧
 - ・在庫リスト
 - ・固定資産の⼀覧表
 - ・リース、不動産賃貸契約等の事業運営に係る契約書
 - ・知的財産に関する⽂書
 - ・事業に係るマニュアル
 - ・従業員名簿
 - ・顧客名簿
 - ・取引先のリスト
 - ・事業の組織図
 - ・事業計画書
 
デューデリジェンスは時間のかかる作業ですが、最終的に買い手様が事業を承継するべきかどうかを判断するための重要なものです。
				事業譲渡を円滑に行うため、事業に関する全ての資料を提供し、積極的に協力するようにしましょう。
				また、デューデリジェンスの期間中に反社チェック等を行い、引き継いでもいいのかどうか、確認するようにしましょう。
基本合意書を基に、買い手様と最終的な条件を決定しましょう。この段階で正当な理由なく条件を変更することは難しいです。お互いにご自身の希望条件を相手に押し付けるのではなく、譲歩できる部分は譲歩して進めましょう。
事業譲渡契約書の準備事業譲渡契約書のひな形は、PASONのM&Aガイドページからダウンロードできます。
				事業譲渡契約書は譲渡の条件を詳細に規定する重要な契約書です。
				事業譲渡契約書の内容は、全て理解した上で締結しましょう。また、契約書を一から作成することは非常に難しいため、PASONが提供する事業譲渡契約書のひな形をご利用されることをお勧めいたします。場合によっては弁護⼠のレビューを受けることもご検討ください。
				なお、PASONからもM&Aに精通した弁護士をご紹介差し上げることも可能ですので、ご希望の方はPASON事務局までお気軽にお問い合わせください。
専門家紹介ページ
最終契約書に盛り込む項⽬
- ・表明保証 ※1
 - ・⽀払期日
 - ・譲渡対象資産 ※2
 - ・競業避⽌義務 ※3
 - ・負債の引き渡し ※4
 - ・譲渡⾦額
 - ・キーマンである従業員の処遇、雇⽤など
 - ・事業の引継期間に係る売り手様等への報酬など
 
※2 譲渡対象資産の条項において記載のない資産は引き継がれませんので、ご留意ください。
※3 売り手様は、買い手様に譲渡した事業と同種の事業を、一定の地域及び期間内において営まないことを義務付けるもの。
※4 引継ぎ対象負債の条項において記載のない負債は引き継がれませんので、ご留意ください。 専門家紹介はこちら
				最終合意・譲渡契約の締結
事業譲渡契約の締結は、電子契約または書面契約で行いましょう。書面契約の場合、契約の締結場所は一般的に買い⼿や売り⼿のオフィスになります。
			また、事業譲渡契約書上の代金決済期日までに、譲渡代金の入金が完了していること確認しましょう。
最終契約書の締結後、所定の期⽇内に、PASONに成約を報告することを忘れないでください。所定の期⽇を過ぎますと遅延損害⾦が発⽣いたしますのでご注意ください。
				事業の引継ぎ
事業譲渡契約の締結が完了しても、まだ終わりではありません。
			あなたが事業を譲渡したその⽇から、買い手様がすぐに事業のスタートダッシュを切れるように、予め事業引継ぎの準備をしておきましょう。
			事業引継ぎは一般的に3か⽉から半年程掛かります。場合によっては、買い手様と相談の上、それ以上の引継ぎ期間を設けましょう。
			この期間あなたの給与や報酬がどうなるのかは事前に相談をしておき、事業譲渡契約書に盛り込んでおきましょう。
- ・従業員、顧客、取引先等に譲渡の件を伝えましょう
 - ・顧客や仕⼊先などの取引先へのご紹介
 - ・契約の名義変更
 - ・運営ノウハウの引き継ぎ
 - ・その他、暗証番号、サーバーなどのIDやパスワード、店舗の鍵等
 
売り手様が個⼈事業主の場合や、譲渡後に残る法人を廃業する場合は、廃業⼿続きが必要になります。
			廃業は、どのタイミングでどのような形式で行うかによって、手元に残る資産が大きく変わります。PASONは廃業の専門家もご紹介可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
ここまでで、事業承継の手続きが完了しました。
			買い⼿様が引き継いだ後でも、必要に応じてサポートしましょう。
			そして、売り手様の第二の人生がより素晴らしいものになることを、弊社一同願っております。
