EBITDAの意味とは?計算方法やEBITとの違い・注意点などを解説!
最終更新日:2023-12-10M&Aを検討する際に役に立つ指標はいくつかありますが、その指標の一つがEBITDAです。ではEBITDAとは、どのような指標なのでしょうか。ここではEBITDAがどのような意味かと、計算方法やメリットなどを解説していきます。
目次
EBITDAとは
EBITDA(イービットディーエー)とは、Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortizationの略称で、税引前利益に支払利息や減価償却費を加えて計算される利益の事を指します。それぞれの単語に分解すると、以下のようになります。
- Earnings Before Interest Taxes – 利払前・税引前利益
- Depreciation – 有形固定資産(建物、機械設備等)の減価償却費
- Amortization – 無形固定資産(ソフトウェアやのれん代等)の減価償却費
まとめると、支払利息や税金、それぞれの減価償却費を差し引く前の利益の事を指します。
EBITDAの計算方法
EBITDAには、決まった計算式はありません。ですが、目的に応じていくつかの計算式があります。
- EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
- EBITDA = 経常利益 + 支払利息 + 減価償却費
- EBITDA = 税引前当期純利益 + 特別損益 + 支払利息 + 減価償却費
- EBITDA = 当期純利益 + 法人税等 + 特別損益 + 支払利息 + 減価償却費
一番よく使われる計算式は「営業利益 + 減価償却費」です。営業利益は支払利息や税金を差し引く前の金額で、企業が本業で稼いだ利益になります。次に減価償却費とは、資産(通常は設備や備品など)の価値が時間とともに減少することを考慮し、経費として数年間に分割して計上するものです。
EBITDAは減価償却費を含めて計算されるため、企業の利益のキャッシュベースの金額を把握することができます。
EBITDAのメリット
EBITDAを把握する事で得られるメリットはいくつかあります。具体的にどのようなメリットがあるのか解説していきます。
EBITDAのメリット①:設備投資の違いを排除した比較ができる
通常、営業利益を計算する際には、減価償却費が差し引かれて、実質的な本業の営業利益がいくらなのか把握することは困難です。たまたま大規模な設備投資をした際などは、その期の会計上の利益が減価償却費により圧縮されてしまいます。ですが、EBITDAは営業利益に減価償却費を加算して計算するため、設備投資などの影響を排除した実質的な本業の利益を計算することができます。
EBITDAのメリット➁:グローバル企業の収益力を正しく比較できる
税金や金利、減価償却の計算方法などは国によって違います。そのため、減価償却費や税金、支払利息を差し引いた当期純利益では、会計ルールの違うグローバル企業を正しく比較する事は困難です。しかしEBITDAを用いれば、税金や支払利息等の影響を排除することができるため、グローバル企業の収益性を比較する上でとても便利な指標になります。
EBITDAのメリット③:M&Aの指標として活用できる
M&Aの判断に役立つ指標として、EV/EBITDA倍率というものがあります。EVとはEnterprise Valueの略称で、日本語で言うと企業価値という意味です。EVは(株式時価総額+有利子負債-現預金)で求められます。買収にかかるコストを何年で回収できるかを示す値になります。
EV/EBITDA倍率は業種により目安が変わりますが、一般的に8〜10倍が目安とされており簡易的に割安・割高の判断をすることができます。ですが、将来的な観点に欠ける指標のためベンチャー企業などの評価には向いていない事は注意が必要です。
EBITDAの活用方法
EBITDAを実際に活用するにはどのような場合があるのか、解説していきます。
EBITDA倍率で企業価値(株式価値)を計算する
中小企業の最適な株価を計算するには、株価の情報量が足りないため困難です。そこで使われるのがEBITDAです。EBITDAを使った株価を計算する方法でEV/EBITDA倍率を活用することができます。EV/EBITDA倍率は、企業価値がEBITDAの何倍かを示す指標なので、M&Aを行いたい企業と類似する上場企業のEV/EBITDA倍率を調べていくとその目安がわかります。
その目安となるEV/EBITDA倍率を元に、M&Aを行いたい企業の事業価値(EV)を計算することにより、株価の目安がわかります。専門家に企業価値の算定を依頼するとコストがかかるため、EV/EBITDA倍率を使ってどれぐらいの価値なのか測る事で、コストを削減できます。
資金繰りの参考指標にする
銀行は融資を行う場合、利息を含めた貸したお金を回収する必要があります。返済可能な利益が出ているか、固定資産よりも、現金による収益があるのかが大切になってきます。
その際に銀行が参考にするのがEBITDAで、どれだけの利益が出ているか把握でき、現金ベースの指標になるので、現金収益の大きさを把握する事が可能です。それによって返済できるかどうかの判断がしやすいと言えるでしょう。
投資の判断材料として活用する
EBITDAは、個人投資家が投資を行う際の判断材料のひとつとして良く活用される数値です。営業利益は設備投資などの影響を受けやすいです。大量の先行投資を必要とする企業は、設備投資後の数年間は減価償却により、利益が小さくなります。
営業利益だけでは中長期的な評価はとても難しいと言えますが、EBITDAであれば減価償却費の影響を受けないので、中長期的な企業の価値を把握することができます。
EBITDAマージンの活用
EBITDAを使った指標にEBITDAマージンというものがあります。企業の収益性を示した指標の事で、企業のEBITDAを売上高で割った割合を示します。EBITDAマージンを求めるときの計算方法は、EBITDAマージン = EBITDA ÷ 売上高 です。
EBITDAマージンは、キャッシュベースでの収益性を分析する際によく使われる指標です。企業価値を評価する際には経年比較での収益性の評価を行うことが多いです。経年比較とは連続した2〜3期の財務諸表を比べて当期の決算内容を分析・判断する方法の事を言います。
定期的に設備投資が必要な企業は、投資した金額によって減価償却費が変動しやすいため、適切な経年比較ができません。EBITDAマージンを活用すれば、減価償却費の影響を排除できるため、キャッシュベースでの収益性を適切に知ることができます。
EBITDAの注意点
EBITDAを使う際に気を付けなければいけない点があります。以下で解説していきます。
適切でない設備投資に気が付けない
EBITDAを活用する際に注意しないといけない点は、適切でないタイミングで過剰な設備投資や資金調達など、将来的な営業利益を把握することが難しい点です。EBITDAは減価償却費や支払利息と税金を差し引くため、企業の実際のキャッシュを正確に反映してるわけではないからです。EBITDAは会計基準に即した経営指標とは言えないので、投資によって発生した損失負担を考慮できないという点には注意しておきましょう。
のれんの損失が反映されない
EBITDAを活用する場合、のれんによる損失は反映されません。のれんとは、いわゆるM&Aで企業買収をした時に発生するもので、買収された企業の時価評価純資産と実際に買収した金額の差額の事を言います。
例えば、実際の企業の価値よりも高額で企業を買収した場合、その差額をのれんと呼び、毎年減価償却する事になります。EBITDAでは、減価償却費を考慮しない指標の為、設備投資同様のれん償却費についても、EBITDAでは把握する事ができない点に注意が必要です。
正常利益を基本にした計算が必要
EBITDAを用いる場合、正常利益を元にした計算が必要になります。節税目的の保険料の支払いや役員報酬の金額によっては、会社の実際の業績を的確に反映することができない点に注意が必要です。EBITDAは重要な指標ですが、ほかの指標と組み合わせて企業評価を行うことが重要です。
EBITDAと似た指標のEBITとの違い
またEBITDAに似た指標としてEBITというものがあります。EBIT(イービット)はEarnings Before Interest Taxesの略称で、利払前・税引前利益の事を指します。EBITDAは、グローバル企業の企業価値を比較する際に便利な指標ですが、EBITは主に本業の事業活動から生まれる利益に注目した指標です。
EBITの計算方法は、税引前当期純利益+支払利息-受取利息で計算できます。設備投資をする際に生じた借入金などが、どれぐらいかかっているのか利益にどのような影響を与えているのかを明確にするために、EBITの数値を分析します。EBITは支払利息や受取利息の影響を排除して利益を判断するのがEBITの役割と言えるでしょう。
EBITDAとEBITの差は、計算に減価償却費を計算に加えるか否かの差です。EBITDAはグローバル企業の比較や、設備投資が大きく、減価償却が多くなりがちな製造業や大企業に有効な指標と言えます。一方EBITは、同業での利益水準を比較する場合や、スタートアップやベンチャー企業などの借入金の大きい企業の評価を行う際に有効な指標と言われています。
中小企業のM&Aで活用されるEBITDA
中小企業のM&Aにおいて、EBITDAは幅広い場面で財務分析に活用されます。中でも、EBITDAの活用例としてM&A時の株価評価です。上場企業同士のM&Aにおいては、ファイナンス理論という手法でM&Aに最適な株価を計算することが多いですが、中小企業同士のM&Aではファイナンス理論を使って最適な株価を出すことができません。
M&Aをする際にはある程度株価の適正価格を決める必要があります。EBITDAを活用してM&Aにおける最適な株価を計算する方法としてEBITDAマルチプル法(類似業種比較法)があります。類似している上場企業のEBITDAが何倍なのかを基準に考えて、中小企業の価値を計算する方法です。
類似企業のEBITDA倍率は業種ごとに評価の倍率が変わるため、業種毎の株式市場の評価を把握し、適正な株価を測ることができるようになります。
まとめ│EBITDAを正しく理解して、活用しよう!
これまでEBITDAについて説明してきましたが、EBITDAはM&Aをする際によく用いられる財務諸表分析の指標の一つです。海外などの同業他社をキャッシュベースで本業の儲けを比較し、分析する際にEBITDAはとても便利な指標として活用できます。
ただ、本業の儲けをキャッシュベースで把握するための指標であり、将来性などの評価には使えない点には注意が必要です。EBITDAだけではなく、EBITやその他の指標も合わせて活用してM&Aを検討しましょう。