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内部統制の意味とは?4つの目的や6つの要素・5つのメリットについて詳しく解説!

最終更新日:2024-03-30
内部統制 意味

企業の活動において欠かすことのできない事業のひとつに「内部統制」があります。内部統制は、企業が健全で、効率的な成長を続けるために必要不可欠な存在となっているものです。

内部統制が企業において、非常に重要な役割を果たすものだということは理解していても、目的やメリットなどは説明できないという方も多いかもしれません。

そこで今回の記事では、内部統制とはどういったものなのか?内部統制の目的や要素、内部統制に必要な3点セットやメリットについて詳しく解説していきます。

内部統制について、深く理解できる内容となっていますので、最後までお読みいただけると幸いです。

内部統制の意味とは?

内部統制とは、企業が事業活動を健全で効率的に運営するために作られた、会社内のルールや仕組みのことを指しています。

不正や不祥事を起こすことなく、クリアな社内管理体制を整える制度です。従業員一丸となってこのルールに従うことができれば、ミスや不正が起こった際にも、リスクを最小限に食い止めることができます。

それに伴い、業務の効率化や資産を守ることができるのです。

内部統制と同じような意味を持つ言葉に「コーポレートガバナンス」があります。内部統制とコーポレートガバナンスの大きな違いは、その対象者が誰になるかという点です。

内部統制は、企業の従業員に対するルールや体制を管理する仕組みとなっていることに対して、コーポレートガバナンスは企業で働いている従業員だけではなく「投資家」や「株主」などの利益を守るため、企業を監視する仕組みのこと。

コーポレートガバナンスは、日本語で「企業統治」とも呼ばれています。

内部統制の4つの目的とは?

それでは、金融庁が掲げている「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」について確認していきましょう。ここには、内部統制に関して、次の4つの事柄が挙げられています。

  • 業務の有効性及び効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令などの遵守
  • 資産の保全

ひとつずつ順番に確認していきましょう。

内部統制の目的①:業務の有効性及び効率性

内部統制の目的1つ目は「業務の有効性及び効率性」です。内部統制をしっかりと構築できれば「人」「お金」「時間」などの資源を有効かつ効率的に活かすことができます。

無駄な業務やコストは、経営悪化につながる大きな要因です。ルールや目標の見直しをすることによって、合理的な経営を目指し、目的を達成することが求められるでしょう。

内部統制の目的②:財務報告の信頼性

内部統制の目的2つ目は「財務報告の信頼性」です。財務報告は、企業において重要となる、経営状況の信頼性を高めるために必要不可欠な要素となっています。

万が一、粉飾決算や虚偽の収支報告が行われてしまった場合、金融機関や投資家たちは大きな損失を受けることになるのです。しかし、正確で信頼できる財務報告を続けていれば、銀行や取引先・株主などと良好な関係を維持できるでしょう。

内部統制の目的③:事業活動に関わる法令などの遵守

内部統制の目的3つ目は「事業活動に関わる法令などの遵守」です。企業の事業活動において、法令を遵守することは非常に大切なこと。

利益ばかりを追い続けてしまい、法令の遵守を怠ってしまうと、社会的な信用問題に関わるだけでなく事業存続の危機にも陥ってしまうことになります。

コンプライアンス体制の見直しや強化で、労働時間の徹底管理はもちろん、個人情報保護法・財務報告の遵守なども必須となるでしょう。

内部統制の目的④:資産の保全

内部統制の目的4つ目は「資産の保全」です。企業において会社を立ち上げるときの資本金や事業活動によって得られた資産は、適切な管理の元、維持や拡大を続けていかなければなりません。

事業の基礎となる資産がなければ、会社経営を継続することは不可能です。内部統制を行うことによって、無駄な支出を削減したり、安全に資産を

運用・管理することは事業活動において欠かせないものとなるでしょう。

内部統制を構成する6つの要素とは?

内部統制の4つの目的を解説してきましたが、内部統制を構成している要素にも触れていきます。内部統制における目的を達成するためには、これから解説する「6つの要素」が重要なポイントになってくるのです。

  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動
  • 情報と伝達
  • モニタリング
  • ITへの対応

それでは順番に確認していきましょう。

内部統制の要素①:統制環境

内部統制の要素の1つ目は「統制環境」です。統制環境とは、その組織の体質や気風・社風などのことであり、その他5つの要素の基盤となるものになります。

中でも、経営者がどのような姿勢で事業を行なっているのかの意向を明確なものにして、誠実さや倫理観が伝わる企業運営が求められるでしょう。

内部統制の要素②:リスクの評価と対応

内部統制の要素2つ目は「リスクの評価と対応」です。これは、リスクマネジメントであり、コストの削減や回避を図るプロセスのこととなります。

内部統制には「4つの目的」がありますが、これらの障害になるポイントを分析・評価するのです。この際のリスクは「内部的要因」と「外部的要因」に分けられます。

内部的要因のリスクには、会計でのミスや情報システムによる不具合、不正行為の発覚や個人情報の流出などがあるでしょう。

また、外部的要因に関しては、地震や火災などの天災や盗難によるリスク・為替相場の変動が挙げられます。

内部統制の要素③:統制活動

内部統制の要素3つ目は「統制活動」です。統制活動とは、会社内で定められているルールや手続きのことであり、組織の中での決定事項を遂行するシステム。

統制活動の主な取り組みとして挙げられるのは、業務に関するマニュアルや社内規定を作成したり、会社内の整備・権限や職責の付与となります。

内部統制の要素④:情報と伝達

内部統制の要素となる4つ目は「情報と伝達」です。事業活動を行う上で、さまざまな出来事が起こり得ます。

その事柄に対処するためには、スムーズな情報の共有や正確な伝達が必要不可欠です。経営陣のみならず、働いている従業員の全てが、必要な情報を適切且つ正確に把握・処理することが大切。この一連の流れが迅速に行えると、組織全体の目標達成にも大きく影響してくるのです。

内部統制の要素⑤:モニタリング

内部統制の要素5つ目は「モニタリング」です。モニタリングとは、日本語で言うところの監視活動。

内部統制が正確でスムーズに機能しているのかどうか、継続して監視を行い、気になるポイントは直ちに改善していく必要があります。

モニタリングには2種類が存在しており、その1つ目が「日常モニタリング」で、2つ目が「独立的評価」です。

日常モニタリングとは、内部統制が有効的に機能しているかどうか?問題点はないか?を監視するシステム。これは日々の業務の中に組み込まれています。

日常モニタリングは、普段から毎日行われるものなので、チェックの甘さや見逃しなどが懸念されているのも事実です。独立的評価とは毎日行われるものではなく、業務に携わっていない「経営者」「取締役」「監査役」「内部監査」のいずれかによって行われます。

独立的評価により、日常的モニタリングで発生した問題点や欠点をカバーできる仕組みです。

内部統制の要素⑥:ITへの対応

内部統制の要素6つ目は「ITへの対応」です。ITへの対応とは、事業活動において必要不可欠なIT技術を導入すること。導入後には、適切な運用と整備も求められています。

どのような業種の企業であっても、今の時代、効率的且つスムーズに業務を遂行するにはIT技術の導入は欠かせません。事業活動の目的に沿ったIT技術をうまく取り入れ、マニュアル化していくことが企業の目標達成に繋がっていくでしょう。

内部統制に必要とされる3点セットとは?

内部統制が本当に適切な状態で機能されているのか?を把握するのに必要になってくるのが「内部統制の3点セット」と呼ばれるものです。

これは、自社の内部統制において課題や問題点を把握するためのツールとなります。内部統制報告制度(J-SOX)は、内部統制を行う上での義務ではありません。

しかし、3点セットを作成することによって効率良く作業を進められるようになっています。

  • フローチャート
  • リスクコントロールマトリックス(RCM)
  • 業務記述書

3点セットについて確認していきましょう。

内部統制3点セット①:フローチャート

内部統制3点セット1つ目は「フローチャート」です。

フローチャートとは、部門ごとに業務の流れを図解化した書類のこと。業務内容の全体の流れを把握しやすくするために作成されるものです。わかりやすく、図で表されているので「いつ」「どの部門で」「どういった関りがあるのか」が一目瞭然となっています。

内部統制3点セット②:リスクコントロールマトリックス(RCM)

内部統制3点セットの2つ目は「リスクコントロールマトリックス(RCM)」です。

リスクコントロールマトリックスとは、業務を行う上で予測されるリスクと、それに対応する統制活動を示した表形式の書類を指しています。起こってしまったリスク(問題)への対応策が、一目でわかるようになっているのが特徴です。

内部統制3点セット③:業務記述書

内部統制3点セットの3つ目は「業務記述書」です。

業務記述書とは、財務報告に関する業務内容を記述した書類となっています。「誰が」「何のために」「どのようなことをするのか」が記載されますが、業務記述書は財務報告によるリスクが記載されていれば問題ありません。

内容としては、取引が発生してから会計処理が行われるまでの過程を、文書としてまとめたものとなります。

内部統制を行う5つのメリットとは?

内部統制を行うことによって、企業にさまざまなメリットが生じます。

  • 財務状況の「見える化(透明化)」に繋がる
  • 不正やミスを防止することに繋がる
  • 業務フローの可視化となる
  • 企業全体の信頼性・社会的信用度が向上する
  • 従業員のモチベーションアップに繋がる

順番に確認していきましょう。

内部統制のメリット①:財務状況の「見える化(透明化)」に繋がる

メリット1つ目は、財務状況の「見える化(透明化)」に繋がることです。財務状況は企業において最も重要な部分となります。財務状況が把握しやすくなると、その都度「現在の経営状態」がわかるので、適切な判断ができるようになるでしょう。

内部統制のメリット②:不正やミスを防止することに繋がる

メリット2つ目は、不正やミスを未然に防ぐきっかけに繋がることです。コンプライアンス体制が強化されますので、情報の漏洩や粉飾決済などの不正を事前に防止する体制が整っています。ミスが軽減されることで、効率良く業務が進められるようになるでしょう。

内部統制のメリット③:業務フローの可視化となる

メリット3つ目は、業務フローの可視化です。内部統制を行うことによって今まで気づいていなかった非効率な業務内容が浮き彫りになったり、効率的なシステムが定着することとなります。

実際に業務を行っている従業員だけでなく、経営陣が実際の業務フローを把握することで、さらなる改善へと繋がるでしょう。

内部統制のメリット④:企業全体の信頼性・社会的信用度が向上する

メリット4つ目は、企業全体の信頼性や社会的信用が向上することです。内部統制の徹底に成功すれば、企業の価値が高まることにも繋がります。

クリーンで透明性の高い事業活動を続けることによって、取引先や金融機関との関係も良好となり、スムーズな資金調達ができるようにもなります。企業の運営には「クリーンなイメージ」が非常に大きく関わってくるものです。社会的信用度が上がれば、自ずと企業価値も上がってくるでしょう。

内部統制のメリット⑤:従業員のモチベーションアップに繋がる

メリット5つ目は、従業員のモチベーションアップです。

内部統制を徹底するということは、労働環境が整い、評価基準も適正なものとなります。「働きやすい会社に勤めている」「効率良く仕事ができる」「ルールが明確にされている」点などから、負担も軽減されることとなり、モチベーションアップに繋がっていくでしょう。

まとめ|内部統制の実施で企業に多くのメリットを取り入れよう

今回の記事では、内部統制とはどういった意味を持つのか?内部統制における4つの目的や6つの要素、内部統制をスムーズに進められる3点セットのツールやメリットについて詳しく解説してきました。

内部統制は、企業を成長・拡大させる過程で、欠かすことのできない取り組みだということがわかりましたね。内部統制をしっかりと定着させることができれば、業務がスムーズに効率良く行えるのはもちろんのこと、業績の向上や信頼度の上昇にも繋がります。

イメージが良くなることで、取引先や金融機関との関係も円滑になり、企業価値も上がってくるでしょう。内部統制の徹底で、今後起こり得るリスクを最小限に抑え、クリアな経営を続けていきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。