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ベンチャーキャピタル(VC)とは?種類や投資ファンドとの違いを解説!

最終更新日:2024-03-30
ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルとは、英語で「Venture Capital」と呼ばれているものでVCと略されています。

これはスタートアップやベンチャー企業に対して投資を行い成長させその代わりに株式の一部を取得します。

その後の上場や売却によってその株を売却し利益をあげる、投資をする組織の事です。この記事ではベンチャーキャピタルの種類やメリット・デメリット、出資を受ける流れなどを解説していきます。

ベンチャーキャピタルとは

ベンチャーキャピタル(VC)とは、スタートアップやベンチャー企業などの中で、将来性を見込めるまだ上場していない企業を相手に投資をするファンドや投資会社を指します。

このような企業は、事業の初期段階において資金が不足してる場合が多いのが特徴です。VCは、このような企業に投資を行い、成長する事を促していきます。

VCはその代わりに、企業が持つ株式を取得します。そうして投資を行った企業が上場をしたり、また他の企業に買収される際などに、VCが獲得した株式を売却して利益を獲得することが目的です。

このように企業を成長させて売却することが目的なので、企業に経済支援を行ったり、経営に対する助言を行ったり、必要な人員を送り込んだりと企業支援を通して企業の価値を高めていきます。

VCが行う仕事

VCが行う支援は主に3つあり、ここではそれぞれ解説していきます。

資金を調達する

VCだけの資金では、投資に限界があるため、ファンドと呼ばれる複数の機関投資家や個人投資家、金融機関などから資金を集めてひとまとめにし運用するスキームを組成して、そこで集めた資金を使って投資を行います。

投資先を探して投資を行う

様々な投資家や金融機関などから出資してもらった資金を元手に、将来性が見込める企業を探してそこに投資を行った後に株式を取得します。

その後上場した時に株を売却する場合や、企業が買収されたときに株式の売却益を出資した人に分配していきます。

投資先を支援する

投資先を成長させ売却するのが目的のため、その会社にはどうにか成長してもらう事が必要です。そのため資金以外にも、経営についての上限であったり、必要な人材を紹介したり、必要であれば役員を派遣したりなどの支援を行う事があります。

その他の資金調達方法との違い

資金調達をする方法はいくつかあり、それぞれVCから調達する方法との違いについて解説していきます。

銀行融資との違い

銀行融資とVCの一番の違いは、提供してもらった資金について返済する義務を負うかどうかの違いです。

株式を取得するVCでは、その分が資本金となるため返済する義務がありません。逆に銀行融資の場合は有利子負債となり、返済義務が生じます。ただ例外として、VCのパターンでも、投資が失敗したとなった場合、その株式を対象の企業に購入してもらって撤退することもあります。

また資金を提供する目的も違い、銀行融資の場合は設備への投資であったり、資金繰りを改善するために提供される事が多いです。

一方VCの場合は、投資した新たな事業が成長しない事には利益がでないために、銀行融資より経営支援をより積極的に行う点も大きな違いとなります。

投資ファンドとの違い

投資ファンドとVCの違いは、投資先の差です。

一般的にVCでは、ベンチャー企業のようなまだ事業を始めたばかりの会社が対象なのに対して、投資ファンドは、成熟期を過ぎた企業を対象に投資を行います。

その他の違いをあげていくと、VCの場合は基本的に将来性を見込んだ企業に対して投資を行い売却を狙いますが、投資ファンドの場合は、経営不振や経営破綻した企業を再建して売却することが目的の場合もあります。

また更に、取得する株式の割合についても差があります。VCは少しの株を取得して経営に助言していきますが、投資ファンドの場合は、投資を行う企業株式の過半数を取得して経営権を握る場合が多い点も大きな違いと言えるでしょう。

クラウドファンディングとの違い

クラウドファンディングは、プロジェクトを立ち上げた個人や法人に対して、不特定多数の人が購入や寄付、金融というような様々な形態で資金を供与するような仕組みのことを指します。

クラウドファンディングは、支援者から資金をダイレクトに得られるのが特徴で、資金を集めて投資するVCと異なる部分です。

また資金の使い道についてもある程度自由度があります。またクラウドファンディングの場合は、リターンの有無や、リターンが金銭ではなく、商品であったりサービスの提供であったりと柔軟な点が特徴です。

VCの種類

ベンチャーキャピタルには、色々な種類があり様々な特徴があります。それぞれ投資の目的や規模感などに違いがあり、ここでは色々なVCについて、いくつか代表的なものを解説していきます。

金融機関系VC

金融機関VCとは、主に銀行、証券会社、保険会社などが運営しているVCになります。主に純粋な投資を目的としていて投資数や投資金額が大きい事が特徴です。

また投資先はある程度規模が大きい企業に投資する事が多いです。有名なものをあげると、「SMBCベンチャーキャピタル」「三菱UFJキャピタル」「大和企業投資」「ニッセイキャピタル」「三井住友海上キャピタル」などがあります。

政府系VC

政府系地域特化型VCとは、主に国、地方団体、公共団体などが行うVCの事を指します。

これは、利益を上げるためではなく、日本における産業の活性化や技術の保護をする事が投資の主な目的です。例をあげると、「地域経済活性化支援機構」「DBJキャピタル」

「産業革新機構」「東京中小企業投資育成」などです。

大学系VC

大学系ベンチャーキャピタルは、主に大学が出資を行ったVCで、大学での研究の成果や人員などのリソースを使った新たなビジネスの創造や、イノベーションを目的としたものです。

例をあげると、「東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大ICP)」「東北大学ベンチャーパートナーズ」「東京大学エッジキャピタルUTEC」「京都大学イノベーションキャピタル」「慶應イノベーションイニシアティブ」などがあります。

事業会社系VC

事業会社系VCは、事業会社が運営するVCになります。英語ではCorporate Venture Capitalと呼ばれていて、略してCVCと呼ばれる事が多いです。

これは自社とのシナジーがありそうな事業に投資して相互に成長していくような事が目的です。一般的には、相乗効果を期待できそうな企業に投資して、新たな市場への参入を目指す事が多いです。

例をあげると「伊藤忠テクノロジーベンチャーズ」「Gree Ventures」「サイバーエージェント・キャピタル」などがあります。

またCVCについては、CVCとは?する側と受ける側のメリット・デメリットやVCやM&Aとの違いを解説!の記事で詳しく解説しています。

独立系VC

独立系VCとは、特定の親会社がいなく、独自の資本により運営されているVCを指します。

特定の企業や業界などのしがらみにとらわれることなく自由に投資活動できることが特徴です。例をあげると、「ジャフコ」「グロービス・キャピタル・パートナーズ」「日本アジア投資」などです。

地域特化型VC

地方特化型VCとは、特定の地域にある企業を対象に出資するVCです。

主に地方にある技術力が高いような中小企業を対象に出資する事がその他のVCとの違いとなります。例をあげると、「北海道ベンチャーキャピタル」「東北イノベーションキャピタル」「ハックベンチャーズ」「DOGAN β」などです。

海外系VC

海外系VCは、主に国外に拠点を置いているVCを指します。

このVCの特徴は、投資額が大きく日本国内にあるVCと比べると、運営を行っているファンドの規模が大きい点です。また投資を行う先が国内のみならず、世界全体を対象にするVCは、様々な実績やノウハウを持っていて大規模な投資をする傾向にあります。

例をあげると、「Google Ventures」「Coral Capital」「Sequoia Capital」「Kleiner Perkins Caufield & Byers」などがあります。

VCから融資を受けるメリット

VCからのサポートを受けるメリットはいくつかあり、資金提供のみならずその他の支援を求めて受ける事もあります。どのようなメリットがあるのかを解説していきます。

資金調達がしやすくなる

VCから出資を受けると、その会社が投資する価値があると見なされ、投資家から評価される事に繋がります。

その結果、さらなる資金の調達に成功する可能性が高くなっていき、資金調達がしやすくなるでしょう。またその事実が評価され、金融機関からも融資を受けられる可能性が高くなっていきます。

経営についての支援を受ける事が出来る

VCは、投資先が成長することが大切なため、投資先に対して経営についての支援も手厚く行われます。

更に経営に関する経験や知識が豊富な役員を派遣してもらったりなどの支援も受けられる可能性があります。

優れたアイデアやノウハウを開発したが、経営などの部分で足を引っ張っているような企業は、このような支援で一気に成長できる可能性があるでしょう。

返済の必要性がない

金融機関などから融資を受けた際には、決められた期間までに借りた金額(元本)と更に利息を返済しなければなりません。

それに対しVCから資金を調達する場合は、基本的には返済義務はありません。これは出資の対価として自社株を譲渡することになるため、銀行融資と違い出資されたお金を返済する必要がありません。

ベンチャー企業やスタートアップは、色々な事に費用が掛かってくるため、返済に追われる必要のない資金を得られるというのはとても大きなメリットと言えるでしょう。

これにより資金繰りが悪化せずに、事業をスムーズに進められる可能性が上がります。

VCから融資を受けるデメリット

続いてVCからサポートを受けるデメリットを解説していきます。

経営の自由が低下する

VCから資金調達を行う場合は、経営の自由度が下がる場合があります。

その理由は、VCから出資を受ける場合に対価として、自社株の一部を譲渡する場合が多いためです。譲渡する割合が多くなるほど、経営に介入されて経営の自由度は下がってしまう事になるでしょう。

成果をあげなければならない

VCが資金を提供する目的は、投資した企業が成長し上場や買収などの際に株を売却し投資した金額以上の利益を株式の売却益で得ることが目的です。

そのため事業計画や売上などで結果を出す必要があります。経営が上手くいかない状態が続くと事業計画の変更や、出資した資金を早期に回収するような事態に陥る可能性があります。

VCとコンタクトを取る方法

VCから出資してもらいたいと思った際にどのようにコンタクトを取る方法を4つ解説していきます。

直接連絡する

大多数のVCは公式サイトなどに連絡先が掲載されているため、そこから直接連絡を取ります。双方の目的が一致しそうな場合には直接コンタクトを取るのがスムーズな方法となります。

既にVCから出資を受けている人からの紹介

既にVCと関わりがある人や既に投資を受けている人などの信頼できるその方面に詳しい人からの紹介でコンタクトを取る方法です。この場合はVCと関係を構築するのがよりスムーズな場合が多いでしょう。

公的機関などが行っているプログラムを利用する

公的機関(主に政府や地方自治体)が行っている支援制度またはプログラムに参加する事で、VCとコンタクトを取るチャンスが得られます。このようなプログラムに参加しているVCは支援を目的としていることが明確なため、より資金提供してもらえる確率が高いと言えます。

イベントに参加する

ピッチイベントと呼ばれる、起業家がVCや投資家などに自社の商品や技術、サービスなどをプレゼンしたり、逆にベンチャー企業を支援する企業または投資会社などがスタートアップや起業家に対してプレゼンを行う場を提供する集まりに参加することです。

このようなイベントに参加すればVCと直接コンタクトをとる事が出来ます。

VCから出資を受ける流れ

VCから出資を受ける事を決めた場合に、どのような流れで申請するかを簡単に解説していきます。

  1. 必要な書類を準備し提出する

VCが投資の判断をするのに必要になる書類を提出します。基本的に事業計画書の内容が投資判断に大きな影響を及ぼします。またその他、よく要求される書類は以下の通りです。

  • 事業計画書
  • 決算書
  • 税務申告書
  • 株主名簿
  • 組織図
  • 役員経歴書
  • 登記簿謄
  • 資金繰表
  • 定款
  • 会社案内


上記の書類がよく使われているため、事前に準備しておくとスムーズに審査に移ることができるでしょう。

  1. 審査後に出資の可否が決定される

必要な資料が提出されたのちVCが査定を行います。

そしてその資料を基として事業計画書を確認し、市場の動向や規模感などその実現可能性がどの程度あるかなどを審査します。その結果、問題ないと判断した場合には出資を行うという流れです。

  1. 審査会

VCが出資する事を決めた場合、その後審査会と言われる投資家を集めた会合を開きます。

そこで投資家から合意を得たのちに、投資が正式に決定します。審査後に、VCと起業家の間で、金額や持株比率をどうするかなどの細かい条件を決めていくという流れが一般的です。

まとめ│VCはスタートアップ企業にとって大切な存在

ここまでベンチャーキャピタルについて解説してきました。

VCから出資を受けるメリットは、資金繰りの改善や更に資金を調達しやすくしたり、経営についてのアドバイスを受けられる事がメリットです。

一方で、株式の一部を譲渡するため経営の自由度が下がってしまう可能性があり、結果が出なければ資本を引き上げられてしまう場合もあります。

しかし、スタートアップ企業は、銀行から融資が受けにくく、優れた技術やノウハウを有しているにも関わらず経営の面で足を引っ張っている事が多いです。

その様な状況を打破する方法としてベンチャーキャピタルから出資を受けるというのは企業が成功を納める上で一つの重要な方法と言えるでしょう。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。