子会社を設立するメリット・デメリットは?関連会社との違いや気をつけるべき注意点について解説
最終更新日:2024-01-22会社を経営していく上で、子会社設立を考えることがあります。会社の規模が大きくなったり、事業が成長していく過程など、さまざまなタイミングで「子会社設立」を検討するでしょう。
「あの会社は〇〇会社の子会社だ」といった話をよく耳にすることがありますが、その実態や仕組みについては、深く理解できていない場合もあるでしょう。節税対策に子会社化を検討するというケースも見られますが、注意点なども気になるところ。
しかし、闇雲に子会社化することが得策とは言い切れません。事前に子会社の種類や、メリット・デメリットなどを把握しておく必要があります。
そこで今回の記事では、そもそも子会社とはどういったものなのか?3つの種類やメリット・デメリット、関連会社との違いや子会社化をする際に気をつけるべき注意点まで詳しく解説していきます。これから、企業の子会社化を検討している方の参考になると幸いです。
目次
そもそも子会社とは?
そもそも「子会社」とは、どういった会社のことを指しているのでしょうか?子会社とは、意思決定機関が親会社にある会社のことです。自社には「意思決定」の権限がなく、親会社に支配されている状態になります。
意思決定機関とは、株主総会のこと。株主総会では会社の中の「役員報酬」や「役員の選任及び解任」、「事業に関する重要事項」などが決定されます。
子会社の3つの種類
一言で「子会社」といっても、大きく分けると3つの事業形態に分類されています。
- 完全子会社
- 連結子会社
- 非連結子会社
ひとつずつ内容について確認していきましょう。
完全子会社
まずひとつ目は「完全子会社」です。完全子会社とは、親会社が議決権の100%を取得している会社のことを指しています。資本金は、すべて親会社から出ているため、経営面においても完全なる支配下だと言えるでしょう。
連結子会社
連結子会社とは、50%以上の株式を親会社が保有している会社のことを指しています。連結子会社は、親会社と「税務状況」が合算されるのが特徴です。
非連結子会社
非連結子会社とは、連結対象ではない子会社でありながら、子会社に該当する会社のことを表しています。非連結子会社に該当するのは、次のようなものです。
- 支配が一時的なものである場合
- 一時的な支配とはいえないが、連結することにより利害関係者の判断を誤らせる可能性がある場合
- 連結する重要性が低い会社
このような場合に、対象外にできるのが「非連結子会社」となります。
子会社と関連会社の違いとは?
子会社と間違えやすい言葉に「関連会社」があります。どちらも「親会社」があるため、混同しやすいですが、大きな違いがあるので注意しなければなりません。
子会社は、上記でも解説した通り「親会社」に意思決定機関があります。これは50%以上の株式を、親会社が保有しているからです。経営面においても、親会社の支配下にあるのが子会社でしたね。
関連会社と子会社の決定的な違いは、親会社が保有している株式の保有率となります。親会社に50%以上の株式を保有されているのが「子会社」であるのに対して、親会社に20%以上の株式を保有されているのが「関連会社」となるのです。
関連会社の場合、正確には「20%以上、50%未満」の株式を親会社が取得しています。したがって、親会社からの影響は受けるものの、完全なる支配下ではありません。
子会社を設立する5つのメリット
子会社を設立する上で、気になるのがメリットです。子会社設立のメリットは、大きく分けると5つあります。
- 組織の最適化につながる
- リスクを分散できる
- 節税効果が期待できる
- 後継者問題の対策になる
- 意思決定が迅速になる
順番に確認していきましょう。
組織の最適化につながる
メリットの1つ目は、組織の最適化につながる点です。事業が拡大していくと、課題点が浮き彫りになってくる場合もあります。
組織の編成ができておらず、パフォーマンスが下がっていたり、うまく連携が取れなくなっているケースも。
子会社を設立することで、経営のスリム化が実現でき、より一層全体の把握ができるようになります。
リスク分散できる
メリットの2つ目は、リスクを分散できる点です。会社が大きくなることは、決してメリットだけではありません。売上や知名度などは向上する一方で、新しい試みを行う際には、大きなリスクも背負うことになるのです。
例えば、何か大きなトラブルが起こってしまった場合、最長24ヵ月の業務停止を命じられてしまう可能性があります。2年間もの間、会社が機能しなくなれば、その損失は計り知れません。
しかし、子会社を設立して事業を分散できていれば、損失を抑えることができます。親会社・子会社のどちらかが営業を停止しても、もう片方が通常通り営業できるので、最小限のリスクで乗り切ることができるでしょう。
節税効果が期待できる
メリットの3つ目は、節税効果に期待が持てる点です。子会社設立によって、親会社の法人税も軽減税率の対象となります。
それだけでなく、親会社から子会社へ移動した従業員の退職金を「損益」として計上することができたり、交際費の経費算入限度額を増加できることも節税につながるでしょう。
後継者問題の対策になる
4つ目のメリットは、後継者問題の対策になる点です。後継者候補が複数人いる場合には「誰が跡継ぎになるか」という問題から、大きなトラブルへと発展するケースも少なくありません。経営に影響してしまう恐れもあるのです。
しかし、子会社を設立しておけば、それぞれの会社に「経営者」を設けます。後継者候補が複数いる場合には、トラブルを回避できることもあるでしょう。
意思決定が迅速になる
メリットの5つ目は、意思決定が迅速になる点です。企業が大きくなるにつれ、役員の数も増えてくるのが一般的。ひとつの案件を決定する際にも、承認を得なければならない人の数が多くなってしまいます。もちろん、意見が割れてしまうことも多く、意思決定に時間がかかってしまうのです。
子会社化することによって、承認を得なければならない役員の人数が少なくなり、迅速な意思決定へとつながります。スムーズに進めなければならない案件も多いため、大きなメリットと言えるでしょう。
子会社を設立する3つのデメリット
子会社を設立することによって起こり得るデメリットもあります。デメリットは大きく分けると3つです。
- 設立に時間と手間がかかる
- グループ会社の実態を把握するのが難しくなる
- 不祥事があった場合、会社全体のイメージも悪くなる
ひとつずつ見ていきましょう。
設立するのに時間と手間がかかる
デメリットの1つ目は、設立する際に時間と手間がかかってしまうことです。子会社の設立には、いくつもの手続きが必要になります。法人登記には、多くの必要書類があり、検討すべきことも山積みです。
事前にしっかりスケジュールを立てて、効率良く進めていかなければなりません。また、法人税の確定申告の際には、親会社・子会社それぞれで申告しなければなりませんので気をつけましょう。
グループ全体の実態を把握するのが難しくなる
デメリットの2つ目は、グループ全体の実態を把握するのが難しくなってしまうことです。子会社の数が増えるにつれて、全体の状況を把握するのは困難になってくるでしょう。
売上や利益・損益など「数字」の面では比較的簡単に知ることができますが、職場の環境や従業員同士の不満・スケジュールなどを把握することは難しくなります。
打開策としては、常日頃からグループ間で連携を取り、経営陣同士でのコミュニケーションを図ることが必要です。
不祥事があった場合、会社全体のイメージが悪くなる
3つ目のデメリットは、万が一不祥事やトラブルがあった場合、会社全体のイメージが悪くなる点です。親会社・子会社と分かれていても、同じ企業ですので連帯責任は免れません。
子会社の数が増えるにつれて、そのリスクも大きくなってしまいます。一度ついてしまったイメージはなかなか払拭することができず、信頼回復には多大な時間と労力が必要となるでしょう。
子会社を設立する際に気をつけたい注意点とは?
子会社化を図る際に気をつけるべき注意点についても気になるところです。子会社を設立することで、多くのメリットが得られることがわかりましたが、注意しておきたいポイントを確認しておきましょう。
- 税務調査が厳しくなる可能性がある
- 労使間のトラブルに発展するケースもある
- 「事業目的の同一性」を明確に
それでは解説していきます。
税務調査が厳しくなる可能性がある
注意点のひとつ目は、税務調査についてです。子会社を設立することによって節税対策になるケースを紹介しましたが、その反面、税務署からの調査が厳しくなってしまいます。不当な節税対策を指摘された場合には、否認されることもあるため注意しなければなりません。
利益を誤魔化すために、親会社と子会社の間で仕入れや販売を繰り返すなどした際には、厳しい調査が入ります。ひとつでも不自然な取引を指摘された場合、グループ会社全体の税務調査が行われることとなるのです。
労使間のトラブル
注意点の2つ目は、労使間のトラブルに発展するケースもある点です。親会社が子会社を設立した際に、子会社へと移籍する従業員の勤続年数がリセットされてしまいます。一度「退職扱い」となり、再就職したとみなされてしまうのです。
退職金は、勤続年数によって支払われますので、ここで大きなトラブルに発展するケースも少なくありません。解決策としては「移籍」ではなく「出向」という形を取ることです。出向であれば、勤続年数がリセットされることもないため、正当な退職金を受け取ることができます。
トラブルを未然に防ぐためにも、子会社へ移籍・出向の際には、お互いの意思確認や話し合いが重要です。また、口約束ではなく、契約書などを交わすなどの対応をするようにしましょう。
「事業目的の同一性」を明確にすること
注意点の3つ目は「事業目的の同一性」を明確にすることです。子会社を設立する際には、親会社と事業目的が同じ(重複している部分がある)である必要性があります。親会社の事業目的の一部分が、新しく設立する子会社の事業目的に記載されていなければならないことを覚えておきましょう。
まとめ|子会社設立の目的を明確にし慎重な計画を立てよう
今回の記事では、子会社とはどういうものなのか?設立する上でのメリット・デメリットや注意点、関連会社との違いについて詳しく解説してきました。
会社が拡大して行く中で、子会社設立を検討する機会が増えることは間違いありません。また、子会社化することによって得られるメリットが多いこともわかりましたね。
その一方で、デメリットや注意しなければならないポイントもあるのは事実です。子会社の数が増えていけば、リスクも大きくなることを忘れないようにしましょう。特に、労使間トラブルが起こるケースも多いため、未然に防ぐ対策を練ることが必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。