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農業における事業承継とは?現状と後継者とマッチングする方法などを解説!

最終更新日:2024-06-28
農業 事業承継

高齢化によって農業業界は、後継者不足問題が顕在化している状況にあります。

このような状況を改善すべく「改正農地法」が施行され、大手企業なども参入しやすくなりました。

これにより、農業の事業承継は多様化が進んでいます。この記事では、農業の事業承継の現状やマッチングサイトなどの後継者の探し方を解説していきます。

農業における事業承継とは

近年日本では少子高齢化が進んでおり、農業についてもその影響を受けています。

そのため、事業承継を行う後継者も減少しており、国はその対策として農地法の改正を行い、法人などが農業に参画しやすい環境を整えています。

近年の農業の現状を押さえるべきポイントは「少子高齢化による後継者不足」と「改正農地法によって法人の参入が容易になった」ことの2つです。

それぞれ解説していきます。

少子高齢化による後継者不足

農林水産省が公表している「農業労働力に関する統計」によると、令和5年における普段仕事として自営農業に従事している基幹的農業従事者の人数と平均年齢は、以下のようになっています。

  • 基幹的農業従事者116.4万人
  • うち65歳以上82.3万人
  • 平均年齢68.7歳

(出典:農林水産省「農業労働力に関する統計」から令和5年データ)

平成27年時点で基幹的農業従事者は175.7万人でしたが、減少傾向にあり、令和5年には116.4万人となっています。

また、平成27年時点での平均年齢は67.1歳でしたが、令和5年には68.7歳です。

これらのデータから、基幹的農業従事者の人数は減少し、高齢化が進行していることがわかります。

このような状況の中で、さらに問題なのが後継者不足です。農林水産省が5年ごとに行う農林業センサス2020年のデータによると、農業経営体の約7割が、5年以内に引き継ぎを行える後継者を確保していないという結果が出ています。

改正農地法によって法人の参入が容易になった

国は近年の農業における後継者不足問題を受けて、政府は規制緩和などの様々な対策の実施と推進を行っています。

その1つとして農地法の改正が挙げられ、その施策によって法人の参入が行いやすくなりました。

近年に行われた改正農地法は、以下のとおりです。

  • 平成21年(2009年)農地法改正:農地の権利取得や農地の貸借、農業生産法人要件、農地法の目的などの見直しが行われた
  • 平成27年(2015年)農地法改正:農地を所有できる法人の要件などが見直された
  • 令和元年(2019年)農地法改正:農地集積における支援や事務手続きの簡素化が図られた
  • 令和5年(2023年)農地法改正:農地法第3条許可の面積要件が廃止され、耕作面積要件が不要となった

農地法は元々農業保護のために設けられた法律ですが、後継者不足が深刻化している現在では、その規制が逆に足かせとなる場合があります。

そのため農地法の改正を実施し、規制を緩和することで、農業に参入しやすくしています。

実際、平成21年に施行された農地法の改正によって、株式会社やNPO法人などの農業への参入が大幅に増加しました。

農業の事業承継で引き継ぐもの

農業を事業承継する場合は、主に以下の3つが引き継がれることになります。

  • 事業承継
  • 財産承継
  • 無形財産承継

それぞれ詳しく解説していきます。

事業承継

事業承継は、事業を引き継ぐ後継者に対して経営権を承継することを指します。

農業の場合は、その土地に適した作物栽培の技術や経験とその地域での人間関係などが重要な要素となっており、引き継ぐ後継者選びが大切です。

また事業承継には方法がいくつかあり、具体的には「親族内承継」「親族外承継」「第三者承継(M&A)」などがあります。

財産承継

財産承継は、資金や事業用資産などの有形である資産の承継を指します。

農業における財産は、主に「農地」「工作機械」「畜産動物」「樹木」「借入金」などが対象です。

しかし農業の場合は、自宅と農業の設備が一体化している場合もあり、事業用資産と個人資産をどのように分けるか問題になる場合もあります。

このような事態を防ぐには、事業承継前に法人化を行い、個人資産と事業用資産を分離してから承継することが有効です。

無形財産承継

無形財産承継は、企業が持つ資産と負債の状況を表す貸借対照表に記載されている資産以外の形のない資産を承継することです。

具体的には「経営理念」「ノウハウ」「信用」「知的財産」などが無形財産に該当します。

農業であれば、作物をどのように栽培するかなどや、畜産動物などの飼育管理方法またはそれらを用いて作られた生産物の販路などが知的財産として扱われています。

また地域とのかかわりやビジネスモデルといったものも資産であるため、一見しただけでは価値がわからないものも存在します。

そのため事業を承継する際には、こういった知的資産などを踏まえ後継者に引き継ぐことが重要と言えるでしょう。

農業を事業承継する後継者とマッチングする方法

国は近年の少子高齢化やコロナ禍による後継者不足問題を解決するために、事業承継に対して様々な支援策を実施しています。

そのため農業においても支援策を積極的に活用すると事業承継を進めやすくなります。事業承継をする方法は以下のとおりです。

  • 政府支援策を活用する
  • M&Aのマッチングサイトを利用する
  • M&Aなどの専門家に相談する

それぞれ解説していきます。

政府支援策を活用する

国が行っている事業承継の支援策は主に以下の3つです。

  • 農地などに関係する納税猶予制度や事業承継税制などの税金関係の支援策
  • 経営承継・発展支援事業
  • 農業経営相談所もしくはパンフレット

農地等の納税猶予とは、農業を営んでいた被相続人などから農地を相続した場合、取得した農地価格のうち「農業投資価格」を超える部分に対応する相続税額が猶予される制度です。

農業投資価格とは、毎年更新される農業の収入に見合う農地の価格を国税局長が計算して決定されます。

また猶予された相続税や贈与税は、一定の要件を満たすことによって相続税の納税が免除される制度です。

事業承継税制は、中小企業を対象とした政策で一定要件を満たすことにより、相続税や贈与税の納税が猶予されます。

こちらもさらに一定の要件を満たすことで、納税猶予を受けた相続税や贈与税が免除される制度です。

その他には、農林水産省による経営継承・発展等支援事業の実施や経営承継等に関するパンフレットの発行など、色々な支援事業を実施しています。

事業承継税制については、事業承継税制とは?事業承継や贈与税・相続税の仕組みとメリット・デメリットを解説!にて詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

M&Aのマッチングサイトを利用して後継者を探す

M&Aマッチングサイトとは、オンライン上で事業の譲渡希望者と譲受希望者をマッチングするサービスを提供するサイトです。

M&Aマッチングサイトごとにそれぞれ特色があり、農業を専門としている事業承継のプラットフォームも存在します。

またM&Aの専門家が在籍しており、専門家によるアドバイスを受けられるサービスを提供しているサイトも多く、第三者に承継を考えている場合は有力な選択肢となります。

M&A仲介会社に相談する

事業承継を行う際には、後継者を探すほかにも、資産承継に係る税の問題や法務などの専門知識が必要になります。

そのため事業承継やM&Aの経験が豊富であるM&Aアドバイザーや税理士、会計士などが在籍しているM&A仲介会社に依頼することで、事業承継の手続きを円滑に行えます。

M&A仲介会社は幅広いネットワークを持っているため、後継者を探す場合も、その幅広いネットワークから情報を探すことができます。

農業の事業継承を成功に導くための要点

事業承継を成功させるためには、引継ぎを行う農家と後継者となる新規就農者、双方の協力が必要不可欠です。

お互いの事業承継に関する認識に差異があると、トラブルに発展する可能性があります。

このようなトラブルを避けるために、新規就農者が農業を承継する際に押さえておくべきポイントを解説します。

事業承継後の計画を具体的に決めておく

新規就農者である後継者にとっては、承継する農業で収益をあげられるかどうかは、とても大切な要素です。

せっかく承継しても、収益があげられず廃業してしまっては意味がありません。

そのためそのような失敗を避けるためにも、事前に中長期的な経営計画を具体的に立てる必要があります。

経営計画を作成する際は、譲渡側の農家や専門家などに相談しアドバイスをもらうとより確実です。

農業において大切な情報は「土地の状態」「栽培している作物の種類」「販路」などになります。

譲渡側の農家からこれまでの実績などについて説明してもらい、栽培に必要な知識や計画などを引き継ぐと、より安心できるでしょう。

事業承継後に第三者機関を入れる

後継者探しをする農家にとって、身内以外の第三者に経営移譲をする場合は、土地や事業を売却するだけではありません。

特に土地の所有権などが関係すると農地に関わらずトラブルになってしまう可能性が高くなります。

そのため、このような問題を防ぐために、第三者機関に仲介をしてもらう事も選択肢の1つです。

第三者機関は、後継者や譲渡側と利害関係のない、中立の立場をとれる人物や組織もしくは法律関係者に依頼することが理想です。

こうして仲介が入ることによって、仮にトラブルが起きたとしても安心して対処することが出来ます。

農業を事業継承する際のメリット・デメリット

農業を事業承継するメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

農業を事業承継するメリット

農業を事業継承するメリットは、農業をスムーズに始められることです。

農業に関する知識や技術が不足している場合でも、事業承継を行う事により比較的スムーズに農業を始められます。

その土地や風土の特性を良く知る人から引き継ぐことは大きなメリットです。

その他に、譲渡側がこれまで培ってきた人脈やブランドを活用できる可能性もあります。

人脈やブランドをゼロから築くにはどうしても時間がかかってしまうので、すでに人脈やブランドが存在する場合は、それらを活用することでスムーズに進める事ができます。

農業を事業承継するデメリット

農業を事業継承するデメリットは、どうしても譲渡側を含む関係性を引き継いでしまうことです。

事業承継のメリットを最大限に生かそうとした場合は、周囲との人間関係も引き継ぐ必要があります。

そのため、譲渡側を含め、関係者との人間関係が残ることを覚えておきましょう。

そのほかには、簿外債務と言われる帳簿に反映されていない負債などを引き継いでしまうリスクがあります。

そのため事業譲受の際は、デューデリジェンス(DD)と言われる買収監査を行うのが一般的です。

デューデリジェンスを実施することで事前にリスクがないかどうかを弁護士や会計士などの専門家に依頼して、買収側の立場に立って調査と評価を行います。

デューデリジェンスについて知りたい方は、DD(デューデリジェンス)とは?意味や種類、実施するタイミングについて解説にて詳しく解説しています。

まとめ│農地法改正などで農業の事業承継は増加していく

ここまで農業の事業承継について解説してきました。

現在農業は、少子高齢化などによって後継者不足が問題となっています。そのため国は、農業の事業承継を行いやすいように農地法の改正を進めています。

これにより以前より法人も農業に参入しやすい環境になりつつあります。

農業を事業承継する際は、政府支援策を活用したり、M&AマッチングサイトまたはM&Aの専門家に相談するとよりスムーズに承継が行えるでしょう。

2009年の農地法改正によって法人による参入を全面解禁したことにより、1年当たりの平均参入法人は改正前の約5倍のペースで増加しています。

また2023年に行われた農地法改正によって下限面積要件が撤廃され、個人や農業経営を拡大しようとしている農業者も、小規模な土地から始めやすくなります。

これらのように農地法改正によって、承継のハードルが下がっているため農業の事業承継は、さらに増加していくことが予想されます。

PASONでは、M&Aの仲介・サポートを行っています。PASONには

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というような魅力があります。M&Aを検討している方や疑問やお悩みがある場合は、ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。