店舗の閉店による従業員への対応とは?解雇の種類や条件・注意点について解説!
最終更新日:2024-03-30さまざまな理由から、営業を続けていくことができなくなり、閉店を余儀なくされることもあります。
思うように売上が上がらず、従業員に給料を支払うことができない、または経営者の年齢や健康面の都合によって閉店を検討することもあるかもしれません。
特に飲食店においては、開店してから2年以内に閉店する店が50%を越えています。3年以上、営業を続けられる店舗は全体のわずか3割という数字。
そこで考えなければならないのが「従業員への対応」です。今まで、会社のために頑張って働いてくれた従業員を解雇しなければならないのは、苦渋の決断となるでしょう。
しかし、言いにくいことだからといって、先延ばしにしたりうやむやにするのはトラブルの元になります。誠意を持って、早めに対処しなければなりません。
そこで今回の記事では、店を閉店する際に気をつけなければならない従業員への対応や伝え方、解雇の方法・期限などについて詳しく解説していきます。
お店の閉店によって、従業員への対応に悩んでいる方の参考になると幸いです。
目次
閉店する際に従業員を解雇する3つの方法
何らかの事情で従業員を解雇しなければならなくなった場合、解雇する方法は大きく分けて3つあります。
- 普通解雇
- 懲戒解雇
- 整理解雇
「閉店」に限ったことで言えば「整理解雇」となりますが、それぞれ、どのようなときに適応されるのか確認しておきましょう。
普通解雇
普通解雇とは、労働者の債務不履行が生じた際に使われる解雇方法です。例えば、従業員が毎日遅刻をし、注意を繰り返しても改善されない場合。会社側としては、労働契約をこれ以上続けるのは難しいと判断します。
また、病気や怪我などで、仕事へのパフォーマンスが著しく低下した場合にも、普通解雇が適応されるケースも。それ以外でも、極端に「協調性」に欠けると判断された際や能力不足が目立った際などには、他の従業員へ影響が出てしまうため普通解雇となることもあるでしょう。
懲戒解雇
懲戒解雇とは「懲戒処分」のひとつで、非常に重い処分に当たります。よくテレビのニュースなどで耳にすることがあるはずです。懲戒解雇されるケースは、普通解雇のような「病気」や「能力」などの理由とは異なり「重い違反に対しての制裁」などが挙げられます。
例えば、経歴を誤魔化して入社していたり、横領を行っていることが発覚した場合など。その他にも、無断欠勤が続いている場合やパワハラやセクハラなどのハラスメント行為についても適用されます。
懲戒解雇を言い渡された従業員の退職金は、減額したり支給しないといった方針を取っている企業が多くなっているのが現状です。
整理解雇
整理解雇とは、正確に言えば「普通解雇」の中のひとつとなります。経営していたお店を閉店しなくてはならなくなったときに、人員を整理しなければならないケースで用いられるのが特徴です。
整理解雇を行う場合には、4つの条件がありますので、次の章で詳しく解説していきます。
整理解雇を行うための4つの条件
経営が上手くいかず、やむを得なく閉店を検討する場合、経営者側の都合で簡単に解雇ができるわけではありません。整理解雇を実施するためには、次に説明する4つの条件を満たしているかどうかが鍵となります。
- 人員を整理する必要があるかどうか
- 解雇を回避するための努力をしたかどうか
- 被解雇者を選定する際の合理性
- 解雇手続きは妥当かどうか
順番に確認していきましょう。
人員を整理しなければならない必要があるかどうか
整理解雇を行うためには、人員を整理しなければならないほど追い込まれているのか、といった明確な理由がなければいけません。
「経営者の利益のため」などといった営利目的の理由は認められませんが、経営不振や赤字経営で運営が立ち行かないのであれば、スムーズに認められるでしょう。
解雇を回避するための努力をしたかどうか
2つ目は、なんとか解雇を回避するための努力を怠らなかったかどうかという点です。尽力を尽くしたかどうかも重要ですが、他の方法で回避できた可能性があれば認められない可能性もあります。
例えば、役員報酬を減額したり会社の休業を選択する、または退職希望者を募ってみるなどの対応をしたかどうかも大切です。
何らかの方法で回避できたと判断された場合には、トラブルになったり訴えられることもありますので注意しましょう。
被解雇者を選定する際の合理性
解雇する人を選ぶとき、その人の実力や能力などで判断し、一部の優秀な人材だけ会社に残すと言った方法は認められません。また「正社員だから解雇する」「パートタイマーとアルバイトは残す」などといった差別も禁止です。
しかし、店を閉店させるケースにおいては、雇っている人材全てを解雇することになるので、合理性は認められるでしょう。
解雇手続きは妥当かどうか
4つ目は、解雇の手続きは妥当かどうかという点です。これは、しっかりと時間をかけて従業員の理解を得ることができたかということがポイント。
独壇場で閉店を決めるのではなく、従業員の立場になって話し合いを重ね、納得してもらうことが必要です。
話し合いを怠ってしまうと、閉店後にトラブルに発展することもありますし、閉店前に従業員が退職してしまうケースもありますので注意しましょう。
解雇予告通知書の内容とは?
解雇予告通知書とは、従業員に対して解雇の通知を行う際に必要となる書類です。口頭で解雇の説明をするだけでも、法律的には問題ありません。
しかし、後にトラブルになる可能性もありますので、証拠として残すためにしっかりと予告通知書を作成しましょう。
混同しやすい書類に「解雇通知書」があります。解雇通知書は、事前に予告をせずに解雇を通達するものです。これは、解雇当日であっても問題ありません。
解雇予告通知の期限は「解雇の30日前」までに!
解雇予告通知は、労働基準法の定めによって「解雇の30日前」までに伝えることが義務付けられています。これは、最低30日前までということであり、従業員の今後の生活を考慮すると早めに伝えた方が良いことに間違いありません。
もちろん、長年会社のために一生懸命働いてきてくれた従業員に「閉店」は言いにくいことです。
しかし、しっかりと事情を説明し、納得してもらうことも従業員に対する誠意。仕事をしながらの転職活動には時間もかかりますし、そのサポートをするのも経営者として必要なことです。
万が一「30日前」までに伝えることができなかった場合には「解雇予告手当」を支払わなければならなくなってしまいます。
経営悪化により、負債を抱えている状態で、支出が増えてしまうという結果を招いてしまうのです。解雇予告手当は、30日に満たなかった日数分の平均賃金を受け取ることができる、労働者の権利。
受け取る権利があるのは、正社員に限ったことではなく、契約社員やパート・アルバイトにも適用されます。支払日に関しては、最後の給料と合わせて支給されることが多いのが特徴です。
手続きを行う上での注意点
解雇予告通知など、閉店前に行う手続きや作業について解説してきましたが、閉店後に行う手続きも忘れてはいけません。これは、保険に関するものです。
従業員の多くは「雇用保険」に加入しているケースが多いはず。
この場合には「公共職業安定所」「日本年金機構」「労働基準監督署」に書類を提出しなければなりません。それぞれに「提出期限」が設けられておりますので、しっかり期限内に提出するようにしましょう。
働く側は最後まで残るべき!その理由とは?
もしもあなたが、自分の働いているお店が閉店することになり、解雇を言い渡されたとします。このとき「就職活動に時間がかかりそうだし、早めに辞めた方が良さそう」と考えてしまうかもしれません。
しかし、安易な考えで退職を急いでしまうと、後々不利になることも多いので注意が必要です。例えば「失業手当」。
自己退職の場合は、失業手当を受給するまでに、3ヶ月以上の期間を要してしまいます。これが「待機時間」です。すぐに次の就職先が決まらなかった場合には、収入を確保することができなくなってしまいます。
その一方で、会社都合による「整理解雇」であれば、手当の支給までわずか1週間。もしも、就職活動がスムーズに進まなかったときでも、ある一定期間の生活費は工面することが可能となります。
給付される金額や日数においても、大きな影響を及ぼしますので、閉店が決まった後もしっかり最後まで働くことが得策と言えるでしょう。
まとめ|閉店が決まったら従業員に早めの対応をするのが鍵
今回の記事では、店舗の閉店による従業員への対応について詳しく解説してきました。従業員への説明は、閉店が決まってすぐに行うことが大切だと言うことが分かりましたね。
言いにくいことでも、早めに対処することで、説得の時間も確保できますし誠意を示すことにもつながります。
しかし、閉店を検討する際にはまず「それ以外に方法はないのか?」を考えてみましょう。閉店であれば、従業員を解雇することとなり、負債を抱えている状態であれば借金だけが残ってしまいます。
一方M&Aなら、買い手企業が見つかれば、従業員の雇用も守ることができますし売却益を得ることも可能です。
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最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。