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M&A 事例・コラム

事業承継の対策で不動産は有効活用できるのか?注意点も解説!

最終更新日:2024-03-30
事業承継 不動産

自分が引退した後も、大切な会社をこのまま残していきたいとお考えの経営者も多いのではないでしょうか。信頼できる後継者に今後を託し、引退後も会社の成長を見守っていきたいはずです。

しかし、後継者不足の問題が深刻となっており、会社の存続自体に不安を抱えている方も多いでしょう。また、不動産を継承することによって、後継者に大きな負担を与えてしまう可能性がある点や税金についても注意が必要です。

そこで本記事では、不動産を活用した事業承継対策についてや注意点について詳しく解説していきます。

そもそも事業承継とは?

そもそも、事業承継とはどのようなものなのでしょうか。事業承継とは、現時点の経営者から後継者に事業を引き継ぐことを表した言葉です。

経営者には「定年退職」の年齢が定められていません。会社員であれば、それぞれの企業で定められたルールに基づき退職する年齢が決まっています。その多くは「60歳」または「65歳」であることが一般的です。

しかし経営者の場合、次の世代に会社を引き継ぐタイミングは「自己判断」となるケースが多いため、事業承継の検討を始める時期が遅れてしまうことが多くなります。対策遅れが原因となって、後継者を見つけられない企業が増えているのが現状です。

また、少子化問題や事業の将来性が不安な点なども、後継者不足に拍車をかけている要因と言えるでしょう。

事業承継は、大きく分けて3つの方法があります。

  • 親族内承継
  • 親族外承継
  • M&A(親族外承継のひとつ)

親族内承継とは、自分の息子や娘・兄弟などに会社経営を引き継いでもらう方法です。

早い段階から事業承継の準備や育成に取り組むことができることや、会社内からの理解を得やすいなどのメリットがあります。古くから、中小企業において、最もメジャーな事業承継の方法として数多く行われてきました。

親族外承継とは、親族以外の第三者に経営を引き継ぐ方法です。主に会社の従業員や役員への継承が一般的となっています。役員や従業員に事業承継を行うメリットとして挙げられるのが、後継者候補の選択肢の幅が広がる点や業務に深く精通しているため、引継ぎがしやすいことなどです。

親族・会社内に後継者候補が見つからなかった場合などに選択される方法が「M&A」となります。親族外承継の一部であり、近年増加している事業承継の方法のひとつです。

M&Aの大きなメリットは、適切な後継者が見つからなかった場合でも「会社存続」が可能となり、従業員の雇用を守ることができます。それだけでなく、企業を売却することとなるため、まとまった「売却益」を手にすることが可能です。

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事業承継するときの不動産の取り扱いとは?

事業承継の際に、その不動産の持ち主が「会社」なのか「経営者」なのかによって、取り扱いが異なります。それぞれのケースについて、確認していきましょう。

会社保有の不動産

会社が保有している不動産に関しては、事業承継が行われた場合、相続が行われたり贈与されるということはありません。

ただし、会社保有の不動産があるときには、自社株の評価が事業承継に影響を与えることも多いので注意が必要です。

経営者が保有している不動産

経営者が保有している不動産には、個人で使用するものと事業で使用するものがあるはずです。

事業で使用する不動産の中には「駐車場」や「事務所」「土地」や「工場」などが挙げられます。経営者が保有している不動産は、事業承継の際に後継者に受け渡すことが多いものです。

しかし、経営者の親族が「贈与」を申し出るケースもあるため、後継者と経営者の親族間でトラブルに発展してしまう可能性も。経営者保有の不動産がある場合には、親族間での話し合いを事前に行うことが大切です。

不動産を活用した事業承継対策

続いて、不動産を有効活用した事業承継対策について解説していきます。不動産を活用できる対策は、大きく分けて3つです。

  • 不動産の購入
  • 不動産評価の見直しによる節税対策
  • 生命保険の活用

順番に確認していきましょう。

不動産の購入

ひとつ目は、不動産の購入です。事業承継を検討した際に、事前に不動産を購入しておくことで自社株の評価や財産を引き下げに有効なケースもあります。

これは、土地の評価額が、実際に購入した値段の70%〜80%程度となるのが一般的だからです。例えば、5,000万円で土地(建物)を購入した場合、この土地の評価は3,500万円程になるケースもあります。

これによって、現金で「5,000万円」保有している場合より、土地の評価額が下回っているため自社株の評価や財産の評価が減少することもあるでしょう。

不動産評価の見直しにおける節税対策

不動産には「評価額」というものが存在しています。

立地や利便性の良い地域にある不動産は、資産価値が高くなるのが一般的です。その一方で、購入したときよりも、資産価値が下がってしまう不動産も少なくありません。

立地だけではなく、土地の形状が使いづらい場合にも、評価額が下がる傾向があります。評価額が下がると同時に、自社株の評価や所有財産の評価額が低下することになりますので、税負担の軽減にもつながるでしょう。

生命保険を活用する

3つ目は、生命保険を活用する方法です。事業承継で不動産を継承する場合には、資金対策として有効になります。

会社の資金繰りが悪化したときに、事業で使用している不動産を売却して、資金を調達するのは難しいはずです。会社経営を続けていく上で、使用しなければならない不動産は手放すことができません。

後継者.または会社を受取人として生命保険に加入し、前経営者が亡くなったときに保険金を受け取ることができればさまざまな税金の支払いに活用することができます。また、株式取得の資金に充てることも可能です。

事業承継対策として不動産購入する場合の注意点

最後に、事業承継対策として不動産を購入する場合に気をつけなければならない注意点を紹介します。ポイントは大きく分けて2つです。

  • 土地・建物の価格は変動すること
  • 購入時の「借り入れ」は後継者に引き継がれること

ひとつずつ確認していきましょう。

土地・建物の価格は変動すること

不動産を有効活用した事業承継対策として注意すべきポイント1つ目は、不動産の価格が大幅に変動してしまう可能性もある点です。自社株の評価や所得財産を低くするために不動産を購入した場合、土地の評価が一気に高まり、総資産も高くなる恐れがあります。その分、必要な税金も高額になるのです。

その一方で、不動産評価が突然大幅に下落する可能性もあります。この場合、不動産購入によって得られる効果よりも、不動産価格の下落によって被る損失が大きくなることも。

事業承継対策で不動産購入を検討する際には、価格変動に十分注意するようにしましょう。

購入時の「借り入れ」は後継者に引き継がれること

事業承継対策で不動産を購入する際の注意点の2つ目は、購入時の「借り入れ」は、そのまま後継者に引き継がれてしまうことです。

金融機関などからの借り入れは、節税効果につながる一方で、後継者にとって大きな負担となるケースもあります。後継者不足が深刻化している要因のひとつともいえる「借り入れ」の引き継ぎは、事前の話し合いが大切です。

まとめ|不動産は事業承継対策としても有効活用できる

本記事では、不動産を有効活用した事業承継対策や注意点について詳しく解説してきました。

不動産は、会社の資産の中でも大きな割合を占めるものとなりますので、取り扱いが難しい資産のひとつです。不動産を上手に活用することで、事業承継対策にも有効であることがわかりましたね。

しかし、不動産を購入するときには注意すべきポイントもあります。

購入後に大きく価格が変動してしまった場合には、受けられるメリットに比べて会社の損失が大きくなる恐れも。また、金融機関などからの「借り入れ額」は、後継者に引き継がれてしまうため敬遠する後継者が多いのも事実です。

事業承継を円滑に進めるためには、事前の話し合いが重要となります。早い段階から、後継者と話し合いを重ね、スムーズに引き継ぎができるように取り組みましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。