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与信の意味とは?与信管理の重要性やプロセス・注意点を徹底解説!

最終更新日:2024-02-27
与信 意味

会社経営を行っている際に、取引先との間で「与信取引」が行われるケースもあるかもしれません。また、企業において「与信管理」が非常に重要であることに直面する機会もあるでしょう。

企業間の取引は、頻繁に発生することとなるため、その都度現金の受け渡しをするのは効率的に問題があります。その際に用いられるのが「与信取引」です。

しかし「そもそも与信とはどのような意味なのか」「与信取引で注意すべきポイントはあるのだろうか」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

そこで本記事では、与信の意味や与信管理の重要性、プロセスや注意点などについて詳しく解説していきます。

与信の意味とは?

そもそも「与信」とは、相手に「信用」を与えることを意味しています。事業活動の際に用いられる場合には「取引先相手に信用を与えること」となるのです。

企業取引の際には、その場で代金のやり取りが発生することは少なく、商品・サービスの代金は後から請求することが多くなっています。このとき、もしも後から回収できると思っていた代金が「貸倒れ」してしまったらどうでしょうか?

売上を受け取ることができなくなるのはもちろん、取引先との信頼関係も一瞬で破綻してしまい、今後取引を続けていくのは難しくなります。これは、相手企業にも同じことが言えるのです。

不確かであるにも関わらず、企業間で「後払い」が行われる理由は「両社に確固たる信頼関係があるから」と言えるでしょう。リスクを伴いながらも、このように「後から代金を支払う」ことを「与信取引」または「信用取引」といいます。

与信管理の意味とは?

会社を経営していく上で「与信管理」が重要であると耳にすることが多いはずです。それでは「与信管理」とは、一体どのような意味なのでしょうか。

与信管理とは、企業間で行われる取引先との代金のやり取りの中で、売掛金が回収不能となってしまうリスクを適切に管理することを表した言葉です。

与信管理を疎かにしてしまうと、売掛金の回収ができずに、不良債権が生じてしまう恐れもあります。取引先の経営状況は日々変化していくものです。与信管理をしっかりと行って、取引先にはどれくらいの支払い能力があるのか、また未回収分がどの程度までなら許容できる範囲なのかを見極めることが大切になるでしょう。

与信管理の重要性

続いては、企業取引で非常に大切になる「与信管理の重要性」について確認していきます。ポイントは大きく分けて3つです。

  • 貸倒れによる損失を避けて利益を確保する
  • 連鎖倒産を防止すること
  • 資金繰り対策

順番に見ていきましょう。

貸倒れによる損失を避けて利益を確保する

1つ目は、貸倒れによる損失を避けながら利益を確保していくことです。もしも、売掛金を回収できずに不良債権となってしまった場合、帳簿には「貸倒れ損失」として計上されることとなります。

それまで、会社経営が順調に進んでいたとしても「債券の金額」によっては、赤字に転落してしまう恐れもあるのです。貸倒れ損失とは、売掛金の回収が不可能であると判断した際のみ、適用されます。

日常的に与信管理を行うことによって、取引先の財務状況や信用力を評価し、売掛金の管理を徹底するようにしましょう。

連鎖倒産を防止すること

2つ目は、連鎖倒産を防止することです。そもそも「連鎖倒産」とは、取引先から未払いだった不良債権の額が大きくなり、自社の資金繰りも悪化して共倒れとなってしまうことを指しています。

大口の取引先であるほど、自社に与える影響は大きなものとなるのです。例えば、取引先の数が1社や2社など集中している場合には注意しなければなりません。取引先の倒産によって、自社にも多大なダメージが予測できます。

与信管理をしっかりと行い、取引先の動向や業績には十分に注意を払いましょう。早い段階でリスクを察知することがポイントとなります。

資金繰りの対策として行う

売掛金の管理を徹底し、資金繰りをスムーズに行うことも、与信管理には重要なことです。売上は好調であっても倒産してしまうケースがあり、これを「黒字倒産」といいます。

黒字倒産の主な原因は、取引先から売掛金を回収できないことによるものです。

資金繰りをスムーズに行うためには、仕入先への支払いと売上のバランスを保つことが大切になります。売掛金の回収は、自社にとって「仕入先への支払い」にもつながりますので、与信管理の強化を徹底するようにしましょう。

与信管理のプロセスとは?

ここからは、与信管理を行う際のプロセスについて解説していきます。プロセスは、大きく分けると4つです。

  • 取引先の与信調査を行う
  • 調査した結果をもとに信用力を判断する
  • 信用限度額の設定と申請を行う
  • 契約後は管理の徹底に努める

ひとつずつ確認していきましょう。

取引先の与信調査を行う

1つ目は、取引先の与信調査を行うことです。取引先に、どのくらいの信用力があるのかを計るためには、与信調査を欠かすことはできません。

  • 内部調査
  • 外部調査
  • 直接調査
  • 依頼調査

調査方法には、上記の4つがあります。

内部調査は、営業部門や現場担当・経理担当などから全ての情報を確認しながら行うものです。過去に取引がある場合には、必ず社内に「資料」や「履歴」が残っています。全てを洗い出し、あらゆる情報をくまなくチェック。担当者からのヒアリングも重要なポイントです。また、営業担当者がいる場合には、取引先の現状を把握しやすくなるでしょう。

外部調査は、取引先以外からの情報を集める方法です。WEBサイトのホームページから決算の記録やIR情報を入手したり、関係取引先から助言をもらうことも。また、法務局などから、商業登記簿や不動産登記簿を取得することもあります。

直接調査とは、取引先に電話をかけて情報を得たり、直接訪問することです。メールやFAXで、相手企業の従業員に、アンケートを取るなどの方法もあります。訪問することによって、取引先の状況を実際に確認できるというメリットがありますが、相手に嫌悪感や不信感を与えてしまう恐れもありますので注意が必要です。

最後に依頼調査とは、企業調査を専門としている会社に調査を依頼して、取引先について調べてもらう方法になります。費用はかかりますが、確実性があり、効率的にも優れているのが特徴です。取引先の調査に、人員や時間を割くことなく、業務を遂行できるのもメリットと言えるでしょう。自社で調べるのは限界があり、詳細を掴みきれないケースも多くなります。専門家に委託することで、信ぴょう性の高い結果を得ることができるのです。

調査した結果から信用力を判断する

取引先の与信調査が完了したら、結果に基づいて信用力を判断していきます。この時「定量」「定性」「商流」の3つのポイントから判断し、評価を決定するのです。

定量は「資本金」「自己資本金比率」「売上高」「利益率」「従業員数」などの、数値で測ることができる指標となります。

定性は「社内の雰囲気」「経営者の影響力」「同業者からの評判」など、数値で表すことはできませんが、非常に重要な役割を果たす指標です。

商流は「売買取引」「需要者」「決済条件」「仕入先」など、商売(経営)におけるすべての状況を分析した指標となります。

信用限度額の設定と申請を行う

与信取引によるリスクを最小限に抑えるためにも、それぞれの取引先ごとに、売掛金の限度額を設定しておくことが重要なポイントです。

どれだけお世話になっている取引先や、昔からの付き合いがある取引先であっても、設定した限度額を超える取引は行わないというルールを徹底しましょう。

設定する限度額は、与信調査の結果によって判断します。

契約後は管理の徹底に努める

それぞれの取引先の限度額を設定できれば、その条件で問題がないか、交渉にうつります。相手の担当者が合意した際には、契約が締結されることとなるのです。

契約後は、売掛金の回収の管理を徹底しなければなりません。期日をしっかりと守って、請求書の発行を行いましょう。万が一、期日までに支払いがなかった場合には、催促する必要があります。

また、契約が終わったからといって安心できるわけではありません。企業の経営状況は、日々刻々と変化します。契約後も引き続き、定期的に調査を行うなどの対策を取ることがおすすめです。

与信管理で注意すべきポイントとは?

最後に、与信管理において注意すべきポイントについて解説していきます。注意点は大きく分けて2つです。

  • 現場の社員と連携を取る
  • 与信調査の範囲やコストを考慮する

順番に見ていきましょう。

現場の社員と連携を取る

注意点の1つ目は、現場社員との連携を欠かさないことです。とくに「営業部門」がある会社であれば、密に連携を取るようにしましょう。営業部は、取引先の情報をいち早くキャッチすることができます。

日頃から取引先と交流のある現場社員と連携を取ることは、与信管理において非常に重要となります。実際に、売掛金の回収ができなかった際には、現場社員が取引先との交渉を行うケースもあるのです。

タイムリーな情報を得られるのは、営業担当者や現場社員となりますので、情報収集を徹底するようにしましょう。

与信調査の範囲やコストを考慮する

与信調査の範囲やコストを事前に決めておくことも大切になります。例えば、依頼調査をする際には、専門家に対してまとまった費用を支払うことになるのです。相手企業との取引金額が「100万円」程度の場合、調査費用に「100万円」かかってしまうと、非常に効率が悪くなります。

また、調べる範囲が広範囲に及ぶと、それだけ費用や時間も必要になります。与信調査を行う前に、あらかじめ「範囲」と「費用の上限」を決定しておくことで、スムーズに進めることができるでしょう。

まとめ|与信管理は利益を確保するために重要な役割を果たす

本記事では、与信の意味や与信管理の重要性、プロセスや注意点などについて詳しく解説してきました。企業がリスクを最小限に抑えて経営を続けていくためには、与信管理が非常に重要なポイントとなることがわかりましたね。

与信管理を徹底することで、貸倒れによる損失を避けたり連鎖倒産を防止することにつながります。また、黒字倒産を回避する際にも有効です。

しかし、与信管理に力を入れるために、コスト面や調査範囲を曖昧にしてしまうと効率が悪くなることもあるので注意しなければなりません。現場社員との連携を図り、コストや調査範囲も十分に考慮して、与信調査を進めていくようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。