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コーポレートガバナンスの意味とは?内部統制との違いや強化方法を解説!

最終更新日:2024-03-07
コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスという言葉を耳にしたことはあるでしょうか。日本語では「企業統治」を指した言葉になっています。

会社内の不正や不祥事を未然に防ぎ、正確で公正な判断ができるよう、監視や統制を行うための仕組みを表すものです。

似た意味を持つ言葉に「内部統制」がありますが、どういった違いがあるのでしょうか。また、コーポレートガバナンスを強化するために必要なことや課題点・問題点なども気になるところです。

そこで本記事では、コーポレートガバナンスの意味や内部統制との違い、目的や課題点などについて詳しく解説していきます。

「自分たちの会社には、必要な取り組みだろうか」「強化方法が知りたい」とお悩みの方の参考になると幸いです。

コーポレートガバナンスの意味とは?

コーポレートガバナンス(Corporate Governance)とは「組織の不正や不祥事を防いで、企業の経営において公正な判断・運営がなされるように監視・統制する仕組み」のことです。日本語では「企業統治」を表しています。

元々、米国を中心に取り入れられていましたが、近年では日本国内においても、非常に重要視されるようになりました。

どれだけ知名度や売上のある会社であっても、たったひとつの不祥事が発覚すれば、一気に経営が傾いてしまうケースも少なくありません。

日本企業においても、バブルが崩壊して以降、不正や不祥事が増加傾向にあるため必要性が高まったと言えます。

従業員だけでなく、株主の利益を守るためにも、必要不可欠な仕組みと言えるでしょう。

コーポレートガバナンスと内部統制の違いとは?

コーポレートガバナンスと似た意味を持つ言葉に「内部統制」があります。この2つの言葉の違いや共通点は、どのようなところでしょうか。

コーポレートガバナンスと内部統制に共通して言えることは、どちらも「健全な経営を行うために守らなければならないルールや仕組み」であることです。

両者の異なる点は、下記のようになります。

内部統制:経営者が、従業員を管理・監督するための仕組みであり「経営者」には着目していない。

コーポレートガバナンス:株主や顧客などが、経営者の不正や不祥事を防ぐことに重点を置いている。

このように、両者は「誰が誰に対して監視を行っているものなのか」が大きな違いとなっています。内部統制については、内部統制の意味とは?4つの目的や6つの要素・5つのメリットについて詳しく解説!の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

コーポレートガバナンスを行う目的とは?

続いて、なぜコーポレートガバナンスが必要なのかについて見ていきましょう。コーポレートガバナンスの主な目的は次の3つです。

  • 企業における透明性を確保し、不正や不祥事を未然に防ぐ
  • ステークホルダーの権利や立場を尊重する
  • 中長期的企業価値の向上

ひとつずつ確認していきましょう。

透明性を確保し不正を未然に防ぐ

ひとつ目の目的は、企業の透明性を確保して、不正や不祥事を未然に防ぐことです。コーポレートガバナンスを行うことで、経営状態や財務状況を正確に管理することはもちろん、リスク管理も同時に行うことができます。

コーポレートガバナンスを積極的に取り組むことによって、経営における透明性が高まり、会社内の不正を未然に防ぐことにもつながるでしょう。

ステークホルダーの権利や立場を尊重する

2つ目の目的は、ステークホルダーの権利や立場を尊重することです。そもそも「ステークホルダー」とは、株主や経営者・従業員や取引先など、企業に関わるあらゆる利害関係者のことを表した言葉となっています。

企業は、経営していく上で、株主をはじめとする投資家や取引先などに「利益」をもたらす責任が課せられています。

コーポレートガバナンスを実施することによって、クリーンな経営を株主や投資家などにアピールすることが可能となり、ステークホルダーとの関係性を良好に保つことができるのです。

中長期的企業価値の向上

コーポレートガバナンスの効果、3つ目は「中長期的企業価値の向上」が挙げられます。これは、株主や投資家などに、透明性の高い経営を知ってもらうことで信頼と安心感を与えることができるのです。

会社を大きくしていくためには、新しい試みにチャレンジしたり新たな人材を獲得しなければならない場面も出てきます。そこで必ず必要になるのが「資金」です。

透明性の高い経営を続けていくことで、投資家などから高い評価を得られるため、出資してもらえるケースが増えるでしょう。

コーポレートガバナンスの問題点・課題点とは?

企業の透明性が高まり、不正や不祥事などを未然に防ぐ役割を果たしてくれるコーポレートガバナンスですが、問題点もあります。

  • 意思決定が遅くなること
  • 社内体制を整えるのにコストがかかること
  • 人材が不足していること

順番に見ていきましょう。

意思決定が遅くなること

ひとつ目の問題点は、意思決定が遅くなってしまう点です。不正や不祥事を未然に防ぐ目的として、外部監査を実施することも多く、それによって経営の意思決定が遅れるケースもあります。

監査をスムーズに完了させるために、財務状況はもちろん、コンプライアンスにも注意を払わなければなりません。スピーディーに進めたい事業計画がある場合にも、慎重にならざるを得なくなってしまうのです。

慎重になるあまり、会社の成長が思ったように進まないこともあるでしょう。

社内体制を整えるのにコストがかかる

コーポレートガバナンスの仕組みを整えるためには、上記で解説した通り「外部監査」を実施したり、内部体制の強化を図るなどの取り組みが必要です。

それぞれの体制を強化し、形にするためには、大きなコストと時間がかかります。また、体制を整えても、すぐに結果に繋がったり効果を実感できるものでもありません。

コーポレートガバナンスによる効果はさまざまで、非常に大きなものですが、体制を整えるためにはコストと時間を十分に確保しなければならないでしょう。

人材が不足していること

3つ目の課題点は、人材が不足していることです。コーポレートガバナンスの仕組みを強化するためには、社外取締役や社外監査役に適した人材を整備しなければなりません。

社外取締役や社外監査役は、非常に多くの専門知識が必要です。なかなか適任者が見つからず、時間がかかってしまうケースも少なくありません。

コーポレートガバナンスを強化する4つの方法

ここからは、会社経営において重要となる「コーポレートガバナンス」を強化するための4つの方法について解説していきます。

  • 内部統制の構築と強化を図る
  • 社外監査役や社外取締役・委員会を設置する
  • 執行役員制度を導入する
  • 社内規定を明確化する

ひとつずつ確認していきましょう。

内部統制の構築と強化を図る

ひとつ目の方法は、内部統制の構築と強化を図ることです。ステークホルダーに対する、透明性のある情報開示や財務状況の報告などには、内部統制に力を入れることは欠かせません。

内部統制の構築と強化を進めるためには、日々の業務の中で不正や背任行為がないよう、しっかりと監視体制を整える必要があります。会社内の不祥事を未然に防ぐことで、コーポレートガバナンスの土台作りにつながるでしょう。

社外監査役や社外取締役・委員会を設置する

2つ目の強化方法は、社外監査役や社外取締役・委員会を設置することです。どれだけ会社内で、健全な経営を目指した場合でも、第三者からの目がなければ企業や経営陣の不正を防止するのは難しいでしょう。

社外取締役や社外取締役を設置して、両者だけが参加できる委員会を設置することで、会社外からの監視体制を強化することが大切です。

執行役員制度を導入する

強化方法の3つ目は、執行役員制度を導入することです。執行役員とは、業務執行において最も重要な役割を果たし、取締役とは別に選任されます。

執行役員制度を導入することによって、取締役の負担を軽減するだけでなく、監視業務の強化をすることが可能となるのです。

社内規定を明確化する

4つ目の強化方法は、社内規定を明確化することになります。企業の透明性は、ステークホルダーだけに対して示すものではありません。社内の従業員や関係者に対しても、積極的に浸透させることが重要です。

従業員は、意思決定や業務を行う過程で「判断基準」を明確にし、社内ルールに従う必要があります。従業員全体の意識をまとめることも、コーポレートガバナンスの強化には欠かせないものと言えるでしょう。

まとめ|コーポレートガバナンスの強化で透明性の高い経営を行おう

本記事では、コーポレートガバナンスとはどのような意味なのか、内部統制との違いや課題点・強化方法について詳しく解説してきました。

ステークホルダーとの関係を築き、会社全体のイメージや価値を高めていくためにも、コーポレートガバナンスは非常に重要なものです。透明性の高い経営を続けることで、結果的に企業の成長・拡大につながっていきます。

上場企業にとって必要不可欠な取り組みであることはもちろん、非上場企業においても、今後の企業発展のために取り入れていくべきでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。