リストラクチャリングの意味とは?リストラとの違いや方法・事例などを解説!
最終更新日:2024-04-08リストラクチャリングは、組織に変化をもたらし企業が持続的に成長するために行う手段の一つです。
リストラとも呼ばれ、日本においては解雇を指し示すことの多いリストラクチャリングですが、本来のは再構築という意味の言葉です。
この記事では、リストラクチャリングの方法やメリット・デメリット、事例などを解説していきます。
目次
リストラクチャリングの意味とは?
リストラクチャリング(Restructuring)とは、政治や経済、社会全体などを根本的に再構築するという意味です。
ビジネスや経営においては、企業の改革や事業の再構築を通して企業の価値を高める事を指します。
これは主に収益性や成長性の低い不採算事業を整理して、収益をよりあげられる事業にリソースを集めて、会社の収益構造そのものを改革していく事です。
これを行う場合は、自社の経営部門で進めたり、外部の専門家から助言を受けながら進めたりする場合があります。
リストラとの違い
リストラは、リストラクチャリングを略した言葉です。
しかし日本では、解雇を意味する言葉として用いられています。これはバブル崩壊後の人員整理などにより、このような意味が定着してしまいネガティブな印象の言葉となっています。
そのため、もともとの意味である再構築という意味合いで使われる事は稀です。
リエンジニアリングとの違い
また似たような言葉としてリエンジニアリングというものがあります。
これは、リストラクチャリングよりもう少しミクロな視点のものです。
事業が不採算である原因かを検証し業務プロセスや管理体制などを見直す事がリエンジニアリングで、不採算事業があれば事業そのものを整理するのがリストラクチャリングです。
リストラクチャリングの方法
具体的にリストラクチャリングの方法について解説します。これにはいくつかあり、状況に応じて方法を選択する必要があります。リストラクチャリングの方法は以下の通りです。
- 財務リストラクチャリング
- 事業リストラクチャリング
- 業務リストラクチャリング
- M&Aによる買収
上記の方法についてそれぞれ解説していきます。
財務リストラクチャリング
財務ストラクチャリングは、キャッシュフローと言われる企業の活動で得た収益から支出を差し引いた金額を改善することが目的です。
財務諸表の1つである貸借対照表に借方で資産、貸方に負債と純資産が記載されているため、その各数値の見直しを行います。財務リストラクチャリングには、以下の3種類があります。
- 資産リストラクチャリング – 不要な不動産の売却や有価証券を売却して現金にするなど
- 負債リストラクチャリング – 債権放棄をしたりリスケを行い負債利子の条件緩和をするなど
- 純資産リストラクチャリング – ファンドやスポンサーに出資を募ったり債務の株式化をするなど
また財務ストラクチャリングを行う場合は、会計や財務に対する高度な知識が必要です。そのため専門家である公認会計士や税理士などに依頼することが一般的です。
事業リストラクチャリング
全社的に不採算事業の整理や見直しを行って、社内の人材やリソースをその他の成長の可能性がある分野に集中させて、企業の構造を変える方法です。
様々な事業を行っているような企業の場合は、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM:Product Portfolio Management)という分析を行います。
これは市場の成長性と市場における自社のシェアの2つを軸に、各事業の規模の大きさを示す円でプロットする事で事業利益を上げる難易度や、追加投資の必要性を明らかにできます。
このPPMは以下の4つの象限に分けられます。
- 問題児 – 市場の成長性は高いがシェアが低い(市場シェアを高めるべき分野)
- 花形 – 市場の成長性が高くシェアも高い(今後も投資を継続し金のなる木を目指す分野)
- 金のなる木 – 市場の成長性は低いがシェアが高い(ここで稼ぎその利益をほかの分野に回す分野)
- 負け犬 – 私情の成長性が高いがシェアが低い素早く撤退を検討するべき分野)
上記のように分けられ、その上で評価を行います。
業務リストラクチャリング
これは事業内容を改善して売上や利益を増やす事を目的として行うものです。
具体的には、市場調査を実施し顧客のニーズを踏まえて商品開発を行ったり、経費削減を行ったりします。
また人件費の削減としてリストラも存在しますが、正当な理由なく解雇することは違法になるため専門家の助言を受けながら行うことが一般的です。
M&Aによる買収
M&Aによる買収もリストラクチャリングの方法の一つです。
M&Aでは、今行っている事業と相乗効果(シナジー)が期待できる事業を買収することで業績の回復を図ります。または不採算事業を売却する場合も存在します。
この場合はM&Aを実施することにより事業改革を行いながら資金を得ることが可能です。
M&Aリストラクチャリングは、事業の買収と売却どちらも考えられるため、会社の経営状況や市場の分析などを鑑みて検討を行う必要があるでしょう。
リストラクチャリングのメリット
リストラクチャリングを行うメリットはいくつかあります。ここではそれぞれについて解説していきます。
利益率を改善できる
リストラクチャリングのメリットは、事業リストラクチャリングで不採算事業の売却を行ったり、解雇などで人件費を削減したりすることで、会社全体の利益率の改善を図ることが出来る点です。
利益率のがいい事業に人材とリソースを集中できる
事業リストラクチャリングを実施すると、不採算の事業に使っていた人員やリソースを収益率が良い事業に集める事ができます。
その他M&Aリストラクチャリングなどにより獲得した資金を収益率が良い事業に投入することで、その事業の拡大を図る事ができます。
このようにリストラクチャリングにより事業の再構築を進めて人員やリソースを更に有効活用できる事がメリットです。
一方でリストラクチャリングにはリスクも存在するため、慎重に検討して実施することが重要です。
負債による負荷が軽減できる
負債リストラクチャリングを実施した場合、負債によってかかる負荷が軽減でき財務の健全化が行えます。
それにより企業も健全に成長していく事ができるようになる点がメリットです。
リストラクチャリングのデメリット
続いてリストラクチャリングのデメリットを解説していきます。
従業員のモチベーションが低下する
リストラクチャリングを実施すると従業員の配置転換が行われたり、人員整理などを行ったりする可能性があります。
そのため会社に自分も人員整理でリストラされるかもしれないと言った不安が伝播していく可能性があります。
このような不安によってモチベーションが低下してしまう可能性があるのがデメリットです。
将来性を見誤る可能性がある
企業は、新規事業を立ち上げて発展を目指していく事が一般的です。
しかしその事業の収益が安定しだすまでには、長い時間が必要になります。
そのため収益がまだ安定してない段階で事業ストラクチャリングを行ってしまうと、将来性があるにもかかわらず収益性が悪いという観点のみでその事業のリソースをほかに回されたり、その事業を売却してしまったりする可能性がある点がデメリットです。
そのため短期的な視点での改革を行う事も大切ですが、今後の成長性や市場の動向などを慎重に調査し中長期的な視点での評価を加えた上で検討することが大切と言えるでしょう。
リストラクチャリングの事例
ここからは、リストラクチャリングを実行した以下の事例について紹介していきます。
- パナソニック
- 東芝
- ソニー
- 日本航空
上記の事例をそれぞれ紹介していきます。
パナソニック
日本におけるリストラクチャリングの有名な事例としてパナソニックの事例があります。
大手メーカーであるパナソニックは、2012年、2013年の2年連続で7500億円以上の赤字を出してしまいました。それをきっかけとしてリストラクチャリングを実施して以下のような改善を行いました。
- テレビ事業の縮小(海外主力工場の閉鎖とディスプレイ開発からの撤退)
- 半導体事業の縮小(工場の売却)
- 住宅関連事業への注力
- 自動車関連事業への注力
上記の改善を行い、利益率の低かった事業の縮小を行い、その分のリソースを利益率の良い分野に投資します。
そうして縮小だけにとどまらず、調子のいい分野への投資も行い、理想的な事業の再構築を実施しました。その結果経営状況を改善することに成功しました。
東芝
東芝は2016年3月の業績予想において、営業損失3400億円、純損失5500億円であることを発表しました。
それにより従業員を1万人削減したり海外向け製品の開発・販売からの撤退を行いました。これにより、大きな赤字になる事態を回避しました。
ソニー
ソニーはここ数年で、スマホ事業のリストラクチャリングを進めています。
採算の取れない地域からの撤退や人員削減を実施して事業規模の縮小を図りランニングコストを下げています。これにより赤字の状態から黒字化をすることに成功しました。
日本航空
日本航空は、フラッグ・キャリアつまりその国を代表する一番知名度の高い航空会社です。
しかし保有機の大半が大型機であり、それが原因で座席の供給が過剰な状態が続いていました。
また就航都市に展開しているホテルチェーンの赤字や労使問題、不採算路線などが原因で長年厳しい経営状態でした。
このような状況に更に追い打ちをかけるかのように2008年にリーマンショックが起き、世界の航空需要が大きく低下し、2010年に経営破綻を起こします。
こうした状況から企業再生支援機構によって経営の立て直しが行われました。
会社更生法の適用によって金融機関の債権が9割放棄され、企業再生支援機構から3000億円を超える公的資金の投入が決定されました。
またこれらと平行して、リストラクチャリングを実施しました。
不採算路線の運休や人員整理を行って、大規模な人件費削減を行います。これによって上場廃止された2年後の2012年には再上場を果たすなどの驚異的な改善が見られました。
まとめ│リストラクチャリングは選択と集中による改革
ここまでリストラクチャリングについて解説してきました。
リストラクチャリングには様々な方法があり、財務や事務、業務などの改革や再構築を行います。
主なメリットは利益率を改善したり、利益率の良い部門に更にリソースを投入したりできる点です。
一方デメリットは、従業員のモチベーションが低下してしまったり、将来性のある事業への投資をストップしてしまう可能性があります。
このように、リストラクチャリングとは、企業の価値をより高めるために企業の改革や再構築を行う事です。
この選択と集中による改革を通して、企業は更なる成長や事業の継続性を高められます。
しかしリストラクチャリングは失敗するリスクもあるため、実施する際は専門家に相談しながら進めると良いでしょう。
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