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廃業後でも確定申告する必要がある?個人事業主のケースや赤字廃業について解説!

最終更新日:2024-04-08
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やむを得ない事情で、廃業を考えている経営者の方もいるかもしれません。一言で「廃業」といっても、その手続きは非常に煩雑です。

そこで気になるのが「廃業した場合でも、確定申告は必要になるのだろうか」ということではないでしょうか。

確定申告が必要かどうかについては「所得」が大きく関係してきます。実は、確定申告が必要のないケースも存在するのです。

そこで本記事では、廃業時の確定申告の必要性や個人事業主の節税のポイント、赤字廃業で確定申告を行うメリットなどについて詳しく解説していきます。廃業を検討している経営者の方の参考になると幸いです。

赤字で廃業した場合|基本的に確定申告の必要なし

一言で「廃業」といっても、その理由はさまざまです。年齢が原因の場合もありますし、後継者不在の問題で廃業するケースもあるでしょう。

「廃業」という言葉のイメージから、経営が立ち行かなくなって「赤字」の状態が続いているという先入観をもってしまうかもしれません。しかし、廃業する場合、黒字経営の状態で行われるケースも多数存在しています。

もちろん、経営が軌道に乗らず、赤字続きで廃業を検討することもあるかもしれません。赤字廃業する際には、基本的に確定申告は不要となります。

ただし、赤字廃業においても確定申告をした方が良い場合もあるため注意が必要です。

廃業に関する手続きや費用・準備などにつきましては、廃業に必要な手続きとは?事前準備や費用・メリットやデメリットについて解説!で詳しく解説しておりますので、併せてチェックしてみてください。

廃業時に確定申告をするポイントとは?

ここからは、廃業時に確定申告をするポイントや注意点について確認していきます。

  • 確定申告が必要か否か
  • 申告期限について
  • 特例について
  • 減価償却について

順番に見ていきましょう。

確定申告が必要か否か

廃業した年度に、確定申告が必要か否かを判断するためには、廃業した年の「所得金額」が大きく関わってきます。

税務上「所得金額」が黒字だった場合には、必ず確定申告をしなければなりません。

その一方で、赤字だったときには、確定申告が不要となります。事前に、その年の所得金額を計算して、必要の有無を把握しておきましょう。

申告期限について

確定申告には申告する期間が定められており、翌年の2月16日から3月15日までと決まっています。

廃業した場合でも、個人事業主の場合には、この期限を守らなければなりません。万が一、この期間内に申告できなかった際には、本来納めるべき額よりも大きな税金を払わなければならないので注意が必要です。

また、個人事業主以外の会社が廃業手続きをしたときには、清算結了登記のタイミングで確定申告を行うこととなります。

特例について

特例が使えるケースもあります。確定申告には申告期間があるため、廃業後にすぐ行うとは限りません。廃業から確定申告をするまでの期間に、何らかの経費が発生することもあるでしょう。

この場合、特例を使うことが可能となります。これを「必要経費の特例」と言い、税金の負担を軽減することができるのです。

例えば、廃業に伴い在庫の処分を行うこともありますし、借りていたオフィス(事務所)のハウスクリーニングなどを依頼することも。廃業後なので基本的には「経費」として計上することはできません。

しかし「必要経費の特例」を使うことができれば、廃業後にかかった費用を確定申告の際に計上することが認められているのです。

ただし、これには条件があります。まず、対象となるのは「個人事業主」のみです。個人事業主であれば、誰でも特例が使えるわけでもありません。

  • 製造業や卸売業などで事業所得を得ていた場合
  • 山林所得や不動産所得を得ていた場合

上記に当てはまる「個人事業主」のみに、特例が認められることとなるのです。

また、認められるかどうかについては「それぞれの税務署の判断」となります。税務署によって、判断基準が異なる恐れもあるため、必ずしも認められるとは限らないのです。

減価償却について

注意するポイントとして、減価償却が挙げられます。廃業時の減価償却は、手続きが複雑になっているため気をつけなければなりません。

例えば、6月30日に廃業した場合「1月1日〜6月30日」までの分を、確定申告の際に「減価償却費」として計上できます。

しかし、廃業後に減価償却しきれなかった分が残ることも。

経営中に「5年間かけて減価償却を行おう」と考えて、必要な設備を揃えたとします。

しかし、4年目に廃業してしまったら、減価償却の期間が「1年間」残ってしまうこととなるのです。廃業後に残ってしまった減価償却については、どのように対処するのが良いのでしょうか。

廃業した際に、減価償却が残っていた資産を「廃棄」する場合には「固定資産除去損」となり、経費への算入が可能です。

その一方で、資産を「売却」するケースでは「譲渡所得の取得費」となります。

また、減価償却が残っている設備や機械を個人でそのまま使用し続ける際には、手続きや申告は必要ありません。

個人事業主が赤字廃業で確定申告するメリットとは?

赤字で廃業した際には、基本的に確定申告の必要がないことは上記で紹介しました。しかし、実は確定申告した方が良いケースもありますので覚えておきましょう。

  • 非課税所得証明書を発行できること
  • 繰越控除が可能となる
  • 所得を証明することができる
  • 国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性もある

ひとつずつ、確認していきましょう。

非課税所得証明書を発行することができる

個人事業主が赤字廃業で確定申告した場合には、非課税所得証明書の発行ができます。これは「所得」または「所得控除」などの状況に応じて、住民税が課せられないことを証明する書類です。

児童手当の申請などにも使用することができます。確定申告をしなければ発行できないものとなっていますので、大きなメリットと言えるでしょう。

繰越控除が可能となる

メリットの2つ目は、繰越控除が可能となる点です。これは、株取引によって損失が出ている場合、繰越控除できるようになっています。

繰り越すことによって、株取引において利益が出たときに控除の対象となるため、節税にも繋がるでしょう。

所得を証明することができる

3つ目のメリットは、所得の証明となる点です。所得の証明は、さまざまなシーンで必要となります。例えば、賃貸物件の契約時やローンの借入・お子さまの入園や入学の際にも重要な書類となるのです。

確定申告書の控えは、所得を証明する上での資料となり得るもの。反対に、廃業した年に確定申告を行わなければ、所得証明が必要な場面で提出できなくなってしまうのです。

廃業時には「必要ない」と考えていても、いざという時のために控えを残しておくと良いでしょう。

国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性もある

4つ目のメリットは、国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性もある点です。確定申告をすることによって保険料が安くなるケースもあります。(全額免除となる場合もあり)

確定申告を行うことで、軽減判定が行われることとなりますので、保険料の負担を大幅に減らせる可能性があるのです。

廃業を回避するためにはM&Aを検討するのもおすすめ

廃業には、煩雑な手続きが必要になったり、まとまった費用がかかることもあります。何より、大切な会社を残すことができません。

M&Aを行えば、廃業を回避できるだけでなく「従業員の雇用の維持」「取引先に対する影響」「売却益の確保」などのメリットが見込めます。

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まとめ|赤字廃業時は確定申告が不要!ただしメリットも多い

本記事では、廃業時の確定申告の必要性やポイント・個人事業主が赤字廃業した際に確定申告を行うメリットなどについて詳しく解説してきました。

赤字廃業の場合には、基本的に確定申告は必要ありません。ただし、確定申告を行うことで、さまざまなメリットがあることもわかりました。

非課税所得証明書の発行や所得の証明、健康保険料が軽減されるケースも。株取引で損失があった場合には、繰越控除が適用され、節税にもつながります。

また、申告期限や特例・減価償却についても覚えておくと安心です。

廃業には、さまざまな手続きがあり、まとまった費用も準備しなければなりません。M&Aの検討も視野に入れて、最善の方法を見つけてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。