小規模宅地の特例とは?土地の相続で知っておくべき注意点を解説!
最終更新日:2024-04-07遺族に残す遺産の中で、最も大きな割合を占めるのが不動産ではないでしょうか。しかし、土地(不動産)の相続には、非常に大きな額の「相続税」がかかってしまいます。せっかく大きな遺産を残しても、多額の税金が必要となると、相続人にも負担になってしまうでしょう。
このようなときに知っておきたい制度が「小規模宅地の特例」です。もし、相続する土地が小規模宅地の特例に該当していれば、土地の評価を80%も下げることが可能となります。税金の負担を大きく軽減できるかもしれません。
そこで本記事では、小規模宅地の特例とはどのような制度なのか、適用される条件や計算方法・注意点や必要となる書類について詳しく解説していきます。
目次
小規模宅地の特例とは?
「小規模宅地の特例」とは、相続した土地が、一定の条件を満たしている場合に、その土地の評価額を最大80%まで減額することができる制度です。(50%軽減のケースもある)
例えば5,000万円の土地を相続することになった場合に適用されると、土地の評価額が「1,000万円」になることも。
ここで注意しなければならないのが、相続税が80%減額されるわけではないということです。あくまでも、土地の評価額が減額できる可能性のある制度となっています。
土地の評価額が軽減された場合、相続税がゼロになるケースもあるのです。
それではなぜ、このような制度が作られたのでしょうか。背景には、次のようなことが挙げられます。
土地を相続したときに、多額の相続税を支払わなければならないことで、土地を手放す選択を防ぐ目的があるのです。
必要となる「相続税」は、現金で一度に支払わなければなりません。せっかく土地を相続できたとしても、相続税を一括で支払うことができずに、やむを得ず土地を売る選択をしてしまうのです。
事業で使用していた土地の場合は、経営を続けることが難しくなるだけでなく、従業員の雇用を守ることもできない可能性があります。
また、住居として使用していた土地を手放さなければならないときには、住む家を失ってしまうのです。
このような事態を未然に防ぐために、小規模宅地の特例制度が作られました。
小規模宅地の特例は3種類
小規模宅地の特例には、3つの種類があります。
- 特定居住用宅地等(住んでいた土地)
- 特定事業用宅地等(事業を行っていた土地)
- 貸付事業用宅地等(賃貸していた土地)
それぞれ、減額される割合や面積などが異なります。
直前までの利用区分 | 要件 | 面積の上限 | 減額される割合 |
居住用 | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
事業用 | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
ひとつずつ確認していきましょう。
特定居住用宅地等
亡くなった人が、実際に住んでいた土地が「特定居住用宅地等」に該当します。面積「330㎡」(坪数にして100坪)までが、評価額を80%減額できることとなるのです。
減額対象となり得る土地は、具体的に「一軒家」「購入しているマンション」「二世帯住宅」となっており、個人の名義となっている土地に限られます。
面積の上限が330㎡となっているため、それ以上の広さがある土地の場合は適用されないと考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、実際は違います。
100坪までに「80%減額」が適用され、それ以上の土地(例えば120坪の土地であれば20坪分)は、通常の評価額となるのです。
ここで、小規模宅地の特例の計算例を見てみましょう。ここでは、土地を1つのみ相続し、相続人は1人であったケースについて紹介します。
【土地の面積:400㎡】※330㎡を超える土地の相続
【土地の価格:4,000万円】の場合
【計算式:4,000万円×330㎡/400㎡×80%=▲2,640万円の減額】
このように、相続できる土地の大きさや価値は変わらず評価額だけを減額できるので、相続税の負担を軽減することができます。
特定事業用宅地等
被相続人が、事業用に使用していた土地を「特定事業用宅地等」と言います。面積の上限は400㎡までとなっており、こちらも居住用宅地と同様、評価額を80%まで減額することができるのです。
このとき、注意しなければならないのが「法人名義」であった場合。個人名義であれば、80%の減額が適用されますが、法人名義の際には「特定同族会社事業用宅地」に分類されます。
この場合、一定の条件を満たさない限り減額に該当しない恐れもありますので気をつけましょう。
貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、マンションやアパート・駐車場などを賃貸していた土地のことを指しています。
貸付事業用宅地等の面積の上限は、200㎡までとなっており、減額は50%です。
ここでの注意点は、親族や知人・友人などに、安く貸していた場合には適用外となる可能性もあること。また、入居者の募集を行わずに、長期にわたって空室状態が続いていた物件に関しても認められないケースがあります。
小規模宅地の特例が使えるのはどんな人?
この特例制度は、非常に大きな節税となるため、誰でも簡単に使える制度ではありません。
相続する人によって、使用できる人とできない人がいるので注意しましょう。相続人を誰にするのかで、80%の評価減が適用されないケースもあります。
特例が使えるのは、以下の通りです。
- 配偶者
- 故人と同居していた親族
- 家なき子(別居している親族)
配偶者とは、亡くなった方の「妻」または「夫」に当たる人物です。配偶者が相続人の場合には、問題なく「小規模宅地の特例」を使うことができます。
生前、配偶者が別居していたというケースでも適用され、相続後に売却することも可能です。
故人と同居していた親族も、特例は使用できます。ただしこの時、実際に一緒に住んでいたという事実がなければなりません。
「住民票は同じ住所だった」というだけでは、適用されませんので注意しましょう。
また配偶者とは違い、被相続人が亡くなった後の10ヵ月間、その家に住み続けなければならないという決まりがあります。
最後に「家なき子(別居している親族)」です。家なき子とは、被相続人と別居中であり、3年間以上賃貸に住んでいる親族のことを指しています。
家なき子特例を使うためには、次の条件を満たしていなければなりません。
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 被相続人に同居している相続人がいないこと
これらに当てはまる具体例は「被相続人が一人暮らし」であった場合です。
小規模宅地の特例を申請するときに必要な書類
申請する際に、必要となる書類は次の通りです。
- 被相続人の出生から死亡時までの戸籍と相続人の戸籍(現在のもの)
- 遺言書のコピーもしくは遺産分割協議書
- 小規模宅地の特例を使用する方の住民票(この時、マイナンバーを記載する場合は不用)
上記が、必ず必要となる書類となります。被相続人の出生から死亡時までの戸籍は、本籍地の変更がなかった場合は1箇所の役場で取ることができます。
本籍が何度か変わっているときには、それぞれの本籍地の役場で戸籍を請求する必要があるので、注意が必要です。
引っ越しや婚姻などの際に本籍を移している方も多いため、1箇所で全ての戸籍を取ることは難しいかもしれません。
また、家なき子特例を使用するケースでは、上記以外にも必要となる書類があります。
- 現在住んでいる物件が「賃貸」であることを証明できるもの
- 現在住んでいる家の「登記簿謄本」
- 3年間以上、賃貸で暮らしていることを証明できるもの(マイナンバーを記載する場合には不用)
以上の書類を、事前に準備しておくようにしましょう。
小規模宅地の特例を受ける場合の注意点
特例を受ける前に、事前に知っておきたい注意点について解説します。
まず1つ目が、いかなる場合でも、相続税申告を忘れてはいけないという点です。特例を受けるためにも、相続税の申告は必須となります。
相続税が発生すれば、申告を忘れることもありませんが、特例を使用したことによって評価額が下がり「相続税がゼロ」になるケースも。
この場合、相続税を支払う必要がないため、申告を忘れてしまう可能性があるのです。万が一、申告しなかったときには、多額の「追徴課税」を請求されることもあるため注意しましょう。
2つ目の注意点は、相続する土地を申告前に売却してしまわないことです。相続人が「配偶者」のときに限り、申告期限前であっても売却が認められていますが、それ以外の相続人は「売り急ぎ」に気をつけるべきです。
3つ目が、もしも660㎡(200坪)の土地を相続した場合。特例が適用されるのは330㎡までなので、残りの330㎡は通常通りの評価額となってしまいます。
この場合、例えば父親が亡くなり、同居しているのは「妻」「娘」だと仮定します。配偶者である「妻」とその子供である「娘」の2人で100坪ずつ相続し、娘が相続する100坪に、特例を使用すると節税効果が期待できるのです。
妻には「配偶者の税額軽減」が適用されるので、娘が特例を使用するのがベストと言えるでしょう。
まとめ|小規模宅地の特例は相続税の負担を大幅に軽減できる!
本記事では、小規模宅地の特例とはどのような制度なのか、種類や必要書類・注意点について詳しく解説してきました。
遺産の中でも大きな金額を占めることとなる「土地」の相続では、たくさんのメリットがあるため、上手に活用するのがベストです。
土地の評価額が最大80%も減額されるため、税負担が大幅に軽減されます。
必要となる書類の数も、それほど多くありませんので、土地の相続が決まったときには事前に揃えておくのがおすすめです。
ただし被相続人の出生から死亡時までの戸籍は、本籍が何度か変更されている場合、集めるのに手間がかかるでしょう。
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最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。