会社員が副業でかかる税金とは?確定申告が必要な場合や所得の種類による違いを解説!
最終更新日:2024-03-13会社員が副業をしていて、その所得が20万円を超えるような場合は、確定申告が必要となります。具体的には、副業の所得が20万円1円以上になるようなケースです。
副業の所得の種類によって経費を計上できたり、青色申告によって控除が受けられる場合もあります。また確定申告する必要があるのにも関わらず申告を怠った場合は、本来納めるべきの所得税に無申告加算税や延滞税などが課される可能性があるため注意が必要です。
ここでは、副業の所得の種類による違いや節税方法などを解説します。
目次
副業でかかる税金とは?
会社員の場合は、会社が年末調整を行い所得税などが清算されるため基本的には自分で確定申告しなくても問題ありません。
しかし会社員として働いていて更に副業をしている場合、その所得が20万円を超えると、確定申告しなければなりません。
また副業による所得が20万円を下回る場合でも確定申告をすると、還付金が受け取れるケースなども存在します。
副業を行った場合の主な所得の種類
所得税法では、所得は10種類に分類されます。その中でも副業で得られる所得区分になる事が多い所得区分は下記の通りです。
- 給与所得 – アルバイトやパートなどの雇用によって勤務先から受ける給料や賞与などの所得
- 事業所得 – 農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業を営んでいる人がその事業で得た所得
- 不動産所得 – 土地や建物などの不動産や借地権などの不動産の権利の貸付などにより得た所得
- 雑所得 – 他の所得のいずれにも該当しない所得
上記の4種類が主に副業で得られる所得になっています。
事業所得と雑所得の違い
事業所得と雑所得は混同されやすい所得です。この二つの主な違いは、それによって生計が立てられているかが判断基準です。手作りの作品の販売をしている人でも、それによって生計が立てられる規模になると事業所得となります。
反対に趣味で手作り作品の販売をしていて、少額の儲けであれば雑所得です。事業所得か雑所得かは、主に事業規模やその仕事が反復、継続かつ、独立して行っているかなどの観点から総合的に判断されます。
例をあげると会社員が空いた時間にUberなどの配達業務をしたり、フリマアプリやネットオークションなどで物を販売したりなどの場合は、ほとんどの場合雑所得になります。雑所得は、給与所得がある場合には収入から必要経費を差し引いた金額が20万円を越えると申告が必要です。
副業によって会社員が確定申告が必要になる金額
副業によって確定申告が必要になる金額は、20万円です。所得の種類によって計算方法が変わるためそれぞれの特徴を把握しておく事が大切です。ここではそれぞれのケースに分けて解説します。
副業が給与所得のケース
この場合は、経費を計上する事が出来ません。しかし給与所得控除が収入金額に応じて適用されます。給与額から給与所得控除を差し引く事で給与所得を求める事ができます。
副業が給与所得の場合も20万円を超える場合は確定申告をしなければなりません。本業の所得も給与所得の場合は、年末調整は1つの会社でしか行えません。
本業の会社が行う年末調整には副業の収入を含めていないため、複数の会社から給与をもらっている場合は、すべての所得を合わせて計算しなおさなければなりません。そのため1社で年末調整を受けていても、それ以外の所得を合わせて自ら確定申告しなければなりません。
副業が事業所得・雑所得のケース
この場合では、本業の源泉徴収票と副業の支払通知を元に確定申告をする必要があります。事業所得と雑所得は、収入から経費を差し引く事で求める事ができます。事業所得の場合は青色申告による確定申告が可能です。事業所得と雑所得の求め方は以下の通りです。
1.事業所得
収入 – 経費 – 青色申告特別控除額
2. 雑所得
収入 – 経費
副業による事業所得や雑所得が20万円を超えた場合には、確定申告が必要となります。副業による収入が40万円でも、経費が30万円であれば収入の40万円から経費の30万円差し引いて所得は10万円です。
この場合には、確定申告する必要がありません。経費は主に事業運営にかかる必要な費用の事を指しています。事業に関係する参考書籍やwebの有料コンテンツなどが該当します。
また経費として計上した支出のレシートや領収証などは、一定期間保存する義務があるため注意する必要があるでしょう。
副業が不動産所得のケース
この場合は、不動産収入から得た所得という事で区分は不動産所得です。不動産所得の場合も、収入から経費を差し引いて計算されます。また不動産所得のケースも青色申告による確定申告が可能です。以下の計算で求められます。
<不動産所得の計算式>
不動産収入 – 経費 – 青色申告特別控除額 = 不動産所得
不動産所得の場合は、事業的規模とされるのは不動産規模が家屋5棟または独立した部屋10室以上の場合です。不動産収入は具体的に家賃や更新料、敷金・保証金などのうち、返還を要しないものと共益費などです。経費は主に管理会社の管理料や修繕費、光熱費、減価償却費などが該当します。
副業を青色申告で確定申告をするメリット
青色申告が可能な所得は、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3種類となっています。これらの所得が20万円超の場合は確定申告しなければならず、また青色申告を使った確定申告が可能です。
青色申告では、事業所得や不動産所得、山林所得を計算して、一定の要件を満たす事ができれば最大で65万円の控除が受けられるのがメリットです。
また家族を従業員として雇用しているような場合は、家族に対して支払った給与を青色事業専従者給与と呼ばれる必要経費として計上する事が出来ます。更に売掛金などの貸倒引当金と言われる、取引先の倒産などで債権が回収不能になる場合を想定した経費も必要経費にする事が可能です。
青色申告では、赤字となった場合は損失額を翌年から最長3年間繰り越す事ができます。純損失が発生した年の前年分にその損失を繰り戻して、前年に納付した分の所得税還付を受ける事ができます。青色申告にはこのように複数のメリットがあります。
副業を青色申告で確定申告する注意点
青色申告で確定申告ができる所得は先ほど説明したように、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のみとなっています。雑所得や一時所得などに関しては、青色申告できません。
また青色申告をする場合は、副業を開始した日から2ヶ月以内に税務署に青色申告承認申請書を提出して承認される必要があります。また開業届に関しても副業を開始した日から1ヶ月以内に提出する必要があります。
また青色申告で65万円の特別控除を受ける場合は、複式簿記による記帳と貸借対照表・損益計算書が必須で、青色申告決算書への記載なども必要となります。
副業でかかる税金を節税する方法
節税する方法は主に3つあります。以下で解説していきます。
青色申告をする
これまで解説してきたように青色申告を行う事で最大65万円の所得控除を受けたり家族の給与を経費にしたり、純損失を繰り越したりする事ができます。最大の控除を受けるには、複式簿記で記録された帳簿が必要です。
副業に関係する経費をしっかり計上する
副業にかかった経費を適切に計上する事で所得を減らし節税する事ができます。副業に使用するパソコンや文房具などは経費にする事ができます。
また家が仕事場の場合は家賃やインターネット料や光熱費などを家事按分する事が可能です。この家事按分とは、家賃やインターネット料や光熱費を、事業で使った割合分を経費に計上する考え方です。
素早く経費にする方法を知る
副業が黒字の場合は、経費をできる限り早く計上して所得を下げる事が節税に繋がります。この様な場合に使える制度があり、以下の2つです。
- 少額減価償却資産の特例
- 短期前払費用の特例
少額減価償却資産の特例は、青色申告を行っている個人事業主や中小企業を対象とした制度です。基本的に10万円を越えるものを購入した場合固定資産として、耐用年数に応じて減価償却する必要があります。
25万円の固定資産を5年の耐用年数の場合定額法で減価償却した場合1年間に5万円しか経費にできません。しかし少額減価償却資産の特例を活用すれば30万円未満である減価償却資産は、その年に一括で25万円を経費に計上する事ができます。
また短期前払費用の特例は、役務の提供を受けた時点で経費にできます。短期前払費用の特例は、費用を払った時点で全額費用とできるため、その年度に計上する事ができる経費の額が大きくなり節税に繋がります。
この特例の条件は「支払った日から1年以内に役務の提供を受ける」や「継続して役務の提供を受ける」といったものです。
副業の所得が20万円以下でも確定申告したほうが良いケース
副業での所得が20万円に満たない場合は、基本的に申告の必要がありません。しかし各種控除(医療費控除、住宅ローン控除)などを受ける場合には、申告する必要があります。
また年間を通して支払った所得税額が、本来かかる所得税額と比べて多かった場合は、払いすぎた税金については還付がされます。
副業の所得の合計が年間20万円以下であれば申告は不要ですが、これは所得税に関しての話です。市区町村に支払う住民税では、20万円ルールといった特例措置が無いため20万円以下でも住民税の申告をする必要があります。
国税庁の副業300万円問題
国税庁の副業300万円問題とは、国税庁が2022年8月に発表した所得税法基本通達の改正案で「年収300万円以下の副業は原則として雑所得とする」というものです。
事業所得ではなく雑所得に分類されてしまうと青色申告による特別控除を受けられません。そのため改正案に対する意見の公募では、「政府の副業推進と逆行している」「主たる所得の判断基準が曖昧」「会社を退職せず起業しているビジネスマンはどうすればよいか」「300万円の基準が高すぎる」などといった意見が殺到しました。
その後国税庁は、「帳簿保存を行っていれば事業所得に分類する」というコメントを発表しました。300万円という基準が削除され帳簿保存をしていれば事業所得に分類できるため青色申告の恩恵を受けられるようになりました。
インボイス登録をしている場合は20万円以下でも申告が必要
インボイス制度が2023年10月1日から開始され、副業の場合でも取引先が課税事業者の法人が多いと、インボイスの発行が求められる場合があります。インボイス制度に対応するために適格請求書発行事業者として登録を行った場合、課税事業者となり消費税を納めなければいけません。
この消費税を納めるために、所得税や消費税の確定申告をする必要があります。そのためインボイス登録を行った場合は、副業の所得に関わらず消費税の確定申告が必要となります。
確定申告から納税までの流れ
確定申告は1月1日〜12月31日までの所得を申告する手続きで、確定申告をする期間は翌年の2月中旬から3月中旬です。ここではどのような流れで申告して納税するかを解説していきます。
必要書類や帳簿を準備する
確定申告を行う場合は、最初に必要になる書類や帳簿を準備する必要があります。副業の場合では、副業の収入のわかる金額や経費の領収書などが該当します。具体的な必要書類は以下の通りです。
- 給与収入の分かる源泉徴収票
- 副業収入の分かる支払調書など
- 経費の領収書
- 金融機関の口座情報
- マイナンバーカード
- 保険料控除証明書・寄付金の受領証・医療費控除の明細書など
上記のものが必要になります。
期日内に確定申告をする
必要な書類や帳簿を準備したら、申告書の必要書類に記載を行い期日までに税務署に申告します。確定申告書は、国税庁のWebサイトからダウンロードしたり、税務署から郵送で取り寄せしたりする事ができます。申告方法は、以下の3種類です。
- 税務署の窓口に提出
- 税務署へ郵送
- e-tax(電子申告)
これまでは税務署の窓口に提出する方法が多く用いられていましたが、最近ではe-taxによる電子申告が主流になっています。また青色申告の場合は、電子申告(もしくは優良な電子帳簿の保存)をすることにより青色特別控除額が65万円となるためお得な申告方法です。
所得税を納めるもしくは還付を受ける
申告が終われば次に所得税を納める事になります。納税する方法には以下の種類があります。
- 口座振替
- ダイレクト納税
- クレジットカード
- コンビニ
- インターネットバンキング
- スマホアプリ
- 金融機関窓口
上記の支払方法から自由に選択可能です。また還付が受けられる場合は、確定申告書に記入した口座に振り込まれる事になります。
まとめ│確定申告が必要かどうか早めに検討することが大切
ここまで副業にかかる税金について解説してきました。副業での所得が20万円超になると確定申告が必要となります。
所得の種類によっては経費が計上できたり、青色申告が可能です。各種控除を受ける場合は、20万円以下であっても確定申告が必要です。そのほかに、20万円以下の場合でも住民税については、所得税と違い20万円ルールが無いため申告が必要になります。
本来、申告し納税の必要があるのにもかかわらず、申告せずにいると延滞金などのペナルティが課せられる可能性があるため注意しましょう。
また青色申告や少額減価償却資産の特例などを活用することでその年にかかる税金を軽減することが出来ます。確定申告が必要かどうか申告期間が始まる前に検討することで、必要書類の準備や帳簿の修正が余裕を持って行うことができるため早めの検討が大切です。