廃業に必要な手続きとは?事前準備や費用・メリットやデメリットについて解説!
最終更新日:2024-03-30少子化の影響を受け、後継者不在の問題を抱えていたり、時代のニーズに合わなくなってしまったことを懸念して「廃業」を考えている経営者も少なくありません。
問題はそれだけに留まらず、赤字経営が続いていたり債務を返しきる目処が立たないといったケースもあるでしょう。
廃業するには、起業するよりもたくさんの手続きがあるため、しっかりと流れを把握しておく必要があります。また、廃業にかかる費用や手続きについても押さえておきたいところです。
そこで今回の記事では、廃業に必要となる費用や手続き・メリットやデメリットなどについて詳しく解説していきます。「廃業しようか悩んでいる」という方の参考になると幸いです。
目次
廃業する前に事前に準備しておくこととは?
廃業は、非常に大きな決断です。手続きも非常に煩雑で時間もかかります。事前準備をしっかりと確認し、本当に正しい決断なのかどうかを見極めるようにしましょう。
廃業が正しい決断かどうか冷静に判断する
まずは、廃業を選択することが間違っていないかどうかを分析することが大切です。経営者が、廃業について検討を始める理由はそれぞれ異なりますが、大きく分けると下記の5つが挙げられます。
- 会社の経営不振
- 後継者不在の問題
- 経営者の健康上の理由
- 取引先の倒産
- 時代のニーズに合っていないという不安
このような理由によって、廃業を検討することがあるかもしれません。しかし上記でも述べた通り、廃業の手続きは起業する時よりも大変で時間も費用もかかってしまいます。
M&Aや事業譲渡ができれば、売却益を得られる可能性も高くなっていますので、廃業を決断する前に専門業者への相談を行うのがおすすめです。赤字経営や債務を抱えた状態でも、買い手が見つかる可能性もあります。
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どんな小さなご相談でも、お気軽にお問い合わせください。
利用できる廃業支援について調べてみる
利用できる廃業支援について調べておくことも大切なポイントです。国や地方自治体において、廃業を支援してくれる制度が設けられています。
また、補助金を利用できる可能性もありますので、うまく活用できれば大きな助けとなってくれることは間違いありません。事前にしっかりと確認しておきましょう。
廃業に必要となる書類を集める
廃業に必要となる書類を集めておくことも忘れてはいけません。廃業には、次のような書類を揃えておく必要があります。
- 廃業届
- 事業廃止届出書
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書
- 給与支払い事務所などの開設・移転・廃止届出書
- 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
これらは、個人事業主が必要な書類となり、法人の場合はさらに必要書類が増えることになります。また、本人確認書類も忘れずに準備しておきましょう。
廃業に必要となる費用
ここからは、廃業に必要となる費用について確認していきます。廃業にかかる費用は、大きく分けると次の4つです。
- 登記・法手続きに関する費用
- 士業専門家への報酬費用
- 設備を処分する費用
- 建造物の原状回復費用
順番に見ていきましょう。
登記・法手続きに関する費用
廃業にかかる費用の1つ目は、登記・法手続きに関する費用です。詳細は、次のようになります。
登記費用 | 必要となる費用 |
官報公告掲載費用 | おおよそ30,000円~40,000円 |
解散登記 | 30,000円 |
清算人登記 | 9,000円 |
清算結了登記 | 2,000円 |
上記以外に、登記事項証明書を発行する際の郵送料が1,500円前後必要となりますので覚えておきましょう。
士業専門家への報酬費用
廃業にかかる費用の2つ目は士業専門家への報酬費用です。ここで言う「士業専門家」とは弁護士や司法書士・税理士のことを指しています。
廃業には数多くの手続きがあり、長い時間もかかってしまうため、経営者の負担を最小限にするために専門家に依頼するのが一般的。
廃業に関する一連の手続きを代行してもらう報酬として、おおよそ60万円〜70万円の費用がかかると想定しておきましょう。
しかし、依頼する会社によって、かかる金額は異なってきます。少しでも費用を抑えるためにいくつかの事務所に問い合わせてみるのがおすすめです。
設備を処分する費用
3つ目は、設備を処分するためにかかる費用です。これは、それぞれの企業によって所有している設備が違ってきますので、目安にできる金額はありません。
ただし処分する設備が多い場合にはかなり高額になりますが、買い手が見つかり、売却できる設備があれば「売却益」を得る可能性もあります。まずは、今ある設備に需要があるかどうかを確認してみましょう。
建造物の原状回復費用
4つ目は、建造物の原状回復費用です。この費用は、非常に高額になってしまう可能性がありますので注意しなければなりません。
使用していた事務所などが「賃貸物件」だった場合、原状回復工事が義務付けられているのです。
1坪当たりの平均金額が「数万円〜10万円」程度となっているので、例えば100坪の事務所を借りていて坪単価が「5万円」だった場合、原状回復費用は500万円かかってしまうことになります。借りている土地の面積が大きいほど、大きな負担となってしまうでしょう。
廃業手続きの主な手続き・流れ
続いて、廃業手続きに関する主な手続きと流れについて紹介していきます。起業したときよりも多くの手続きがあり、その内容は複雑ですので、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
- 営業終了日の決定
- 会社の従業員・お世話になった取引先に廃業する旨のお知らせを郵送する
- 株主総会において解散決議と清算人について選定を行う
- 解散登記と清算人登記を行う
- 解散届出の提出をする
- 官報で解散公告を行う
- 債務の整理や決算書類の作成をする
- 解散確定申告・清算結了
ひとつずつ解説していきます。
営業終了日の決定
廃棄の手続きや流れで1番最初に行うべきことは「営業終了日を決定」することです。営業終了日に関しては、自社の都合(在庫の調整や予約への対応など)を考慮することも大切ですが、従業員への配慮や取引先に迷惑がかからないようなスケジュールにすることも忘れないようにしましょう。
会社関係者へのお知らせ
営業終了日が確定したら、従業員や顧客・取引先など「会社関係者」へ廃業する旨のお知らせをしなければなりません。
一般的には「廃業挨拶状」を郵送します。お知らせを送る時期に関しては、遅くとも、営業終了日の2〜3ヵ月前までに通知するようにしましょう。ギリギリで通知を送ってしまうと、従業員はもちろん、顧客や取引先にも多大な迷惑をかけてしまうことになります。
株主総会で解散決議と清算人を選定する
会社を廃業するという重大な決議を行うためには、株主総会を開くことが会社法によって定められています。
株主総会は意思決定機関であり、株主たちに出席してもらって「3分の2以上」の同意を得ることが条件です。清算人の選定においては、通常「代表取締役」が清算人となります。
解散登記と清算人登記を行う
株主総会において、株主の3分の2以上の同意を得られたら、解散登記と清算人登記を行います。これには期限が設けられており「廃業日から2週間以内」に法務局において、解散登記および清算人登記を行う必要があるのです。
解散届出を提出する
会社の廃業においては、税金や保険などの届出も義務付けられています。会社を経営していた際に課せられていた「法人税」や「住民税」などに関して、移動届出書を提出することになるのです。これに併せて、給与支払事務所等廃止届も税務署に提出します。
官報で解散公告を行う
廃業のときに、借金を抱えている会社も多いかもしれません。借金がある場合には、借りている相手(債権者)に対して債権を申し出るように「官報」に2ヵ月間(またはそれ以上)掲載します。これは、会社法によって定められていますので、必ず解散公告を行いましょう。
債務整理や決算書類の作成を行う
清算の手続きを始める前に、まずは決算書類の作成を行わなければなりません。決算書類とは賃借対照表や財産目録のことです。財産目録は、現時点でのプラスの財産とマイナスの財産を分類して、一覧にまとめたもの。これには、株主総会の承認が必要となります。
解散確定申告・清算結了登記
決算書類の作成が終わったら、確定申告を行います。確定申告にも期限が設けられており、廃業日から「2ヵ月以内」とされていますので気をつけましょう。
清算結了登記は、株主総会での承認を得た後「2週間以内」に法務局において手続きしなければなりません。この一連の流れで、廃業手続きが完了となります。
廃業を行うメリット
それでは、廃業を行うメリットにはどのようなことがあるかについて確認していきます。「廃業」という言葉は、なんとなくマイナスのイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし、廃業を選択することで得られるメリットもあります。
まず1つ目が「倒産」とは違う点です。廃業と倒産をイコールで結んでいる方もいるかもしれませんが、廃業とは「自らの意思で会社を閉める(たたむ)こと」になります。
その一方で、倒産は「経営ができなくなり、会社が潰れてしまうこと」です。倒産の場合、お世話になった関係者の方たちに多大な迷惑をかけることもあるため、廃業を選択することが良い決断になるケースも少なくありません。
2つ目のメリットは、経営に関するプレッシャーから解放される点です。
「事業がうまくいっていない」「赤字経営が続いている」といった負担がなくなるのは非常に大きなメリットと言えます。経営に関することだけではなく、それまで支払っていた会社の税金からも解放されますので、資金繰りや関係者への対応で頭を悩ませることもなくなります。
メリットの3つ目は、破産手続きの必要がない点です。廃業には多くの手続きがありますが、それでも「倒産」と比較すると手続きが少なく済みます。
万が一倒産になってしまった場合、破産手続きが必要となるのです。これには書類の準備だけでなく、弁護士への依頼や裁判所への破産申し立て手続きが必須となりますので、費用だけでなく長い時間も必要となります。
廃業を行うデメリット
ここからは、廃業を行った際のデメリットについて解説していきます。廃業を検討している経営者の方は、デメリットについて事前にしっかりと認識しておく必要があるでしょう。
1つ目のデメリットは、従業員を解雇する必要がある点です。
廃業は、会社自体が消滅してしまうこととなるため、従業員の雇用を継続することはできません。M&Aなどで会社を売却することができれば、雇用を維持できます。
今まで頑張って働いてくれた従業員には、再就職のサポートやできる限りのフォローを忘れないようにしましょう。
デメリット2つ目は、お世話になってきた取引先に迷惑をかけてしまう恐れもあることです。債務があった場合、それを完済したとしても、取引先への影響がゼロになるわけではありません。
取引先にとっても、廃業を決断した会社との取引は大きな売り上げに繋がっていたはずです。これによって、取引先の経営が傾いてしまう可能性もあるでしょう。
3つ目のデメリットは、廃業には多額の費用がかかることもある点です。特に、賃貸契約している事務所であれば、借りている土地が広いほど「建造物の原状回復費用」だけでも非常に高額になってしまいます。また、多くの設備を保有している会社であれば、処分費用も大きくなるでしょう。
まとめ|廃業には多くの準備や手続きが必要!M&Aなども検討し最善の方法を見つけよう
今回の記事では、廃業の手続きや費用・事前準備やメリットデメリットなどについて詳しく解説してきました。
廃業を行う際には、事前準備を含めて数多くの手続きが必要だということがわかりましたね。また、それに伴い、まとまった費用も必要になります。
「経営が上手くいっていない」「赤字が続いている」といったケースでもM&Aで買い手企業が見つかれば、売却益を得られ、従業員や取引先に迷惑をかけずに済む場合も。廃業を検討する前に、事業譲渡やM&Aも一考してみるようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。