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議決権制限株式とは?9つの種類株式やメリット・デメリットについて解説!

最終更新日:2024-04-21
議決権制限株式とは

株式を保有し株式総会で議決権を行使するのは、会社の意思決定を行う株主のとても大切な権利です。

しかしこの議決権に制限が加えられた株式が存在します。それが議決権制限株式と言われるものです。また完全に議決権が行使できない株式を、無議決権株式と呼びます。

この記事では、議決権制限株式のメリット・デメリットや活用方法、種類株式等について解説していきます。

議決権制限株式とは

株式会社では定款によって定めていない限りは、株主平等の原則に基づいて1株に対して1議決権が与えられます。しかし一方で、株主総会での議決権の行使に制限が加えられた株式の発行も可能です。

このように制限がついている株式が議決権制限株式です。更に完全に議決権を行使できない株式を無議決権株式と呼びます。

会社法では、一定の事項について異なった定めを設けている種類が違う株式の発行を認めており、このような株式を種類株式と呼びます。

議決権制限株式のメリット

制限を受ける株式は、一見メリットが無いようにも見えます。

しかし株主の中には、会社の経営には興味が無いが、配当は得たいという人も存在します。また株主になった場合は、株主総会に出席したりといった手間があり、そういった要素を嫌う人もいるでしょう。その他、身内など経営に口出しする気が無いがお金は出すといったような場合に最適です。

このような場合では、会社は議決権制限株式を発行する事で先ほどのニーズを満たしながら、経営権を分散させずに資金の調達が可能な点がメリットです。

議決権制限株式のデメリット

議決権制限株式のデメリットは、発行に手間がかかる点とその後の管理にも手間がかかってしまう点です。

また会社の行為が種類株式の株主に対して損害を及ぼす可能性がある場合や、種類株主総会の決議を要すると定めている事項を行う際に、種類株主総会の決議が必要になる可能性があります。

議決権制限株式の活用方法

議決権制限株の活用されるシーンをいくつか紹介していきます。

事業承継のシーン

事業承継のシーンでは、先代である親が後継者である子供に対して社長を子供に譲るが、実質的な支配権を維持したい場合に有効です。

先代である親が保有している株式を普通株式1株のみを残し残りを無議決権株式に変更し、その後無議決権株式を子供に譲ります。

このような手順を踏む事により、会社の所有権は子供に移る事になりますが、議決権は先代のままという状態にできます。

相続のシーン

相続のシーンでは、子供が複数いるが会社の経営に関与しているのは1人のみで、均等に財産を残したい場合に有効です。

子供が4人の場合は、相続する株を4等分し、3/4を無議決株式に変更します。その後、後継者以外に無議決株式を相続し、残った普通株式を後継者に相続させます。

それによって議決権は後継者に移しながらその他の子供も、配当金などを受け取る権利の相続が可能です。

出資を受けるのシーン

会社が出資を受けて拡大を行いたいが、会社の経営には関与してほしくないような場合に有効です。新たに出資をしてもらった場合は、無議決権株式を発行します。

このようにする事で、出資を受けながらこれまで通りの株主で決議を行う事が可能です。

議決権制限株式の限界

議決権制限株式を設計する際に、種類株主総会を含む議決権のない株式を作れないか検討するケースが稀に存在します。

しかしこのような株式は作る事ができません。これは定款の定めによって制限できる範囲が決められているからです。

その他新たな種類株式を発行する、株式の内容を変更するまたは発行(種類)可能株式総数を変更するときは種類株主総会の決議が必要です。

議決権制限株式は2分の1に抑えなければいけない

会社法第115条により、公開会社は議決権制限株式が発行済株式総数の2分の1を超えた場合は、株式会社は議決権制限株式の数を発行済株式の総数の2分の1以下にするための必要な措置を取る必要があります。

また非公開会社の場合はこのような制限は受けません。

議決権制限株式を発行する方法

新たに株式を発行して誰かに交付するもしくは、既存株主が保有している株式を変更する方法で行われます。

前者の方法では、出資は受けたいが議決権を与えたくない場合に用いられ、既存株主の一部から議決権をなくしたい場合は後者の方法が用いられます。

議決権制限株式を新たに発行する場合

現時点で普通株式しか発行していない会社が、新しく種類株式として議決権制限株式を発行する場合は以下のような流れで行います。

  1. 株主総会の決議(定款変更、募集株式の発行)
  2. 総数引受契約の締結
  3. 出資の履行
  4. 登記申請

上記の流れで発行します。

既存株主の株式の内容を変更する場合

種類株式の発行は、出資を受けて新たに株式を発行する際に行えますが、既存株主が保有している株式の内容を種類株式に変更する事ができます。

例をあげると、普通株式のみの株式会社に株主「X」「Y」「Z」の3人がいると仮定します。この場合Xが保有している株式を普通株式から種類株式に変更する事が可能です。この変更には以下の手続きが必要です。

  1. 株主総会における定款変更の特別決議
  2. 株式会社と種類株式に変更する株式を保有する株主との合意
  3. 他の株主の全員の同意
  4. 法務局へ登記の申請

上記の手続きによって変更する事ができます。また変更する際に必要となる書類は以下の3つの書類です。

  • 定款変更決議を行った株式総会議事録
  • 株式会社と種類株式に変更する株式を保有する株主との合意書
  • 他の株主の全員の同意書

上記の書類が必要です。また変更を行う際は株主全員の同意が必要となります。

議決権制限株式を廃止する方法

議決権制限株式を廃止したい場合は、ほかの種類株式に変更する方法と普通株式に変更する方法があります。

どちらの場合でも種類株式の内容を変更するという事になります。定款の変更を行い、その後に該当種類株主総会による決議が必要です。

議決制限株式を変更する場合は、普通株主にも影響をおよぼすため、普通株主による種類株主総会の決議が必要になります。

議決権制限株式と事業承継税制について

事業承継税制と言う、贈与税や相続税の納税の猶予または免除ができる制度との関係について解説していきます。事業承継税制は事業承継税制とは?事業承継や贈与税・相続税の仕組みとメリット・デメリットを解説!の記事で詳しく解説しています。

事業承継税制の要件➀│同族会社判定

事業承継税制の要件には、同族グループで50%超の議決権割合を保有しているという要件があります。

この場合の議決権割合は、一部議決権が制限されている株式は判定の対象ですが、無議決権株式は除外して判定されます。

事業承継税制の要件➁|特例対象株式

納税の猶予を受けられる株式は、議決権に制限がない株式のみとなっています。

そのため議決制限株式と無議決権株式は、納税猶予の対象にできません。

事業承継税制の要件➂|筆頭株主要件

先代経営者の要件に、相続開始または贈与の直前に、現経営者親族などで総議決権数の過半数を保有しており、筆頭株主であったという要件があります。

ここでの議決権割合は、同族会社判定の場合と同じく一部議決権が制限されている株式は判定の対象ですが、無議決権株式は除外して判定されます。

その他の種類株式

種類株式には以下の9種類があります。

  • 剰余金の配当
  • 残余財産の分配
  • 議決権の制限
  • 譲渡制限
  • 取得請求権
  • 取得条項
  • 全部取得条項
  • 拒否権
  • 役員選任権

それぞれ簡単に紹介していきます。

剰余金の配当

剰余金の配当について、他の株式より優先又は劣後する株式です。

残余財産の分配

株主に交付する残余財産の価格の決定方法や種類、分配に関する取り決めがある株式です。

議決権の制限

この記事で解説してきた種類株式です。株主総会での議決権を制限するものです。経営に興味が無く利益のみ欲しい場合に交付される事が一般的です。

剰余金の配当優先株式と組み合わせて、高配当だが議決権がない株式として発行されるケースが多く見られます。また公開会社の場合は、発行済み株式の総数の2分の1以下に抑える必要があります。

譲渡制限

株式譲渡に会社の承認が必要になる株式です。これは主に、会社の乗っ取りを防ぐことが主な目的で活用されます。

取得請求権

当該株式について、株主が会社に対して取得を請求できる決まりがあるものです。取得請求権を行使された場合、会社は請求を拒否する事ができず、株式を交付する必要があります。

取得条項

すべての株式又は一部の種類の株式について、株主がその株式について、会社に取得請求できる株式です。

全部取得条項

会社が株主総会の特別決議により、そのすべてを取得する事ができる株式です。これは当該株式のみ全部取得ができます。

拒否権

株主総会や取締役会で決議する一定の事項のうち、種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とする定めが設けられている株式です。強力な権限を持っていることから黄金株とも言われます。敵対的買収の防衛策として用いられることもあります。

役員選任権

種類株主総会において、役員の選任について取り決めのある株式です。これを発行するとその株主のみが選任に携わる事になります。

事業承継などでは、現経営者に役員についての選任・解任権を持たせておきたいような場面で活用されています。

持株比率ごとの名称の違い

最後に持株比率による名称の違いを解説していきます。

  • 主要株主:金融商品取引法によると、持株比率10%以上の株主を指します。
  • 大株主:大株主は明確に定義されていません。多数の株式を保有しているものを指す場合が多くなっています。
  • 筆頭株主:株式会社で最も持株比率の高い株主の事を指します。
  • 親会社:株式会社を子会社とする会社の経営を支配している法人の事を指し、子会社の経営権を保有しています。

上記の名称は、株式が関係する場面でよく登場するためぜひ覚えておきましょう。

まとめ│議決権制限株式は資金調達や事業承継に役立つ

ここまで議決権制限株式について解説してきました。議決権制限株式は、子供に会社を譲りながら経営権を先代のままにしたり、議決権がない代わりに配当の多い株式を発行して経営権を確保しながら資金調達を行ったりできます。

一方でデメリットは、発行やその後管理に手間がかかる点です。

議決権制限株式は、その他の株式と組み合わせて用いられることが多い種類株式となっています。このように議決権制限株式は、資金調達や事業継承に活用されています。

またPASONでは、M&Aの仲介・サポートを行っています。PASONの魅力は

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というような魅力があります。M&Aを検討している方で疑問やお悩みがある場合は、ぜひお気軽にご相談やお問い合わせください。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。