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M&A 事例・コラム

居抜き物件とは?M&Aとの違いやメリット・デメリットについて徹底解説!

最終更新日:2024-03-30
居抜き物件

店舗の売却や買収、またはお店を開業したいと考えた際に「居抜き物件」という言葉を耳にすることがあるはずです。居抜き物件について、なんとなくわかっているつもりでも、その詳細や注意点についても理解しておく必要があります。

居抜き物件には、さまざまなメリットがあるため、開業を検討している方であれば、必ずチェックしておきたいキーワードのひとつ。

居抜きで売却したいと考えている場合には、流れや手順・必要になる費用なども気になるところです。また、M&Aを行って売却する方法とは、どのような違いがあるのでしょうか?

そこで今回の記事では、居抜き物件とはどのような物件を指しているのか?M&Aとの大きな違いやメリット・デメリット、売却時に必要な費用について詳しく解説していきます。

居抜き物件の売却・買収や店舗の開業を検討している方の参考になると幸いです。

居抜き物件とは?

そもそも居抜き物件とは、どのような物件を表しているのでしょうか。

居抜き物件は、以前にその場所で経営していたお店が使用していた「内装」や「設備」などが、そのままの状態になっている物件のことです。例えば飲食店であれば、厨房や什器、椅子やテーブルなどがそのまま残っています。

一般的には、賃貸契約の際に「原状回復義務」が定められていますので、退去時には「入居したときの状態」に戻す必要性があります。

しかし、居抜き物件を取り扱っている業者へ引き渡すことで、そのままの状態でも買い取ってもらえるのです。

居抜き物件を探している際に「スケルトン物件」という言葉を見かけることがあるはず。スケルトン物件は、まっさらな状態の物件を指しています。

設備が一切ないことはもちろん、天井や床・壁などもコンクリートが剥き出しになっている物件のことです。

居抜き物件のメリット

居抜き物件のメリットについて確認していきます。メリットは大きく分けると3つです。

  • 開店に必要な費用を削減できる
  • オープンまでの期間を短縮できる
  • 以前からの顧客を取り込みやすい

ひとつずつ見ていきましょう。

開店に必要な費用を削減できる

居抜き物件の1番のメリットは、コストを削減できる点です。

前のテナントが使用していた設備をそのまま使えるため、開店時に必要な什器などを揃える費用を抑えることができます。内装も施されているため、初期費用がかさむ心配も少なくなるでしょう。

オープンまでの期間を短縮できる

メリットの2つ目は、オープンまでの期間を短縮できる点です。

これからお店を経営していく上での設備が揃っているだけではなく、リノベーション工事が必要ない場合があります。設備を搬入する時間や工事にかかる期間も少ないため、スムーズにオープンできることが魅力です。

以前からの顧客を取り込みやすい

3つ目のメリットは、前店舗からの顧客を獲得しやすい点です。

特に近隣住民は、前のテナントの常連客であった可能性があったり、次のお店はどんな店かな?と「新しい店舗ができる」ということを把握していることが多くなっています。

オープン前から「また新しいお店が営業する」と認知されていることは、大きな強みです。例えば飲食店を始めるときに、居抜き物件で購入した店舗も元々「飲食店」だったとします。

この場合、近所の住民や近くの職場の人たちにも受け入れられやすく、顧客を取り込みやすい環境と言えるでしょう。

居抜き物件のデメリット

居抜き物件には、デメリットもあります。デメリットは大きく分けると5つです。

  • 前の店舗のイメージが残ってしまう
  • 使えない設備がある場合も
  • スケルトン物件に比べて自由度が低い
  • 新たにレイアウトしようとすると予想以上にコストがかかる
  • 同じ失敗を繰り返してしまう可能性がある

順番に確認していきましょう。

前の店舗のイメージが残ってしまう

居抜き物件のデメリット1つ目は、前テナントのイメージが強く残ってしまうことがある点です。これは、良いイメージだけではありません。「接客態度が良くない店だった」「ゴミの処理がだらしなかった」などといったトラブルやクレームがあった可能性もあるのです。

まったく別の店舗として営業していても、悪いイメージが付いているお店であれば、利用者のイメージはなかなか払拭されません。その場合は、悪い印象を良い印象に変えるためにも、時間と努力が必要となるでしょう。

使えない設備がある場合も

デメリットの2つ目は、引き継いだ設備が全て使えるとは限らない点です。

経年劣化によってうまく作動しないことも考えられますし、説明書などがないため、使い方がわからないケースも。前の店舗が、いつから使っていた設備なのかわからないため、オープンして間もなく壊れてしまう可能性もあります。

スケルトン物件に比べて自由度が低い

3つ目のデメリットは、スケルトン物件と比べると自由度が下がってしまう点です。

壁や床・天井はもちろん、設備なども前の店舗が使用していたものがそのまま残っているため、理想の内装やレイアウトにすることは難しくなります。設備に必要なコストは抑えられますが、その分、イメージ通りのお店を作り上げることは困難になるでしょう。

新たにレイアウトしようとすると予想以上にコストがかかる

当初は、前の店舗が使っていた設備や内装のままスタートしようと考えていても、オープンまでの期間で改装したい部分が出てきてしまうことも。

ひとつこだわってしまうと、気になる箇所がどんどん増えてしまう可能性があります。元々あった設備を撤去して新しいものを購入したり、すべての壁紙をイメージ通りにすると、想像以上に費用がかさむことになってしまうのです。

初期費用を抑えるためにも、事前の内見の際に、このまま使うことができるのかをしっかりと確認しておきましょう。

同じ失敗を繰り返してしまう可能性がある

最後のデメリットは、同じ失敗を繰り返してしまう可能性がある点です。前のテナントは、なぜ撤退しなければならなかったのか?その原因を把握しておくことが大切。

後継者問題や家庭内の都合などで閉店したのであれば問題ありませんが、それ以外の理由であれば注意が必要です。

例えば立地が良くないことや人通りが少ないこと、競合店(ライバル店)が多いことなどで、失敗につながるケースもあります。同じ失敗を繰り返さないためにも、周辺状況はしっかりとチェックしておきましょう。

M&Aと居抜き物件の売却の違いとは?

今まで経営してきた店舗を売却する際には「M&A」を行ったり「居抜き物件での売却」などの方法があります。どのような違いがあるのか解説していきます。

売却する際の対象物の違い

まず、M&Aの売却は「事業そのものを売却する」ことになりますので、対象になるものは店舗だけではありません。

そこで働いていた従業員や会社のノウハウ、営業権はもちろん、関わりのあった取引先なども関係してきます。(主にインカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチの3つで売却額を決定する)

買い手側の企業としては、新たに人材を集めたり取引先を見つける手間も省けます。売り手側の企業は、従業員の雇用を守ることができ、お店を残せることや売却益を得られる点が大きなメリットです。

その一方で居抜き物件の場合には、店舗と使用していた設備の売却になります。買い手側のメリットについては上記で解説しましたが、売り手側の企業は、店を閉める際に必要になる費用を大きく削減できるのがポイントです。

価格のつけ方の違い

M&Aと居抜き物件においては、価格のつけ方も異なります。

M&Aでは、物件や設備の価値だけでなく、M&A後に見込まれる利益や市場での価値・ブランド力なども併せて価格が決まることになるのです。

もちろん、従業員や取引先といった「無形資産」も考慮されます。買い手側の企業にとって、大きなメリットがある場合には、予想よりも高値で売却できる可能性も。

売却後の選択肢の違い

売却後の選択肢も違ってきます。居抜き物件の場合は、店舗と設備の売却益を得て、お店自体は閉店することになります。

しかし、M&Aでは経営者が変わっても、お店の経営を続けていくことが可能なため「大事な店舗を、誰かに引き継いでもらいたい」「従業員の雇用を維持したい」という時にも安心です。

このように、経営していた店舗を手放すときには「居抜き」を選択するよりも「M&A」を選ぶ方が、売り手企業にとってのメリットが多いことがわかります。

ただし、必ず「買い手企業が見つかる」とは限らないので注意が必要です。

PASONは、M&Aに特化したマッチングプラットフォームを展開しています。

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「経営が上手くいっていなかった」「赤字続きだった」という場合でも、買い手企業が見つかることもありますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

居抜き物件を売却する際に必要な費用

居抜き物件を売却する際に必要になる費用について解説していきます。

まず、居抜き物件の売却価格の目安についてですが、小規模な店舗(15坪前後)の場合150万円〜250万円程度が相場です。査定額を算出する主なポイントとなるのが次の5つになります。

  • 利便性(アクセス)
  • 設備が新しいかどうか
  • 需要の高い業種であるかどうか
  • 買い手のつきやすい坪数かどうか(10~20坪前後)
  • 使い勝手の良い間取りかどうか

上記のポイントから売却価格が決定されます。続いて、売却時には以下の費用が必要です。

  • 借主への譲渡承諾料
  • 仲介業者などに支払う仲介手数料

賃貸契約を結んだ際に「居抜き」での売却が許可されていないケースが多くあります。

そのため、居抜きで売却する際には承諾料が発生するのです。譲渡承諾料とは、法律で定められているものではないため物件のオーナーとの話し合いで金額が決定され、その相場は「賃料の2〜3ヶ月分」が一般的となっています。

また、不動産会社や居抜き専門業者などを利用して物件を売却するケースが多いはずです。このときに必要になる費用が、仲介手数料になります。仲介手数料は、業者によってさまざまなため、相場などはありません。何社か見積もりをとって、少しでも安い業者を見つけるようにしましょう。

まとめ|居抜き売却を検討する場合はM&Aも併せて考えよう

今回の記事では、居抜き物件とはどのような物件のことなのか?メリット・デメリットやM&Aとの違いなどについて詳しく解説してきました。

居抜き物件には、さまざまなメリットがある一方で、事前に気をつけなければならないデメリットも多いことがわかりましたね。

初期費用を抑える目的で居抜き物件を購入しても、設備が古くてすぐに故障してしまったり、レイアウトにこだわりすぎると逆に費用がかさむことも。購入前の内見の際に、しっかりと確認しておくことが大切です。

居抜き物件での売却を検討している方は、それと並行してM&Aでの企業売却も考えてみるのが得策と言えるでしょう。

M&Aであれば、お店を残すことが可能ですし、従業員の雇用も守ることができます。買い手企業が見つかれば、居抜き売却よりも高値で売却できる可能性もあるので、ぜひ参考にしてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。