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負債比率とは?目安や計算方法・ROEとの違いについて解説!

最終更新日:2024-03-30
負債比率とは


会社の経営をしていく中で、基礎とも言える大切な財務指標の一つがあります。それが負債比率です。自己資本に対する負債の割合を見るための指標です。

負債比率が低い場合は経営が安定していると言えます。逆に負債比率が高い場合は倒産のリスクが高くなっていきます。

企業は負債比率を高すぎず、低すぎない適切な負債比率を維持する事で、より効率的な経営を行うことができます。この記事では負債比率の詳しい意味や計算方法とその改善方法または似た指標について解説していきます。

負債比率とは?

負債比率とは、自己資本に対してどれだけ負債があるかの割合を測るための指標です。負債比率が低ければ、支払いが滞る可能性が低く安全性が高いと言えます。

しかし収益性を考えた場合には、負債比率が程よく高い方が、小さな資本でより大きな利益を上げるというようなレバレッジ効果の観点では良いとされています。

このように負債比率の妥当性を測るのには、その企業の経営状態や安全性と収益性も考慮して検討する必要があります。

負債比率の計算方法と計算例

次に負債比率を求める方法を解説していきます。負債比率は以下の計算式によって求める事が出来ます。

負債比率 = (負債)(他人資本) ÷ 自己資本) × 100

例をあげていきます。

X社

負債:30億円

自己資本:40億円

この場合負債比率 = (30億 ÷ 40億)  x 100 = 75 となり負債比率は75%です。

Y社

負債:30億円

自己資本:20億円

この場合負債比率 = (30億 ÷ 20億)  x 100 = 150 となり負債比率は150%です。

他人資本とは

貸借対照表における貸方項目の要素の一つです。貸方項目は、他人資本と自己資本の二つに分ける事ができます。更に他人資本は、流動負債と固定負債に分けられます。

他人資本は銀行からの借入や社債発行によって調達資金の事を指し、またこれを負債と呼ぶこともある。

自己資本とは

貸借対照表における貸方項目の要素の一つです。さらに言えば資産と負債の差額を表す純資産と同様の意味があります。企業が自分で調達したお金を指し、資本金や剰余金、法定準備金などがこれに当たります。

負債比率の目安

負債比率は100%を下回っていれば自己資本で負債をすべて賄えていると言えます。

負債比率の目安は一般的に100〜150%と言われていますが宿泊業や飲食サービス業などは300%前後が一般的です。このように業種によって変動するため、参考にする際は同業他社との比較を行うことが大切です。

また基本的には負債比率が300%を超えてくると、のちに返済に問題が生じる可能性が高くなってくるため、300%を下回るように改善をする必要があるでしょう。

負債比率が高い場合の問題点

負債比率が高くて発生する問題点は、大きく2つあります。以下で解説していきます。

コスト競争力が金利負担によって低下する

借入金などの他人資本は、多かれ少なかれ金利を負担しなければなりません。そのため製造原価や仕入れ価格が同じだったとしても、負債からくる金利負担に影響され収益力にも差が生まれていきます。

設備投資や開発への投資が行いにくい

他人資本は、自己資本とは違い返済する義務が存在します。

そのため設備投資や新たな商品の開発などの資金回収のスパンがある程度長くリスクが付きまとうような投資に関して言えば、消極的にならざるを得ません。そのため、このような点が問題と言えるでしょう。

負債比率を改善する方法

負債比率を改善する方法は主に2つあります。以下で解説していきます。

自己資本を増やす

負債比率を改善する方法の1つ目の方法が、自己資本を増やす方法になります。自己資本を増加させると負債の割合が減少するので、負債比率は改善されます。

自己資本を増加させる具体的な方法は、第三者割当増資と言われる特定の第三者に対して新規株式を発行する方法です。

また他には、株主割当増資と言われる既存株主に対して持株割合に応じた新規株式を引き受ける権利を与える方法になります。

この二つが主要な方法になりますが、実際に株式を買い手が現れるのかと、株主の議決権への影響などを検討を行ってから実施する必要があります。

負債を減らす

負債比率を改善する方法の2つ目の方法が、負債を減らす方法です。

負債を減少させるためには、利益を出して負債の分を返済にあてる方法と現在使っていない建物や土地などの資産を手放して、その売却でできた資金を使って返済を行う方法の2つの方法があります。

利益を改善するには、顧客を増やしたり単価を上げたりすることと、仕入原価や外注加工費や販売手数料などの変動費と呼ばれる部分を見直し改善することが大切です。

これらを改善し利益率が上がれば、その分返済に使うことができるため、負債比率を改善していくことができます。

負債比率と近い指標

負債比率と近い意味合いを持つ指標がいくつかあるので解説していきます。

債務償還年数

債務償還年数とは、借入を何年かけて事業者が返済できるのかを表すものです。債務償還年数は借入金を利益で割って計算でき、返済能力を示す目安になります。

返済能力を表す指標は他にもいくつかありますが、これは単位が年になるので感覚で理解しやすい所が利点です。また以下の式で計算できます。

債務償還年数 = 借入金 ÷ (当期純利益 + 減価償却費)

債務償還年数が長ければリスクが高いと言え、逆に債務償還年数が短ければ優良というように判断でができます。また目安は10年と言われていますが、業種によって変わります。

また特定の業種(不動産賃貸業、宿泊業、製造業)は債務償還年数が10年より長くなりやすい傾向にありますので注意しましょう。

不動産賃貸業は、最初にかかる建築費だけでなく、修繕や建て替えなどで銀行の融資が必要になることが多く、またその額も大きくなってしまいがちです。

そのため、不動産賃貸業は普通の目安の倍である20年程度が目安と言われています。更に、宿泊業は宿泊施設に大規模な設備投資や製造業は機械などの設備投資の額が大きくなりやすいため、こちらも20年程度が目安です。

設備投資が高くなりやすい業種は、大きな金額の融資を受ける事が多く、その様な業種は債務償還年数が長くなる傾向にあります。

有利子負債依存度

有利子負債依存度とは、英語では「Dependency on Interest Bearing Debt」です。総資産に対する金利支払いや返済が必要な有利子負債(主に借入金や社債など)の割合です。財務状況の健全性を測るときに用いられます。有利子負債依存度は以下の計算で求められます。

有利子負債依存度 = 有利子負債残高 ÷ 総資産 × 100

企業財務において資金調達を行う元は大きく分けると4つあり

  1. 運転資金
  2. 有利子負債
  3. その他負債
  4. 自己資本(資本金、利益剰余金など)

上記のように分ける事が出来ます。有利子負債の割合が大きい場合には、不況やアクシデントがおきた場合、倒産のリスクが高いと言えるでしょう。

倒産のリスクが高いと評価されると、更に融資が受けにくくなり悪循環に陥ってしまいます。なので企業は出来る限り有利子負債依存度を下げるために企業努力をする必要があるでしょう。

ROE

ROEとはReturn On Equityの略称で、日本語では株主資本利益率と呼ばれています。株主が出資したお金を使って、企業がどれだけの利益を上げたのかを表すものです。

簡単に言うと企業がどれぐらい効率良くお金を稼ぐかを示す財務指標です。以下の計算式で求められます。

ROE(自己資本利益率)=(当期純利益 ÷ 自己資本)×100

負債比率が高い場合は、リスクや安全性の面から言えば問題があると言えますが、負債比率が高く、更に自己資本比率が低ければ財務レバレッジが効いて、ROEが高くなるためリスクが大きくなりすぎない適切な負債比率は、むしろメリットがあると言えるでしょう。


ROEについて詳しく解説している記事はROE(自己利益資本率)とは?計算方法と分析方法・目安や改善法を解説!から。

固定負債

負債の一要素である固定負債は、支払期限が来るのが1年以上後になる負債の事を指します。主に社債、長期借入金、退職給付金、その他繰越税金負債等が該当します。

どの負債も履行時期が1年を越えるものです。また逆に支払い期間が一年以内に支払期限を迎える負債を流動負債と呼びます。このように固定負債は貸借対照表の重要事項となっているのでぜひ把握しておきましょう。

交差比率

交差比率とは、在庫が儲かっているかどうか、つまり在庫の投資効率を見る指標です。在庫管理において適正在庫を把握するために用いられます。交差比率の計算式は以下の通りになります。

交差比率 = 在庫回転率 × 粗利益率

在庫回転率は1年間で何回在庫が入れ替わったかを表すものです。また粗利益率は、売上高における粗利(売上総利益)の割合を表すもので、粗利率と呼ばれることもあります。

自己資本比率

自己資本比率とは、企業がもつ総資産のうちの自己資本の割合の事を指し、負債比率とよく一緒に用いられている指標です。

自己資本は資本金や利益剰余金などが該当し、会社の資産なので返済などを行わなくても良い資本の事を指します。負債比率とは違い、自己資本比率は高ければ高いほど財務状況は安定していて安全だと言えます。

しかし自己資本比率が高い場合レバレッジ効果と言われるものはほとんど期待することができないため、株主はリスクが多少増えても負債を使ってより利益を上げて欲しいと考える事が多いため、負債比率とのバランスが大切と言えるでしょう。

自己資本比率は以下の計算式で求められます。

自己資本比率(%) = (自己資本 ÷ 総資産) × 100


また自己資本比率の一般的な目安は30%と言われており、50%を超えてくると財務状況はかなり安定していると言えるでしょう。こちらも負債比率と同じく業種によって大きく変わるため、同業他社などと比較することが大切です。

まとめ│負債比率を正しく理解しよう

負債比率とは自己資本に対してどれだけ負債があるかの割合を測るための指標です。

よく自己資本比率と対にして用いる事が多いです。負債比率は負債を自己資本で割る事で計算することができます。一般的な負債比率の目安は300%程度でそれを下回ると安全な経営という事です。

負債比率が低いと経営は安定していると言えるでしょう。また負債比率が高すぎると金利の負担によって競争力が落ちたり、設備投資などがしにくくなるなどのデメリットもあります。

しかし株主の視点から言えば適切な負債による投資で利益を上げることを求められるため無理のない適切な負債比率が大切と言えるでしょう。

負債比率を改善したい場合は自己資本を増加させたり、利益率を上げるなどが考えられます。適切な負債比率は業種や業態によって大きく変わるため、同業他社との比較を行うことが大切です。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。