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エンジェル投資家とは?ベンチャーキャピタルとの違いやメリット・デメリットについて解説!

最終更新日:2023-12-10
エンジェル投資家

エンジェル投資家とは?ベンチャーキャピタルとの違いやメリット・デメリットについて解説!

投資をしている人なら見聞きしたことがあるであろう「エンジェル投資家」という言葉。「なんとなく意味はわかるけれど、はっきりと説明はできない」「そもそもエンジェル投資家ってどんな人なの?」という方も多いのではないでしょうか?

エンジェル投資家は近年、日本にも多くなってはきましたが、欧米に比べるとまだ少ない印象があります。

起業してまだ間もない頃。知名度・実績などが少なく、資金不足であっても、金融機関から融資が受けられないというケースも多いものですよね。そんな時に「エンジェル投資家から出資してもらう」という選択肢があります。

そこで今回の記事では、エンジェル投資家とはどのような投資家なのか?また、エンジェル投資家から出資してもらう際のメリット・デメリット、エンジェル投資家の探し方について詳しく解説していきます。

エンジェル投資家の意味や出資してもらうときの注意点、エンジェル投資家の特徴などについて深く理解できる内容となっておりますので、最後までお読みいただけると嬉しいです。

目次

エンジェル投資家とは

エンジェル投資家とは、起業したばかりで実績や信用が少ない会社に対して、資金の出資を行ってくれる投資家のことを表しています。

エンジェル投資家が、資金の出資をするのか否かを決めるポイントは「将来性」や「話題性」、「ビジネスモデル」などの要素を考慮して決定しているのです。金融機関とは違った視点で、出資を判断します。

出資金額もさまざま。金融機関からの融資を断られた場合でも、エンジェル投資家から、思わぬ資金を調達できる可能性もあるでしょう。

また、エンジェル投資家の名前の由来は、金融機関からの融資を断られた企業に出資してくれる様が「まるで天使(エンジェル)」のようだということから名付けられました。

エンジェル投資家の目的とは?

エンジェル投資家は、なぜ実績も信用も少ない企業へ、資金の出資を行なっているのでしょうか?もちろん、エンジェル投資家は「個人」ですので、出資をする理由はさまざまです。しかし、大きく分けて3つの理由が主なものとなっています。

  • 新しい企業を応援したいという純粋な気持ち
  • 業界で名前を残したい、有名になりたいという気持ち
  • 出資の際に受け取る「株式」が目的

このように、投資家によって、出資を行う目的は違ってきます。エンジェル投資家の多くは「富裕層」であり、自身も起業した経験がある人が多いのが特徴です。

純粋に「企業の力になってあげたい」という気持ちで出資を決断してくれる投資家が居る一方で、さらに大きな利益を得ることを目的とし「株式を受け取る」投資家も多いでしょう。将来的に、出資した企業が株式を上場した際の「キャピタルゲイン」を目的としているケースもあります。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの相違点

「エンジェル投資家」と間違えやすい言葉として「ベンチャーキャピタル(VC)」があります。エンジェル投資家とベンチャーキャピタルは、2つとも「資金調達」という点では同じです。しかし、その中身は異なってきます。エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違いは、大きく分けると次の5つです。

  • 出資者
  • 出資してもらう時期
  • 審査基準
  • 出資してもらえる金額
  • 出資までの期間

ここからは、エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの5つの違いについて、順番に確認していきましょう。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違い①:出資者

まず1つ目の違いが、出資者です。エンジェル投資家は「個人」が出資してくれることに対し、ベンチャーキャピタルの場合は「投資会社」が出資します。ベンチャーキャピタルは「法人」としての出資となるため、利益が見込めるケースでなければ出資してもらえず、エンジェル投資家に出資してもらうよりもハードルが高いと言えるでしょう。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違い②:出資してもらう時期

2つ目の違いは、出資してもらう時期です。エンジェル投資家は、起業したばかりの「実績」のない企業に対して出資を行います。一方でベンチャーキャピタルは、起業した会社が軌道に乗り、拡大していく際に出資を行うのが一般的です。この「出資する時期」を見てもわかるように、エンジェル投資家はリスクが大きい状態での出資を行い、ベンチャーキャピタルはリスクを抑えて「安定した利益」を目指していると言えます。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違い③:審査基準

続いて3つ目の相違点は「審査基準」です。先にも述べたように、エンジェル投資家が出資を行うのは「個人の判断」となっていますので、明確な基準はありません。エンジェル投資家は、独断で資金を出資します。将来性や話題性に着目したり、経営方針に共感しての出資も多くなっているのです。それに対してベンチャーキャピタルは、法人として出資を行うので、金融機関と同じような審査基準が設けられています。出資してもらうためには、さまざまな審査をクリアしなければならないため、かなりハードルは高いと言えるでしょう。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違い④:出資してもらえる金額

4つ目の違いは、出資してもらえる金額の違いが挙げられます。エンジェル投資家は「個人」での出資であるため、出資してもらえる金額は、少なくなるケースが多くなるもの。

しかし、ベンチャーキャピタルの場合は、多くの投資家たちからお金を集めます。その集まったお金が出資金となりますので、エンジェル投資家からの出資金額と比べて高額になる可能性が高いのです。ここで注意すべき点は「エンジェル投資家からの出資よりも、ベンチャーキャピタルからの出資金の方が多い」とは、必ずしも言い切れないこと。資金に余裕のあるエンジェル投資家であれば、多額の出資をしてくれるケースもあります。一般的に「ベンチャーキャピタルからの出資額の方が大きい」ことが多くなると言うことです。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違い⑤:出資してもらえるまでの期間

最後5つ目に挙げられる相違点は、出資してもらえるまでの期間の違いです。エンジェル投資家からの出資は、スピーディーになることが多くなります。投資家個人に決定権があり、面倒な手続きなども必要ありません。話し合いの場で、投資してくれるケースも考えられます。

一方ベンチャーキャピタルからの出資金は、数々の審査がありますので、時間がかかってしまうのです。また、審査の結果、出資してもらえない可能性も考慮しなければなりません。

エンジェル投資家から出資してもらう際のメリット

エンジェル投資家から出資してもらうメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?メリットは以下の3つです。

  • 返済義務がない
  • 経営のアドバイスをもらえることも
  • 人脈が広がる可能性がある

ここからは、エンジェル投資家に出資してもらう際の3つのメリットについて解説していきます。

エンジェル投資家に出資してもらう際のメリット①:返済義務がないこと

エンジェル投資家から出資を受けた場合、月々の返済義務がありません。もちろん、利息などの支払いもないのです。普通、金融機関などから融資を受けた際には、元本+利息の返済義務があります。しかし、エンジェル投資家から出資してもらった資金は、返済しなくても良いのです。

これは、起業して間もない時期で、経営が軌道に乗っていないときには非常に大きなメリットとなり得るでしょう。

エンジェル投資家に出資してもらう際のメリット②:経営についてのアドバイスをもらえることがある

エンジェル投資家には、自分も起業を経験したことがあるという人が多くなっています。自身の体験から、企業を大きく成長させた過程や、為になるアドバイスをくれる投資家も。単なるノウハウだけでなく、実体験から助言してくれるケースも多いので、創業したばかりのときには心強い救世主となってくれるでしょう。

エンジェル投資家に出資してもらう際のメリット③:人脈が広がる可能性がある

エンジェル投資家から出資してもらうメリット3つ目は、人脈が広がる可能性を秘めている点です。経営面でのサポートやアドバイスをもらえるだけでなく、別の投資家や取引先などを紹介してもらえることもあります。

人脈が広がることによって、普段は話を聞くことのできない人達との交友関係が生まれたり、事業を拡大させる上でのサポートをしてもらえることもあるでしょう。

エンジェル投資家から出資してもらう際のデメリット

エンジェル投資家から出資してもらう際には、メリットだけではありません。デメリットも頭に入れておかなければ壁にぶつかってしまうことも。デメリットは、大きく分けて下記の3点となります。

  • 経営面で口出しされる可能性がある
  • 出資額が少ないこともある
  • 投資家から、大きな期待をされる

ここからは、エンジェル投資家に出資してもらったときに気をつけたいデメリットについて、3つご紹介していきます。

エンジェル投資家から出資してもらう際のデメリット①:経営面で口を出されることがある

エンジェル投資家に出資してもらった場合、経営に関与してくる投資家も少なくありません。出資の条件として、経営への参加を申し出るケースもあります。この場合、企業の経営方針に口出しされたり、方向性を否定されることも。経営陣の意見が通らないという事態にも発展する可能性があります。

出資してくれたことは大きなメリットですが、エンジェル投資家が経営面に参加してしまうと、些細なことからトラブルやすれ違いが起こってしまうことも。出資を受ける前に「経営には参加するのか?」「参加する割合はどの程度なのか?」などを事前に確認しましょう。

エンジェル投資家から出資してもらう際のデメリット②:出資額が予想より少ないこともある

エンジェル投資家は「成功者」であることに間違いはありませんが、それでも「個人」の投資家です。資産には限りがありますので、出資額が少ないことも考えられます。ベンチャーキャピタル(VC)の場合、億単位の出資が可能なケースもありますので、エンジェル投資家からの出張額が少ないと感じることもあるかもしれません。

予想よりも出資金が少なかったときには、新たに資金調達の方法を考える必要があります。一般的に、エンジェル投資家からの出資額は「数百万前後」と言われていますので、多くの資金が必要な際には、ベンチャーキャピタルや金融機関からの融資も選択肢に入れておきましょう。

エンジェル投資家から出資してもらう際のデメリット③:企業が成長・拡大することへの期待が大きくなる

エンジェル投資家から出資してもらうことで、事業の成長・拡大に、大きな期待が寄せられることとなります。「成功させなければならない」という責任やプレッシャーを感じる場面も多くなるでしょう。

エンジェル投資家は、企業の将来性に期待した上で出資をしてくれます。企業側の経営方針が「ゆっくりと成長していきたい」「会社を大きくしたいわけではない」といったような場合は、エンジェル投資家からの期待が負担になってしまうのです。

エンジェル投資家の探し方とは?

元々、それほど多くはない「エンジェル投資家」を探すためには、一体どのような方法があるのでしょうか?もちろん、エンジェル投資家の方から、あなたの企業を見つけてくれる可能性もゼロではありません。しかし、それは非常に稀なケースです。多くの場合、自分から行動を起こさない限り、エンジェル投資家と出会えるチャンスはありません。エンジェル投資家を探すための方法は、以下の3つです。

  • 知人から紹介してもらう
  • 交流会、またはイベントに参加して知り合う
  • マッチングサイトを利用する

順番に確認していきましょう。

エンジェル投資家の探し方①:知人からの紹介

知り合いや知人に、エンジェル投資家と繋がりのある人がいる場合は、紹介してもらえる可能性があります。同じく起業を経験した知人であれば、実際にエンジェル投資家から出資してもらった経験があるかもしれません。「紹介」の場合、お互いが初対面であっても安心感がありますし、信頼できる知人からの紹介であれば出資してもらえるチャンスも大きくなるでしょう。

エンジェル投資家の探し方②:交流会やイベントへの参加

起業した経営者たちの集まる交流会やイベントは、数多く開催されています。そこに、エンジェル投資家が参加していることも珍しくありません。起業家たちが集まる交流会やイベントには、積極的に足を運ぶようにしましょう。もし、エンジェル投資家が参加していなかったとしても、1人でも多くの起業家たちと知り合うことが大切です。そこで繋がった起業家から、エンジェル投資家と知り合うキッカケが生まれることもあるでしょう。

エンジェル投資家の探し方③:マッチングサイトの利用

エンジェル投資家の探し方として「マッチングサイト」の利用も挙げられます。エンジェル投資家は、そもそも数が少ないため、なかなか出会うことができないという特徴があるのです。

しかし、マッチングサイトを利用すれば「経営面のアドバイスがほしい」「経営には参加してほしくない」などといった希望条件を指定して、エンジェル投資家を探すことができます。こちらの希望通りのエンジェル投資家を見つけやすくなるのがメリットです。

マッチングサイトには、有料のものから無料のものまで数多くあり、その中には「エンジェル投資家」を名乗る詐欺師が存在しているケースも。信用できるサイトを見極めることや、実名での登録が義務付けられているマッチングサイトを利用するなどの対策を取りましょう。

エンジェル投資家を選ぶときの注意点

エンジェル投資家を選ぶときには、いくつかの注意点があります。「出資さえしてくれれば良い」という考えでは、事業を運営していく中で、思わぬトラブルが起きてしまう場合も。

エンジェル投資家を選ぶ際には「相性」が重要です。方向性が一致していることや、経営に関わる頻度、アドバイスの有無などお互いが納得し合える関係性が望ましいと言えます。エンジェル投資家とは、長期的な付き合いになりますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

また、企業の成長のために、新たな投資家を紹介してくれる「人脈」がある人を選ぶことも大切です。創業して間もない頃の問題点は、資金不足だけでなく、人脈が狭いことも挙げられます。会社を成功・拡大へ導くためには、より多くの人脈を広げることも必要です。エンジェル投資家は、人脈が広い人が多くなっています。企業発展のために、さまざまな投資家や取引先を紹介してくれるエンジェル投資家を選ぶことも大切です。

まとめ|エンジェル投資家は心強い存在!出資してもらうための事業計画を作り上げよう

今回の記事では、エンジェル投資家とはどのような人なのか?エンジェル投資家の目的やベンチャーキャピタルとの違い、エンジェル投資家に出資してもらう際のメリット・デメリットなどについて詳しく解説してきました。エンジェル投資家は、起業したばかりの会社にとって、まさに天使のような存在の投資家だということがわかりましたね。エンジェル投資家は企業の「将来性」に対して投資してくれることが多いため、事業計画をしっかりと作り上げることがポイントです。

しかし、メリットばかりではなく、デメリットも頭に入れておかなければなりません。ベンチャーキャピタルや金融機関の融資に比べると出資額が少ないことや、経営に口を出してくるケースも考えられますので、エンジェル投資家を選ぶときには慎重にならなければなりません。

また、数少ないエンジェル投資家を探すためには、自らイベントや交流会に積極的に足を運んだり、インターネット上のマッチングサイトを利用するようにしましょう。

起業したばかりの頃は、資金調達が非常に難しいものです。エンジェル投資家から出資してもらえた場合でも、資金繰りが困難になってしまう可能性も十分に考えられます。エンジェル投資家だけに頼らず、ベンチャーキャピタル(VC)や金融機関からの融資も検討して、うまく軌道に乗せるよう努力しましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。