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ROE(自己利益資本率)とは?計算方法と分析方法・目安や改善法を解説!

最終更新日:2024-03-30
ROEとは?

あなたはROE(自己資本利益率)という言葉を知っていますか。ROEはReturn On Equityの略称で、株主資本利益率とも呼ばれ、 近年経営における企業の収益性を測る指標として注目されています。

また投資家が投資先として、適切かどうかを判断する基準としても重要な指標です。 ここではROEについて、計算方法や適正目安、分析方法などについて解説していきます。

ROEの意味とは?

ROEとは、株主が投下した資本(自己資本)に対してどのくらいの利益(当期純利益)を生み出せたかを表す指標です。

自己資本とは?

自己資本とは企業の総資本のうち返済する必要がない資本のことで、株主資本と呼ばれます。 総資本は自己資本と他人資本で構成されており、資本金や法定準備金、余剰金などの純資産が自己資本となります。

当期純利益とは?

当期純利益とは一会計期間(基本は1年間)に事業活動で得られた収益から、人件費や仕入代金などの様々な費用や税金を差し引いた利益の事です。 

当期純利益は様々な企業活動の結果として計算されるものであり、それだけを見て判断するのではなく、その内訳もしっかり確認することが大切といえます。

ROEがなぜ重要なのか?

ROEは、企業の経営状況を評価する際に非常に重要な指標です。近年は経済誌や新聞などでも頻繁に見かけるようになりました。

株式会社は株主が出資した自己資本を元に運営されているため、「株式会社は株主のもの」というのが本来のあり方であり、 経営者は株主に利益を配当する責任を負っているという認識も必要です。

ROEは業種や業態に関係なく株主の視点での収益性(利回り)を示す指標であり、企業の純利益が金額として高くても、 ROEが低ければ株主にとっては投資のリターンが低いという事になります。

このような場合は、株主は経営陣に対してROEの改善を要求することになります。 株主は当然利益を追求するために企業に投資しますが、ROEが株式よりリスクの低い国債の利回りを下回っている会社への投資は、 その会社に利益以外の特別な思い入れがある等の理由がない限り、魅力がないと評価されてしまうでしょう。

より高いROEの会社が投資すべき企業というのが一般的な評価です。米国では前述した「株式会社は株主のもの」という考えが広く浸透していたので、 ROEが重要指標と認識されていました。

日本でもROEの重要性が認識されるようになったことは、日本企業の評価基準が欧米型に近づいて来ている兆候とも言えるでしょう。

ROEの計算方法は?

ROEが重要な指標であることはわかりました。 ではROEはどのように計算されるのでしょうか。 自己資本や当期純利益の計算方法と合わせて確認しましょう。

自己資本と当期純利益の計算方法

自己資本とは、外部へ返済する必要性がない資本の事を指します。 具体的には貸借対照表上の、

  • 資本金
  • 資本剰余金
  • 利益剰余金

の3つです 。

総資本から他人資本を引いた金額となります。

当期純利益とは一会計期間(基本は1年間)に事業活動で得られた収益から、人件費や仕入代金などの様々な費用や税金を差し引いた利益の事です。

なお利益には売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益があり、 まず売上総利益とは、売上高から商品の原価を差し引いた利益の事を売上総利益(粗利)と言います。 

その次に営業利益とは、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いた利益を営業利益と言い、次に経常利益とは、営業利益と営業外収益から営業外費用を差し引いた利益の事です。

また税引き前当期純利益とは、経常利益と特別利益から特別損失を差し引いた利益で税引前当期純利益と言い、最後に当期純利益は税金(住民税や事業税、法人税)などを差し引いて、法人税調整額を計算した利益を当期純利益と言います。

ROEの計算方法

ROEは以下の式で計算されます。 

ROE = (当期純利益 ÷ 自己資本) × 100 

実際の計算例は以下の通りです。

A社
資本金50
資本剰余金30
利益剰余金20
自己資本100 = 資本金50 + 資本剰余金30 + 利益剰余金20
当期純利益 20

ROE(%) = (20 ÷100) ×100

ROE(%) = 20%

B社
資本金5,000
資本剰余金3,000
利益剰余金2,000
自己資本10,000 = 資本金5,000 + 資本剰余金3,000 + 利益剰余金2,000
当期純利益 200 


ROE(%) = (200 ÷ 10,000) × 100

ROE(%) = 2%

A社とB社を比べると当期純利益はB社のほうが多いですが、ROEはA社のほうが高いです。 そのためA社のほうが投資効率に優れていると言えます。

ROEの分析方法

計算されたROEはどのように分析すればいいでしょうか。

ROEの分析方法を確認していきましょう。

ROEの分解式

ROEはさらに分解して計算する事ができます。

それではどのようにROEを分解すればいいのか解説していきます。

ROEの分析方法の一つが、デュポン分析です。

デュポン分析は企業の財務状況を複数の要素に分解する方法であり「デュポンモデル」とも呼ばれています。

デュポン分析の公式は次のとおりです。

ROE =売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

この3つの要素は、それぞれ異なる計算式によって表されます。

ROE =(純利益 ÷ 売上高)×(売上高 ÷ 総資産)×(総資産 ÷ 株主資本)

それではデュポン分析の公式を構成する要素について確認していきましょう。

売上高当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジとは

売上高当期純利益率とは、売上高に対する純利益の比率で、純利益を売上高で割って計算します。売上高当期純利益率の計算式を表すと、次のようになります。

売上高当期純利益率 = 純利益 ÷ 売上高

売上高当期純利益率は広く使われる経営指標であり、「利益率を向上させるには、費用削減や価格引き上げ、またはその両方が必要」という考え方が一般的です。
売上高当期純利益率が上昇すれば、ROEも向上します。

総資産回転率とは、企業が総資産をいかに効率的に活用して売上や収益を生み出しているかを示す指標です。
具体的には、売上高を総資産で割って計算され、総資産回転率の計算式を表すと次のようになります。

総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産

総資産回転率が高ければ高いほど、より少ない投資でより多くの売上や収益を生み出しているという事です。
したがって、投資の効率を示す指標とも言えます。

財務レバレッジとは、企業がROE(自己資本利益率)を向上させるために負債をどれだけ活用しているかを表すもので、具体的には総資産を株主資本で割って計算する事ができ、
財務レバレッジの計算式を表すと次のようになります。

財務レバレッジ = 総資産 ÷ 株主資本

財務レバレッジが増加すると、ROEも増加します。しかし、財務レバレッジが高まっているという事は、総資本に対する負債の割合が増えている事を示すため、適度な負債活用を心掛けることが重要です。


事業運営や成長に必要な資金を調達するために負債を活用することは一般的ですが、過度の負債活用は債務超過のリスクを高める可能性があります。


デュポン分析の公式に財務レバレッジを含めることにより、投資家は企業の財務状況を正確に評価した上で、投資先の判断をすることができるでしょう。

ROEの改善方法

ではROEを高めるにはどうしたらいいでしょうか。

それでは売上高当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3つの観点から見ていきましょう。

売上高当期純利益率の向上

売上高当期純利益率は当期純利益÷売上高により求められます。 売上高当期純利益率を向上させるには、以下の2つの方法が考えられ、 まず売上原価を削減する、販売費および一般管理費を削減することにより、当期純利益を増加させる事になります。

売上原価とは、製造業ならば製品製造に伴って発生するコストで、小売業であれば商品の仕入に伴って発生するコストです。

売上原価を削減するためには、例えば商品の仕入や原料の仕入先と交渉して、価格の見直しを行うことや、他にさらに安い仕入先などを探すのも1つの方法になります。

また、もう1つの方法は外注している作業などを内製化できないかなどの見直しも有効な手段の1つです。

総資産回転率の向上

総資本回転率は売上高÷総資産により求められます。 総資本回転率を向上させるには、以下の2つの方法が考えられ、まず1つ目は売上を増やすということです。総資産の値が同じでも売上高を増やせば、総資産回転率は高くなります。

売上を伸ばすには、定型業務をITツールや新しいシステムを導入して生産性を向上させる事や、 新たな販路を拡大する方法が考えられます。 2つ目の方法は不要な資産を売却することです。

会社が保有している総資産を減少させれば、売上高はそのままでも総資産回転率が高くなります。 売上に寄与していない資産を見極めて、売却することが大切です。

財務レバレッジの向上

財務レバレッジは総資産÷株主資本により求められます。 財務レバレッジを向上させるには、借入や社債などで資金調達を行い、収益機会を積極的に獲得する方法があります。 

ですが財務レバレッジが高すぎる場合、借入金の返済などで、資金繰りを圧迫してしまうリスクがあります。逆に低すぎる場合も成長機会を積極的に追求してないとも言えるでしょう。 

適切な財務レバレッジを保つことは、企業経営において重要な要素であり、必要な収益機会への投資を実現するために欠かせない要素です。

ROEの目安は?

ではROEの目安はどのくらいなのでしょうか。 ROEの目安や活用する際の注意点などを確認していきましょう。

ROEの目安は8%

ROEの目安は業種によって異なりますが、8〜10%以上であれば、優良企業と判断されることが一般的とされています。 2022年度の日本の上場企業のROE平均は約9%程度のようです。

ROEを見る際の注意点

これまでROEについて解説してきましたが、ROEを見る際の注意点も説明します。 ROEを分解した式をわかりやすく言い換えると、利益率の高さ、資産を効率よく使えている、負債への依存度と言い換えることもできます。

会社が意図的にROEをあげる方法はたくさんあるので、同業他社と比べてROEが高い場合でも、様々な側面からその収益性を確認することが大切です。

まず、負債が多いとROEは高くなる傾向にあります。先ほど説明した通りROEが高くても、財務レバレッジが高すぎる場合は倒産リスクがあるので注意が必要です。

また通常の営業活動以外の非経常的な利益でROEが一時的に上昇する場合があるので、その会計期だけを見るのではなく過去3年分などのROEを調べて、 通常の営業活動によるROEはどれぐらいなのかを確認する必要もあります。

まとめ│ROEは投資効率に欠かせない指標!ROAも合わせて活用しよう

この記事ではROEに関して解説していきました。
ROEは投資効率を測るうえで重要な指標です。投資判断をしたりM&Aをしたりする際には、着目していきましょう。


企業の実態等は、ROEだけでは判断できません。ROAなどのほかの指標も合わせて活用し、より正確に企業や事業の状態を分析できるようにしましょう。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。