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プライベートエクイティ(PE)とは?PE投資のメリット・デメリットを解説

最終更新日:2023-12-10
プライベートエクイティ(PE)


プライベートエクイティ(PE)とは、未公開株式のことで証券取引所では売買できない株の事です。このプライベートエクイティに関連する投資をPE投資と呼びます。ここではPE投資の種類やメリット・デメリット等を解説していきます。

プライベートエクイティとは?

プライベートエクイティ(PE)とは、非上場企業の株式のことです。非上場企業への株式投資をプライベートエクイティ投資(PE投資)と言います。

プライベートエクイティ投資(PE投資)とは?

プライベートエクイティ(PE)投資は、非上場企業に対する資本投資の一形態です。PE投資を行う専門の投資会社や機関投資家は、おもに「PEファンド」と呼ばれます。PEファンドは、彼らが投資した企業の価値を向上させ、最終的には公開株式(IPO)を発行するか、株式を売る事で収益の獲得をします。

PEファンドのアプローチ

PEファンドは、多くの場合経営のコントロールを取得するためにほぼ全ての株式を取得します。かつては、一部のPEファンドが「ハゲタカファンド」として知られ、従業員の大規模解雇や取引相手との契約の一方的な終了など、厳格な改革を実行し、周囲に影響を及ぼすことがありました。

変化するPEファンドの姿勢

しかし、近年、PEファンドの姿勢は変わりつつあり、ネガティブなイメージも薄れています。多くのPEファンドは、持続可能な成長や従業員の福祉に焦点を当て、社会的責任を果たす方針を取り入れています。PE投資は、企業に成長の機会を提供し、市場競争力を高める一助となることもあります。

結局のところ、PE投資は企業と投資家の双方に利益をもたらす可能性を秘めた方法であり、PEファンドのイメージも良いものに変化してきています。

企業がPE投資を受ける理由

企業がPE(プライベートエクイティ)投資を受ける背後には、いくつかの魅力的な理由が存在します。ここでは、なぜ企業がPE投資を検討するのか、その主な理由を3つ解説します。

  1. 経営のプロフェッショナルからの支援

PEファンドは経営のプロフェッショナルで構成されており、経営改善やノウハウ提供に優れたリソースを持っています。企業がPE投資を受けることで、経営の専門知識を得る機会が増え、効果的な経営戦略の策定と実行が可能になります。これは、企業の成長と競争力強化に役立ちます。

  1. 成長と収益の促進

PE投資は、企業の成長を加速し、収益を増加させる道を提供します。PEファンドは、中・長期的なビジョンを持ち、投資を通じて企業を支援します。成長後には、IPO(株式公開)や株式売却などにより、企業とPEファンド双方に利益が生まれ、Win-Winの関係が構築されます。

  1. 資金調達の柔軟性

PE投資は、銀行からの従来の融資に比べて資金調達が容易です。銀行融資には信用や担保が必要ですが、PE投資では企業の将来性と成長ポテンシャルが評価されます。特にベンチャー企業など、まだ信用や担保が不足している場合でも、PE投資は選択肢の一つとして考えられます。

つまり企業がPE投資を受ける理由は、専門的なサポート、成長の促進そして資金調達の機会を追求するためです。PE投資は、企業の発展に向けた重要な足がかりになりえます。

PE投資の対象

PE(プライベートエクイティ)投資の対象となる領域は、大きく分けて以下の3つに分類できます。それぞれの対象について詳しく説明します。

①大企業の子会社/非主流部門

市場で既に確立された大企業は、時折業績の振るわない子会社や非主要部門の売却を検討する場合があります。このような場合、PEファンドが将来的なポテンシャルを見込み、売却対象となる可能性があります。PEファンドは、これらの子会社や部門を再編成し、新たな成長機会の探求を通じて、価値を高めることを目指します。

②オーナー系中堅・中小企業

オーナー経営の中堅・中小企業は、経営者や親族によって所有され、通常は自己資本によって経営されています。しかし、現在は後継者不足が深刻化していて、良い製品やサービスを有していても、後継者が見つけられずに事業継承できない事が多いです。これらの企業もPE投資の対象となる場合があります。

PEファンドは、企業価値を高め、成長を促進し、将来的な売却を検討することで、オーナー経営の中堅・中小企業を支援します。

③ベンチャー企業・スタートアップ企業

ベンチャー企業やスタートアップ企業は、高度な技術や新しい製品・サービスを有していても、経営のノウハウや経営が上手くいかない事が多々あります。PEファンドは、こうした企業に投資し、経営支援や上場準備を通じて成長を促進します。

このような企業にとってPE投資は、資金調達や成長の加速手段として役立ちます。PEファンドが持つ経営ノウハウや上場へのサポートを通し、IPOを目指してPE投資を行います。

PE投資の種類

PE投資にはいくつか種類があるので、以下で解説していきます。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業やスタートアップ企業への投資を対象としています。通常、投資ファンドや投資会社が、将来の成長を見込んだ未上場の新興企業(ベンチャー企業)やスタートアップ企業に投資します。

また取得する株式を半分以下に留めることも多々あります。その場合は、投資を受けつつ経営のコントロール権もそのままです。これにより、資金調達に成功し、急速な成長と競争力の強化を実現できるでしょう。

バイアウトファンド

バイアウトファンドは、企業買収を行う投資方法です。具体的には、優れた製品やサービスを提供しているが、後継者不足や経営不振に陥っている企業を対象に投資して経営の改善を行います。

PEファンドは企業の再生を進めて企業価値を上昇させ、最終的に売却し利益を獲得する事が目的です。銀行からの融資が難しい企業にとって、魅力的な選択肢となります。

企業再生ファンド

企業再生ファンドは、新規事業の失敗や債務超過により経営不振に陥った企業を対象とします。バイアウト投資と異なり、業績不審で利益が低迷している企業も対象となります。株式を割安で取得し、企業の再生を試みます。企業再生の方法には「ターンアラウンド」(中長期的な改善)と「ワークアウト」(短期的な改善)があります。

ターンアラウンドは、事業構造や組織構造、収益構造などの企業の根幹について改善を行い、中長期的に企業価値の向上を目指します。ワークアウトは、企業の資金収支を見直して短期的に企業価値の向上をさせる事が目標です。ただし、リスクも高く、失敗した場合には損失が発生する可能性があります。

ディストレスファンド

ディストレス投資は、経営破綻寸前または経営破綻した企業を対象とします。PEファンドは、経営破綻した企業が発行した株式を取得し、経営再建を行い価値を高めて株式等を売却し、利益を得ることが目的です。ただし、この投資には大きなリスクが伴い、専門的な知識と経験が必要です。一般投資家には敷居が高いため、競合も比較的少ない傾向があります。

PE投資を受けるメリット

PE投資にはいくつか種類があります。以下で解説していきます。

PE投資のメリット①│資金提供を潤沢に受けられる

潤沢に資金提供を受けられることが、PE投資を受ける一番のメリットです。PE投資を通じて、企業は自身の価値に見合った資金を調達できます。資金は、通常の銀行融資とは異なり、返済に追われることなく経営に集中できるため、企業の成長や事業展開に大きく寄与します。

PE投資のメリット➁│充実した経営支援を受けられる

PEファンドは、投資対象企業の企業価値を高め、利益の追求を目的としています。そのため、企業は専門的な経営支援が受けられます。経営課題の解決や業績向上のために、専門家や経営プロフェッショナルからのサポートを受けることができ、企業の競争力を向上させる助けとなります。

PEファンドから得た知識や経験は、ファンドのイグジッド後にも残るため長期的な成果につながるでしょう。

PE投資のメリット➂│事業継承問題を解決できる

中小企業において後継者不足は深刻な問題とされています。優れた製品やサービスを提供しているにもかかわらず、後継者が見つからずに事業継承に悩み廃業を考える企業が少なくありません。PEファンドは、幅広い業界や経営者ネットワークを持っており、適切な人材の紹介やM&Aを通じて、後継者問題を解決できる可能性があります。

PE投資のメリット④│IPOやM&Aなどの支援を受けられる

PEファンドは、新規公開株式(IPO)や企業買収(M&A)を通じて収益を追求します。企業がIPOを目指す場合、PEファンドは必要な情報を提供し、プロの支援を受けながらIPOを実現する手助けを行います。また、M&Aの際も、PEファンドやM&Aアドバイザーの支援を受けることで、スムーズな交渉と合意達成が可能となります。

PE投資は、これらのメリットを通じて企業の成長と競争力向上を促進し、持続的な成功を実現するための有力な手段と言えます

PE投資を受けるデメリット

これまでPE投資のメリットについて説明してきましたが、もちろんデメリットも存在します。以下でそのデメリットについて解説します。

PE投資のデメリット①│ファンドはいつかイグジットする

PEファンドは、出資した企業から将来的に資金回収を求めます。通常、IPO(新規公開株式)やM&A(企業買収)によって回収を行い、ファンドが離脱することを「イグジット」と呼びます。企業はPEファンドの出資に頼り過ぎると、イグジット後に問題が発生する可能性があります。

そのため、PEファンドの離脱後の経営戦略や資金調達方法を検討する事が重要です。

PE投資のデメリット➁│自由な経営が出来なくなる

PE投資を受けると、PEファンドは通常、企業の株式の大部分を取得します。このため、経営はPEファンドの決定に従う必要があります。経営者とPEファンドが異なるビジョンや利益に関して合意できない場合、対立が生じる可能性があります。経営者が独自の戦略を追求したい場合、PE投資は適していません。

PE投資を検討する際には、これらのデメリットにも注意を払わなければなりません。企業の長期的な成功に向けて、PE投資がどのようにフィットするかを検討しましょう。

PE投資の流れ

PEファンドが行うPE投資のフローは下記のとおりです。

  1. 資金調達(ファンドレイズ)
    ファンド運営者がPEファンドを組織して、投資家から出資を募ります
  2. 投資(ソーシング、エグゼキューション)
    投資先を選んで、未上場企業に投資を行います
  3. 運用(PMI、バリューアップ)
    経営課題の解決と企業価値の向上を行います
  4. 投資回収(イグジット)
    投資先を売却して、PEファンドが投資を回収します
  5. 収益分配
    出資者に収益を分配します

PE出資は、ファンドを運営しているゼネラル・パートナー(GP)の出資と投資家から出資を募り資金調達をします。次に、投資先を選び、投資先の未上場企業へ投資をし、経営課題の解決を行って行き企業価値を向上させます。

最終的な目標は、株式公開(IPO)またはM&Aで売却して利益を獲得することです。またPE投資が行われる期間は、ファンドによって異なりますが、3〜5年が多いです。

PE投資の倫理的な側面:社会的貢献と環境への配慮

PE(プライベートエクイティ)投資は、利益追求が一般的に注目されますが、そのエシカル(倫理的)な側面も重要です。PE投資が社会的貢献と環境への配慮にどのように貢献しているかを見ていきましょう。

  • 持続可能性への投資

多くのPEファンドは、持続可能な事業への投資に焦点を当てています。再生可能エネルギー、クリーンテック、環境に配慮したプロジェクトへの資金提供が、環境保護に役立っています。

  • 雇用機会の創出

PE投資により、新しい企業の成長と拡大が促進され、雇用機会が増加します。地域社会において雇用機会を提供することは、社会的な側面での貢献です。

  • 地域経済への貢献

PEファンドは投資を受けた企業を成長させ、その地域経済に貢献します。税収の増加や地域の経済的な発展に寄与します。

  • 社会的課題への関与

一部のPEファンドは、社会的な課題に焦点を当てた投資を行っています。教育、医療、貧困削減など、社会的な問題に取り組むプロジェクトへの資金提供が、社会的貢献の手段となっています。

  • ガバナンスと透明性

PEファンドは、投資対象企業のガバナンスと透明性の向上にも寄与します。これにより、企業の倫理的な運営が推進され、社会的に信頼性が高まります。

PE投資が利益だけでなく、社会的な側面にも焦点を当てている例が増えています。これが、PE業界が社会的貢献と環境への配慮に向けて進化している一因です。利益のみならず社会的に意味のある投資も増加し、PEファンドの悪いイメージは払拭されつつあります。

まとめ│PE投資のメリット・デメリットを理解しよう!

これまでPEについて解説してきました。PE投資を受けると、資金不足の解消や経営課題を解消したり、事業の後継者を見つけられます。

ですがその一方、好きに経営することができなくなります。またイグジットした後どうするか考えておかないといけません。昔はハゲタカファンド等と揶揄されていましたが、現在は昔のような一方的な契約解除や社員の一斉解雇などはほとんどなくWin-Winになる事が多いです。

そのため事業が上手く行っていない企業の場合は、PE投資を受けるのも選択肢に入るでしょう。このようなPE投資のメリット・デメリットをしっかり把握しておきましょう。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。