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持株会社とは?持株会社のメリット・デメリットや設立方法を解説!

最終更新日:2023-12-10
持株会社とは

一言で「会社」と言っても、さまざまな種類があります。多くの人にとって、1番聞き馴染みがあるのは「株式会社」かもしれません。株式会社と聞くと、なんとなくイメージできますが「持株会社」については、うまく説明出来ない方も多いですよね。

メディアや雑誌でよく目にする「持株会社」とは、一体どのようなものなのでしょうか?また、持株会社にした場合のメリットやデメリットも気になるところです。

そこで今回の記事では、持株会社とはどのようなものなのか?持株会社の種類や設立方法、持株会社のメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。最後までお読みいただくと日本で近年、増加の一途を辿る「持株会社」について理解できる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。

持株会社とは

持株会社とは、別名「ホールディングカンパニー」とも呼ばれており、別の会社の株式を保有することです。「子会社」の株を持つことが一般的となっています。

「ホールディングカンパニー」という別名からもわかるように「ホールドする」=「別の会社の株式を保有する」という意味を持っているのです。別会社を自分の会社の支配下に置くという目的を持っています。

持株会社には3種類のタイプが存在しており「他の会社を支配すること」を本業にしている会社と「本業のかたわら、他社の支配を行う」会社、そして「金融関係の企業によって設立」されている持株会社の3種類です。

日本企業における、持株会社の一例は下記の通りとなります。

  • 第一生命ホールディングス
  • 永谷園ホールディングス
  • 三菱UFJフィナンシャルグループ
  • 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
  • RIZAP GROUP(ライザップグループ)

ここに挙げた会社は、持株会社のほんの一例に過ぎません。日本には、数多くの持株会社があるという事実を理解しておきましょう。

持株会社の種類とは?

持株会社にはいくつかの種類があります。現在、大きく分けて3つの種類に分類されていますので、一つずつ確認していきましょう。

持株会社①:事業持株会社

事業持株会社とは、自らの会社で事業を営みながらも、その他の会社の株式を保有して支配をする企業を指しています。株を保有し続けながら、自分たちの会社も運営していくスタイルです。

持株会社②:純粋持株会社

純粋持株会社とは、子会社の株を所有し、自分たちは事業を行うことはありません。他の会社を自らのグループの傘下に置き、管理・コントロールすることが目的です。

子会社の株式を所有し、実質的な支配下に置くことが可能となります。そのため、決定権や経営方針などは、純粋持株会社にあると言えるのです。

純粋持株会社は、商売をしたり物を作ったりするわけではなく、保有している子会社の株式の配当が利益となります。

持株会社③:金融持株会社

金融持株会社とは、金融機関における「純粋持株会社」のことです。自らは、事業を行うことなく、あらゆる金融機関の株主となり管理・コントロールをしています。純粋持株会社との違いは、子会社が全て金融機関であるという点です。

「持株会社」が解禁された歴史とは?

実は、現在これだけ多くの持株会社があるにも関わらず、以前の日本では原則「持株会社」は禁止とされていました。

持株会社が解禁されたのは1997年6月。独占禁止法の改正によって、規制が解除されることになったのです。それまでの日本では、支配力が集中してしまうことを恐れ、持株会社を厳しく禁止していました。力のある大企業だけに利益が集中し、中小企業やそれ以外の会社に、利益が行き渡らないことが現状だったのです。

それが何故、1997年に解禁されたのか?その背景には、他国に対抗する経済成長・日本全体の構造改革・グローバル化などが挙げられます。ただし、解禁するにあたって「独占禁止法の目的に反することのない範囲」での持株会社が解禁されたのです。

そこから、多くの大企業が先陣を切って持株会社化をスタートさせます。因みに、日本で第一号の純粋持株会社となったのは、1999年4月の「株式会社大和証券グループ」です。

持株会社のメリットとは?

日本の企業において、これだけ持株会社が増加の一途を辿っているのは、多くのメリットがあるからだと考えられます。持株会社のメリットは次の3つです。

  • リスクを分散できる
  • M&Aを展開しやすくなる
  • 事業の効率化を図れる

それでは順番に確認していきましょう。

持株会社のメリット①:リスクを分散できる

大きな企業で、何か不祥事やトラブルが起きた場合、すべての責任を負うことになります。イメージの低下にも繋がり、うまく機能しなくなるケースも考えられるのです。

しかし、持株会社で所有しているグループ(子会社)は、それぞれが独立しているためリスクを抑えることができます。

反対に、子会社の経営が悪化したり大きな危機的状況に陥った場合には、持株会社がその負債を負うことはありません。

持株会社のメリット②:M&Aを展開しやすくなる

持株会社のメリットとして「M&Aがスムーズになること」も挙げられます。M&Aとは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」を略した言葉で、ときに合併・買収だけでなく「提携」も含めるケースがあるので注意が必要です。

持株会社は、そもそも株式の保有のために運営している企業が多いため、買収が非常に進めやすくなります。

また買収後に、買収した会社の社員の多くが離職してしまうといったトラブルも避けられるでしょう。これは、持株会社と子会社は、あくまでも別会社ということを意味しています。

M&Aをスムーズに展開することで、企業の拡大にも繋げていけるのです。

持株会社のメリット③:事業の効率化を図れる

持株会社のメリット3つ目は、事業の効率化を図れるということにあります。親会社である持株会社が、子会社全体の経営方針や対策・業務内容などを細かく指示できるため、子会社はやるべき事業に集中して取り組むことができるのです。これによって、グループ全体の最適化に繋がっていきます。

また、親会社は指揮を取ることに専念できるので、子会社との連携をうまく取りながら、企業の発展に力を注ぐことができるでしょう。

持株会社のデメリットとは?

持株会社にはデメリットも存在しています。持株会社化を考えている際には、事前にデメリットを理解しておくことで、トラブルを回避できることも多いでしょう。持株会社のデメリットとして挙げられるのは、下記の2つです。

  • ランニングコストが増加する
  • グループ内での連携が取りづらくなる

それでは一つずつ見ていきましょう。

持株会社のデメリット①:ランニングコストの増加

持株会社のデメリットとして1つ目に挙げられるのが、ランニングコストの増加です。持株会社化することによって、独立した会社が増えるということになります。それぞれの独立した会社ごとにバックオフィス部門を設置しなければなりません。

持株会社でなければ、すべての子会社の経理業務などを親会社が引き受けることができますが、持株会社の場合はそれができません。それぞれが独立した会社としてみなされていますので、どの子会社にもバックオフィス部門を作る必要性があるのです。

それにより、人員確保のコストや業務管理コストなどが上がってしまい、想像以上に経費がかかってしまうことも考えられます。グループ内の企業が増えるほど、必要になる経費も増えて、ランニングコストの増加に繋がるでしょう。

持株会社のデメリット②:グループ内での連携が取りづらくなる

持株会社のデメリット2つ目は、グループ内での連携が取りづらくなる点です。持株会社は、親会社と子会社という立場であっても、それぞれが独立しています。親会社は子会社に対して、経営方針や業務内容などの細かい指示を提示するのが一般的。しかし子会社が、この要請に従わないケースも出てくるという可能性があります。すべての権限を親会社が持ってしまっては、反発する子会社も出てきてしまうのです。意思疎通が難しくなり、業務全体がスムーズに機能しなくなる場合もあるでしょう。

親会社はバランスを保ちながら、グループ全体を統率していかなければならないという役割がありますので、グループが大きくなるほど経営は難しくなるのが現状です。

持株会社の設立方法とは?

それでは、実際に持株会社を設立する際には、どのような方法があるのでしょうか?持株会社を設立するためには、以下の2つの方法があります。

  • 株式移転方式
  • 会社分割方式(抜け殻方式)

それでは順番に確認していきましょう。

持株会社の設立方法①:株式移転方式

持株会社の設立方法1つ目は、株式移転方式です。株式移転方式とは、親会社を新たに設立して、子会社の株式をすべて親会社へと移動させることを言います。

このときに設立した親会社は「株式移転完全親会社」と呼ばれ、すべての株式を移転した子会社のことを「株式移転完全子会社」と呼びます。

株式移転方式は、既存の子会社の事業に影響を及ぼす可能性が低いことや、再編する際の手続きがスムーズに行えることなどのメリットが挙げられるでしょう。

持株会社の設立方法②:会社分割方式(抜け殻方式)

持株会社の設立方法2つ目は、会社分割方式、別名抜け殻方式です。会社分割方式(抜け殻方式)は、株式移転方式とは反対に、既存の会社の下に「子会社」を新たに作ることを言います。親会社は、子会社の株式だけを保有して、事業に携わることはないため「抜け殻状態」になることから、このように呼ばれることとなりました。

新たに設立した子会社に、すべての事業を移動させるだけですので、費用が少なくて済むというメリットがあります。しかし、新たな法人が事業

を運営することになるため、登録手続きや免許取得などの手間がかかることもあるでしょう。

まとめ|持株会社には数多くのメリットがあるが、統率が難しくなることも

今回の記事では、持株会社とはどのようなものか?持株会社の種類やメリット・デメリット、持株会社の設立方法について詳しく解説してきました。

持株会社には「事業持株会社」や「純粋持株会社」また、金融機関の純粋持株会社である「金融持株会社」の3種類がありましたね。

1997年以前は禁止されていた持株会社も、独占禁止法改正によって急速に増加の一途を辿っているのが現状です。

また持株会社には、リスクの分散や事業の効率化などのメリットがある一方で、グループ間の連携が取りづらくなるというデメリットもありました。会社が大きくなるにつれて、統率が難しくなるという点にも気をつけなければなりません。

しかし、持株会社の特性をしっかり把握できれば、効率良くグループ経営を行うことが可能です。持株会社化を実現させ、さらなる飛躍を目指してくださいね。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。