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ディスクロージャーとは?メリット・デメリットや関連用語を解説!

最終更新日:2023-12-10

近年「ディスクロージャー」という言葉を見かけることが多くなりました。「よく目にするけれど、正確な意味が分からない」「ディスクロージャーとIRって何が違うの?」と言った疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

ディスクロージャーとは、ビジネス用語で「情報開示」または「情報公開」を意味しています。しかし、それだけではピンと来ないですし、どういった目的・影響があるのかも把握することができません。

そこで今回の記事では、ディスクロージャーの詳しい内容やディスクロジャーのメリット・デメリット、ディスクロージャーの種類や関連用語についても解説していきます。多くの投資家の方に有益な情報となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

ディスクロージャーとは

ディスクロージャーとは「情報開示」または「情報公開」という意味です。主に、投資家や株主・取引先や債務者などの利害関係のある相手に対して、企業側が事業内容や経営状況といった詳細を公開することを「ディスクロージャー」と言います。

Disclosure(ディスクロージャー)の語源の由来は「dis(ディス)」が否定的な意味を表しており「close(クローズ)」は、閉じる・閉ざすなどを指す言葉です。その2つの単語が一緒になりDisclosure(ディスクロージャー)は「閉ざさない」=「情報を公開する」という意味となっています。

多くの投資家が、このディスクロージャーによる公開情報を参考にして投資先を決めたり、さまざまな判断材料として役立てているのです。

ディスクロージャーの種類は?

ディスクロージャーには、大きく分けて2つの種類があります。法律で定められているものと、公開する義務はない自主的なものの2種類です。

  • 法律や規則によって情報公開が義務化されているディスクロージャー
  • 自主的に公開している任意のディスクロージャー(「IR」とも呼ばれる)

法律で定められているディスクロージャー

1つ目は、法律や規則で定められているものです。企業側が情報公開を怠ってしまうと、厳しい処罰の対象となってしまいます。

それぞれの企業によって、提出しなければならない情報は異なります。が、有価証券を発行している企業で、売出価格の総額が1億円を超えるケースや勧誘人数が50名以上の場合にが提出を義務付けられているのは「有価証券届出書」です。また、上場している企業であれば「有価証券報告書」に加えて「四半期報告書」を提出することが定められています。

また、企業の業績が著しく悪化または上昇した場合において、資料や文書を作成・公開が定められているケースも。

自主的に公開しているディスクロージャー

2つ目は、公開義務はありませんが、企業側が自主的に情報開示をしているディスクロージャーです。

自主的に公開しているディスクロージャーは、別名「IR」とも呼ばれています。

どちらもディスクロージャーと呼ばれることが多く、ディスクロージャーを細分化すると「法律で定められているディスクロージャー」と「IR(自主的に情報開示)」になるということです。

それでは何故、公開義務がないにも関わらず、企業側は自主的に情報を開示しているのでしょうか?企業が任意のIR活動を行うことには、多くの目的があります。

  • 投資家との信頼関係を築くため
  • 自社への投資を検討してもらうため
  • 企業の知名度や認知度を上げ、価値を高めるため

このように、投資家や取引先・株主などにもメリットがありますが、自ら情報を公開することで自社への利点も多いのです。IR活動を行うと、自社の株価への影響も大きく、資金調達する際にも効果的になります。知名度や認知度が上がると、人材が集まりやすくなる点でもIR活動はメリットと言えるでしょう。

IRの活動は、企業のホームページで、誰でも気軽に閲覧できます。また、対面での説明会も開催されますので、より詳しい内容を知りたい時には説明会に参加すると良いでしょう。

ディスクロージャーのメリットとは?

ディスクロージャーには、多くのメリットがあります。一つずつ確認していきましょう。

ディスクロージャーのメリット①:企業の透明性がアピールでき、信頼を得ることができる

1つ目のメリットは、企業の透明性をアピールすることで、投資家や取引先からの信頼を勝ち取ることができるという点です。これは、企業側のメリットであり、大きな効果を期待できます。どのような経営状況なのか?活動状態や財務状況は?といった、投資家や取引先の疑問や不安を明確に開示することで、信頼性と安全性をアピールできるのです。クリーンなイメージを持ってもらうことで、自社に投資してもらえるチャンスも広がり、企業の成長にも繋がるでしょう。

ディスクロージャーのメリット②:企業の認知度や知名度の向上

定期的な説明会を行ったり、ホームページで詳細な情報を公開することによって、多くの人たちの目に留まり興味を持ってもらえる機会が増えます。定期的に情報を公開すれば、新規投資家から知ってもらえる効果も期待できるのです。手当たり次第に公開作業を行っているわけではなく、戦略的なタイミングを見計らってディスクロージャーを行っています。

ディスクロージャーのデメリットとは?

企業にとっても投資家や取引先にとっても、メリットが多いイメージのあるディスクロージャーですが、意外なデメリットもあります。

ディスクロージャーのデメリット①:コストの問題

ディスクロージャーのデメリットとして、コストの問題が挙げられます。ディスクロージャーを行うにあたり、企業では多くの人材を確保しなければならないのです。一言でディスクロージャー(情報開示)と言っても、仕事量が非常に多く、内容や公開時期なども厳しく定められています。

大きな企業では一般的に「ディスクロージャーを管理する専門部署」を設けて、多くの時間と人員を割くことになるのです。

ディスクロージャーのデメリット②:不利益を被るリスク

ディスクロージャーで開示した内容によっては、企業によって不利益になってしまったり訴訟などに発展してしまうケースも考えられます。法律で定められたディスクロージャーは、公開日時や開示しなければならない内容が細かく指定されているのです。

したがって、たまたま業績が芳しくなかった期間の情報を公開する場合、投資家や取引先などにマイナスなイメージを持たれてしまう可能性も。もちろん、公開情報を誤魔化してしまえば、厳しい刑事罰の対象になります。

また、ディスクロージャーで情報開示することによって、ライバル企業に自社のスタイルや経営状態などを知られてしまうことも大きなデメリットと言えるでしょう。

金融機関でのディスクロージャーとは?

企業においてのディスクロージャーについて解説してきましたが、銀行などの金融機関においても「銀行法」や「信用金庫法」により、情報開示が法律で義務化されています。これは、昭和56年に銀行法が改正されたことでディスクロージャーが開始されました。

金融機関で公開される資料の多くは、主に「ディスクロージャー誌」と呼ばれる冊子で作成されているのです。開示内容としては、財務状況はもちろんのこと、経営方針や取り扱いのある金融関係の商品・銀行ごとのスタイル(サービスの詳細)などが記載されています。

開示する時期も指定されており、原則3月末〜7月末(事業年度から4ヵ月以内)です。当初は、事業年度から4ヵ月以内に一度の情報公開でした。しかし、平成18年からは、9月末にも(中間期)ディスクロージャー誌での開示が義務付けられています。

ディスクロージャーの関連用語は?

ディスクロージャーについて理解できたところで、関連するワードも併せて覚えておくと便利です。

  • ディスクロージャーポリシー
  • ディスクロージャー誌
  • IR(Investor Relations)
  • ディスクロージャーホットライン

詳しく見ていきましょう。

ディスクロージャーポリシー

ディスクロージャーポリシーとは、それぞれの企業における「企業方針」を意味しています。主に、基本方針や今後の経営の見通し・沈黙期間などの内容となっていることが多いです。これらは、企業のWEBサイト(ホームページ)で、誰でも確認できるようになっています。

ディスクロージャー誌

ディスクロージャー誌とは、金融機関における「銀行法」や「信用金庫法」で、情報を公開する冊子のことをいいます。ディスクロージャー誌に記載されている内容は「経営方針」「金融関係の商品」「財務状況」などです。それぞれの銀行のホームページで確認することもできますし、実店舗には冊子が置いてありますので、いつでも読むことができます。

IR(Investor Relations)

IRとは「インベスター・リレーションズ」の略で、企業が自主的に投資家や株主、取引先に情報を開示する活動のこと。説明会などもIR活動のひとつです。法律や規則で定められた情報公開ではなく、企業側が自ら行っている広報活動を表しています。

ディスクロージャーホットライン

ディスクロージャーホットラインとは、2004年に公益通報者保護法で議論が開始され、2006年から正式に金融庁で取り入れられています。ディスクロージャーホットラインの役割は、自社のディスクロージャーに疑問や不正を感じ取った場合に通報できるシステムです。内部通報者の安全を守ることを目的として設立されました。ディスクロージャーホットラインによって、秘密裏に通報できるようになったため、公開情報の不正を防止できる効果も期待されています。

まとめ|ディスクロージャーをうまく活用して正確な情報を伝えよう

今回の記事では、ディスクロージャーとはどういった制度なのか?メリットやデメリットはあるのかについて詳しく調査してきました。

ディスクロージャーは、企業が投資家や株主、取引先に向けて正確な情報を公開する制度でした。また、ディスクロージャーには法律や規則で義務化されているものと、企業が自主的に情報開示しているIRの2種類が存在していることもわかりましたね。

ディスクロージャーで企業の情報を公開することによって透明性や信頼性をアピールし、イメージアップや資金・人員の調達に繋げています。しかし、コスト面や不利益を被る可能性などのデメリットもあります。

今後もディスクロージャーが果たす役割は大きなものとなっていきます。ディスクロージャーで透明性が高く、信頼できる企業が増えてくれることを願うばかりです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。