PASON
PASON
M&A 事例・コラム

M&Aの資金調達の方法とは?種類や注意点なども合わせて解説!

最終更新日:2024-03-30
M&A 資金調達

M&Aを検討する際にまず考えなくてはならないのが、まとまった資金を調達することです。企業を買い取るためには、大きな資金が必要になります。

資本金だけで工面できれば問題ありませんが、それは難しいという企業も多いでしょう。なぜなら、株式譲渡にかかる費用だけではなく、税金や専門家への依頼で発生する手数料なども用意しなくてはならないからです。

そこで気になるのが、M&Aを行う際には、どのような資金調達の方法があるのか?ということ。効率良く、安全に資金を調達することは、M&Aを成功へと導く「鍵」となることは間違いありません。

今回の記事では、M&Aにおける資金調達の方法や実際に必要となる費用・流れについて詳しく解説していきます。資金調達で悩んでいる方の参考になると幸いです。

M&Aにかかる費用の内訳とは?

まずは、M&Aを行う際に、どのような費用が必要になるかを確認していきましょう。大きく分けると、4つの費用に分類されます。

  • 買収費用
  • 専門家へ支払う費用(手数料やデューデリジェンス費用など)
  • 税金
  • 登記費用

まず、買収費用については「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」「コストアプローチ」の3つの観点によって、金額が決定されるのが一般的です。売り手側と買い手側の話し合いを重ねて行く上で、正式な価格が決まります。

DD(デューデリジェンス)にかかる費用とは、M&Aを検討した場合、欠かすことのできない大切なものです。売り手側企業の財務状況や経営状態・法律に関する問題点や営業状況などを細かく調査して、価値(価格)を決めたりリスクの有無を調べること。

また、手数料は、依頼する専門家によって報酬や料金形態・着手金などが異なります。DDについての詳しい内容は、DD(デューデリジェンス)とは?意味や種類、実施するタイミングについて解説の記事で解説しておりますので、気になる方は是非ご覧ください。

税金は、株式譲渡のケースでは必要ありません。しかし、事業譲渡の場合には、消費税がかかることになります。それだけでなく、売り手側の資産の中に「不動産」も含まれていれば、不動産に関する税金も発生することになるのです。

M&Aにおける資金調達の種類

続いて、資金調達の種類について解説していきます。M&Aに限らず、資金調達をする方法には大きく分けて2つの種類があります。

  • 直接金融
  • 間接金融

ひとつずつ確認していきましょう。

直接金融

直接金融とは、第三者を介すことなく株式などを発行することで、投資家から直接資金を獲得する手法です。具体的には、株や債券・増資などのことを指しています。

間接金融

間接金融とは、企業と貸し手との間に、第三者の存在がある取引の手法です。この「第三者」とは、主に銀行を指すことが多くなっています。

ここで「銀行と企業の間に第三者がいるのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。

これは、銀行から直接融資を提供してもらっているわけではなく「預金者が預けているお金」から借りていることになりますので「第三者」を介していると言えるのです。

M&Aの資金調達方法

ここからは、M&Aの資金調達方法について解説していきます。企業を買収する際の資金調達の方法は、大きく分けると下記の4つです。

  • 株主割当/第三者割合/公募増資
  • レバレッジドバイアウト(LBO)
  • マネジメントバイアウト(MBO)
  • 銀行などから融資を受ける

それではひとつずつ確認していきましょう。

株主割当/第三者割当/公募増資

M&Aにおける資金調達の方法1つ目は、株主割当/第三者割当による増資です。これは別名「エクイティファイナンス」とも呼ばれています。

まず株主割当増資とは、現状の株主に対して、新しく発行する株式を受け取る権利を与えるという手法です。このときに付与する株式については「既存の持株保有数」の割合に応じて決定されることとなります。

しかし、株主が新しく発行する株式を「購入しない」というケースも考えられるでしょう。その場合は、資金調達ができませんので注意しなければなりません。

続いて、第三者割当による増資とは、自社の社員や役員・取引先などを対象とした「特定の第三者」に新規発行株を割り当てる手法のことを指しています。

この方法は主に、取引先との関係を良好にしたいケースや、株価の低迷によって株主割合増資が行えないときなどに用いられるのが特徴です。

この他にも「公募増資」があります。公募増資とは、現在の株主・特定の第三者に限らず、不特定多数の広範囲の投資家に向けて新株発行を行う手法です。

これは経営拡大や企業の成長を図る際に用いられることが多くなるでしょう。デメリットとしては、コストが大きくなることや、知名度の低い企業では効果が出ない可能性が高いことなどが挙げられます。

レバレッジドバイアウト(LBO)

M&Aにおける資金調達の方法2つ目は、レバレッジドバイアウト(LBO)です。LBOとは、売り手側の企業の「将来性」や「資産価値」などを担保にして、資金調達を行う方法となっています。

この方法は、間接金融の一種。買い手側の企業の知名度や信頼性が高ければ、売り手側の企業が小さい規模の会社であっても、金融機関からの融資が可能になるケースが多いのが特徴です。

LBOのデメリットとして、融資を受けられた場合でも、経営状況が芳しくなければ返済が厳しくなってしまうことが挙げられます。

詳しくはレバレッジドバイアウトとは?メリット・デメリットやMBOとの違いを解説の記事で解説していますので、是非チェックしてみてください。

マネジメントバイアウト(MBO)

M&Aにおける資金調達の方法3つ目は、マネジメントバイアウト(MBO)です。

LBOと同じく、間接金融の一種となります。MBOとは、会社内の経営陣によって、株式や事業などを買い取る手法です。

このとき、LBOと同様に、売り手側の企業の「資産価値」や「将来性」を担保として融資を受けるケースも。MBOのメリットとしては、経営陣によって株式を買い取ることとなるため、意思決定がスムーズになることが挙げられます。

また、会社運営での自由度が上がる点や、TOB(株式公開買い付け)の回避に有効な手段ともいえるでしょう。デメリットとしては、既存の株主から不満の声が上がる可能性が大きいこと。

もう1つは、経営状況によっては債務の返済が重くのしかかることになり、返済が困難な状態に陥る可能性もある点です。

マネジメントバイアウトに関しての記事はバイアウトの意味とは?4つの種類やイグジットとの違いを徹底解説!から確認できます。

銀行などから融資を受ける

M&Aにおける資金調達の方法4つ目は、銀行からの融資を受けることです。金融機関からの借り入れを行うことは、別名「デッドファイナンス」とも呼ばれています。金融機関からの融資には、大きく分けると下記の3つです。

  • 銀行から資金を借り入れる
  • 日本政策金融公庫の支援制度を利用する
  • 助成金や補助金の制度を利用する

順番に確認していきましょう。

銀行から資金を借り入れる

資金調達の方法1つ目は、銀行からの借り入れです。ここで注意しなければならないポイントは、それぞれの銀行によって「金利」や「借り入れ期間」などが異なること。

また、担保が必要かどうかも違ってきます。一社に絞らず、必ず何社かに足を運んで、比較するよう心がけましょう。

銀行からの借り入れでネックとなる「金利」は、信用度や経営状況・過去の実績(以前に借り入れしていた場合、滞りなく返済していたのか?など)などで判断されることが多く、このような条件を満たしていれば金利が低くなる可能性もあります。

もちろん、審査にも通りやすくなりますので、利用したことのある銀行に出向くのもポイントです。

日本政策金融公庫の支援制度を利用する

資金調達の方法2つ目は、日本政策金融公庫の支援制度を利用することです。

一概には言えませんが、一般的に民間の金融機関に比べると金利が低く設定されていることが多くなります。さらに、必要なM&A資金を一括で借りることができる点もポイントです。

しかしその一方、審査を受けるための必要書類が非常に多く、大きな負担になることもありますので気をつけましょう。

この制度は、個人経営の会社や中小企業が資金調達を行う際に、広く用いられています。M&Aを検討したときだけに使用されるものではなく、災害時などの緊急事態にも利用できるのが特徴です。

助成金や補助金の制度を利用する

資金調達の方法3つ目は、助成金や補助金の制度を利用することです。

助成金や補助金の制度を運営しているのは、国または地方自治体などになります。中でも助成金は、常時受け付けをしているものですので、条件を満たすことができれば受給してもらえるのも魅力です。

一方で補助金に関しては期間が決められているものが多く、受給できる企業にも上限があります。

条件を満たしたとしても、受給できない可能性も考慮しておかなければなりません。

また、上記以外にも、中小企業庁が募集している「事業継承 引き継ぎ補助金」の制度もあります。気になる方は是非チェックしてみてください。

M&Aで資金調達する前の注意点とは?

それでは、M&Aを行う際の資金調達の方法がわかったところで、資金調達の前に確認しておきたい注意点について解説していきます。

最も注意しなければならないポイントは、返済期間をしっかりと見据えてシミュレーションすることです。

M&Aを行ってすぐに結果や成果がついてくることは非常に稀であり、シナジー効果や利益が出るのは、半年後〜何年も先であるケースが多くなっています。

だからと言って、あまりにも返済期間を長く設定してしまえば、利息だけでも莫大な金額になってしまいます。逆に「早く返済を終わらせたい」という気持ちが先走り、短期間で設定してしまうと、毎月の返済金額が大きくなりすぎて支払いが難しくなることも。

しっかりとシミュレーションを立てて、無理のない返済を行いましょう。

また、M&Aを行うタイミングも重要です。資金調達には、買い手側・売り手側の経営状況や知名度だけでなく市場の状況なども大きく影響してきます。

市場も好調なときには、融資もスムーズに進むケースが見られますので、自社の経営状況と市場の傾向のタイミングが合致したときに申請することも有効な手段と言えるでしょう。

M&Aにおける資金調達には、専門家へ相談することがおすすめです。M&Aだけでなく、資金調達についても専門知識がなければ、余計なコストや労力を使うことになり本業が疎かになることも。

PASONは、M&Aに特化したマッチングプラットフォームです。資金調達だけでなく、M&Aにおいての些細な疑問や不安点などを無料でサポートしています。まずは、お気軽にお問い合わせください。

まとめ|M&Aにおいて資金調達は欠かせない要素!慎重に返済計画を立てよう

今回の記事では、M&Aにおいての資金調達の種類や方法・注意点などについて詳しく解説してきました。

資本金だけで企業を買収することは難しいですが、さまざまな資金調達の方法があることがわかりましたね。どの方法が良いのかは、会社の経営状況や融資してもらいたい金額などによって異なります。

自社に合った手法で、スムーズな融資を受けられる体制を整えましょう。

また、資金調達する際にもっとも気をつけるべきポイントは、返済計画でした。期間を短く設定しすぎると、返済額が大きくなりすぎて経営にも影響を及ぼしてしまいます。

その一方、長期間の借り入れは、利息が嵩んでしまい資金繰りを悪化させる場合も。慎重に返済シミュレーションを立てて、スムーズな資金調達を行うようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。