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法定調書(支払調書)とは?種類や提出する方法・期限と注意点を解説!

最終更新日:2024-03-30
法定証書 支払調書

支払調書とは60種類ある法定調書の1種です。税務署に提出する必要があるもので、個人や法人に対して誰に、どのような内容でいくら支払ったかを記します。

これは税務署がしっかりと税金を支払っているのかを確認するために必要な書類です。提出義務があるのにもかかわらず提出しなかった場合には罰則も定められています。

ここではよく使われる法定調書や提出方法などを解説していきます。

支払調書とは

支払調書とは、税務署に提出し報告を行う書類です。個人や法人に対して誰に、どういった内容でどれ程支払ったかを記載します。

支払調書は、60種類ある法定調書の1つです。税務署がしっかりと納税を行っているかを確認します。その中でも一般的なものが、従業員の給与または役員報酬に関係する給与所得の源泉徴収票と支払調書の2つです。

その他に、退職金の支払を行う際に作成する退職所得の源泉徴収票や租税特別措置法で規定されている特定口座年間取引報告書、確定申告者の国外転出特例対象財産に関わる財産債務調書、保険契約者などの異動に関する調書等が存在します。

支払調書は条件を満たした場合、税務署への提出義務があるので注意が必要です。

これについては、所得税法や租税特別措置法、相続税法、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律などによりルールが定められています。

支払調書の種類

代表的な支払調書を4つ紹介します。それぞれどういった意味を持っている書類なのか解説していきます。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

支払調書の中で最も代表的と言えるのが報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書です。

これは主に個人事業主に仕事を依頼した際に必要となる報酬または料金といったものです。その他には弁護士や税理士、またはコンサルタントに対する報酬や、更にはスポーツ選手などに支払われる報酬や契約金なども対象です。

不動産の使用料などの支払調書

借地権や不動産のような不動産に関係する権利を借りた際に対価を支払う法人や不動産業者を行っている個人が提出しなければならないものです。

また提出義務があるのは、同一人物への支払いが年間を通して15万を超過するようなケースが該当します。これは、不動産の使用料を受け取る大家について、家賃収入の申告漏れを確認することが目的です。

しかし法人に対して賃借料を支払う場合については、提出する義務は存在しません。法人の対象になるのは、権利金または更新料のみになっています。

不動産などの譲受の対価の支払調書

不動産の売買に関して、同一の者に対する年間を通した支払の合計額が100万円を超えると提出する必要があります。また不動産を買い取った法人または不動産業を営む個人が作成して税務署に提出するものです。

不動産などの売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書

不動産を売ったり買ったりするときに仲介してもらった不動産業者の支払った仲介手数料について、15万円を越えると提出が必要になります。

不動産の使用料等の支払調書と不動産の譲受けの対価の支払調書のあっせんをした者を記載して提出を行った場合には提出の必要はありません。

支払調書を提出する方法と期限

支払調書の提出を行うために必要な提出の方法と提出の期限について解説していきます。

提出方法

支払調書を税務署に提出を行う方法は3通りあります。

  • 書面による提出
  • CAやDVDなどの光ディスクに記録した電子データの提出
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)からの提出

まず書面で提出を行う場合は、国税庁のHPにある入力用または手書き用のPDFファイルをダウンロードを行い作成するか、もしくは税務署から送付される書類に記載を行って提出します。

Excelや法定調書作成システムによって作成された支払調書や合計表をCDやDVDなどの光ディスクに電子データを記録して提出を行う場合は、CDまたはDVDに既定の形式・方法で保存し税務署に持参します。

光ディスクで提出を行う場合には、提出を行う2か月前までに事前申請をする必要があるため注意が必要です。

最後にe-Taxと呼ばれるインターネットを通して手続きを行える国税電子公告・納税システムを使いデータの作成や提出を行う事が出来ます。

またこれまで、提出を行う法定調書の枚数が前々年の提出枚数が1,000枚を超える場合は、光ディスクやe-Taxでの提出が必要でしたが、令和3年1月1日以後は法定調書の提出枚数が100枚以上であれば、e-Taxや光ディスクでの提出が必要になりました。

このようなe-Taxや光ディスクによる法定調書の提出義務はないが、このような手法を使って提出をする場合は事前に提出承認申請が必要でしたが、令和5年4月1日以降はその必要がありません。

提出期限

支払調書は、基本的に報酬等の支払いを行った翌年の1月31日までに税務署に提出しなければなりません。

提出義務があるのに、支払調書の提出を行わない場合や、書類に虚偽の内容を記載して提出を行った場合は、所得税法にて罰則が定められています。

具体的な罰則は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。

支払調書とマイナンバー

支払調書にマイナンバーを記載することは義務になっています。基本的には、支払調書を提出する場合は、支払先から収集して提出を行う支払調書に記載しなければなりません。

ですが、現状としてはマイナンバーは色々な個人情報(銀行口座や社会保険など)と紐づけられているため簡単には人には教えたくないと考える人は少なくありません。

また個人側はマイナンバーの提出を行わなくても罰則が無いため、なおさら提出率が低いと言えるでしょう。

そのため記載すること自体は義務ですが、未記載での提出や収受を許容しています。しかし支払者は継続して、支払者が支払先のマイナンバーを記載して提出することが義務であることを周知して収集することや何故入手できなかったかなどの経緯の記録などが求められています。

このような記録を残す方法としては、内容証明郵便等の文書で提供を求め、マイナンバー提出の可否の返信を行ってもらうなどです。

次の方法は電話で確認して提出を拒否された場合は、その日付や、対応した者の氏名、収集方法などの記録を行うと良いでしょう。

支払調書における注意点

支払調書を作成する際の注意点は、日々の発注などの業務を確実に行い記録する事が重要です。

会計ソフトや紙などに記載・入力した金額が間違っていると、支払調書を作成するのに確認を行うための余計な時間がかかってしまう事になるでしょう。

また、ミスが起きた場合に記録したデータを簡単に確認できるように整理しておくことが大切です。

紙であれば支払いなどの記録をジャンルごとに分けて保管したり、電子データに落とし込んで管理を行うと整理をし易く、確認がスムーズに行えるようになります。

支払調書と源泉徴収票の違い

支払調書と源泉徴収票は、どちらも報酬の支払いの状況を記載するための法定調書ですが、内容にいくつかの違いがあります。

一番の違いは、源泉徴収票は報酬を受け取る側への交付義務がありますが、支払調書は義務化されていない点と言えます。しかし多くの場合は、支払調書を交付することが多く、また受取人から請求されることも多いでしょう。

またそのほかの違いは、マイナンバーの記載が不要なものや、猶予期間が定められていたりするものがある所も源泉徴収票と違う点です。

誤った内容の支払調書を提出した場合

支払調書を提出したあとに謝っていることが発覚した場合は、再提出を行う必要があり、放置した場合はペナルティを受ける場合があります。

再提出を行う場合は、4つの書類が必要です。

提出を行った支払調書と法定調書合計表のコピー、更に正しい支払調書と法定合計表が必要です。提出を行った支払調書のコピーの右上に無効と赤字で記載し、修正を行った正しい支払調書を右上に訂正文と記載して提出します。

その他の法定調書

その他の法定調書をいくつか紹介していきます。

給与所得の厳選徴収票

企業や個人事業者が、1年間を通して社員やパート、アルバイトに対して支払った賃金や給与などをまとめた給与所得の源泉徴収票を作成する必要があります。

作成した源泉徴収票と同様の内容を法定調書として税務署に提出します。提出が必要となる人は、年末調整がすんだ役員に対して支払った金額が150万円を超える人。

また弁護士や税理士、司法書士などに対して給与の支払額が250万円を越える人。その他、その年中に給与などの支払金額が500万円を超える人が対象となります。

所得税法に規定するもの

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
  • 利子等の支払調書
  • 国外公社債等の利子等の支払調書
  • 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書
  • 国外投資信託等又は国外株式の配当等の支払調書
  • 投資信託又は特定受益証券発行信託収益の分配の支払調書
  • オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書
  • 配当等とみなす金額に関する支払調書
  • 定期積金の給付補填金等の支払調書
  • 匿名組合契約等の利益の分配の支払調書
  • 生命保険契約等の一時金の支払調書
  • 生命保険契約等の年金の支払調書
  • 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書
  • 損害保険契約等の年金の支払調書
  • 保険等代理報酬の支払調書
  • 非居住者等に支払われる組合契約に基づく利益の支払調書
  • 非居住者等に支払われる人的役務提供事業の対価の支払調書
  • 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書
  • 非居住者等に支払われる借入金の利子の支払調書
  • 非居住者等に支払われる工業所有権の使用料等の支払調書
  • 非居住者等に支払われる機械等の使用料の支払調書
  • 非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書
  • 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書
  • 株式等の譲渡の対価等の支払調書
  • 交付金銭等の支払調書
  • 信託受益権の譲渡の対価の支払調書
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 信託の計算書
  • 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書
  • 名義人受領の利子所得の調書
  • 名義人受領の配当所得の調書
  • 名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書
  • 譲渡性預金の譲渡等に関する調書
  • 新株予約権の行使に関する調書
  • 株式無償割当てに関する調書
  • 先物取引に関する支払調書
  • 金地金等の譲渡の対価の支払調書
  • 外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書

参照:国税庁 法定証書の種類

所得税に関する項目だけでも、43種類あります。国税庁のホームページでは、それぞれの詳細について詳しい内容が記載されておりますので、チェックしてみてください。

相続税法に規定するもの

  • 生命保険金・共済金受取人別支払調書
  • 損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書
  • 退職手当金等受給者別支払調書
  • 保険契約者等の異動に関する調書
  • 信託に関する受益者別(委託者別)調書

参照:国税庁 法定証書の種類

相続税法に規定するものに関しましては、5項目の調書があることがわかります。国税庁のホームページには、それぞれの項目に対して「手続き対象者」や「提出期限」などが詳しく記載されています。必要な方は、確認しておくことがおすすめです。

租税特別措置法に規定するもの

  • 上場証券投資信託等の償還金等の支払調書
  • 特定新株予約権の付与に関する調書
  • 特定株式等の異動状況に関する調書
  • 特定口座年間取引報告書
  • 非課税口座年間取引報告書
  • 未成年者口座年間取引報告書
  • 教育資金管理契約の終了に関する調書
  • 結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書
  • 上場株式等の配当等の支払を受ける大口の個人株主に関する報告書
  • 住宅取得資金に係る借入金等の年末残高調書

参照:国税庁 法定証書の種類

租税特別措置法に規定されるものは、上記の10項目となります。結婚や子育て・住宅取得資金にまつわる項目など、生活に身近なものも多くなっているのが特徴です。

国外送金等調書法に規定するもの

  • 国外送金等調書
  • 国外財産調書
  • 国外証券移管等調書
  • 財産債務調書
  • 国外電子決済手段移転等調書 

参照:国税庁 法定証書の種類

法定証書の種類、最後は「国外送金等調書法」に規定される項目です。これは、為替などの取引を行う際に、金融機関を通して海外に送金を行ったり海外から国内に送金をする場合があります。

その時に必要となる告知書となり、税務署への提出が義務付けられているものです。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の記載事項

最も作成する機会が多い報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の記載事項を解説していきます。

支払を受ける者

  • 住所または所在地
  • 氏名または名称(法人の場合は法人名、個人の場合は屋号ではなく個人の氏名)

区分

  • 報酬、料金等(原稿料、印税、翻訳料、通訳料、脚本料、作曲料、著作権、弁護士報酬、税理士報酬等)

細目

  • ・作品名また講演名(講演の名称、弁護士が関与した事件名、印税がある作品名等)

支払金額

  • 1月1日〜12月31日を対象とした1年間で支払いが確定した金額
  • 未払いの報酬や控除額以下の支払いで源泉徴収しなかった金額(支払調書の作成日現在で未払の金額がある場合は、各欄の上段に未払額を内書き)

源泉徴収税額

  • 報酬・料金等を支払ったときに源泉徴収をした金額の年間合計額

摘要

  • 特定の事由(広告宣伝を目的に賞金を金銭以外で支払った場合、災害によって被害を受け、報酬や料金等に対する源泉所得税及び復興特別所得税の徴収の猶予を受けた税額がある場合、診療報酬のうち、家族診療分が含まれている場合等)

支払者

  • 報酬を支払った者の氏名や企業名や住所など

まとめ│支払調書は税務署の確認のため

支払調書とは、60種類ある法定調書の1つです。支払調書はおもに企業がフリーランスなどに業務を委託し報酬を支払う際に、年間を通して支払った報酬の金額または源泉徴収税額を集計した書類の事を指します。

企業は年に1度、1月31日までに税務署に提出する必要があるものです。これを正式には報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書と呼びます。

またその他によく使われるものは、不動産の使用料や売買、あっせんの手数料などの支払調書などです。

提出義務があるのにもかかわらず提出を行わなかった場合1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される場合があるので注意しましょう。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。