PASON
PASON
M&A 事例・コラム

秘密保持契約(NDA)とは?NDAを締結するメリットや関連法律などを解説!

最終更新日:2024-03-30
秘密保持契約 NDA

秘密保持契約とは、英語でNon-Disclosure Agreementと言い、その略称としてNDAと呼ぶこともあります。

企業の営業活動または研究開発などによって、顧客の名簿や新規事業についての計画や価格、ノウハウ、製造方法などといった多種多様な秘密情報が存在します。

秘密保持契約は、これらの秘密情報を取引で共有した際に、秘密が適切に保護されるようにするために締結を行う契約です。

秘密保持契約を確認する場合は、どちらが秘密情報を開示する・される側なのかまたは双方が当てはまるのかなどの確認をすることが大切です。

この記事では具体的なメリットや関係する法律やNDAを結ぶタイミングや条項を解説していきます。

秘密保持契約(NDA)とは?

秘密保持契約(NDA)とは、相手に公開を行う秘密に対して、契約で定めた目的や用途以外の使用やよそに漏らす事を防ぐために結ばれる契約です。

企業の財産である顧客情報や経営情報、技術情報などを提携先に教えたりする際に、漏れてしまったりまた勝手に使われてしまう事を防止するために締結されます。

この契約の形態は、お互いに情報を開示する双方契約と片方が一方的に開示を行う片務契約の2種類あります。

秘密保持契約のメリット

NDAを締結する大きなメリットは大きく分けて3つあり、これから解説していきます。

メリット①│秘密情報の流出を防げる

秘密保持契約を締結する場合、原則秘密情報を勝手に公開する事が禁止されます。

また秘密に関係する情報を目的に応じた利用方法に限定したり、取引終了後に秘密情報の返却に関する事も規定されます。どの規定も基本的に秘密に関係する情報が意図せず漏れてしまう事を防ぐのに役立ちます。

メリット➁│保護する範囲を決められる

営業秘密は不正競争防止法により守られています。営業秘密の3要件は以下の3つです。

  1. 秘密として管理されている(秘密管理性)
  2. 生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の 情報(有用性)
  3. 公然と知られていないもの(非公知性)

しかし、企業が守らなければいけない秘密情報は、不正競争防止法で保護される範囲だけではありません。

それに付随する秘密性の高い重要な情報も、取引相手によって過失または故意により、漏えいしてしまう事を防がなければなりません。

この契約では、流出を防ぐ秘密情報にあたる範囲を決めます。どこからどこまでを秘密情報として保護するかは、その時の取引相手や取引内容により変わりますが、不正競争防止法で保護されない部分についても保護できるためよりリスクが低減されます。

メリット➂│情報が漏れた時に損害賠償請求が可能

相手の管理体制が甘く、秘密保持契約書を締結しているのにも関わらず秘密が漏洩してしまった場合債務不履行に基づき相手方に損害賠償請求を行う事が出来ます。

秘密に関する情報が漏洩した損害は、とても大きな金額になる事も珍しくありません。

営業秘密が流失し、他者に模倣されて企業の主力商品の売り上げが著しく低下してしまったケースやニュースなどで大々的に顧客情報流出が報道され、企業に悪評が立ってしまい業績が悪化するケースがあります。

このような損害に備えるためにもこの契約を結ぶ事が大切です。損害賠償請求を相手に出来るようにするのは、リスクを管理という点でとても大切です。

またこの契約でカバーできる範囲は損害賠償にとどまらず、情報漏洩に繋がるような行動を認めたような場合の差止請求権を規定しておくことも可能です。

そうすれば、秘密情報が流失した場合の損害を減らすために、差止請求権を行使することができます。

秘密保持契約の注意点

NDAを締結する際に気を付けるべき点がいくつかあるため、ここで解説していきます。

秘密情報の範囲設定

この契約で最も重要なのが範囲の設定です。これをどのように定めるかによってどれだけ意義のある契約か大きく変わってきます。秘密情報の範囲の決め方は、大まかに2種類あります。

  • 開示されるすべての情報を秘密情報として扱う
  • 秘密と決められた情報のみを秘密情報として扱う

すべての情報を対象とした場合は、例外として除外された情報以外は、開示が行われるすべての情報が秘密情報と扱われ、守秘義務の対象となります。

そのため開示された情報を受け取る側は、とても大きい守秘義務を負うこととなります。

次に秘密と決められた情報のみを対象とした場合は、秘密と表示された情報だけが秘密情報と扱われ、守秘義務の対象になります。

そのため開示された情報を受け取る側は、秘密と表示された情報のみ守秘義務を負うため、すべてが秘密情報と比べてかなり負担が少なくなります。

しかし一部を対象とする場合は、秘密と記載するのを忘れた部分について漏れてしまったとしても相手に責任を追及することができない事は注意が必要です。

要するに、全ての情報を対象にする場合は、情報を受け取る側に負担が大きくなり、逆に一部が対象であれば情報を受け取る側に負担が少ないと言えます。

どう範囲を設定するかは双方の力関係や立場によって変わるため議論が必要になります。

いつまで守秘義務を存続させるか

この契約では一般的に有効期間を定める事が多いです。有効期間が終わるのと同時に守秘義務が終わると、有効期間が終わった後は秘密が漏洩しても責任を取る必要がなくなってしまいます。

そのため、守秘義務はNDAの有効期間満了後でも、ある程度の期間続ける事が必要です。よって守秘義務は、有効期間が終わった後3年間前後は続ける事が多いです。

また個人情報に関しては、守秘義務に限らず誰かに開示されたり、目的外使用されることは妥当とは言えません。個人情報に関しては守秘義務が無制限に続くことが望ましいでしょう。

秘密保持契約を結ぶタイミング

秘密保持契約を結ぶタイミングは、できる限り自社の秘密に関する情報を開示する前に行うことがベストです。

互いに開示する情報についての管理方法や権利義務関係に合意してから情報開示を行わなければ、合意前に知りえた情報についてその部分が秘密として扱われず、その情報を知った者に勝手に利用されてしまうリスクなどが生まれてしまいます。

また、秘密に関する情報を開示したが、折り合いがつかなく商談や取引が成立しなかったようなパターンは、情報を開示した側が一方的に秘密を知られ、勝手に使用されるなどの危険性があります。

そのため秘密情報について相手方に教える場合は、秘密保持契約を締結してから情報を渡すことがベストと言えるでしょう。

また仕方なく、締結前に秘密に関係する情報の開示を行った場合でも、できるだけ早くこの契約を締結することが望ましいです。

その際は、締結前に渡した情報も秘密情報として扱うように記載すれば、その後のリスクを減らす事ができます。

秘密保持契約と関連する法律

秘密保持契約と関係してくる主要な法令は大まかに3つあります。

不正競争防止法

この法律は、事業者同士の公正な競争を目指し、営業の利益を守る事と公正な競争秩序を守るためのルールが定められています。

不正競争行為として取り締まりの対象となる行為の一つとして営業秘密の不正利用行為が含まれています。不正競争防止法2条1項6号の営業秘密に当たる要件は先ほど解説した、秘密管理性・有用性・非公知性になります。

また秘密保持契約においては、不正競争防止法上の営業秘密よりさらに秘密情報の範囲を広げる事ができます。

個人情報保護法

個人情報保護法とは、主に個人情報を取り扱う民間事業者が遵守すべき義務などを定めた法律を指します。企業や行政期間などが適切に個人情報を取り扱い、効果的に活用するためのルールです。

個人情報を取り扱う事業者は個人情報が流出しないよう必要な安全管理を行う義務があります。また委託先や従業員などに対しての監督義務や第三者への提供の制限が課されます。

個人情報保護法に違反した際のダメージは、社会的なマイナスイメージにとどまらず罰則による企業へのダメージも大きくなりがちです。そのため個人情報が開示される秘密情報に含まれる場合は、秘密保持契約を締結しておく事が理想です。

特許法

特許法は、発明者に特許権と言われる独占ができる権利を与えることにより一定条件または一定期間、発明の保護を行う法律です。

これにより保護を受けるための条件は、公序良俗に反せずに産業上での利用可能性や新規性、進歩性などの要件を満たさなければいけません。秘密保持契約はこれらの条件の特に新規性を保護するのに大切です。

新規性というのは公知の発明という公然に知られた内容の発明は特許を受ける事が出来ないという要件になります。

つまりこの契約を締結しておけば、不特定の人に知られた秘密内容とならず特許取得が出来なくなってしまうリスクを避ける事が出来ます。そのため将来的に特許を出願予定であるならば、この契約を早期に結ぶ事が大切でしょう。

秘密保持契約の例

ここでは秘密保持契約を結ぶ時の契約書の例を経産省のHPに掲載されているWordから引用して紹介します。また経産省に掲載されているページについてはこちらからアクセスできます。

まとめ│NDAは会社の秘密情報を守るために大切

ここまで秘密保持契約について解説してきました。

この契約には、利点がいくつかあり、秘密情報の漏えいを防いだり、さまざまな法律で守られている情報より広い範囲を定められたり、最悪情報が漏れたとしても損害賠償請求を行えるようになるなどといった点があげられます。また秘密保持契約を結ぶのはできるだけ早いタイミングで結ぶ方が安心です。

また後からでも締結以前に開示した秘密情報を含む内容を盛り込むことで、事前に共有した情報を守ることができます。

個人情報の流出や研究情報や技術情報などが漏えいしないように保護し、更には損害賠償請求によってリスクを低減させられます。このように秘密保持契約は会社の大切な情報を守り、漏えいによるリスクを減らすのにとても役立つ手段となるでしょう。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。