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有価証券報告書とは?記載内容や提出期限・サステナビリティについて徹底解説!

最終更新日:2024-03-30
有価証券報告書

会社経営をしている方やそれに関わる仕事に携わっている方には馴染みのある「有価証券報告書」という言葉。

多くの方は「聞いたことはあるけれど、詳しい内容についてはわからない」「転職を考えてさまざまな企業を検討しているが、有価証券報告書を見た方が良いって本当?」といった疑問をお持ちかもしれません。

多くのメディアやニュースなどで取り上げられることも多いので、耳にしたことはあるはず。しかし、実際に説明はできないという方も多いでしょう。IR(Investor Relations)との違いも気になるところです。

そこで今回の記事では、有価証券報告書の意味やIR(Investor Relations)との違い、有価証券報告書の見方や内容などについて詳しく解説していきます。

有価証券報告書について、深く理解できる内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。

有価証券報告書とはどんなもの?

有価証券報告書とは主に、株式の上場を行っている企業で、自社の経営状況を把握するための指標となるものです。別名「有報(ゆうほう)」と呼ばれることもあります。

これは、会社内だけで閲覧するものではなく、開示する義務があるものです。経営状態の開示だけではなく、詳しい会社概要なども記載されています。一定の人たち(株主など)に公開されているものではなく、誰でも気軽に閲覧できるようになっているものです。

有価証券報告書は非上場の企業でも提出義務がある?

有価証券報告書は、株式の上場を行っている企業に提出義務が定められているのはもちろん、非上場の企業でも提出しなければならないケースもあるので要注意です。提出が義務付けられている企業は次の通りとなります。

  • 店頭登録をしている且つ、有価証券を発行している企業
  • 半年の間に50人以上への勧誘と、1年間で1億円以上の事業を行う計画がある企業
  • 過去5年に遡り、株主の数が1,000名を超えたことがある企業
  • 有価証券取引届出書、または発行登録追補書類を提出しており、募集をしている企業

このように、非上場の企業であっても、上記のいずれかに当てはまれば有価証券報告書の提出義務が発生するのです。

有価証券報告書に記載されている内容とは?

有価証券報告書には、売上や利益・資本金などの基本情報が記載されており、その他にもさまざまな内容が記載されています。

決算書や事業内容を開示するのはもちろん、その企業で働いている社員の年収を確認できる点もポイントです。これは、就職活動を行なっている就活生などに「この企業で働きたいかどうか」を判断する重要な役割を果たしてくれます。

社員の平均年齢や勤続年数なども開示されているので「自分が希望している会社の理想系に近いかどうか」を図る指標となるはずです。

細かい年収ではなく平均年収の記載となっていますが、企業の公式ホームページを見るだけではわからないような細かい情報が記載されていますので、就活活動を行っている学生には非常に役立つものとなるでしょう。

また、創立から現在までの企業の歴史が詳しく記載されており、その企業の概要だけでなく子会社や関連している企業についての詳細も開示されています。

今後、どのようなプロジェクトを見据えているのか?どのような研究を行っているのか?と言ったことや、現時点での設備内容・これから投資を行う設備についても記載があるため、就活生はもちろん投資家にも参考となる情報も多いでしょう。

有価証券報告書とIR(Investor Relations)の違いとは?

有価証券報告書とIR(Investor Relations)には、どのような違いがあるのでしょうか?開示されている内容を確認してみると、それぞれ同じような記載となっていることがわかります。

しかし、記載されている内容に大きな違いはなくても「義務化されているものと義務化されていないもの」という違いがあるのです。

有価証券報告書は、金融商品取引法によって義務付けられており、記載内容や提出期限・未提出の場合の罰則などが厳しく取り決められています。一方で(IRInvestor Relations)は、企業が自主的に行っている広報活動のひとつです。

有価証券報告書に提出期限はある?

有価証券報告書は、提出期限があるのでしょうか?提出が義務化されている書類ですので、もちろん提出期限が定められています。「事業年度の終了から3ヵ月以内」に提出しなければなりません。これを「内閣総理大臣」へ提出することとなります。

もし、有価証券報告書に虚偽の内容を記載をしてしまったり、提出するのを忘れた場合にはどうなるのかも気になるところです。

まず、嘘の報告書を提出してしまうと、刑事罰・行政罰が科せられたり上場廃止となってしまうケースも。また、自発的に虚偽の記載をするつもりではなく、思わぬミスで「記入漏れ」があった場合でも罰を受けることとなりますので細心の注意を払う必要があるでしょう。

有価証券報告書はどこで見れる?調べ方は?

それでは、実際に企業の有価証券報告書を確認したいと考えた際、どこから閲覧することができるのでしょうか?

有価証券報告書は、主に金融庁の電子開示システムである「EDINET」で閲覧することができます。もちろん、有価証券報告書を提出している「企業ホームページ」でも閲覧可能。

また、証券取引所や財務局でも閲覧できます。しかし、インターネット環境さえあれば時間も場所も気にせず、さまざまな企業の有価証券報告書や四半期報告書・内部統制報告書や利益関係書類などを検索できる「EDINET」が便利です。

有価証券報告書と間違えやすい書類とは?

有価証券報告書には、似通っている書類が多数あります。上記で有価証券報告書とIR(Investor Relations)の違いについて解説しましたが、その他にも混同しやすい書類がありますので、それぞれのポイントを押さえておきましょう。

  • 有価証券届出書
  • 決算短信

それでは順番に確認していきます。

有価証券届出書

有価証券届出書の提出先は「内閣総理大臣」であり、義務化されている点についても有価証券報告書と同じです。

しかしこれは、新規で有価証券の募集をする場合や、既に発行されている有価証券の売出しを行う際に提出しなければならない書類となります。勧誘を行う人数や売り出し価格の合計金額が、定められた基準を満たす場合に提出を行う必要があるのです。

決算短信

決算短信とは、証券取引所で定められている開示資料となっています。有価証券報告書は、金融商品取引法で定められてた開示資料です。

また、情報量にも大きな違いがあります。決算短信は有価証券報告書と比較すると、情報量がかなり少なくなっており、その情報についても「確定」したものではありません。

予測された情報も開示されているのが決算短信の特徴と言えます。一方で有価証券報告書については、正確性があり、決算短信では記載されていない事柄についての詳細も開示されているのです。

情報開示までの期限にも違いが設けられています。有価証券報告書が「決済が終わってから3ヵ月以内」という期間だったことに対して、決済短信では「決済が終わってから45日以内」です。

情報の正確性や情報量に違いがありますので、情報開示のタイミングも変わってくるのでしょう。

有価証券報告書におけるサステナビリティとは?

有価証券報告書での開示義務で新たに加わったのが、サステナビリティです。

これは、2022年の11月7日から始まった取り組みとなっており「サステナビリティに関する企業の取り組みを開示すること」が義務化されました。(これと同時に「コーポレートガバナンスの開示」についても記載することが義務化されています)

そもそもサステナビリティとはどのようなことなのでしょうか?

サステナビリティを日本語で直訳すると「持続可能性」となります。近年、メディアやニュース・SNSなどでもよく目にする「SDGs」との結び付きが強い言葉です。

サステナビリティ(sustainability)は「sustain=持続する」「able=できる」を組み合わせた言葉となっており、事業活動を行う企業が「環境」や「社会」についても深く配慮しながら経営することへの重大さを示したものとなります。

有価証券報告書は誰に向けたもの?活用の仕方

有価証券報告書は、誰でも気軽に閲覧することのできる書類となっていますが「誰が、どのようなときに」活用するものなのでしょうか。有価証券報告書には、大きく分けると4つの意味や目的があります。

  • 投資家に向けた資料提供
  • ライバル企業が他社分析を行う
  • 知名度や信頼性の向上
  • 就活生の情報収集の場所

ひとつずつ確認していきましょう。

投資家に向けた資料

有価証券報告書の最大の目的とも言えるのが、投資家が「この企業に投資するか否か」を決定する情報を提供することです。

投資家は、さまざまな視点から投資の判断を行っています。有価証券報告書には、企業のありとあらゆる情報が細かく記載されていますので、今後の企業の成長を予測するのに十分な判断を行うことができるでしょう。

ライバル企業が他社分析を行う際に閲覧

有価証券報告書は、誰でも閲覧可能な資料です。

決して、投資家だけに向けたものではありません。会社概要や今後の方針・事業内容の詳細や設備投資などについても記載があります。

これは、ライバル企業やその他の中小企業にとって非常に参考になる情報となるのです。自社に欠けているものや新たな分野へ進出するきっかけ、今後の課題などを掴む絶好のチャンスになり得るでしょう。

知名度や信頼性の向上

有価証券報告書で、正確で詳細な内容を公開することによって、より多くの人たちに自社の商品やサービス・活動を知ってもらえることになります。

そこで、商品やサービス・活動について知った会社や個人から、新たな顧客が増える可能性も大いにあるでしょう。有価証券報告書には自社の情報を正しく伝えるだけに留まらず、知名度や信頼性の向上・顧客獲得などのメリットもあるのです。

就活生の情報収集の場所

就職活動を行っている人たちにとって、有価証券報告書は欠かすことのできない資料となります。

気になる企業のホームページや口コミなどを確認しても、自分の知りたい情報がすべて掲載されているわけではありません。人それぞれ、企業に求める理想形は異なりますので、多くの情報が正確に記載されている有価証券報告書は、就職先を選ぶ際に必要不可欠となります。

平均年収や平均継続年数はもちろん、今後どのようなプロジェクトに取り組んでいくのか?親会社や関連会社などについての記載も参考となるでしょう。

面接時には、会社の歴史や過去の取り組みなども知っておくことができますので有利に働くかもしれません。

まとめ|有価証券報告書は企業の詳細がわかる資料!上手に活用しよう

今回の記事では、有価証券報告書とはどのようなものなのか?記載されている詳細な内容や提出期限、サステナビリティや活用の仕方などについて詳しく解説してきました。

金融商品取引法で定められている重要な役割を担った書類となりますので、虚偽の記載や記入漏れなどがあると、厳しく罰せられることもわかりましたね。

一方で、誰でも手軽に企業のホームページから閲覧できるのはもちろん、金融庁の電子開示システムである「EDINET」を利用すれば気になる企業をすべて検索できるので便利です。

利用する側にとっては、さまざまなメリットがあり、多くの内容を理解することができる資料となっています。

他社の経営状況を知りたいときや、就職活動での情報収集・投資を行っている方であれば、企業が今後成長していくかどうかを判断する材料として上手に活用していくことがおすすめです。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。