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ROAとは?計算式や分解方法とROE・ROIとの違いを解説!

最終更新日:2024-03-07
ROAとは


ビジネスの成功を評価し、収益性を向上させるために、経営者や投資家はさまざまな財務指標を利用しています。その中で、ROA(Return on Assets)は特に大切な指標の1つです。ROAが示すのは、企業がその資産を効果的に活用して収益を生み出す能力です。

この記事では、ROAの基本的な概念からその計算方法や目安、また改善方法や似た指標などを解説します。ROAがどのような指標か理解することで、収益性向上と資産の最適な運用に向けた重要なステップを踏み出す手助けとなるでしょう。それでは解説していきます。

ROAとは

ROAとはReturn On Assetの略称で、日本語では総資産利益率と呼びます。

ROAは、企業の業績評価において大切な役割を果たす指標です。ROAは、企業が持つ総資産を利用して、どれ程効果的に収益を生み出すかを示します。

この指標は、企業の資産の運用能力と効率性を把握するのに役立ちます。高いROAは、資産の効果的な運用や収益最大化を行っていると見なされます。逆に、低いROAは資産の浪費や非効率な経営と見なされる可能性があります。

ROAの理解は、経営者、投資家、そして競合他社に対する競争力を高める上で不可欠です。企業はROAを改善し向上させる為に、効果的な資産運用を検討し、収益性を向上させる方法を模索しなければなりません。

ROAは経済的な状態を測る指標として、ビジネス戦略の中で重要な役割を担っています。またROAの目安は、基本的に5%を超えると、無駄の少ない経営を行えている優良企業だと言えるでしょう。

なぜROAが重要視されるのか

ROAやROEなどの財務指標は、企業が効率的な経営を目指すうえでとても大切です。その理由は、投資家が投資を行う際に良く参考にする指標が、企業の収益力がわかるROAやROEだからです。このような理由から企業もROAやROEの改善に勤しまなければなりません。

しかしこれらの指標が万能というわけではないという点には注意が必要です。必要な先行投資などで一時的に投資効率が低下し指標が悪化している場合でも、非効率な経営と見なされてしまう事があります。そのため実際に投資を行う際には、なぜ財務指標が悪化したのか原因を評価する事が大切でしょう。

ROAの計算式

ROAを計算するには、当期純利益を総資産で割って求めることができ、以下の数式で計算できます。

ROA(%)  =  当期純利益 ÷ 総資産 × 100

ここで、各要素を詳しく解説します。

当期純利益(Net Income)とは?

当期純利益は、企業がその会計期間に得た利益から、経費や税金を差し引いた最終的な利益の事です。これは企業の収益性や業績を評価する際に、重要な指標ともいえ、投資家やステークホルダーに注目されている指標です。

当期純利益は企業の経営の成果を示し、成長、収益性、効率性等を反映します。企業は収益の増加、コストの削減、効率的な資本運用などを通じて当期純利益を最大化していくことを求められるでしょう。

投資家はこの指標を通じて企業の健全性や将来の成長潜在力を評価し、投資判断に役立てます。

総資産(Total Assets)とは?

総資産は、企業が所有する全ての資産の合計です。これには現金、設備、在庫などが含まれます。総資産は、企業の規模を示す大切な要素です。このようにROAの計算はシンプルですが、その結果は企業の業績評価に大きな影響を与えます。

高いROAは、企業が資産を効果的に活用し、収益を最大化していると言えるでしょう。逆に、低いROAは資産の効果的な運用に課題があることを示し、改善の余地があることを示唆します。

企業はROAを向上させるために、効果的な資産運用戦略を採用し、業績を向上させる取り組みを進めることが不可欠です。ROAの理解は、経営者や投資家にとってビジネス戦略の評価に欠かせない要素です。

ROAの計算例

ROAの計算例をあげます。以下に、X社とY社という架空の企業を例に挙げて、ROAの計算例を示します。

X社:(当期純利益250万円,総資産5000万)

ROA(%) = (250万円 ÷ 5000万円 ) × 100 = 5%

Y社:(当期純利益750万円,総資産5000万)

ROA(%) = (750万円 ÷ 5000万円)  × 100 = 15%

X社のROAが5%で、Y社のROAは15%なのでY社のほうがROA(%)が高く、より資産を効果的に活用できていると言えるでしょう。

またもう一つ計算例を示します。

X社:(当期純利益250万円,総資産2500万)

ROA(%) = (250万円 ÷ 2500万円 ) × 100 = 10%

Y社:(当期純利益250万円,総資産1000万)

ROA(%) = (250万円 ÷ 1000万円)  × 100 = 25%

同じ当期純利益でもY社のほうが総資産が少ないため、X社に比べてよりY社のほうが資産を効果的に利用しているでしょう。このように同業他社または業種別に比較する上で、とても便利な指標と言えます。

ROAの分解

ROAを更に分析する場合、売上高当期純利益率×総資産回転率というように分解できます。以下ではそれぞれの要素について解説していきます。

売上高当期純利益率とは?

売上高当期純利益率とは、当期純利益の売上高に占める割合を指します。純粋に純利益率と呼称される場合もあります。売上高当期純利益率が高ければ、経営の最適化が行えているという事です。

「当期純利益÷売上高」で求められ、売上高のうち最終的な利益がどの程度残るかを示す指標です。売上高当期純利益率を過去2〜3年経年比較し、企業の成長性を測る事もできます。当期純利益が20万で売上高が200万円の計算の例を示します。

売上高当期純利益率(%) =  当期純利益20万円 ÷ 売上高200万

計算により売上高当期純利益は10%となります。

総資産回転率とは?

総資産回転率とは、総資産を使いどのぐらい効率的に売上を得られたかを表す指標です。1年間に総資産が何回内売上高「売上高 ÷ 総資産」で求められます。総資産回転率は、通常1を超える事が理想です。

また、より実態に近い値を算出したい場合、総資産を会計期間のはじめである期首の総資産と会計期間の最後である期末の総資産を足して2で割って計算される事があります。

具体的には「総資産  =  (期首の総資産 + 期末の総資産) ÷ 2」です。この計算方法を利用すれば、更に正確に計算できます。総資産が50万円で売上高200万円の計算例を示します。

総資産回転率(回転) = 売上高200万円 ÷ 総資産50万

計算により総資産回転率は4回転となります。

分解するメリット

ここで解説した売上高当期純利益率と総資産回転率に分けて計算することで、どの要素を改善すれば良いか判断が可能です。総資産回転率が低いと分かれば、売上高を上げれば良いと考えられます。

売上高当期純利益率が低ければ、経費の削減等の検討が可能です。ROAの分解を行うと、具体的に対策を検討できるのがメリットと言えます。

ROAと似た指標ROE・ROI

ROAと似た指標にROEとROIがあります。ここではROEとROIそれぞれの意味を解説していきます。

ROE

ROEはReturn On Equityの略称で、日本語では自己資本利益率と言います。株主資本をどのぐらい効率的に運用できているかを示す財務指標です。企業の収益性、資本効率、および経営陣の能力を評価するのに役立つでしょう。ROEは当期純利益を自己資本で割る事で求められます。ROEが高い方が資本効率がいいと言えます。ROEの計算式は下記の通りです。

ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本(純資産) ×100

ROEは、当期純利益を自己資本で割ったもので、高いROEは、企業が株主資本を収益性の高い方法で運用できている事を示します。

投資家が投資したお金を使って、どれだけ効果的に利益をあげたかを表すので、投資家や経営者にとってとても大切な指標です。投資家は利益を求めるため、企業も意識してROEの改善をしなければならないでしょう。

ROEの目安は、通常8〜10%と言われていてこれを上回ると優良企業と言われています。しかし、ROEの目安は業界や企業によって異なり、競合他社や市場全体と比較、または同じ企業でも経年比較(過去数年のROAを見比べる事)を行う事が大切です。

ROEについて、もっと詳しく知りたい方は、ROE(自己利益資本率)とは?計算方法と分析方法、改善方法や目安を解説!の記事を参考にしてみてください。

ROI

ROIはReturn On Investmentの略称で、日本語では投資資本利益率と言います。投下資本をどれだけ効率的に運用できているかを示す財務指標です。ROIは利益を投資額で割る事でROIを求める事が出来ます。具体的には、以下の計算で求められます。

ROI(%) = 利益 ÷ 投資額 × 100

利益が投資額を下回った場合ROIは100%を下回る事になります。事業のROIが100%を下回っている場合は、そのペースで進行するとその事業は赤字になる可能性があるでしょう。しかし、ROIは利益ベースのため実際に参考にする場合は、それ以外の要素も加味する事が必要です。

ブランド力や顧客満足度など将来的な収益につながる要素等も合わせて考える必要があるでしょう。またROIは長期的なスパンで回収を行う事業の評価にはあまり向きません。将来的に投資より利益が出るという場合は短期的に見れば、ROIは悪くなる傾向にあります。

ROAの注意点

ROAを使用して判断する際の注意点は3つです。

  1. 業種でROAの平均が大きく変わる
    そのため、この指標を利用して収益性を測る場合は、同業他社と比較して確認するようにしましょう。
  1. 事業拡大のために借入し規模が大きい設備投資を行うと、短期的にROAが低くなる
    この場合、その影響を除いて正しく測るには、その設備投資分を除いた額で計算を行いましょう。
  1. 利益は出ているが、負債の比率が高い
    この場合は、ROAは高いが財務状況が不健全であると言えるので、注意が必要です。なので、その他の指標や財務諸表を確認する事が大切です。

ROAは便利な指標ですが、このようにROAのみでは正しく測れない側面もあります。正しい判断を行うには、様々な角度から事業を評価する事が大切です。

ROAを改善する方法

ROAを改善し向上させるには、当期純利益を増やすか、総資産を減らせばROAを更に高める事が出来ます。当期純利益を向上させるためには、仕入れ価格の再検討したり、商品に付加価値を持たせたり、販管費を減らしたり等の方法です。

また総資産を減らすには、不良在庫や不動産や設備などを売却し手放す事で総資産を減らしROAの改善を進める事が出来ます。

まとめ│ROAは企業の経営効率を測る重要な指標

この記事では、ROAについて解説してきました。ROAは企業の当期純利益を総資産で割る事で、総資産を効果的に運用できているかを測る事が出来る指標です。また要素を分解することにより、具体的な改善策が見つかる場合があります。

またROAは事業を拡大する先行投資などで一時的に低下したり、負債の比率が高く不健全な財務状況であることもあるため、ROAのみで企業の判断するのではなく、ROEやROIなどその他の指標を合わせて活用する事が大切です。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。