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レバレッジドバイアウトとは?メリット・デメリットやMBOとの違いを解説

最終更新日:2024-03-30
レバレッジドバイアウトとは

レバレッジドバイアウトという言葉を聞いたことはあるでしょうか?LBO(Leveraged Buyout)とも呼ばれており、M&Aなどで企業買収する際に使われる方法のひとつです。

「M&Aで使われる方法なのはわかったけれど、もう少し詳しい内容が知りたい」「LBOのメリットやデメリットは?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。

また、似たような意味を持つ言葉でMBOやEBOなどがありますが、どのような違いがあるのでしょう。

そこで今回の記事では、レバレッジドバイアウト(LBO)の意味や流れ、メリットやデメリットなどについて詳しく解説していきます。企業買収を検討している方の参考になると幸いです。

レバレッジドバイアウトの意味とは?

レバレッジドバイアウト(LBO)とは、買い手側の企業が売り手側の資産価値や将来性などを担保として金融機関から融資を受けて、資金を調達することを指しています。

「レバレッジ」は「テコの作用」という意味であり、小さな力でも、大きな力を生み出すことができるということ。LBOの方法を使えば、自己資金に余裕がない企業でも、大きな企業を買収することができるということです。

金融機関からの融資額は、対象である企業の資産価値によって決められるのが一般的となっています。したがって、資産価値が大きい企業であるほど、多額の融資を受けられる可能性を秘めているのです。

一般的なM&Aにおいて、買収に必要な費用については、買い手側が支払うことになっています。しかし、レバレッジドバイアウトを使ったM&Aの場合には「売り手側」に返済義務が発生するのが特徴です。

レバレッジドバイアウトのメリット5選

続いては、メリットについて確認していきます。レバレッジドバイアウトには、大きく分けると5つのメリットがあります。

  • 少ない自己資金でも買収が可能であること
  • 自己資金が少額でも、大きなリターンに期待が持てること
  • リスクを最小限に抑えることができること
  • 節税効果があること
  • 通常に比べて、高めの売却益を得る可能性が高い

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

少ない自己資金でも買収可能である

LBOのメリット1つ目は、少ない自己資金であっても、買収が可能となる点です。これは、レバレッジドバイアウトを行う上で、最大のメリットとも言えるでしょう。

LBOにおいては、買い手側の自己資金については重視されない傾向があります。最も大切なことは「売り手側」の資金力や信頼度・知名度などであり、その評価によって融資を受けることができるのです。

自己資金が少額でも、大きなリターンに期待が持てること

LBOのメリット2つ目は、自己資金が少なくてもリターンが大きくなる可能性が高いことです。レバレッジとは「テコの作用」を表しています。

少ない元手で、大きなレバレッジを効かせることによって、内部収益率を向上させることが実現できるのです。この場合、借り入れる金額が大きいほど、レバレッジも大きくなるのが特徴。

大きなリターンが見込める分、リスクも大きくなってしまいますので注意する必要があります。

リスクを最小限に抑えることができる

LBOにおける3つ目のメリットは、リスクを最小限に抑えることができる点です。企業を買収するには、さまざまなリスクがつきまといます。

財務に関するリスクや資金調達がスムーズにいかないなど、予測できなかった事態に陥る可能性も少なくありません。しかし、LBOでの買収であれば、売り手側によって、金融機関への返済が行われます。

買い手側に考えられるリスクは、買収時の「自己資金」のみとなりますので、一般的な企業買収と比較すると格段にリスクが抑えられるのです。

ここで、ひとつ気を付けておかなければならないポイントがあります。万が一、売り手側の企業が返済を継続できなくなった場合、買い手側の企業にも返済義務が問われることになる可能性もあるので注意が必要です。

節税効果があること

4つ目のメリットは、節税効果に期待が持てることです。

これは、売り手側のメリットとなります。金融機関から融資(資金調達)を行った後、元本のほかに当然「利息」を返済する必要があります。

ここで支払う利息は「損金算入」が可能です。損金算入とは、法人税を計算する際に会計上は「費用」ではないのに、税務上は「損金」扱いになることを表しています。これに伴って、法人税の節約効果につながるでしょう。

通常に比べて高めの売却益を得られる可能性が高い

5つ目のメリットは、通常と比べて、高めの売却益を得られる可能性が高い点です。これも売り手側のメリットになります。

レバレッジドバイアウトを行う際に、譲渡会社の株主は、本来の株式売却額より上乗せした金額で買い取ってもらえる可能性が高いのです。

レバレッジドバイアウトのデメリット3選

デメリットは大きく分けて3つあります。

  • 債務の返済が負担となる
  • 高金利のため、資金繰りが悪化する可能性がある
  • 利益を生み出すプレッシャーが大きい

順番に確認していきましょう。

債務の返済が負担となる

デメリットの1つ目は、債務の返済が負担となる点です。LBOを行った際には、売り手側の企業に返済義務が発生します。

これによって、経営も順調で安定企業であったにも関わらず、多額の債務の返済が負担となるケースも少なくありません。

また、買い手側の企業は、優良企業に対して大きな債務を背負わせることになってしまった責任を感じることとなります。

高金利のため、資金繰りが悪化する可能性もある

2つ目のデメリットは、借り入れた資金の金利が高いため、資金繰りが悪化してしまう可能性がある点です。

一般的な借り入れと比較して、LBOにおける借り入れは、高金利になるケースが多くなっています。高金利ということは「利息」もそれだけ大きくなるということ。

それまでの経営状況から一転、一気に資金繰りが悪化する恐れも否定できません。

利益を生み出すプレッシャーが大きい

3つ目のデメリットは、買い手側のプレッシャーについてです。売り手側に大きな債務を負わせてしまったことによって、何としてでも利益や結果に繋げなければならないというプレッシャーが付きまといます。

自分で会社を設立して、軌道に乗せなければならないというケースよりも、遥かに大きな責任が生じるのです。また、売り手側の企業が経営不振に陥ってしまい、債務の返済ができなくなる可能性もゼロではありません。

そうなれば、多額の負債が買い手側である自分に降りかかってくるのです。LBOを行うにあたって、買い手側最大のデメリットと言えるでしょう。

レバレッジドバイアウトとMBO・EBOの違いとは?

ここからは、LBOと似通った意味で混同しやすい言葉「MBO」と「EBO」、それぞれについて確認していきましょう。

まずMBO(マネジメント・バイアウト)とは、Management Buyoutを略した言葉となっています。MBOは、企業の「経営陣」たちが金融機関または投資ファンドの支援を受けて、会社の株式や事業を買い取ることを表す言葉です。

LBOとの大きな違いは「経営難が株式を買い取って、会社を引き継ぐ」という点になります。MBOの方法を取るのは上場企業が多く、その理由は、株式を非公開にする目的で用いられるケースが一般的だからです。

上場企業では株主の発言に力があるため、経営陣の意見が通らないこともしばしば見られます。経営陣が自社の株式を獲得することによって、株主の声を聞き入れる労力が軽減されるのです。

続いてEBO(エンプロイー・バイアウト)とは、Employee Buyoutを略した言葉です。EBOは、会社の「従業員」が株式や事業を買い取って、経営権を獲得する方法を指しています。

EBOは、どのようなケースで用いられることが多いのか?これは、深刻化し続けている「後継者不足問題」の際や事業承継を行うときの対策として使われることが多く、どちらも企業を存続させたい場合に活用される方法となっています。

レバレッジドバイアウトの流れは?

次に、LBOにおける一般的な流れについて見ていきましょう。LBOを行う手順は、大きく分けると6つあります。

  1. 金融機関と交渉をする
  2. 特別目的会社(SPC)を設立する
  3. 金融機関または投資ファンドから資金を調達する
  4. 企業買収を実行する
  5. 特別目的会社と買収対象会社の合併を行う
  6. 金融機関などへ借入金の返済を行う

順番に解説していきます。

金融機関と交渉をする

金融機関との交渉では、ひとつに絞ることなく、いくつかの金融機関と融資の条件や金利についての交渉や話し合いを行います。

最も条件の良い相手を見つける作業です。この時に、金融機関からローンの審査が行われます。審査で使用される資料に関しましては、DD(デューデリジェンス)によって進められるのが一般的。無事に資金調達の審査に通った際には、売り手側に報告するケースもあります。

特別目的会社(SPC)を設立する

金融機関との交渉が終わり審査が通った後は、買い手側の企業が「特別目的会社」を設立します。

SPCと呼ばれるこの会社は、Special Purpose Companyの略であり、ある特定の目的を果たすためだけに作られた会社です。

登記の上では設立されていますが、事業活動を行う目的で設立される会社とは違います。設立後に、LBOの手続き全てを、SPCを経由して行うこととなります。

金融機関または投資ファンドから資金を調達する

SPCの設立が無事に終わったら、資金調達にうつります。ただしSPCは、LBOを行うために立ち上げたペーパーカンパニーであるため、資金や担保がありません。

ここで融資される資金は、売り手側の企業の将来性や信用度・資産状況などが反映されることになるという特徴があります。

企業買収を実行する

SPCは、自己資金や金融機関またはファンドから調達した資金を使って、売り手側企業の株式の買い取りを行います。

このとき、100%全ての株式を買い取ることが一般的。なぜなら、100%の株式を買い取ることで、利益を最大化することになるからです。株式の買い取りが完了した場合、SPCが親会社となり、売り手側の企業が子会社となります。

特別目的会社(SPC)と買収合併会社の合併を行う

多くの場合、株式の買い取りが完了した後にSPCと売り手側の企業は合併するケースが多く見られます。

合併すると、SPCは消滅することになるのです。しかし、全てのLBOにおいて、合併するとは限りません。双方の関係上、合併に支障をきたすときやSPCを維持したまま、ホールディングス体制を行う際には合併を行わないケースも存在します。

金融機関などへ借入金の返済を行う

最後に借入金の返済になります。これは、売り手側の企業が行うこととなるのがポイントです。一般的にLBOで融資を受ける場合には、高金利になることが予想されます。

利息だけでも大きな金額になり、大きな負債がのしかかることとなるのです。会社の余剰金を返済へと充てなければならなくなりますので、返済が完了するまでの期間は、厳しい経営状況となる可能性が高くなります。

レバレッジドバイアウトを成功へ導くポイントとは?

LBOを成功へと導くポイントとして、安定した企業を選ぶことや、大きなレバレッジを効かせるリスクは避けるなどが挙げられます。また、1番重要視したいのが、シナジー効果を期待できる企業であるかどうかを見極める点です。

慎重且つ入念な調査を行い、緻密な戦略を立てることが必要となります。買収・合併を行うことで、企業の価値や知名度の向上・経営力の補強が見込める会社を選択することが重要です。

シナジー効果を最大限発揮させられる企業を選ぶことができれば、LBOの成功率は格段に上昇するでしょう。

まとめ|LBOには多くのメリットが!自己資金が少なくても実現できる

今回の記事では、レバレッジドバイアウトの意味やメリット・デメリット、MBOやEBOとの違いなどについて詳しく解説してきました。

少ない自己資金で、大きな企業を買収できることやリスクを抑えたM&Aが行えるというメリットがある一方で、気をつけなければならないデメリットもありましたね。

特に、大きな負債を抱えることになることや高金利であることについては、注意しなければなりません。

LBOと混同されやすい手法でMBOやEBOについても紹介してきました。企業買収を行う際には、どの方法を使うのが自分の会社には適しているのかを見極めることが大切になります。

自社に合った手法を使って、会社を成長させるための適切な判断を行いましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。