シナジーとは?シナジー効果の種類や生み出し方、メリット・デメリットを解説
最終更新日:2024-03-30ビジネスの現場やテレビのニュースなどでよく耳にする「シナジー」や「シナジー効果」という言葉。「何となく意味はわかるけど説明するのは難しい」「さまざまな場面で使われる言葉なので、全ては理解できていない」という方も多いのではないでしょうか?
「シナジー」とは日本語で「相乗効果」を意味します。複数のものがお互いに作用し合い、機能や効果を高めていくことです。
ビジネスシーンで使われる際は、いくつかの企業が連携を行うことで、独自で行うよりも大きな効果や結果を生み出すことを表しています。
そこで今回の記事では、シナジーとはどういった意味なのか?シナジー効果の種類やシナジー効果の生み出し方、メリットやデメリットについて詳しく解説していきます。「シナジー」について、理解を深めることができる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
シナジーとは?
ビジネスにおいてのシナジーとは、複数の企業間で協力し合い、その相乗効果によってメリットを生み出すことです。「シナジー効果」と呼ばれることも。主に、単独では難しいとされることも、共同で作業することによって「1+1=2プラスαの効果を発揮できる」という場合に使われます。
シナジー効果とは、協力し合った「一方」だけが利益を生んでいる状態ではなく、両者(それより多くのケースもある)にメリットがある場合に使われる言葉という点も覚えておきましょう。
また、シナジーとは反対の意味を持つ言葉として「アナジー(Anergy)」があり、これはマイナスの相乗効果がもたらされることを表しています。事業間で、お互いに経営状況が悪化した際や、収益が下がった場合などに使われる言葉です。
シナジー効果の3つの種類
一言で「シナジー効果」と言っても、さまざまな種類があり、大きく分けると以下の3つに分類されています。これは、経営におけるシナジー効果の種類です。
- 事業シナジー
- 財務シナジー
- 組織シナジー
ひとつずつ順番に確認していきましょう。
シナジー効果の種類①:事業シナジー
事業シナジーとは、多くの事業者たちが協力・協同することによって生み出されるシナジー効果です。事業シナジーは、大きく分けて3つの効果を生み出すことになります。その3つは「人材の獲得」「コストの削減」「スケールメリット」です。
特徴 | |
人材の獲得 | 複数の事業者たちが合同し、優秀な人材を獲得する。それによって業績アップに繋げ、競争力の強化を狙います。M&Aにおいて、優秀な従業員を獲得できるのがポイント。買収後に必要な人材の見極めが重要です。 |
コストの削減 | コスト削減効果とは、いくつかの事業者が協同することによって、重複している部署を見つけて見直しを行い無駄を省いていくことです。時にはどちらかの部門をカットすることで、大きなコストの削減に繋がります。 |
スケールメリット | 事業シナジーにおけるスケールメリット効果とは、同じ種類のものを数多く集めることによって、単独で行うよりも大きな効果や結果を生みだすことを表しています。効率化の面や他社との差別化などの場面でも利用されているのです。 |
シナジー効果の種類②:財務シナジー
財務シナジーとは、企業においての税金やお金に関する効果を指す言葉です。財務シナジーによって得られる効果はさまざまで「節税効果」「余剰資金活用の効果」「調達余力増加効果」などが挙げられます。
節税効果として大きな割合を占めるのが「繰越欠損金」です。株式を譲渡する際に、買い手側がその事業(会社)の法人を引き継ぐことが可能となります。そのため、対象の会社で利益が出た場合でも、過去の繰越欠損金を使用して利益分を相殺することができるのです。
余剰資金活用は、M&Aで買収や合併を行った際に、余剰資金をうまく活用することで得られる効果を表しています。
シナジー効果の種類③:組織シナジー
組織シナジーとは、生産性向上の効果を指す言葉です。従業員一人ひとりが、お互いに協力・連携し合って、より高い生産性の向上を図ります。
個人では難しく時間のかかる業務も、何人かで協力して取り組むことで、業務効率は格段に上がっていくのです。単独ではなく、従業員同士が力を合わせて作業を行うことで、モチベーションアップの効果も期待できます。
シナジー効果を生み出す4つの方法とは?
企業を発展・成長させていくためにも、シナジー効果を生み出すことは必要不可欠です。シナジー効果を生み出すためには、大きく分けて4つの方法が挙げられます。
- M&A(企業の買収や合併)
- 業務提携
- 多角化戦略
- グループ一体経営
それでは詳しくみていきましょう。
シナジー効果を生み出す方法①:M&A(企業の買収や合併)
シナジー効果を獲得する方法として、1つ目に挙げられるのがM&A(企業の買収や合併)です。M&Aとは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)を略した言葉であり、日本語で「企業の合併と買収」を意味しています。M&Aを実施すると、企業は大きく成長を遂げ、事業全体の拡大が見込まれるでしょう。
また、他社からのアイデアを取り入れるにあたって、新たな開発に成功する事例も見られます。新規事業にもチャレンジしやすくなるのです。ノウハウの獲得により、売上の増加も期待できます。
このようにM&Aを実施することによって、さまざまなメリットを得ることができる一方、「売り手側」「買い手側」でトラブルになってしまうケースも。トラブルを見越して専門家に相談するのがおすすめです。
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シナジー効果を生み出す方法②:業務提携
業務提携とは、複数の独立した企業が「異なった商品」「さまざまな技術」「独自のサービス」を持ち寄ることで、お互いの企業の価値が高まることです。お互いの強みを強化してさらに強固なサービスにしていくことはもちろん、課題点や弱かった部分を補うことで、大きな成果を得ることができます。
新しい市場への足がかりとなったり、飛躍的な生産性の向上に繋がっていくでしょう。
シナジー効果を生み出す方法③:多角化戦略
多角化戦略とは、今までの主力事業とは違った分野へと進出することを指しています。新たな事業をスタートさせることによって、企業全体の売上や収益の向上・シェア獲得を図る戦略です。
多角化戦略は、次の4つに分類されています。
- 水平型多角化戦略
- 垂直型多角化戦略
- 集中型多角化戦略
- 集成型多角化戦略
「水平型多角化戦略」とは、自社が既に獲得している顧客やサービス・製品などを投入して、さらなる市場の拡大を目指すものです。別名「関連製品ライン多角化戦略」と呼ばれることもあります。例えば、電話機を製造しているメーカーが、新たにFAX機を生産するといった事例が、水平型多角化戦略です。
「垂直型多角化戦略」とは、技術における関連性は低くても、既存の市場と似通ったポイントに焦点をあてて展開していく戦略を指しています。例を挙げると、スマートフォンを製造販売している企業が、新たに「スマートフォンケース」を販売するといった内容です。
「集中型多角化戦略」とは、今現在、自社が主力としているサービスや商品を今までとは異なる分野や市場に投入する戦略を指しています。新しい市場へのチャレンジとなるので、商品やサービスに自信を持っていた場合でも、競合相手に対抗できるかは未知数。
集中型多角化戦略を成功させるためには、営業力や販売力も大きな鍵となります。例として、テレビの製造や販売を手掛けていた企業が、カーナビの製造販売へ進出することです。
最後に「集成型多角化戦略」とは、今までのサービスや製品とはまったく関連性のない新しい事業に参入する戦略を指しています。上記で解説した3つの戦略に比べて、非常にリスクが高くなるのが特徴です。
しかしその一方で、成功を収めることができれば、大きな利益を得ることができます。集成型多角化戦略は、4つの多角化戦略の中で、もっともシナジー効果が低くなることを頭に入れておきましょう。
集成型多角化戦略の例を挙げると、印刷業を行なっていた企業がファッション業界に参入したり、清掃業が飲食業に取り組むことなどになります。
シナジー効果を生み出す方法④:グループ一体経営
グループ一体経営とは、複数あるグループ会社をひとつに統合したり、非効率で似通った事業を一本化することによってコストを削減することです。経営のスリム化を目指すもので、グループ間で同じようなニーズを持つ顧客や取引先にアプローチすることができます。
シナジー効果の4つのメリットとは?
ここからは、シナジー効果が企業にもたらすメリットについて確認していきましょう。シナジー効果が生み出すメリットは、大きく分けて4つに分けることができます。
- コストや時間の節約に繋がる
- 融資が受けやすくなる
- 売上や収益アップにつながる
- 知識やノウハウの共有ができる
それでは一つずつ解説していきます。
シナジー効果のメリット①:コストや時間の節約に繋がる
シナジー効果のメリット1つ目は「コスト・時間の節約」ができる点です。複数の企業が合同することによって、同じような部門が統廃合されたり、うまく機能していない業務を見直し・改善できます。これにより、大幅なコスト、または人件費の削減や業務効率化へと繋がるのです。
また、新たな事業を展開したり新規参入を図る場合は、成果を出すまでに長い時間を要してしまいます。しかし、いくつかの企業と共同することによって、時間を大きく短縮できるでしょう。
シナジー効果のメリット②:融資が受けやすくなる
シナジー効果のメリット2つ目は「融資を受けやすくなる」点が挙げられます。複数の企業と合同すれば、自ずと資金力が増加しますので、銀行から融資を受けやすい状況を作ることができるのです。
また、経営状態が回復方向であれば、信頼度もグッと上がり企業に対するイメージアップにもつながります。
シナジー効果のメリット③:売上や収益のアップが見込める
シナジー効果のメリット3つ目は「売上や収益アップ」です。2社以上の企業が提携を結ぶことによって、新しい分野への挑戦や、既存のサービスの拡大もできるようになります。
経営の多角化を実現することで、売上や収益アップが見込めるのです。認知度も向上しますので、大きなヒット商品が出ることも珍しくありません。
シナジー効果のメリット④:知識やノウハウを共有することができる
シナジー効果のメリット4つ目は「知識やノウハウの共有」が可能な点です。ライバル企業に差をつけて、勝ち抜いていくためには、今までの商品やサービスだけでなく新たな切り口を見出さなければなりません。
共同を行った企業が、自社とは違う得意分野を持っていれば、その知識やノウハウを共有することができます。新しいアイデアも生まれやすくなり、独自では辿り着けなかった商品やサービスを提供できる可能性が広がるのです。
シナジー効果の3つのデメリットとは?
ここまでの解説で、シナジー効果には多くのメリットがあることがわかりました。しかし、シナジー効果を発揮させるのは簡単なことではありません。思ったより効果が発揮されないケースや、失敗に終わってしまうことも。ここからは、シナジー効果のデメリット3つについて解説します。
- 組織再編による疲弊
- 人材や情報の流出
- アナジー効果になる可能性
順番に確認していきましょう。
シナジー効果のデメリット①:組織再編によって疲弊する
シナジー効果のデメリット1つ目は「組織再編により疲弊する」という点です。2つ以上の企業同士が新たな体制を整えるためには、多くの時間が費やされることとなります。
意見がぶつかることや条件面での交渉、企業再編への問題など、話し合うことは山積みです。その段階で体力を消耗し、シナジー効果を十分に発揮することができなくなってしまうのです。
複数の企業が合同するには、ある程度の時間が必要になるということを、事前に意識しておくようにしましょう。お互いの従業員や役員たちが納得できる形で経営をスタートさせなければ、シナジー効果を生み出すことはありません。
シナジー効果のデメリット②:人材・情報の流出の恐れがある
シナジー効果のデメリット2つ目は「人材や情報の流出の恐れがある」点です。M&Aで企業が統合・合併した場合、既存の経営理念が大きく変わることがあります。また、社風や環境も一新することになるため、従来の会社に愛着のあった従業員などが離れていくことも珍しくありません。
従業員の中には「売上」や「知名度」よりも、経営者の人柄や会社の雰囲気などに魅力を感じている人も多いものです。新体制に馴染めなかったり、部署の移動・転勤などに不満を覚えて、退職を選ぶこともあるでしょう。
また、共有したノウハウや知識の情報が流出してしまう恐れも考慮しなければなりません。信頼関係を強固なものにするためにも、事前にしっかりと契約を結びましょう。
シナジー効果のデメリット③:アナジー効果(逆効果)になるケースも
シナジー効果のデメリット3つ目は「アナジー効果になる」ケースもあるという点です。そもそもアナジー効果とは、シナジー効果と逆の意味合いを持つ言葉で「1+1=2以下」になってしまうことを表しています。
複数の企業が合併したからといって、必ずしも良い結果が生まれるとは限りません。プラスの効果を導くことは簡単ではないのです。経営の再建や拡大に向けて合併しても、想像していなかった方向に事業が展開してしまうケースもあります。
シナジー効果を高めるために気をつけるべき3つのポイント
シナジー効果をうまく発揮できれば、経営は大きく飛躍し、事業の拡大へと繋がることがわかりました。それでは、シナジー効果を高めるために、気をつけるべきポイントとはどのようなことなのでしょう。
- PMIを徹底すること
- M&Aのタイミングを計る
- 事前にリスクを検討しておく
それではひとつずつ解説していきます。
PMIを徹底すること
ポイント1つ目は「PMIを徹底すること」です。PMIとは「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略であり、M&Aが成立した後の統合において、もっとも重要なプロセスになっています。
M&Aが成立すると、企業の経営方針や社風も大きく変わるため、PMIが徹底されていなければ従業員の間で確執が生じるでしょう。それに伴い、業務が捗らず、業績の悪化を招いてしまうのです。
PMIの徹底は、専門家に相談することでスムーズに行うことができます。
M&Aのタイミングを計る
シナジー効果を高めるためのポイント2つ目は「M&Aのタイミングを計る」こと。M&Aのタイミングを見誤ると、シナジー効果を発揮させられずに、合併自体が失敗に終わってしまいます。
しかし、統合のタイミングは非常に難しく、市場の価値は日々変動しているのが現状です。適切なタイミングでM&Aを実施するためには、専門のコンサルタントにアドバイスをもらうことをおすすめします。
事前にリスクを検討しておく
シナジー効果を高めるためのポイント3つ目は「事前にリスクを検討しておく」こと。アナジー効果に繋がってしまわないよう、シミュレーションしておくことも重要です。まずは、考え得るリスクを洗い出し、対策を練っておきましょう。
リスクを検討する際には、企業が求めているシナジー効果も明確にしておくのがポイントです。どのシナジー効果を生み出したいのか、方向性を定めて、計画に落とし込むようにしましょう。危険度が高く、アナザー効果につながりそうな場合には、安全性の高い方針に変更するなどの対策が必要です。
シナジー効果を発揮した企業の事例
シナジー効果を発揮し、成功している企業は数多く存在しています。下記の4社は、M&Aで成功した代表的な企業です。
- JT(日本たばこ産業株式会社)
- サントリーホールディングス
- 日本ソフトバンク株式会社
- 株式会社ファミリーマート
順番に確認していきましょう。
シナジー効果を発揮した企業①:JT(日本たばこ産業株式会社)
JT(日本たばこ産業株式会社)は、1999年にRJRナビスコからRJRI(米国外煙草事業部門)を買収、2007年には英国大手煙草メーカーであるギャラハーとのM&Aを実施しました。これにより、日本たばこ産業は、海外における販売本数を一気に増加させることに成功したのです。
M&Aを行ったことで、売上が好調になったのはもちろん、コストの削減や従業員のモチベーションアップにも繋がりました。さまざまな点で、シナジー効果を発揮できた事例と言えるでしょう。
シナジー効果を発揮した企業②:サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは2014年、アメリカの蒸留酒最大手である「ビーム社」を160億ドルで買収。蒸留酒ランキングにおいて、10位から一気に3位まで浮上しました。これにより、自社ブランドのウイスキーを販売するルートも確立させたのです。
シナジー効果を発揮した企業③:日本ソフトバンク株式会社
日本ソフトバンク株式会社は、1981年の会社設立以降、数多くの企業を傘下にしています。会社設立当初から多角化戦略を実施し、成功させてきた事例です。1994年にアメリカの「Yahoo!株式会社」を買収し、2004年には「日本テレコム」2006年の「ボーダフォン」買収で、携帯電話事業における地位を確固たるものとしました。
また、2016年にイギリスの半導体設計企業であるARMホールディングスの買収に成功し、世界の半導体市場にも参入しているのです。売上やコスト面において、シナジー効果を遺憾なく発揮している企業と言えるでしょう。
シナジー効果を発揮した企業④:株式会社ファミリーマート
株式会社ファミリーマートは、さまざまな企業とのコラボレーションが成功し、シナジー効果を存分に発揮しています。例えば、セルフで給油ができるガソリンスタンドを併設することで「ガソリンを給油したついでに、買い物して行こう」「ファミマに寄ったついでに、ガソリンも入れておこう」という心理にさせることができるのです。多くの企業とコラボすることで、新商品の開発にもシナジー効果を発揮できています。
まとめ|シナジー効果を発揮させるのは簡単ではない!専門家に相談するのもおすすめ
今回の記事では、シナジー効果とはどのような意味なのか?種類や効果、メリットやデメリットについて詳しく解説してきました。
シナジー効果を生み出すことができれば、企業にとって大きなプラスとなります。事業が拡大して売上が伸びることはもちろん、時間やコストの削減に繋がったり、新たなノウハウや知識を共有できる機会も多くなることがわかりました。
しかし一方で、シナジー効果を利用して、事業を成功へ導くことは簡単ではありません。失敗例も数多くあり、事前準備や計画が大変重要となります。M&Aでは、買収後にトラブルに見舞われることも。そんなリスクをなくすためにも、専門家に相談することがおすすめです。
シナジー効果を最大限活かすことができれば、数々のメリットを生み出すことができます。事業を成功へと導くために、シナジー効果を上手く活用していきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。