連結会計とは?メリット・デメリットや連結財務諸表の種類について解説!
最終更新日:2024-03-30経営している会社が大きな組織となっていくと、子会社やグループ化・関連会社を検討する機会があります。会社が大きくなるのは喜ばしいことですが、ここで問題となるのが関連会社全体の経営状況や財務状況をしっかりと把握しておくことです。
会社が拡大して行く中で、親会社がグループ全体の売り上げや利益などを把握することが、非常に重要なポイントになるでしょう。ここで必要になるのが「連結会計」です。
「どんな流れで進めていけばよいのだろう?」「実際に行う際の注意点が知りたい」という方も多いのではないでしょうか?そこで今回の記事では、連結会計とはどのようなものなのか?対象となる企業やメリット、注意点について詳しく解説していきます。
連結会計について理解が深められる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
連結会計の意味とは?
連結会計とは、どういった内容のものなのでしょうか?連結会計とは、グループ会社や「親会社」「子会社」の関係、関連会社などをひとつの組織であると考えて、企業全体の経営状況やキャッシュフローを報告する会計手法です。
グループ会社や関連会社の不正を防ぐ目的や、投資家などが、企業全体の正確な業績を把握できるという役割を担っています。
連結会計において、作成する必要があるものは「連結財務諸表」です。これは、各々の経営状況やキャッシュフローを報告するために必要不可欠なものとなっています。
連結財務諸表の種類とは?
連結財務諸表の種類について見ていきましょう。以下の通りに構成されています。
- 連結賃借対照表
- 連結損益計算書
- 連結包括利益計算書
- 連結株主資本等変動計算書
- 連結キャッシュフロー計算書
- 連結附属明細表
連結賃借対照表
連結賃借対照表とは、親会社はもちろん、グループ会社や関連会社・子会社すべての資産や負債・純資産などが記載されているものです。
親会社と子会社の資産や負債を全て合算して、相殺したものを記します。グループ企業が拡大しても、連結賃借対照表を確認することで、瞬時に財務状況が把握できるのです。
連結損益計算書
連結損益計算書とは、グループ会社すべての経営成績などを表すものです。親会社と関連会社各々の収益・費用・純資産などを記載することになっています。
収益と費用の差額を確認し、利益を割り出すことができますので、企業ごとの経営状態を把握することに繋がるのです。
連結包括利益計算書
まず包括利益とは、まだ「確定していない利益(OCI)」を含めた利益を指しています。現時点で確定した利益(PL)や未来の利益・損失なども含めたものを表します。
包括利益計算書とは、企業の会計において、純資産が変動した場合に記入するものです。これは、2010年に、会計のルールを統一する目的で導入されました。
連結株主資本等変動計算書
会社全体の「純資産」の部に、どのような動きがあったのかをまとめた書類となっています。
親会社はもちろんのこと、グループ会社や子会社の剰余金や新株予約権・資本金などを明確にすることによって、企業においての資本の動きの全体像が見えるようになっているのです。
また、増資を目的とした新株予約権を発行した際にも、連結株主資本等変動計算書への記載が義務付けられていますので気をつけましょう。
連結キャッシュフロー計算書
連結キャッシュフロー計算書とは、それぞれの会社のお金の流れについて確認できるものです。投資活動ではいくら使用したのか?営業活動にはどのくらいの費用がかかったか?財務活動への支出は?といった内容に分類されています。
連結附属明細表
名称の「附属」からもわかるように、上記で解説した「キャッシュフロー計算書」や「損益計算書」「賃借対照表」などにおいて、補足の説明が必要なケースに使用されるものとなっています。説明が不十分であったり、重要な事柄について詳しく報告するための書類です。
連結会計の対象になる企業とは?
続いては、連結会計の対象となる企業について解説していきます。子会社や関連会社がある企業の全てが、連結会計を行う必要があるわけではありません。
連結会計が義務化されている企業とは「上場企業」と「資本金が5億円以上または、負債が200億円以上の非上場企業」となります。
上記に当てはまる企業で、連結の対象となる子会社(関連会社)は、株式の50%以上を保有している子会社です。ただし、株式の保有数だけで判断するのではなく、会社全体への影響度や支配度なども含めてしっかり判断することが大切になります。
連結会計を行うメリット
連結会計を行う上でのメリットについて確認していきましょう。大きく分けて3つのメリットがあります。
- グループ会社すべての財務状況やキャッシュフローを把握することができる
- 不正を防ぐことに繋がる
- 銀行からの融資がスムーズになる
ひとつずつ見ていきましょう。
企業全体の財務状況やキャッシュフローを把握できる
1つ目のメリットは、企業全体の財務状況やキャッシュフローを把握できる点です。
連結会計を行っていない場合は、グループ会社や関連会社の正確な経営状況を把握することは難しいですよね。
しかし、連結会計を取り入れることによって、どんなことにどのくらいの費用を使ったのか?といった詳細な利益や損失が明確になります。これを公表することで、投資家や株主が意思決定をする場合に有効な情報となるでしょう。
また、信憑性の高い数字が即座に確認できることで、今後の経営方針やグループ展開などの役に経つことは間違いありません。
不正を防ぐことに繋がる
2つ目のメリットは、不正防止にも繋がる点です。連結会計を取り入れていない場合は、親会社が抱えた負債を、グループ企業や子会社などの負債として処理することも可能かもしれません。
親会社の業績や信頼性を向上させるために不正な会計が行われることも考えられるのです。これは「飛ばし」と呼ばれる行為に当たり、取引先や金融機関などからの信用を失うものになります。
しかし連結会計を行なっていれば、こうした不正な会計処理を防ぐことができ、万が一不正が発覚してしまったときでも早い段階で見つけることができるでしょう。
銀行からの融資がスムーズになる
メリットの3つ目は、銀行からの融資がスムーズになる点です。
2つ目のメリット「不正を防ぐことに繋がる」で紹介した通り、連結会計を行なっていない場合には、グループ会社内の会計で万が一不正な会計が行われていても正確な財務状況がわからないこともあります。
しかし、信憑性の高い数字を明確に証明することができるので、信頼性が向上し、銀行からの融資がスムーズになるのです。
一般的に、融資が検討される際には、グループ会社や子会社の経営状況などが調査されます。連結会計を実施していることで銀行側は、企業全体の経営実態を調査する手間と時間を短縮化できるのです。
連結会計におけるデメリット
続いては、連結会計を行う上でのデメリットについて解説していきます。メリットが多かった一方で、負担に感じてしまう面も。デメリットは大きく分けて2つです。
- 財務諸表を作成する際に大きな手間と時間がかかる
- 監査を受ける必要がある
ひとつずつ確認していきましょう。
財務諸表の作成に大きな手間と時間がかかる
デメリットの1つ目は、連結財務諸表を作成する際に、大きな手間と時間を要する点です。
特にグループ会社や関連会社・子会社の多い大企業においては、全ての会社情報を集めるだけでも莫大な時間がかかってしまいます。
データ収集だけに留まらず、合算・相殺処理を行ったり、会社ごとの担当者と連絡作業が続くことになるのです。
経理担当者は、データ収集だけではなく、子会社や関連会社の業績を確認・分析しなければなりません。連結財務諸表を作成するには、多くの時間と労力が必要となるのは間違いないでしょう。
現在は、連結財務諸表をペーパーレスで作成できるシステムが話題となっています。こうした手間を少しでも軽減するために、予算のある企業はシステムの導入を検討するのもひとつの方法かもしれません。
監査を受ける必要がある
デメリットの2つ目は、監査を受ける必要がある点です。これは会社法444条に基づくものとなっています。
監査は時期が決まっているものですので(決算書を作成した後、株主総会が開催されるまでの期間に受けなければならない)、スケジュール的に厳しくなってしまうことが予想されるのです。
連結会計の流れを紹介
ここからは、連結会計の流れについて見ていきましょう。大まかな流れは以下のようなプロセスで進められます。
- 親会社は決済を確定させ、それぞれの子会社やグループ会社の財務状況データを集める
- 全ての会社の財務諸表を合算・相殺する
- 連結修正仕訳の作成を行う
- 連結財務諸表の作成を行う
- 作成した財務諸表を公表する
まずは、親会社・子会社など企業ごとに財務諸表を作成することからスタートします。
このときに注意すべき点は、すべての企業において会計方針をひとつに統一することが重要です。各々が、バラバラな会計方針を取ってしまうと、合算する際にスムーズに進まなくなることも考えられますので気をつけましょう。
財務諸表の合算を行うときの注意点は、決済時期です。特に、グループ会社や関連会社が多い場合には、すべての企業の決済時期が同一日とは限りません。スケジュールをうまく調整する必要があります。
全ての関連会社から情報を入手し、会社ごとの財務状況が確定した後は、親会社の経理担当者によって連結修正仕訳が実行され明確な数値が確定されるのです。
そのデータに基づき「連結賃借対照表」「連結損益計算書」「連結キャッシュフロー計算書」などが作成されることとなります。
公表時期に関しては、上場企業の場合、適時開示ルールに従って公表することが義務付けられていますので期日を守って公表するようにしましょう。
連結会計における注意点とは?
最後に、連結会計において注意すべきポイントを解説していきます。注意点は大きく分けて3つです。
- 会社全体の会計方針を統一しておく
- スケジュール管理には余裕を持つこと
- 企業間でのスムーズな連携が必要不可欠
順番に確認していきましょう。
会社全体の会計方針を統一しておく
1つ目の注意すべきポイントは、会社全体の会計方針をひとつに統一しておくことです。それぞれの企業が独自の会計方針を使用してしまった場合、合算時に余計な時間と手間がかかることになります。
特に関連会社や子会社が多い大企業のケースでは、連結財務諸表を作成するだけで、多くの人手や時間が必要となるのです。会計方針を統一しなければ、さらに余計な仕事が増えてしまうことに繋がるので、事前確認が大切になるでしょう。
スケジュール管理には余裕を持つこと
注意すべきポイント2つ目は、スケジュール管理に余裕を持って作業を進めることです。
これは、決算書類に提出や公開の期限が設けられているため、親企業だけでなくグループ会社や関連会社のスケジュール調整も非常に重要となります。
連結財務諸表の作成は、何の問題なくスムーズに進むとは限りません。あらゆるトラブルに備えて、スケジュールに余裕を持って進めていくことがポイントになるでしょう。
企業間での連携が必要不可欠
注意すべきポイント最後は、企業間でのスムーズな連携が必要不可欠になることを意識しておく点です。
日頃から、それぞれの企業で行われた取引に関して、明細書の管理を徹底したり情報共有をすることが大切になります。書類の作成においては、煩雑な作業がつきものとなりますので、日々の企業間でのコミュニケーションは必要不可欠になるでしょう。
まとめ|連結会計は企業の透明性が向上するため経営もスムーズになる
今回の記事では、連結会計とはどういったものなのか?メリット・デメリットや連結財務諸表の種類、注意点などについて詳しく解説してきました。
会社全体の財務状況やキャッシュフローを正確に把握でき、企業間での不正防止にもつながるメリットがある一方、連結財務諸表の作成には多くの時間や手間がかかることもわかりました。
しかし、企業の透明性が向上し、健全な経営をアピールできることは会社全体を通してプラスに働くことは間違いありません。
日頃から、グループ会社や子会社・関連会社と連携を図ることで、スムーズに作業を進めることができます。企業の全体像をしっかりと見据えて、今後の経営に活かしていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。