規模の経済とは?メリット・デメリットや範囲の経済・スケールメリットとの違いについて解説!
最終更新日:2024-03-30規模の経済という言葉を耳にしたことはありますか?「聞いたことはあるけれど、詳しい意味までは説明できない」「規模の経済をうまく活用したいけれど、どのような方法が良いだろう?」といったお悩みをお持ちの方もいるかもしれません。
規模の経済とは、生産する規模が大きくなるほど、その生産に必要となる費用(コスト)が減少して製品1つあたりの費用(コスト)が少なくなることを表しています。製造過程において、コストを抑える目的で使用されている概念です。
そこで今回の記事では、規模の経済とはどういった意味なのか?メリット・デメリット、規模の経済を最大限活かすことができる業界などについても詳しく解説していきます。
「規模の経済」について、深く理解できる内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。
規模の経済とは
規模の経済とは、同じ条件で製品を製造していく過程で、その生産量や規模を大きくした場合に製造する製品1つあたりにかかるコストが低くなることを表しています。
このときの「製品を製造するコスト」とは、2つに分かれており、1つ目が「固定費」で2つ目が「変動費」です。
1つ目の「固定費」については、人件費や製品工場の土地代・設備費などが含まれます。2つ目の「変動費」に関しては製造工程で必要となる光熱費や材料費、また、完成した製品を運ぶために必要となる運送費など。
変動費は、製品を製造する数が変わると、その都度変動してしまう費用を表しています。
固定費+変動費を合わせた数字を「生産数」で割った金額=「製品1つあたりに必要なコスト」となるのです。
したがって、固定費を変えることなく生産量が増加した場合、製品1つあたりに必要なコストは小さくなることを意味します。そこから、利益の増加に繋がるのです。また、規模の経済は、英語でEconomies of scaleと表記されます。
規模の経済と範囲の経済の違い
規模の経済と似た意味を持つ言葉として「範囲の経済」が挙げられるでしょう。
2つの言葉の相違点は「規模の経済」が、生産量が増えるにつれて製造コストが下がることを指していました。一方で、範囲の経済とは「企業の中で複数の事業を行うことにより、共有できるコストが増えて生産コストが低くなること」を指す言葉となっています。
規模の経済とスケールメリットの違い
「規模の経済」と「スケールメリット」も似たような意味として捉えられているケースが多くあるようです。
しかし、スケールメリットとは「規模を大きくすることによって得られる利益、または効果」を指す言葉となっています。
「規模の経済」が生産量を増やしてコストを下げたことによる利益拡大という意味に対して、スケールメリットは、経営や事業・生産や販売に至るまで、さまざまな規模が拡大した場合に得られる効果を示しているのです。規模の経済の類義語として、覚えておくと良いでしょう。
規模の経済のメリットとは
規模の経済には、大きく分けて4つのメリットがあります。
- 利益拡大に期待が持てる
- 価格競争で有利になる
- 他社参入の壁を作ることができる
- 市場のシェアを高めることができる
ひとつずつ確認していきましょう。
規模の経済のメリット①:利益拡大に期待が持てる
規模の経済のメリット1つ目は、利益拡大に期待が持てる点です。
規模の経済は、別名「規模の利益」とも呼ばれています。規模の経済が活かされている事業においては、生産する数が多くなっても固定費はそのまま維持できている状態です。それにより、生産量を増やしていくことで、利益拡大に期待が持てることとなるでしょう。
規模の経済のメリット②:価格競争で有利になる
規模の経済のメリット2つ目は、価格競争で有利となることです。
規模の経済をしっかり活かすことができれば、1つの製品を製造するコストは低くなる一方で、製造できる量は増えていきます。コストを抑えながらも生産量は増加している状態なので、ライバル会社との価格競争で有利に働くことは間違いありません。
1つあたりの製造コストが低くなれば、利益を維持しながらも、ライバル企業より低価格で販売することが可能となります。生産量が増えて、ある程度の利益を確保できた場合には、価格交渉にも柔軟に対応できるようになるのです。
規模の経済のメリット③:他社参入の壁を作ることができる
規模の経済のメリット3つ目は、他社参入の壁を作ることができる点になります。
規模の経済を最大限に活用し、製造商品の生産量や価格が圧倒的なものとなると、他のライバル会社は「勝てない勝負」と考えて参入しづらい状態となるのです。
生産量・価格のどちらの面においても、市場を支配している企業よりも「低価格でより良い製品」を作る必要があるため、参入するメリットがなくなってしまいます。規模の経済をうまく活かすことができれば、他社参入の牽制になるでしょう。
規模の経済のメリット④:市場のシェア率を高めることができる
規模の経済のメリット4つ目は、市場のシェア率を高めることができるという点です。
規模の経済がうまく機能するということは、市場において自社製品が多く流通することを意味します。生産量がアップしていることによってコストは下がり、一度に運べる運送料も抑えられるでしょう。価格を下げることも可能となります。
市場には多くの自社製品が並ぶこととなり、消費者に対して、自社製品の魅力を存分に伝えることができるのです。
規模の経済のデメリットとは
規模の経済には、さまざまなメリットがありましたね。しかしその一方で、気をつけなければならないデメリットがあるのも事実です。規模の経済には、大きく分けて4つのデメリットが存在しています。
- 大きな初期費用が必要となる
- 常に在庫リスクがつきまとう
- 「規模の不経済」に陥る可能性もある
- 企業内でのコミュニケーションが取りづらくなる
それぞれ順番に確認していきましょう。
規模の経済のデメリット①:大きな初期費用が必要となる
規模の経済のデメリット1つ目は、大きな初期費用が必要となることです。
規模の経済を最大限に活かすためには、まず多額の設備投資が必要となります。多くの生産量を確保しなければならないため、設備が整っていない場合は、製造機械などの設備投資から始める必要があるのです。
それに伴い、大型設備に対応できる「工場」も必要となります。初期費用が莫大なものとなってしまえば、規模の経済を成功させる前に、ライバル企業に市場シェアを獲得されてしまうことも考えられるのです。また、初期費用が予想以上に膨れ上がり、経営状況が悪化してしまう恐れも考えられます。
規模の経済のデメリット②:常に在庫リスクがつきまとう
規模の経済のデメリット2つ目は、常に在庫リスクがつきまとってしまうことです。
生産量が増加しても、その製品が全て売れるとは限りません。時期や季節によって、売れ行きも異なりますし、消費者による「ブーム」の移り変わりは意外にも激しいものです。
万が一、大量に売れ残った在庫を抱えてしまえば、新たに在庫を管理するための場所を用意するだけでなく一気に赤字へと転落してしまいます。
思ったような売上が見込めなくなると、在庫管理にもコストが必要となってしまうのです。また、製品の中には、保管しておくことが難しいものもあるかもしれません。
販売する期限が短い製品も多いはずです。このケースでは、在庫を捌くために、利益が出ない価格での販売を余儀なくされることもあるでしょう。
規模の経済のデメリット③:「規模の不経済」に陥る可能性もある
規模の経済のデメリット3つ目は「規模の不経済」に陥る可能性も考慮しなければならない点です。
そもそも、規模の不経済とは、規模を拡大し過ぎたことによって起こってしまうデメリットを指しています。例えば、生産量を上げるために、それまでより多くの人材を獲得しなければならなくなり「人件費」が大きくなる。また、同じく生産量を増やそうとして、新たな設備を導入する。
このように、規模の経済を活かすために行った施策が裏目に出てしまい、固定費や1商品あたりの製品単価も上がってしまうことです。
規模の経済を活かすためには、効果的な範囲を見極め、規模の不経済になるラインを把握しておくことが大切となるでしょう。
規模の経済のデメリット④:企業内でのコミュニケーションが取りづらくなる
規模の経済のデメリット4つ目は、企業内でのコミュニケーションが取りづらくなってしまうことです。
規模が拡大の一途を辿ることは、会社にとって大きなメリットとなる一方、組織の中での連携やコミュニケーションにズレが生じてくる可能性も考えられます。
生産量が増えるということは、その分仕事も多くなり、情報共有もスムーズではなくなるのです。規模が拡大することによって、従業員たちからの不満の声が多くなる事例は少なくありません。
規模の経済をうまく活用するためには、組織内のスムーズな連携が必要不可欠です。日頃から、積極的にコミュニケーションを取り合うことを心がけましょう。
規模の経済を発揮できる主な業界とは?
規模の経済は、どの業界でも簡単に成功するというわけではありません。規模の経済が発揮できる主な業界は、次の通りです。
- 製造業
- コンビニ
- 自動車メーカー
- 介護サービス
- アパレル
製造業は、規模の経済を発揮することができる業種の代表例です。規模の経済を最大限に活かせる業種は、1つの製品を製造するための総費用において「固定費」にかかる割合が高い業種となります。製造業は、その代表と言えるでしょう。
また、コンビニの成功例としては「自社ブランド(プライベートブランド)」の開発によって、工場で大量生産できるようになったこと。
セブンイレブンやローソンは、プライベートブランドに力を入れているだけでなく、全国に多くの店舗を構えています。
スーパーのプライベートブランドも同様で、大量に製品の製造を行うことができる工場や人材を確保しながら、販売実績を上げていますので「規模の経済の成功例」と言えるでしょう。
自動車メーカーにおいては、使用する部品を安価な価格で大量に仕入れることを徹底し、最大限の利益を作ることに成功しています。
日本のメーカーでは、トヨタがその筆頭に挙げられ、海外のメーカーでは生産量の多い「ゼネラルモーターズ」が良い例です。
介護サービスは、デイサービスなどの通所介護を指しています。高齢者社会となってきた日本において、デイサービスは近年、高齢者やその家族にとって欠かせないサービスとなりました。
大きな施設を構えることができれば、サービスを利用する高齢者も増加します。温泉施設やプールなどの初期費用(設備投資)にはある程度の資金が必要となりますが、利用者を獲得できれば「規模の経済」を最大限活かせる業種と言えることは間違いありません。
アパレルに関しては、UNIQLO(ユニクロ)やGU(ジーユー)が代表的であり、大量に商品を作って低価格で消費者へと販売しています。ファッション業界では、サイズ違いで、同じものを大量に作ることによってコスト削減が実現できることも大きいのです。
まとめ|規模の経済のメリット・デメリットを把握して事業拡大を成功させよう
今回の記事では、規模の経済とはどのような意味なのか?規模の経済のメリットやデメリット、また、規模の経済を発揮できる業界について詳しく解説してきました。
規模の経済は、生産量を増やすと、製品1つあたりのコストが下がり利益が大きくなることを表していましたね。固定費にかかる割合が高い業種で、活かしやすいこともわかりました。
利益拡大に繋がることはもちろん、市場シェア率が高くなることや他社の参入を防ぐことができる、価格競争で優位になるなど多くのメリットがある魅力的なものです。
しかしその一方で、大量のコストを抱えてしまう可能性や多額の初期費用が必要になるデメリットも存在します。
規模の経済を最大限活かすためには、事前に「効果的に活かせる範囲」を見極め、規模の不経済のラインにならないよう計画を立てることが必要です。
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