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M&A 事例・コラム

垂直統合の意味とは?水平統合との違いやメリット・デメリット・成功事例について解説!

最終更新日:2024-03-30
垂直統合とは

垂直統合という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?あまり馴染みのない言葉で「聞いたことはあるけれど、説明できるほど理解していない」「垂直統合と水平統合は、どういった違いがあるのだろう?」とお悩みの方も多いかもしれません。

垂直統合とは、経営を続けていく上で必要不可欠となるビジネスモデルです。うまく活かすことができれば、さまざまなメリットが生まれ、企業の発展に大きな影響をもたらしてくれます。M&Aの場面でも使用される用語となっていますので、覚えておくと安心です。

そこで今回の記事では、垂直統合とはどのような意味なのか?水平統合との違いやメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。垂直統合について、深く理解できる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

垂直統合の意味とは?

垂直統合とは、企業内で製品の開発から製造・販売に至るまでのプロセスを「企業のグループ内で連携する」ビジネスモデルのことを指しています。

一言で「商品の販売」と言っても、まず最初に商品開発が行われ、原材料や部品の調達・販売先への営業・消費者への販売など、さまざまな工程に分類されているのです。この工程のうち、いくつかを「他社に依頼をしている」という選択をしている企業も少なくないでしょう。

垂直統合とは、この一連の作業(サプライチェーン)を、すべて自社(グループ会社なども含めた)で行えるようにします。

サプライチェーンとは、製品を作る上で必要不可欠な一連の流れ(原材料の調達・部品などの調達・製造・販売・消費など)を表している言葉です。

垂直統合の多くは、M&A(合併や買収)によって実現できるケースが多くなっているという特徴があります。垂直統合が現実のものとなれば、取引先へのコストが大幅に削減できることはもちろん、経営が効率的になることは間違いありません。

垂直統合の際に用いられる言葉として「川上統合」「川下統合」があります。これは、垂直統合を2つに分けることができるということです。川上統合とは、原材料や部品・素材などの仕入れや調達に力を入れることを指しています。自社から見て「川上(仕入れる側)」の方向へ、統合を進めていく様です。

一方で川下統合とは、販売の面や市場の管理を強化することを目的としています。自社から見ると「川下(販売側)」の方向に統合を進める様です。

垂直統合と水平統合の違い

垂直統合とは、商品の開発から材料の調達・製造や販売に至るまでを、自社企業のグループ内で連携するビジネスモデルを指していました。

自社だけで、全ての工程を完結させる狙いがあるのが「垂直統合」と言えます。一方で水平統合とは、すでに自社で担っている事業と同一分野での拡大を狙うビジネスモデルです。垂直統合と水平統合は、手法や目的が大きく異なります。

垂直統合と水平統合は、非常に対照的です。

例えば「液晶モニター」の製造を行っている企業であれば、他社で「液晶モニター」の製造を行っている企業と合併し、その分野での経営拡大を目的としているのが「水平統合」ということになります。「自社完結」ではなく、複数の企業が一体となって、特定分野でのシェア拡大を図る手法です。

垂直統合の4つのメリット

それではここから、垂直統合にはどのようなメリットがあるのかを解説していきます。垂直統合は、大きく分けて4つのメリットがあり、どれも経営を拡大していく上で欠かせないものとなっているのです。

  • 取引に必要なコストを大幅に削減できる
  • シナジー効果が期待できるため収益拡大につながる
  • 新規事業への入り口が広がる
  • 競争力の強化につながる

ひとつずつ確認していきましょう。

垂直統合のメリット①:取引に必要なコストを大幅に削減できる

垂直統合の1つ目のメリットは、取引に必要なコストを大幅に削減できることです。

今まで、他社に頼んでいた多くの業務を、自社だけで完結できるようになるのは大きなコスト削減につながります。外部の企業に発注することによって必要となっていた費用が、一切なくなるのは最大のメリットと言えるでしょう。

仕入れや販売の際に起こり得るリスクを回避することにもつながります。また、大きく売り上げを伸ばさずとも今まで必要だったコストが削減できているため、利益向上につながるのです。

垂直統合のメリット②:シナジー効果が期待できるので収益拡大につながる

垂直統合のメリット2つ目は、シナジー効果が期待できるので収益拡大につながる点です。

川上統合・川下統合によって、新たなノウハウや知識・技術がひとつに結束されるので、今までより大きな収益を生み出すことが可能となります。

また、消費者がどのような製品を求めているのかというニーズを共有することとなるため、開発力の向上というシナジー効果も期待できるのです。

垂直統合のメリット③:新規事業への入り口が広がる

垂直統合のメリット3つ目は、新規事業への入り口が広がることです。

川上統合・川下統合を行うことによって「販売側」「仕入れる側」の共有連鎖(サプライチェーン)を展開し、新規事業への参入も視野に入ってくるでしょう。垂直統合では、自社でできることが大幅に増え、新たな戦略を打ち出すことが可能となるのです。

例えば、今まで「製品の製造」には特化していたけれど、それを打ち出す「宣伝方法」は専門外だった場合。自信のある商品を多くの人に知ってもらいたいと考えます。

そこで、統合した企業は「宣伝効果」を存分に発揮できるノウハウを持っていれば、新たな分野にも参入できる可能性が高くなるのです。

垂直統合のメリット④:競争力の強化につながる

垂直統合のメリット4つ目は、競争力の強化につながることです。

製品の開発から原材料や部品の調達・製造や販売に至るまでを、全てグループ企業で行うことができれば、今までより多くの選択肢を持てるようになります。

市場に大きな影響力をもたらすこととなるでしょう。

例えば、今まで「部品の調達」の費用が一定ではなく、価格が高騰したり必要な数が入手できないこともあったかもしれません。この場合、取引先が何らかのトラブルに見舞われて、倒産してしまう可能性も考えられます。

しかし、全てを自社で補うことができれば、リスク回避につながるだけでなく安定して製品を提供することができるのです。コスト削減が実現しているため、価格を抑えることもでき、消費者に対して他社との差別化をアピールすることができます。

垂直統合の3つのデメリット

垂直統合には、数々のメリットがありましたね。しかしその一方で、気をつけなければならないデメリットも存在しています。垂直統合におけるデメリットは、大きく分けて3つです。

  • 専門性が分散してしまうリスクがある
  • 多額の初期費用が必要になる
  • 企業の経営方針の見直しや組織改革が必要となるケースもある

それでは順番に見ていきましょう。

垂直統合のデメリット①:専門性が分散してしまうリスクがある

垂直統合のデメリット1つ目は、専門性が分散してしまうリスクを伴っている点です。

自社でできる範囲が大幅に広がるということは、その分本来重要視していた「専門分野」に特化した経営が難しくなる恐れがあります。企業の柱として行ってきた専門性を失ってしまうと、将来的には競争力で他社に劣ってしまう可能性も。

垂直統合を行う際には、事前にメインとなる「専門分野」に対して、注力する意識が必要です。

垂直統合のデメリット②:多額の初期費用が必要となる

垂直統合のデメリット2つ目は、多額の初期費用が必要となることです。

垂直統合には、多くのメリットがありましたが、それらが全てうまく機能するとは限りません。今まで外部の企業に委託していた際にかかっていた費用の方が、安くなる場合もあるのです。

特に、垂直統合を果たした直後は、設備投資や人件費も多くなることが予想できます。それらを維持するための費用も大きな額となりますので、軌道に乗るまでは苦しい経営状況に陥る可能性もあるのでしょう。

M&Aにより垂直統合を検討する場合には、買収する際の資金なども必要となります。新たなことにチャレンジするときには、大きな初期費用が必要となるケースが多いため、事前にシミュレーションしておくことが大切です。

垂直統合のデメリット③:企業の経営方針の見直しや組織改革が必要となるケースもある

垂直統合のデメリット3つ目は、企業の経営方針の見直しや組織改革が必要となるケースもあるということです。

2つ以上の企業が統合して、新たなスタートを切ることとなるため、今までの常識や経営スタイル・社内ルールなどが通用しなくなる場合もあります。

一定期間様子を見ても経営方針や社会ルールが浸透せず、従業員から不満の声が上がったりスムーズに業務を行えないと判断した場合には、経営方針の見直しや組織改革などが必要となるでしょう。

垂直統合を成功させた企業の事例とは?

垂直統合を成功させた企業についても気になるところです。ここからは、垂直統合を成功させた企業の代表例を2つ紹介します。

  • ニトリ
  • ユニクロ

それでは、ひとつずつ確認していきましょう。

垂直統合を成功させた企業①:ニトリ

垂直統合を成功させた企業1つ目はニトリです。

ニトリは、北海道を中心として展開している大型家具店。1967年に創業し、2023年9月現在では全国に900店舗以上を構えています。ニトリは、家具業界においての常識を大きく覆し、商品開発から製造・販売に至るまで全て自社で行うことを実現したのです。

大規模な自社工場で、大量に製品を製造することができるため、垂直統合の成功だけでなく「規模の経済」も最大限活かすことができています。また、配送業務に関しても自社で行っているため、他社に比べて、圧倒的なコストパフォーマンスを提供できているのです。

垂直統合を成功させた企業②:ユニクロ

垂直統合を成功させた事例2つ目はユニクロ。

ユニクロは創業当初、衣料品を扱う小売店でした。しかし、垂直統合を行ったことで、企画や製造・販売や物流までを自社グループだけで完結するスタイルを確立したのです。

他社と同じ素材や品質の衣料品であっても、圧倒的な低価格で販売していることが強みとなっています。今では「ユニクロ」という大きなブランド力を発揮し、市場シェアを獲得していることはもちろん、差別化を図ることに成功した事例と言えるでしょう。

まとめ|垂直統合をうまく活用できれば、経営拡大へのチャンスが広がる

今回の記事では、垂直統合とはどういった意味なのか?垂直統合と水平統合との違いやメリット・デメリット、垂直統合を成功させた企業の事例などについて詳しく解説してきました。

垂直統合には、数多くのメリットがありましたね。自社グループで企画から開発・製造や販売、さらに物流に至るまでを完結できるようになるため、大きなコストの削減へと繋がります。

また、他社には真似することのできない「独自の強み」を前面に打ち出すことが可能です。ただし、多額の初期費用が必要となる点や専門性の分散などのデメリットもありました。事前にデメリットを把握しておくことで、垂直統合の成功に一歩近づくことができるでしょう。

また、垂直統合を行うにあたってM&Aが必要になるケースも多いはずです。PASONでは、M&Aに特化したマッチングプラットフォームを展開中!業界最低水準の料金で、徹底したサービス&サポートをお約束いたします。会員登録は無料ですので、お気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。