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労働集約型とは?資本集約型との違いや主な業種・メリットやデメリットを解説!

最終更新日:2024-03-30
労働集約型とは

経済用語として知られている「労働集約型」ですが、この言葉は「労働集約型産業」として使用されることが一般的です。経済用語である一方、産業用語でもあります。

また、M&Aで会社買収を検討する際にも覚えておきたい用語のひとつ。企業の特徴や現状を把握しておくためにも、ぜひ理解しておきたい言葉となっています。

「買収を考えている企業は、どんな経営を行っているのか」という詳細を知ることで、M&Aでシナジー効果を発揮できるか?自分の企業の経営方針とマッチしているかどうか?など、企業買収をする上での指標となります。

しかし「労働集約型と資本集約型には、どのような違いがあるのだろう?」「労働集約型の業種には何があるの?」など、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回の記事では、労働集約型産業とはどのような特性があるのか?資本集約型や知識集約型との違いやメリット・デメリット、事例などについて詳しく解説していきます。

労働集約型産業について理解が深まる内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。

労働集約型とは?

労働集約型産業とは、事業を行っていく上での大半を「人間の労働力」に頼っており、機械よりも「人の手」による仕事が多い産業のことを指しています。

設備や機械などの力よりも、人間の労働によって成り立っている業務が圧倒的に多くなっているのが特徴です。経営をしていく中で「人間の労働力」が中枢を担っていると言えるでしょう。

それによって、売上に対する「人件費」の割合が高くなります。設備投資に資金を使うのではなく、人件費に充てられる資金が大半を占めているのです。

事業の核となる部分を「人の力」で補っているため、高い専門性や知識・技能が求められる場合も多くなるでしょう。これが「知識集約型産業」です。労働集約型産業を細分化した場合に「高い頭脳や知識が必要となる産業」を指し示す言葉となります。

弁護士や会計士・コンサルティング業のような、専門的な知識を持ち合わせていなければスムーズな会社運営を行えない業種を「知識集約型産業」と呼ぶのです。

労働集約型と資本集約型の違いとは?

労働集約型産業とセットで使われることの多い「資本集約型産業」とはどのような意味なのでしょう?資本集約型産業とは、労働集約型産業と反対の意味を持つ言葉として使われる言葉となっています。

「人間の労働力」を主体としている労働集約型に対して、資本集約型は設備や機械に頼った経営を行っている企業を表しています。

主体となるものは「資本」であり、売上に対した「固定資産」の割合が高くなる傾向があるのです。会社の売上を伸ばしていくためには「人の力」よりも「機械や設備の力」が必要となる企業と言えるでしょう。したがって、人件費よりも設備投資にかける資金が大きくなります。

労働集約型産業にはどんな業種がある?

それではここから、労働集約型産業と資本集約型産業は主に、どのような業種があるのかについて確認していきましょう。

労働集約型産業は、主に下記の8つが挙げられます。

  • マッサージや整体
  • 農業・漁業
  • タクシー業界
  • 介護サービス
  • 飲食店
  • 建築業
  • 美容師・理容師
  • 製造業(設備投資が不十分なケース)

このように、人の力が必要不可欠となる職種が労働集約型産業です。一部、機械が取り入れられているものもありますが、仕事内容の大部分は「人の手」によって行われています。

例えば美容師を例に挙げると、最近では「オートシャンプー」や「オートドライヤー」などの機械を導入している店舗も多くなりました。機械が自動でシャンプーやトリートメントを洗い流してくれ、ドライヤーまでかけてくれます。

しかし、カットやパーマ・カラーリングやスタイリングといった「時間のかかる主体の作業」は全て「人の手」によって行われるのが現状です。

また、飲食店においては近年「配膳ロボット」が主流になってきています。これもまた、料理を運んでくれるのはロボット(機械)ですが、後片付けや料理を作る人・客への対応はすべて「人の力」がなければ成り立たないのです。

続いて、資本集約型産業にはどのような業種があるのか確認していきましょう。

  • 電気産業
  • ガス産業
  • 重化学工業
  • 金融業
  • 不動産業
  • 投資家
  • インターネット集客

このように、設備投資に大きな資金を投入し、機械によって多くの仕事をこなせる業種が多いことがわかります。

また大企業か中小企業かも重要なポイント。会社の規模によって「労働集約型」なのか「資本集約型」なのかが異なるケースも多くなるのが現実です。

大企業であれば、設備投資をスムーズに進めていき、人の手が無くとも効率良く売り上げを伸ばしていけます。一方で中小企業の場合は、設備に投資するまとまった資金を調達するのが容易ではありません。それによって「人の手」に頼った経営を続けていると考えられるでしょう。

労働集約型の3つのメリット

ここからは、労働集約型産業のメリットについて解説していきます。メリットは、大きく分けて下記の3つです。

  • コストが抑えられる
  • 売上(利益)を上げやすい
  • 単価の高い商品なら効率的である

ひとつずつ確認していきましょう。

コストが抑えられる

メリット1つ目は、コストを最小限に抑えられる点です。「人間の労働力」に頼った経営をする「労働集約型産業」では、設備投資よりも人件費に大きな資金を注いでいます。

生産性や効率化を図るために設備を導入するとなれば、多額の資金が必要です。したがって、資本集約型産業に比べてコストを抑えられる傾向があります。

また、支出の大部分が「人件費」で占めているということは、スムーズな経営を行っていく上で必要な「固定費」や「サービス」にも資金を割く割合が低いと言えるでしょう。

売上(利益)を上げやすい

メリット2つ目は、売上(利益)を上げやすい点です。特に設備が整っていない製造業などは、人の手によって「1時間あたり幾つ製造できるのか」がほぼ決まっています。

製造できる数がある程度決まっているため、売上(利益)の計算もスムーズです。

例えば「マッサージ店」であれば「1時間の施術で〇〇円」と決まっています。美容院の場合でも「カット+カラーで〇〇円」という料金が掲載されていますよね。

このように、1人でも来店してくれた場合、決まった売上が発生するのです。初期投資が小さくても、売上を上げるまでの期間が短く、見通しも立てやすいのがメリットと言えるでしょう。

単価の高い商品であれば効率的である

メリットの3つ目は、商品の単価が高ければ、非常に効率的であることです。商品やサービスの種類にもよりますが、時間あたりの単価を計算した場合「1,000円」の商品と「100,000円」の商品では、利益に大きな差が生まれます。

労働集約型産業の中にも、単価の高いサービスはありますので、機械に頼らずとも大きな売上に結びつけることも可能です。

労働集約型の4つのデメリット

続いて、労働集約型産業におけるデメリットについて紹介していきます。デメリットは、大きく分けると以下の4つです。

  • 賃金が低く昇給しづらい
  • 労働時間が長く残業が多い
  • 生産効率が悪い
  • 離職率が非常に高い

それぞれ確認していきましょう。

賃金が低く昇給しづらい

デメリットの1つ目は、賃金が低く昇給しづらいことです。労働集約型産業は、資金の多くを人件費に費やしていることは上記で解説しました。労働者が多いということは、一人ひとりに支払われる賃金は低くなるのです。

これは、労働集約型産業の特徴とも言えるもので「たくさんの人員を揃えなければ、目標の生産量を達成できない」ことが主な原因です。1人の人間がどれほど頑張ったとしても、会社の求めている生産量には追いつくことはできません。

多くの人手があってこそ、生産性が向上します。そのため、人件費がかさむという問題を抱えている企業が多いことも事実です。人件費をこれ以上増やせないという理由から、安い賃金で昇給もしづらい傾向があるでしょう。

労働時間が長く残業が多い

デメリットの2つ目は、労働時間が長く残業も多い点です。人間の労働力が会社を支える鍵となっているため、自然と労働時間が長くなります。会社の利益を考えると「1つでも多くの商品を作りたい」「1人でも多くの人にサービスを提供したい」と思うのは当然です。

しかし、そのためには従業員に少しでも多く働いてもらう必要があります。週休2日制が定着しておらず、労働時間が長い業種には「労働集約型産業」が多いのが現実です。

多くの人手があることによって生産性向上につながるのであれば、新たな人員を雇えば良いのでは?と考えてしまいますが、新人教育に時間がかかることや、すぐに辞めてしまう可能性などもあるためリスクが大きくなってしまいます。

このような理由から、労働時間も長く残業が多いというデメリットが生まれてしまうでしょう。

生産効率が悪い

デメリットの3つ目は、生産効率が悪い点です。従業員の労働に依存している労働集約型産業では、大型設備が整っている企業と比べて、圧倒的に生産量が少なくなってしまいます。どれだけ人の手を増やしたとしても、設備投資を行っている企業と比較すれば効率が悪いことは明らかです。

この「生産効率の悪さ」を補う目的で、労働時間が長くなり、休日も少なくなる傾向が見られます。このような負の連鎖を解消するためには、大型設備の導入やビジネスモデルの改革などに力を注がなければなりません。

離職率が非常に高い

4つ目のデメリットは、離職率が非常に高い点です。労働集約型産業においては、賃金が低く労働時間が長いといった企業が多いため、離職率が高いことが問題となっています。

給料が低い上に、休日も他の業種と比べて少ないのであれば「もっと条件の良い仕事を見つけよう」と考えてしまうのも無理はありません。

特に離職率が高いのが、介護職です。高齢化社会が深刻化している現代、介護職の求人は増加の一途を辿っています。原因として考えられるのは、高齢者の増加だけではなく、介護職での離職率が大きな要因となっているからです。

働き方改革や自由な働き方がクローズアップされている現在、給料も安くて休みも自由に取れない職種では、深刻な「人手不足」に陥っていると考えられるでしょう。

まとめ|労働集約型産業には改善点が多い!従業員が働きやすい環境作りを目指そう

今回の記事では、労働集約型とはどのような産業なのか?資本集約型や知識集約型との違いや主な業種、メリット・デメリットについて詳しく解説してきました。

「人間の労働力」に頼った経営をする労働集約型には、売上を上げやすい点や低コストで運営できるなどのメリットがある一方、改善しなければならない問題点や課題も多いことがわかりました。

離職率が深刻化している業種も多い労働集約型産業では、従業員が働きやすい環境を作ることや設備の導入で、一人ひとりの負担を減らしていくことが重要です。

また、労働時間や業務内容に比べて賃金が低いという問題点とも、向き合っていく必要があるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。