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M&A 事例・コラム

M&Aを行うと役員報酬はどうなる?従業員の待遇や給与についても解説!

最終更新日:2024-03-30
M&A 役員報酬

M&Aで会社を売却した際、気になるのが「役員報酬はどうなるの?」「従業員の給与や待遇は?」と言ったことではないでしょうか?また、買い手側の企業においては、買収後の注意点なども気になるところです。

会社を売却しようとお考えの方は、売却後は、もう出社することはないのか?引き継ぎや、その他対応しなければならないことなど、わからないことや不安点が次々と出てくるはず。

そこで今回の記事では、M&Aを行った際の役員報酬や従業員の待遇・注意点などについて詳しく解説していきます。売却を検討しているオーナーや買収を考えている企業にとって役立つ情報となりますので、ぜひ最後までお読み下さい。

M&Aとは

そもそもM&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」を略した言葉となっており、企業が合併・買収を行うことを表した言葉です。複数の企業がひとつにまとまったり、ある会社が他の会社を買ったりすることを意味しています。

買い手側の企業は、自社に足りない部分を補う目的や新規事業を展開していきたい場合に検討することが多くなります。

一方で売り手側は、後継者問題によって事業を引き継いでもらうことができない場合や、廃業を回避する際などに用いられることが一般的です。M&Aについては、個人M&Aとは?メリット・デメリットや成功させるコツを徹底解説!の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひチェックしてみてください。

売却した後もオーナーが会社に残る期間がある

売り手側のオーナーは、自身の会社を売却した後も会社に残ることがあるのでしょうか?これは、それぞれのケースによってもちろん異なりますが、一般的には引き継ぎなどを含めて半年〜1年程は会社に残ることとなるでしょう。ただし、買い手側の提示した条件によっては、M&A直後に会社を離れなければならない場合も。

半年〜1年の期間、元オーナーが会社に留まる1番の理由としては「取引先への対応」が挙げられます。M&Aが完了するまで(売り手側に売却した金額が振り込まれるまで)、取引先を含め、外部に売却の旨を伝えることはありません。

なぜなら秘密保持契約書が締結されており、情報の漏洩は、M&Aが破談になってしまう可能性もあるだけではなく損害賠償を請求されるなどのトラブルにも繋がるのです。

買収が全て完了した後に、元オーナーによって取引先への対応をしてもらうことは、買い手側にとっても非常に重要なポイントになります。

何の説明もなくオーナーが代わってしまえば、取引先が離れてしまうことも十分に考えられるのです。これでは、買い手側にとって大きな痛手となります。時間をかけて引き継ぎを行うことで信頼関係が構築され、スムーズに経営を続けることにつながるでしょう。

M&Aが行われても役員報酬は受け取れる?

M&Aが行われた場合、役員報酬はどうなるのでしょうか?会社を売却することになるので、報酬は貰えないと考えてしまうかもしれません。

しかし、一般的には、役員報酬や退職金を受け取ることができます。M&Aを進めていく段階で、売却金額には、元オーナーや役員の退職金・報酬などを含む旨が話し合われるケースが一般的です。

そもそも退職金は、自由な金額を設定することができます。法律で定められた上限はありません。役員報酬には節税効果があり「支払う側」にとっても「受け取る側」にとっても、大きなメリットがあります。

支払う側のメリットは、退職金を「特別損失」として計上することができる点。特別損失として計上することで、会社の利益を縮小することができます。一方で受け取る側は、所得控除が可能です。

ただし、あまりにも高額だったり不自然な金額の退職金を設定してしまうと、税務署の調査により損失算入が認められないケースもあります。

一般的な基準やルールに沿った設定を行いましょう。損失算入については、益金・損金の意味とは?参入・不算入についてや収益・費用との違いを解説!の記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひ参考にしてください。

M&Aで従業員の給与や待遇はどうなる?

続いては、従業員の給与や待遇について確認していきましょう。株式譲渡のケースと事業譲渡のケース、それぞれ解説していきます。

【株式譲渡の場合】

株式譲渡の場合には、従業員の待遇や給与はそのまま同一条件で引き継がれることとなります。労働条件に関しても変わらないため、大きな混乱を招くことは少ないと言えるでしょう。

【事業譲渡の場合】

事業譲渡の場合は、すべての従業員とゼロから契約を結び直す必要があります。勤続年数や有給休暇なども白紙に戻ってしまうのが特徴です。

待遇や給与面で、新たな条件を提示されることもあります。もちろん、待遇が悪くなるケースばかりではなく、より良い条件で働ける可能性も。

ただし、従業員からの不満の声が上がらないよう配慮する目的で、同一条件を提示する企業が多いのも事実です。

事業譲渡に関しては、事業譲渡とは?従業員への影響や手続き・事業譲渡契約書について解説の記事で詳しい内容を紹介しています。

M&Aにおける買い手側の注意点

ここからは、M&Aを成功させるために、買い手側が注意したいポイントを3つ紹介していきます。

  • 買収の目的を明確にする
  • DD(デューデリジェンス)をしっかり行うこと
  • 人材が流出してしまうことやモチベーションの低下も考慮しておく

順番に確認していきましょう。

買収の目的を明確にする

買い手側の注意点1つ目は、買収の目的を明確にすることです。目的がしっかりと定まっていなければ、思うようなシナジー効果を発揮することができませんし、M&Aによって得られた成果なのかどうかも確認が難しくなってしまいます。

また、企業の買収は、経営戦略のひとつでありゴールではありません。過度な期待を持たず、綿密な戦略をプロセスを練って実行に移しましょう。

DD(デューデリジェンス)をしっかりと行う

買い手側の注意点2つ目は、DD(デューデリジェンス)をしっかり行うことです。DDとは、買収を行うに当たっての「審査」であり、念入りに調査しなければM&Aが失敗に終わることは明らかです。

万が一、買い手側の企業が虚偽の申告をしていた場合、M&A実行後に気づいても手遅れになってしまいます。DDを怠ると、M&Aが失敗に終わる可能性が高まるだけではなく、訴訟などの大きなトラブルに発展することも考えられますので注意しましょう。

DDについては、DD(デューデリジェンス)とは?意味や種類、実施するタイミングについて解説の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

人材の流出やモチベーションの低下も考慮しておく

3つ目の注意点は、人材の流出やモチベーションの低下を考慮しておく点です。特にM&A直後は、従業員の士気が下がりがちになります。

環境や待遇面の変化、人間関係の新構築に時間がかかったり社風に馴染めないなど、さまざまな事態が想定されるのです。新体制に納得できない社員の中には、退職を考え始める者もいます。

従業員が離れてしまうことは、買い手側にとって大きな痛手となりますので、対策を取るようにしましょう。

M&Aにおける売り手側の注意点

続いて、売り手側における5つの注意点について解説していきます。

  • 情報漏洩は絶対に避けなければならない
  • M&Aを進めている段階で業績が悪化してしまうケースもある
  • 従業員への配慮を忘れない
  • 複数の買い手を比較する(ひとつの企業だけで決定しない)
  • 不利な情報であっても隠してはいけない

ひとつずつ確認していきましょう。

情報漏洩は絶対に避けなければならない

買い手側の注意点1つ目は、情報漏洩に十分気をつけることです。これはもちろん、買い手側にも当てはまります。

M&Aを行う際には、秘密保持契約書が締結され、外部へ情報が流れてしまうことを絶対に防がなければなりません。理由は、M&Aを行うということは、良くないイメージを持たれやすいからです。

例え事実でなくとも「経営がうまくいっていないのかな?」「業績が悪化したのでは?」といった憶測をされてしまう可能性があります。また、取引先や株主だけでなく、従業員が離れてしまうケースも考えられるのです。情報漏洩した場合、M&Aが破談になることがありますので、十分に注意しましょう。

M&Aを進めている段階で業績が悪化してしまうケースもある

注意点の2つ目は、M&Aを進めている段階で業績が悪化してしまうケースがある点です。

理由として考えられるのが、経営陣がM&Aにかかりっきりになってしまい、本来すべき業務を疎かにしてしまうこと。M&Aが長引くと、本業に関わる時間が減り、気付かぬうちに業績が悪化してしまう可能性もあります。

そうなってしまえば、売却額が低くなるだけでなく、M&A自体が破談となるケースも考えられますので気をつけましょう。

対処法は、専門家への依頼です。PASONでは、M&Aに特化したサービスを展開しています。成約までのサポートはもちろん、アフターケアも忘れません。業界最低水準の料金ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。ご相談は無料で行っています。

従業員への配慮を忘れない

注意点の3つ目は、従業員への配慮を忘れないことです。慣れ親しんだ会社から新しい会社に移ることは、さまざまなストレスを感じることが多くなります。

ルールが変わり社風が変わるだけでなく、人間関係も新たに築いていかなければなりません。なかなか納得できない社員も居るでしょう。

特に、長年一緒に働いてきた従業員であれば、大きな心労を感じることになるかもしれません。退職者が続出してしまえば、当初に提示していた売却条件でのM&Aは厳しくなります。

複数の買い手を比較する

注意点の4つ目は、必ず複数の買い手を比較することです。一社に絞ってしまうと、話し合いはスムーズに進むかもしれませんが、自社の本当の価値や後継者として適切な企業を知ることができません。

自社を高く評価してくれる企業を見つけることも、M&Aにおいて重要なことです。金額だけでなく、信頼できる企業であるかどうかや相性なども考慮して進めていきましょう。

不利な情報であっても隠してはいけない

注意点5つ目は、不利な情報も隠してはいけない点です。「高く評価してもらいたい」「自社の魅力をひとつでも多くの企業に知ってもらいたい」という気持ちから、虚偽の情報を開示してしまうのはNG。

信頼関係が崩れてしまうだけではなく、トラブルへと発展するケースもあります。また、故意ではなかった場合でも、間違った報告をして訴訟を起こされる可能性も。M&Aでは、信頼関係が何よりも大切なことはもちろん、誠実かつ真摯な対応が求められます。

まとめ|M&Aが行われた場合も役員報酬や退職金は受け取れる!

今回の記事では、M&Aが行われた場合、役員報酬を受け取ることはできるのか?従業員の待遇や給与、また売り手側や買い手側の注意点についても詳しく解説してきました。

M&Aの売却額には、役員の退職金や報酬が含まれていることが一般的です。従業員については、株式譲渡では待遇や給与に変わりはなく、事業譲渡の場合は新たに契約を結び直すことがわかりました。

注意点でも述べた通り、M&Aはお互いの企業にとって非常に重要なものとなりますが、本来の業務が手薄になってしまえば本末転倒です。会社の業績が悪化してしまうと、白紙に戻ってしまう可能性もあります。M&Aを行う際には、専門家への相談を選択肢に入れておくと良いでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。