法人保険とは?節税効果や種類・加入するメリットやデメリットについて解説!
最終更新日:2024-03-30保険の中には、法人保険と呼ばれる会社の経営者や役員などの死亡や大きなけがなどに備えられるものがあります。
また会社にあるリスクに備えたり、従業員の福利厚生の充実や拡大をしたり、退職金の積み立てたりと効果は様々です。
しかし保険料を支払う必要があるため、それにより資金繰りが悪化してしまう可能性があります。この記事では、法人保険の目的や種類、メリットとデメリット等について解説していきます。
目次
法人保険とは?
法人保険とは、法人が契約者となり加入する保険の事です。
保険の中には、会社の経営者や役員の死亡に備えられる保険や、退職金の支払いに備えるための保険などがあります。このような法人保険は、大まかに生命保険と損害保険の2種類に分類することができます。
また法人保険は法人が契約者となり被保険者は、保険の種類や目的によって経営者や役員、従業員のいずれかです。このように法人保険は様々なリスクに備えたり、従業員の福利厚生を充実させることにもつながります。
法人保険には、生命保険と損害保険の2種類があり、次の章ではそれぞれ種類に分けて解説していきます。
生命保険
生命保険は、人の生死やケガなどのリスクに備えるための保険です。生命保険は主に以下の7種類です。
- 逓増定期保険
- 長期平準定期保険
- 養老保険
- 収入保障保険
- がん保険
- 医療保険
- 生活障害保障定期保険
上記の保険をそれぞれ解説していきます。
逓増定期保険
逓増定期保険(ていぞうていきほけん)とは、死亡や高度障害などを保障するもので、保険の期間が経過すると死亡保障額が徐々に増加するのが特徴の生命保険です。
この保険は、最終的に保険金額が5倍程度まで増加するため、貯蓄としての性質が強いです。そのため経営者や役員が死亡した時の退職金や慰霊金などの準備や、解約返戻金を活用し勇退退職金の準備などに利用する事ができます。
また逓増定期保険のメリットとして、5〜10年程度で解約返戻金のピークが来るという点です。そのため勇退の予定に合わせてその時期にピークが来るようにして退職金の準備をしたりする事ができます。
しかしデメリットとしてこの逓増定期保険は、解約返戻金のピークの期間が短い点があげられます。解約返戻金のピーク前の早期解約やピークを過ぎた後は、解約返戻金が急激に低下するのが一般的です。
そのため解約のタイミングがピークからずれてしまうと大きな損失を生んでしまう可能性があります。そのためこの保険では、解約返戻金のピークにも注意して加入と解約を計画する必要があります。
長期平準定期保険
長期平準定期保険とは、死亡や高度障害などを保障するもので、保証期間が100歳までなどの長期にわたるのが特徴の生命保険です。
長い期間経営者や役員などの死亡リスクを保障しているため、事業保障や事業継承の対策として活用されています。解約返戻金を活用して勇退退職金対策などに活用される事もあります。また色々なタイプがあり「低解約返戻金型」「外貨建てのタイプ」「健康状態で保険料の割引」など様々です。
この保険のメリットはピークが10〜30年後とピークまでが遠いが、ピーク後も長い間高い返戻率が維持という点です。そのため退職時期がかなり先の場合や、将来的な設備投資が見込まれる企業に向いている法人保険と言えるでしょう。
デメリットとしては、解約返戻金のピークまで長いため、経営状態が悪化して早期に解約しなければいけなくなった場合は、損失が出てしまうなどのリスクがあります。
養老保険
養老保険とは、死亡や高度障害などを保障するもので、生存したまま保険期間満期を迎えると満期保険金が支払われるのが特徴の保険です。
死亡や生存どちらの場合でも保険金が受け取れるため貯蓄性が高いのがメリットです。役員や従業員の死亡退職金や生存退職金どちらにも備えることができるため福利厚生として加入されることが一般的です。
また一定条件を満たし福利厚生として加入した場合は、支払った保険料の半分を損金として計上できるため節税効果も期待できます。
しかし福利厚生費と認めてもらう条件に社員全員を加入対象にしたりするなど、保険料が高額になりがちな点は注意が必要です。
収入保障保険
収入保障保険とは、死亡や高度障害になったときに保険金を一時金もしくは年金形式で受け取れるのが特徴の保険です。
種類によっては就労不能になった場合に保障が受けられるタイプも存在します。メリットは年金形式で保険金を受け取れるため、万一の事があった場合にも借入金対策として活用できる点です。
デメリットは加入時の保障額が大きいが、保険期間が経過するとともに保障額が減少していくところです。また保険料は基本的に安い傾向にあります、しかしその代わり契約返戻金や満期保険金がないものが一般的です。
がん保険
がん保険とは、被保険者ががんになった際に保障を受けられるのが特徴の保険です。
個人向けの印象が強いですが、法人向けのがん保険はより保障内容が充実しています。保険料は多少上がりますが、掛け捨てではなく解約返戻金や終身型のタイプなどがあります。
解約返戻金があるがん保険の場合は役員退職金に使えたり、解約返戻金のない終身型のがん保険の場合は、退職金代わりに一生涯のがん保障を渡したりする事が可能です。
しかしデメリットとしては、掛け捨てに比べて保険料が高くなってしまう点が挙げられます。
医療保険
医療保険とは、病気やケガによる入院や通院にかかる費用を保障するのが特徴の保険です。これは個人向けとあまり変わらず、メリットはがん保険と同じで解約返戻金や終身型のタイプなどがあります。解約退職金があるタイプであれば役員退職金として活用する事ができます。
生活障害保障定期保険
生活障害保障定期保険とは、死亡や高度障害のみではなく、生活に支障をきたす場合にも保障されるのが特徴です。ケガまたは病気によって働けなくなるような場合に備えるための保険です。
メリットは、認知症や要介護状態、三大疾病などの病気のリスクに幅広く対応していることです。しかしデメリットとしては、カバー範囲が広いためその分保険料が高額になりやすい点があげられます。
損害保険
損害保険は、物に対するリスクに対して備える保険です。損害保険には多種多様な種類があります。ここで紹介するのは、賠償責任に対応する保険です。事業内容によって様々な保険があるためここでは、下記にいくつか例をあげます。
- 自動車保険
- PL保険
- 施設賠償責任保険
- 役員賠償責任保険
- テレワーク保険
- サイバー保険
- セキュリティ保険
- 請負業者賠償責任保険
- 生産物賠償責任保険
- 使用者賠償責任保険
- IT賠償責任保険
- 個人情報漏洩保険
- 建設業総合保険
- 知的財産権賠償責任保険
事業を行っていると様々な賠償リスクがあります。テレワーク保険を例にあげると、情報漏洩による損害賠償費用やウイルスに感染してしまったデータの復旧費用などに備えられる保険です。業種や業態に応じて、備えるべき賠償責任リスクに差があるため必要な保険を選択する必要があります。ここで上げた保険以外にそれぞれ対応する内容で分けられる下記の5種類の保険があります。
- 事業運営に対応する保険
- 企業財産に対応する保険
- 従業員に対応する保険
- 主に従業員に対応する保険
- その他包括的な保険
上記をそれぞれ解説していきます。
主に事業運営に対応する保険
次は事業運営を行っていく中で発生するリスクに対応する保険です。この保険は主に以下の2つです。
- 取引信用保険
- 船舶・貨物・運送の保険
取引信用保険は、主に取引先の倒産などにより債務不履行によって損害が発生するリスクに対応した保険です。また船舶・貨物・運送の保険は、船が自然災害にあった場合の損害や運送した貨物が事故にあった際などの損害が発生するリスクに対応した保険となっています。
主に企業財産に対応する保険
企業が持つ財産である建物や設備などに発生するリスクに対応する保険です。この保険は、主に以下の6つです。
- 火災保険
- 機械保険
- 組立保険
- 工事保険
- 動産総合保険
- 企業財産包括保険
企業が扱う建物や設備は、大きな金額になりやすくそれを失ってしまうと大きな損害に繋がります。そのため資産を守るためにもしっかりとリスクを想定しておく必要があります。
主に従業員に対応する保険
政府労災保険に上乗せされる保証やリスクに備え従業員の待遇を充実させたりすることができる保険です。この保険は、主に以下の2つです。
- 労働災害総合保険
- 業務災害総合保険
従業員に対する使用者が負う賠償責任などのリスクに対応した保険で、従業員の死亡や後遺症障害保険金、入院・手術・通院などにも対応しているものが多いのが特徴です。そのため従業員が安心して働ける環境を築けます。
その他包括的な保険
事業活動包括保険などのような様々なリスクに対応した保険も存在します。事業規模が大きかったり必要な保険が多いようなケースでは様々なリスクに対応している包括的な保険も選択肢に入るでしょう。
法人保険のメリット
法人保険に加入すると、会社の様々なリスクに備えることができます。またそれ以外にもいくつかメリットがあるため解説していきます。
法人保険のメリット➀│経営者の死亡などに備えつつ退職金としても活用できる
法人が生命保険に加入する一番のメリットは経営者に万が一のことがあり死亡した場合などの事業リスクに備えられることです。
経営者が急に死亡したりした場合、混乱が発生して様々な支払いや、借入金の返済などに支障をきたすことがあります。そうなってしまうと会社の信用が低下したり、融資を打ち切られてしまったりするリスクがあります。
このように生命保険に加入していれば、保険金により当面の資金問題を解決することができるでしょう。
また保険金や解約返戻金を経営者の退職金に活用することが可能です。これにより退職金の負担を減らしたり、節税効果を得られます。
法人保険のメリット➁│従業員の福利厚生の拡大ができる
生命保険に加入すると従業員の福利厚生を拡大させる事ができます。生命保険では、死亡退職金や入院・手術費用などの福利厚生を更に充実させるプランなどがあります。
福利厚生が充実していると従業員が安心して働けるようになる点もメリットです。
法人保険のメリット③│事業承継や相続の対策になる
最後のメリットは、経営者が死亡して後継者に自社株式を相続した場合に発生する相続税を保険金で賄うことができる点です。
経営者が死亡した際に、会社が被る経済的損失を保障するのに用意するべき金額を標準保障額と言います。この標準保障額の目安は以下の通りです。
借入金の金額+運転資金の6か月+遺族への弔慰金 = 標準保障額
これを保険金でカバーできるように生命保険に加入しておくと、経営者が死亡したような場合に備える事ができます。
法人保険のデメリット
法人保険にはこれまで解説してきたメリットがありますが、一方でデメリットもあります。ここではデメリットについていくつか解説していきます。
法人保険のデメリット➀│資金繰り悪化する可能性がある
法人保険に加入すると様々なリスクに備えることができますが、その代わりに毎月保険料を支払う必要がでてきます。
保険料が大きな金額の支払いになってしまうとその後の資金繰りを悪化させる可能性があるのがデメリットです。また契約者貸付制度と言われる保険会社から解約返戻金の一部を借り入れることができる保険もあります。これは、積立金を担保にするため素早く借り入れが可能です。
法人保険のデメリット➁│解約の時期が悪いと損をするリスクがある
法人保険に加入した後に解約すると解約返戻金を受け取れる保険の場合は、解約のタイミングによっては払い込んだ保険料より解約返戻金が少なくなる可能性があります。
貯蓄型の生命保険では、契約から解約までの期間が長くなるほど返戻率が高くなるのが一般的です。そのため返戻金のピークで解約するつもりが、資金繰りの悪化などにより想定より早く解約することになった場合に損をしてしまう可能性があるのがデメリットと言えます。
まとめ│法人保険は経営者の万が一に備えたり節税効果を得る事ができる
ここまでは法人保険について解説していきました。法人保険は法人が契約者となり加入する保険の事で、経営者や役員の死亡などのリスクに備える事ができます。
また損害保険の場合は、火災や事故などによる建物や設備の損害を受けるリスクや損害賠償金などに備えることが可能です。
その他経営者の退職金の積み立てとして活用し解約返戻金がピークになる時期と退職の時期を合わせて退職金の負担の軽減や節税効果を受ける事ができます。
しかしデメリットとして保険料の支払いによって資金繰りが悪化する可能性がある点と早期に解約すると大きく損をしてしまう可能性がある点には注意が必要です。
また税制改正によりルールが変わり損金算入が認められなくなったりと節税効果が薄くなってしまう場合もあるためその点にも注意しましょう。
法人保険では、事業リスクに備えながら経営者の退職金の積み立てに活用したり、そこで働く従業員の福利厚生を更に充実させる事にもつながります。上手に法人保険を活用して事業を存続させていきましょう。