PASON
PASON
M&A 事例・コラム

副業禁止は法律的に認められる?企業が禁止する理由や発覚時のペナルティについて解説

最終更新日:2024-04-27

近年、副業をする人が非常に多くなりました。

インフレの加速で物価の上昇が止まらず「将来が不安」という理由もありますが、2018年に行われた「働き方改革」がキッカケという方も多いのではないでしょうか。

働き方改革には含まれておりませんが、この時、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。

これによって、それまでの「副業禁止ルール」が削除されたのです。

しかし、ここで気になるのが、働いている会社で副業が禁止されている場合。今もなお、数多くの企業で、副業が禁止されているのが現状です。

副業を始めたいけれど、会社の規則で「副業禁止」であれば、副業をしてはいけないのでしょうか。

そこで本記事では、多くの企業が副業を禁止にする理由やその違法性、副業禁止の会社で副業を行った場合などについて詳しく解説していきます。

法律において副業は禁止されていない(公務員を除く)

そもそも、憲法第22条で定められている通り、我々国民には「職業選択の自由」が保障されています。

法律的に副業は認められており、プライベートな時間(例えば、本業の勤務時間外)であれば、休むことも働くことも自由です。

その一方で、今でも多くの企業が「副業禁止」のルールを設けています。

ここで疑問となるのが「法律で認められているのに、会社が副業を禁止しても良いのか?」という点です。

これは「会社内のルール」であるため、経営者が自由に決めることができます。勤めている会社のルールで「副業禁止」とされている場合、副業を行っても「法律違反」とはなりません。

しかし、社内の規則を守っていないため、何かしらのペナルティを受ける恐れもあるでしょう。

また、公務員に限り、副業は禁止されています。正確には、副業自体を禁止しているのではなく、厳しい制限が設けられているのです。

国家公務員法第96条第1項では

すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

と記されています。また、103条においては

職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120

と定められているのです。

さらには、公務員の副業禁止を決定付ける「3原則」と呼ばれているものがあります。

  • 信頼失墜行為の禁止
  • 守秘義務
  • 職務専念の義務

これは、世間から見た公務員のイメージを守ることや業務で知り得た情報の流出を防ぐこと、また本業に専念しなければならないという意味合いとなります。

このことからもわかるように、公務員にとって「副業」は、高いハードルがあるのです。

ただし、認められている副業もありますので、その一部を紹介します。

  • 不動産投資
  • 小規模農業(家庭菜園)
  • ポイ活やアンケートモニター
  • 不用品を売る
  • 株式・FX・仮想通貨

不動産投資では「年間の家賃収入が500万円以下」「管理業務は委託しなければならない(本業に支障をきたさないため)」「不動産の規模は10室以下、5棟以下」という制限があります。

また、株式・FX・仮想通貨を行う際には「インサイダー取引」に十分注意しなければなりません。

不用品を売る場合には一般的に、店頭やフリマアプリ・オークションサイトなどを利用します。この時「転売目的」の商品を売ることは「営利目的」とみなされるため禁止です。

なぜ企業は副業を禁止するのか

法律で認められているはずの「副業」

多くの企業では、働き方改革後も副業を禁止しています。

その理由は大きく分けて3つです。

  • 本業が疎かになる
  • 大切な情報が外部に漏れる恐れがある
  • 人材流出(転職)の不安

それぞれ順番に確認していきましょう。

本業が疎かになる

企業が副業を禁止する理由のひとつに「本業が疎かになる可能性」を懸念している点が挙げられます。

副業を始めたからといって、本業の労働時間が短くなったり休みが増えるわけではありません。

仕事が終わった後の時間や休日を「副業時間」に充てることになります。

これによって、休息を取る時間が確実に減ってしまうため、本業において遅刻や早退・欠勤が増える可能性が高まるのです。

また、勤務中も集中力が続かなくなったり、話に身が入らないなどの悪影響を及ぼすことも。

結果的に「本業が疎かになる」ことに直結するため、多くの企業は副業禁止を定めているのです。

大切な情報が外部に漏れる恐れがある

法律では認められている副業を、会社側が禁止する理由の2つ目は、大切な情報が外部へ漏れてしまうのを防ぐためです。

副業によって、多くの人と繋がる機会が増えることになります。

そこで、本業で知り得た知識やノウハウを使ってしまうケースもあるのです。

また、大切な顧客情報や会社の機密情報などが外部に流出してしまうことも少なくありません。

人材の流出(転職)を防ぐ

3つ目は、優秀な人材が会社から離れてしまうことを防ぐ目的です。

副業を始めると、いつの間にか本業よりも待遇面が良くなったり、やり甲斐を感じるケースも多く見られます。

また、他社にヘッドハンティングされてしまったり、独立を考えだす人もいるのです。

企業としては、そのような優秀な社員を手放すのは非常に大きな損失となります。

副業のメリット

今では珍しくなくなった「副業」ですが、企業側・従業員側それぞれにおけるメリットについて確認していきましょう。

副業による企業側のメリット

従業員が副業を始めることで、実は企業側にもメリットがもたらされます。

社員が副業の場で得たスキルや知識を、本業で発揮してくれる可能性が高いことです。

副業によって、柔軟な対応を身につけたり新しい角度から物事を判断できるようになるケースも多く見られます。

それによって、新しい商品やシステムを開発するキッカケになる可能性も大いに考えられるのです。

従業員側のメリット

企業に所属している従業員が副業することで得られるメリットは、収入面の安定です。

現在日本国内では、インフレによる物価の高騰が加速する中、給与が上がらないことが深刻な問題となっています。

本業の給料だけでは、生活が成り立たないケースも珍しくありません。

副業を行うことで、毎月の収入が増え、生活面だけではなく精神的にもゆとりを持つことができます。

本業の経営が傾いてしまい、倒産やリストラに追い込まれた際にも、副業で収入を確保しスキルを身につけておけば安心です。

企業が副業を禁止するデメリット

未だに、数多くの企業が社内ルールとして「副業禁止」を掲げていますが、実は禁止するデメリットもあります。

まずひとつ目が、今後、優秀な社員を獲得するのが難しくなる点です。

現在は、副業を解禁する企業も少しずつ増えてきており、その中には大手企業も名を連ねています。

優秀な人材は、自分の能力を存分に発揮できる会社を選ぶため、自由度が高く柔軟な企業が好まれるのです。

そのため、就職先の選択肢から外されてしまうことも多くなり、人材の獲得に暗雲が立ち込めるでしょう。

2つ目のデメリットは、会社のイメージが悪くなってしまうことです。

「いまどきの会社ではない」「固く、古くさい考え方」「時代の流れに合っていない」などのイメージが定着してしまう可能性もあります。

一度付いてしまったイメージは、大きな変貌を遂げない限り、なかなか払拭することはできません。

企業の成長や発展には、大きな改革や柔軟な発想が大切です。人材の確保や会社に定着した悪いイメージを取り除くときには、新しい動きが必要となるでしょう。

副業禁止の企業で従業員が副業したらどうなる?

それでは、社内のルールで禁止されていたにも関わらず、従業員の副業が発覚してしまった場合は一体どうなるのでしょうか。

法律において、副業は認められているため、法的処置をとられる心配はありません。

ただし「会社内の規則」として禁止されていたのは事実ですので、ペナルティを受ける可能性は十分に考えられます。

  • 厳重注意処分
  • 減給処分
  • 出勤停止処分
  • 役職の降格処分
  • 懲戒解雇処分

上記5つのペナルティがあり、行っていた副業の種類や会社に与えた損失などによって、それぞれの企業で対応は異なります。

法律において、副業は禁止されていないため、余程のことがない限り「懲戒解雇処分」を言い渡されることはありません。

しかし、会社の信用に関わるような違法業務や会社の利益を妨げるような行為をしたときには、懲戒解雇処分となるケースも十分に考えられますので注意しましょう。

副業を解禁した大企業5選

副業を禁止している中小企業が多い中、大手企業では次々と副業解禁の動きが活発化しています。

  • 株式会社リクルートホールディングス
  • キリンホールディングス株式会社
  • ヤフー株式会社
  • ANAホールディングス株式会社
  • 株式会社メルカリ

リクルートは、働き方改革以前から、副業への理解が高い企業です。自由な働き方を選択でき、フレックスタイム制度や長期休暇制度が整っています。ただし、副業する際には上長の承認が必要となるため注意しなければなりません。

キリンホールディングスでは、2020年から「週に3回以上の在宅勤務」を推奨しており、副業しやすい環境となっています。しかし、休息時間をしっかりと確保するため、決められた本業+副業の労働時間の報告が義務付けられています。

ヤフー株式会社は、自社だけではなく、社外の経験からもさまざまなスキルを吸収してもらいたいという想いが強い会社です。多種多様な働き方が認められており、自由な社風が話題となっています。

ANAは、個人が副業を申し出るだけではなく、会社側から兼業を紹介するケースもあるほど副業に理解を示している企業です。

メルカリでは「本人の市場価値の向上」を目的として、副業を推奨しています。これは、創立当初からの試みであり、時代のニーズに合った会社運営ができていると言えるでしょう。

まとめ|法律で副業はOK!ただし社内ルールの確認を忘れずに

今回の記事では、副業は法律で禁止されているのか、企業が禁止する理由やメリット・デメリットなどについて詳しく解説してきました。

法律的には副業が認められていることがわかりましたね。

しかし、今もなお、多くの企業では社内の規則として「副業禁止」を定めています。これには本業への悪影響や情報漏洩の恐れ、人材流出を防ぐ目的がありました。

禁止されているにも関わらず、副業をしてしまったときには、何かしらのペナルティを受けることになります。会社に居づらくなるケースも十分に考えられますので、まずは上長に相談したり社内ルールの確認を行うようにしましょう。

PASONは、M&Aに特化したマッチングプラットフォームを展開しています。

売り手側企業は無料でご利用いただけます。また、買い手側企業においても、業界最低水準の料金でご提供しております。

M&Aが初めてで不安という方でも安心です。PASONの専任スタッフが、徹底したサポートと充実したサービスをお約束。

ご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。

【買い手側の企業様はこちらから】

【売り手側の企業様はこちらから】

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。