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M&A 事例・コラム

コングロマリットとは?メリット・デメリットやディスカウントについて解説!

最終更新日:2024-10-10

時代の移り変わりが早く先行きが不透明な時代での生存戦略として、コングロマリット型経営が注目されています。国内において、このタイプの多角化経営が活発化してきています。

この記事ではコングロマリットの効果やメリット・デメリット、他の企業形態との違いを解説していきます。

コングロマリットとは

コングロマリット(Conglomerate)とは、分野の異なる色々な業種や複数の企業が経営統合をして1つの企業グループを形成すること、もしくはそのような企業のグループの事を指します。

日本企業の例では、「映画や音楽などのエンタメ事業」「生命保険などの金融事業」「学校法人設置など教育事業」などで事業展開をしているソニーグループ株式会社や「通信機器などの開発業」「電力設備などのエネルギー事業」「医療機器の製造などのヘルスケア事業」などで事業展開をしている日立製作所です。

この形態は、分野の異なるさまざまな業種や事業展開することによりリスクを分散しながら、収益などの安定化を図る事ができます。

さらに、異なる産業や業種の企業が統合することによって相乗効果またはシナジーが生まれ、より競争力を高める可能性があります。

コングロマリットが注目されている理由

コングロマリットが注目されるようになったのは、昨今の経済環境は先行きが不透明で将来の予測が困難な状態でいわゆる、VUCA時代と言われる環境のためリスクマネジメントの観点で注目が集まっています。

VUCA時代とは(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の英単語の頭文字をとったもので、予測困難な時代の事です。

コングロマリットは、多様な事業展開を通じてリスクを分散することが可能で変化の激しい環境であっても対応しやすく、それぞれの事業がシナジーを発揮して事業をさらに発展させる事ができます。

このように、VUCA時代である現代に適しているため関心が高くなっています。

コングロマリット型M&A

コングロマリット型M&Aとは、現在行っている事業と関連がない新たな分野への参入を目的としたM&Aのことです。

これまでは、水平型M&Aと呼ばれる既存事業をさらに強化するために同じ業種で経営統合する場合や、垂直型M&Aと呼ばれる製造から販売まで上流企業や下流企業を統合するM&Aが主流でした。

しかしコングロマリット型M&Aは、これまでの垂直型・水平型M&Aとは異なるもので、新たなM&Aとして注目されています。

またそれ以外にも中小企業では、後継者不足を解消するために活用される場合もあります。

コングロマリットの効果

コングロマリットの効果は、主にコングロマリットプレミアムとディスカウントの2つの効果があり、それぞれ解説していきます。

コングロマリット・プレミアム

コングロマリット・プレミアムとは、コングロマリットを行うことによって生まれるシナジー効果により企業の価値が上がることです。

これは事業同士の効果のみならず、グループ全体の経営管理や資金調達をすることによって効率化されコーポレートシナジーを生み出すことも、プレミアムにつながります。

コーポレートシナジーとは、必要のない無駄な業務を削減したり削減することです。

また、業務内容が重複している部分を排除して、さらに効率的な企業の経営管理体制を築くことでもたらされるものです。

親会社が経営に明るく様々なノウハウを有している場合は、それをグループ企業へ展開していくことによりさらに大きな効果が期待できるしょう。

コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット・ディスカウントは、先ほどのコングロマリット・プレミアムとは反対の効果を指します。

これは複数事業を展開したはいいものの、経営統合が上手くいかずに経営効率が低下してしまう事です。

具体的には、グループ全体で期待されていたシナジー効果を得られずに株価が下がってしまった場合などを指すものです。

コングロマリットのメリット

コングロマリットのメリットには、以下の3つがあります。

  • 相乗効果(シナジー効果)を狙いやすい
  • 経営リスクを分散できる
  • 中長期的ビジョンを描きやすい

上記をそれぞれ解説していきます。


相乗効果(シナジー効果)を狙いやすい

様々な業種やビジネスを保有しているため、1つの事業を展開する場合と比べて、それぞれの事業間で様々なシナジー効果を生み出しやすくなります。

これは新たな事業や新たなサービスの創造やそのグループ企業の強みを生かした営業や資金調達などのことです。

コングロマリットを形成することによってシナジー効果が発揮されて、企業の価値が上昇することがメリットです。

経営リスクの分散ができる

コングロマリットでは、多業種で組織され幅広いビジネス展開を行うため、どれかの事業の収益が何らかの理由で悪化したとしてもその他の事業で補う事ができます。

そのため、その分経営のリスクを分散できる点が大きなメリットです。

中長期の計画が立てやすい

コングロマリットは、様々な分野の市場へ進出するため、基本的には短い期間の間に成果をあげる事はできません。

しかし一方で、これから企業全体としてどのように成長をしていくかという中長期的な計画を立てやすい点はメリットと言えます。

コングロマリットのデメリット

コングロマリットのデメリットには以下の3つがあります。

  • 企業価値が低下するリスクもある
  • 短期的には経営が悪化するリスクがある
  • ガバナンスが低下する可能性がある

上記をそれぞれ解説していきます。

企業価値が低下するリスクがある

様々な分野に事業展開ができる一方で、主力の事業にリソースを集める事が難しくなる可能性があります。

また、事前に想定していたシナジー効果が思うように発揮できず、複数の事業を巻き込んで共倒れになってしまう可能性がある点もデメリットです。

短期的には経営が悪化するリスクがある

他の業種を買収するコングロマリット型M&Aを行う場合は、短い期間でシナジー効果を発揮することは難しいと言われています。

これを発揮するには、すでに持っている技術やアイデアをどのように活用するかにかかっており、良い方法を考えついたとしてもそれが定着するまでにはある程度の時間が必要です。

そのため短期的には、利益に悪い影響を与える場合が多い点がデメリットと言えます。

ガバナンスが低下する可能性がある

それぞれの事業の独立性が高い場合では、それぞれの事業の管理や指導が行き届かずに、グループとしてのガバナンスが低下してしまう可能性があります。

グループ間でのコミュニケーション不足になってしまい、グループとしてうまく事業を進められなくなってしまう可能性がある点がデメリットです。

そのため、それぞれのビジネスに造詣が深い専門家を配置したり、それぞれの事業間でコミュニケーションをとる方法を確立するなどの対策を行う必要があるでしょう。

他の企業形態との違い

コングロマリット以外にもいくつかの企業形態が存在します。その他の企業形態は以下の4つです。

  • トラスト
  • コンビナート
  • カルテル
  • コンツェルン

上記をそれぞれ解説していきます。

トラスト

トラストとは、同じ業種の複数企業が資本的に結合する企業グループの事を指しています。

トラストは水平的統合とも言え、過剰なトラストを行うと市場を独占してしまう可能性があります。そのためトラストを形成する場合は独占禁止法に違反していないか注意が必要です。

コンビナート

コンビナートとは、効率化のために生産工程を一括で行えるように、サプライチェーンと言われる原材料の調達から生産・加工・流通までの企業が集中したグループの事を指します。

コンビナートは、垂直的統合とも言え、様々な事業へ展開を行うコングロマリットとは異なります。

コンビナートは、エネルギーの共有や廃棄物の処理などといったリソースを最適化することが可能で、経済的な利益や環境への負荷を軽減できます。

また産業を集め相互依存を促すことにより、地域の経済発展にも寄与する可能性があります。

コンツェルン

コンツェルンとは、持株会社を設立して子会社を所有し市場の独占を目的としたグループです。

この形態では、各企業が独立して事業を行うため、資本や技術などの面で相互協力することができます。

経済的な利点や競争力の向上を主な目的として、事業の多角化や市場の拡大を図ることが狙いです。しかし意思決定の複雑さや、利益分配の課題などが伴うため、効率的な経営や透明性などが求められます。

カルテル

カルテルとは、同業者が価格競争を回避するために合意し、価格や市場分配などについて取り決めを行うグループです。

トラストなどとは違い資本関係はなく、それぞれ企業間においての取り決めとなっています。トラストの場合と同じく市場を独占してしまう恐れがあるためその点に注意が必要です。

コングロマリット型のM&Aを成功させるには

コングロマリット型のM&Aを成功させるには、PMI(ポスト・マネージャ・インテグレーション)を意識して統合作業を進めることが大切です。

PMIとは、Post Merger Integrationの略称で、M&Aが成約した後に実施される経営統合作業の事です。M&Aは成約した時点で成功と思われがちですが、実際は経営統合作業が上手くいかずに破談になってしまうケースが多くあります。

M&Aの成約が決まった場合は、どのように経営統合をするかを考え速やかに統合作業を行って、シナジー効果を最大化することに力を注ぐ必要があります。

したがってコングロマリット型のM&Aの場合においても、成功の鍵をにぎる大切なプロセスと言えるでしょう。

PMIの3つの目的

PMIの主な目的は、以下の3つです。

  • シナジー効果の最大化
  • 経営理念や企業文化の統合
  • 経営組織や機能の整備

それぞれ解説していきます。またPMIについては、PMIとは?企業統合を行う重要性やリスク・手順と効果などを解説!にて詳しく解説しています。

シナジー効果の最大化

M&Aを行う際にもっとも大切なシナジー効果の最大化が第一の目的です。M&Aを実施する際は、費用のみならず人員や時間を費やします。

そのため企業同士の利益が加算されるだけにとどまらず、シナジー効果による事業利益のさらなる増加を狙うことで、投資回収の期間を短縮し、企業価値を高めることが必要です。

経営理念や企業文化の統合

経営理念や企業文化のスムーズな統合が第二の目的です。

同一業種の企業であってもそれぞれ会社の雰囲気や色があり企業文化に差があります。企業の雰囲気が急激に変化してしまうとそれについていけない人が出てきてしまい、順応できなかった従業員はやめてしまう可能性が高くなってしまいます。

これは新しい環境に馴染むまでの間パフォーマンスが低下してしまうだけなら時間で解決できますが、人材流失についてはとても大きな痛手になってしまうため、どうにかして避ける必要があるでしょう。

経営組織や機能の整備

最後の目的は、経営組織や機能の整備です。

統合後に誰がどのポジションにつくかが定まっていないと、組織は機能することができません。買収後に譲受事業の責任者を任せたい場合は事前に告知が必要です。

場合によっては、新たな組織機能に一新してしまう事も考えられます。また業務システムやインフラ、オペレーションの統合を行う事もPMIにおいて重要な意義を持っています。

まとめ│コングロマリットでリスクを分散する

ここまでコングロマリットについて解説してきました。

これは、分野の異なる色々な業種や複数の企業が経営統合をした1つの企業グループのことです。コングロマリットによって価値があがるとプレミアムと呼ばれ、逆に価値が下がってしまうとディスカウントと呼ばれます。

メリットはグループでのシナジー効果を狙う事ができ、経営リスクが分散しやすい点です。

一方でデメリットは、経営統合が上手くいかず共倒れしてしまったり、短期的には利益がマイナスになってしまう可能性がある点です。

また他の企業形態と違いコングロマリット型のM&Aは、先行きがわからない現代においてリスクを低下させる新たな手法として、注目され始めています。

またPASONでは、M&Aの仲介・サポートを行っています。PASONには

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というような魅力があります。M&Aを検討している方や疑問やお悩みがある場合は、ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。