PASON
PASON
M&A 事例・コラム

小規模企業共済とは?加入資格や手順・メリットやデメリットについて解説!

最終更新日:2024-02-29
小規模企業共済とは?

中小企業や個人事業主の方の中には、小規模企業共済への加入を検討している人も多いのではないでしょうか。小規模企業共済は、リタイヤ資金を作りながらも、節税効果のある制度になっています。

加入を検討中の方の中には「小規模企業共済は誰でも加入できる?」「加入後のデメリットはあるのだろうか」と疑問に感じることもあるかもしれません。

そこで本記事では、小規模企業共済とはどのような制度なのか、加入の条件やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。これから加入しようか検討している方の参考になると幸いです。

小規模企業共済とは?

小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員・個人事業主などが、積立することで受け取れる「退職金制度」のことです。一律の金額を受け取るものではなく、あくまでも「積み立てた金額」に応じて、将来受け取る金額が決まります。

例えば個人事業主であれば、退職金制度がないケースが多いので、退職後の生活に不安がある人も多いはずです。小規模企業共済に加入することで、退職後の生活に備えることができます。2022年現在、加入者数は160万人を越えており、退職時だけではなく廃業した際でも受け取れるので非常に便利な制度です。

小規模企業共済にはどのように加入するの?

働いている企業に、退職金制度がなくて不安を抱えている方や個人事業主の方は、加入方法も難しくありませんので検討することがおすすめです。

ステップは大きく分けて4つあります。

  1. 必要書類を入手する
  2. 必要書類に記入をする
  3. 書類の提出
  4. 中小企業基盤整備機構から書類を受け取る

それでは順番に確認していきましょう。

必要書類を入手する

小規模企業共済への加入を検討した際には、必要書類を一通り揃えることからスタートします。加入するために必要となる書類は、下記の通りです。

  • 小規模企業共済契約申込書
  • 預金口座振替申出書
  • 確定申告書の控え(個人事業主に限る)
  • 開業届の控え(事業を始めて間もない場合のみ)
  • 役員登記を確認することが可能な書類(会社役員の場合)

必要となる書類は、働いている環境や個人によってそれぞれ異なります。小規模企業共済を運営しているのは「中小企業基盤整備機構(中小機構)」ですので、自分が必要となるものに不安がある場合には、事前に確認することがおすすめです。

必要書類に記入を行う

自分が加入するために必要となる書類を揃えることができたら、ミスのないよう記入を行います。必要書類の多くは「控え」となるため、それほど記入が必要になるものはありません。

しかし、契約申込書と預金口座振替申出書に関しましては、全ての方に共通して記入が必要です。不備があった場合、手続きに遅れが出てしまうことになるので、しっかり確認しながら記入するようにしましょう。

書類の提出

書類の記入が完了したら、自ら窓口まで足を運んで提出することになります。中小企業基盤整備機構が業務委託している金融機関などは、下記の通りです。

  • 商工会
  • 商工会議所
  • 中小企業団体中央会
  • 事業協同組合
  • 都市銀行
  • 信用組合
  • 信用金庫
  • 農業協同組合

上記のような場所で、小規模企業共済の必要書類の提出が行えます。

中小企業基盤整備機構から書類を受け取る

必要書類を提出してから、約1ヵ月〜40日程の審査期間を経て、中小企業基盤整備機構から結果が届くこととなります。この時、受け取りに行くのではなく、郵送で送られてきますので自ら足を運ぶ必要はありません。書類を受け取ると、無事に小規模企業共済に加入が完了します。郵送されてくる書類は、下記の2点です。

  • 小規模企業共済手帳
  • 小規模企業共済加入者のしおり及び約款

書類提出後、1ヵ月〜40日程の期間を要しますが、手続き自体は難しいものではありません。必要となる書類も少なく「控え」や「写し」を用意できれば問題ありませんので、加入を検討している方は参考にしてください。

小規模企業共済の加入条件は?

小規模企業共済に加入するためには、どのような条件があるのでしょうか。個人事業主なら、どんな方でも無条件に加入できるのかも気になるところです。まず、年齢ですが、小規模企業共済には年齢制限がありません。加入の条件は、下記のようになります。

業種・組織従業員の数
建設業
運輸業
製造業
サービス業(宿泊業と娯楽業に限る)
不動産業
農業
常時使用する従業員の数が20人以下であること

商業(卸売業・小売業)
サービス業(宿泊業と娯楽業を除く)
常時使用する従業員の数が5人以下であること
企業組合の役員
協業組合の役員
常時使用する従業員の数が20人以下であること
農業経営を主としている農事組合法人の役員常時使用する従業員の数が20人以下であること
弁護士法人
税理士法人などの士業法人及び社員
常時使用する従業員の数が5人以下であること

一般のサラリーマンや会社員などは、加入資格がないことを覚えておきましょう。小規模企業共済は、個人事業主や経営者のための制度です。万が一契約後に加入条件を満たしていないことが発覚した際には、契約自体が取り消されることとなり、それまでに支払った金額が返金されることになります。

小規模企業共済に加入するメリット

ここからは、小規模企業共済に加入する際のメリットについて解説していきます。メリットは大きく分けて5つです。

  • 退職金の代わりになる
  • 節税対策になる
  • 掛金の増減が可能
  • 受け取り方法を「一括」「分割」から選択できること
  • 貸付制度を利用することができる

ひとつずつ確認していきましょう。

退職金の代わりになる

メリットの1つ目は、退職金の代わりになる点です。個人事業主や経営者は、廃業した際に退職金を受け取れるわけではありません。退職金がないため、普段から自身で老後資金の準備をしなければならないのです。

しかし、小規模企業共済に加入しておくことで、退職金と同じような役目を果たしてくれます。掛金の払込期間が6ヵ月以上あった場合で、尚且つ廃業・法人解散・退任した場合には、共済金が支払われることとなります。老後資金や将来が不安なときには、非常に役立つ制度です。

節税対策になる

メリットの2つ目は、節税対策につながる点です。小規模企業共済は、全額所得控除の対象となります。

課税される金額加入前加入後に節税される金額
所得税住民税月の掛け金:1万円月の掛け金:3万円月の掛け金:5万円月の掛け金:7万円
200万104,600円205,000円20,700円56,900円93,200円129,400円
400万380,300円405,000円36,500円109,500円182,500円241,300円
600万788,700円605,000円36,500円109,500円182,500円255,600円
800万1229,200円805,000円40,100円120,500円200,900円281,200円
1,000万1,801,000円1,005,000円524,000円157,300円262,200円367,000円

上記の表からもわかるように、例えば課税される所得金額が600万円だった場合、毎月の掛金が70,000円であれば「255,600円」もの節税につながるのです。

所得が多い人ほど、節税の効果も大きくなるのが特徴となっています。

掛金の増減が可能

メリットの3つ目は、掛金の増減が可能なことです。小規模企業共済の掛金は、月々「1,000円〜70,000円」まで自由に選択することができます。(500円単位で選択可能)加入後にも、掛金を変更できるのが大きなメリットと言えるでしょう。

また、経営が苦しいなどの理由から毎月の掛金を支払えないこともあるかもしれません。そのような場合には、一旦支払いをストップすることもできるので、非常に良心的です。

受け取り方法を一括・分割から選択できる

4つ目のメリットは、受け取り方法を「一括」「分割」から選択できることです。

また、一括と分割の併用もできるのが魅力となっています。退職金として、まとまった金額を受け取ることもできますし、年金受給のように毎月分割で受け取る選択もできるのがメリット。自分のライフスタイルに合わせて選べるため、利用しやすいでしょう。

貸付制度を利用することができる

メリットの5つ目は、貸付制度を利用できること。貸付は、掛金の範囲内となっていますが、万が一のときに低金利で利用できるので安心です。

資金繰りが厳しいときや、売上が思わしくない場合の便利な手段ですので、覚えておきましょう。貸付の種類はさまざまですが、即日貸付にも対応してもらえますので、いざという時に役立ちます。

小規模企業共済に加入するデメリット

さまざまなメリットがある小規模企業共済でしたが、事前にチェックしておきたいデメリットもあります。デメリットは大きく分けて3つです。

  • 12ヵ月未満は掛け捨てのリスクがある
  • 元本割れの恐れもある
  • 受取時に課税されてしまうこと

それではそれぞれ解説していきます。

12ヵ月未満は掛け捨てのリスクがある

デメリットのひとつ目は、掛金の納付が12ヵ月未満である場合、共済金を受け取れないリスクもある点です。

12ヵ月未満の場合には、共済金を受け取ることができないため「掛け捨て」となります。例えば、月々限度額の「70,000円」を10ヵ月間納付した場合は、700,000円が掛け捨てとなるので大きな損失となってしまうでしょう。

元本割れの恐れもある

デメリットの2つ目は、元本割れの恐れもある点です。小規模企業共済は、240ヵ月(20年間)未満で解約してしまった場合、受け取る共済金が元本割れしてしまいます。月々納付した金額よりも、少ない金額しか受け取れないということです。

老後資金や退職金・節税対策の目的で加入しても、実際に元本割れしてしまえば無駄になってしまいます。20年先のことを考えるのは難しいかもしれません。しかし、損をしないためにも、加入前にしっかりと計画を立てて検討することが重要なポイントです。

受取時に課税されてしまうこと

デメリットの3つ目は、受取時に課税されてしまうことです。掛金については、全額控除の対象となっていますが、受け取りの際には課税の対象となりますので注意しなければなりません。

受取時に、まとめて課税されることとなりますので、非常に大きな額の税金を支払うことになります。受取時にかかる税金は、事前にしっかりと計算しておく必要があるでしょう。

まとめ|小規模企業共済は便利な制度!しかし元本割れのリスクもあるので注意しよう

本記事では、小規模企業共済とはどのようなものなのか、加入資格や手順・メリットやデメリットなどについて詳しく解説してきました。個人事業主や経営者など、退職金制度のない方にとっては、非常に便利な制度であることがわかりましたね。

退職金の代わりになるのはもちろん、掛金も自由に設定できる点や節税対策、受け取り方法もライフスタイルに合わせて選択することができます。

しかしその一方で、20年という長期間納付し続けなければ、元本割れを起こしてしまったり受取時には課税対象となるデメリットもありました。

加入する際には、十分に計画を立てて慎重に検討を行うことが大切です。最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。