益金・損金の意味とは?参入・不算入についてや収益や費用との違いを解説!
最終更新日:2024-03-30法人税や所得に関する計算を行う際に「益金・損金」という言葉が使われます。会社などで「税金」を計算するときには理解しておかなければならない用語のひとつ。
益金は、耳慣れない言葉だという方も多いはずです。読み方は「益金(えききん)」であり「収益」と同じような意味として認識されている方もいるかもしれません。しかし、似たような意味であっても詳細は異なります。
「益金と収益の違いって何だろう?」「損金って費用と同じ意味ではないの?」と疑問に思っている方も多いかもしれません。また、益金や損金においての注意点も気になるところです。
そこで今回の記事では、益金・損金の意味や注意点、益金不算入や損金扱いになる経費などについて詳しく解説していきます。
税金の計算について、深く理解できる内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
益金とは
益金(えききん)とは、法人税法で使用されている用語であり「法人税を計算したときの収益」を表す言葉です。この額がプラスの場合に「益金」と言い、マイナスになってしまった場合には「損失」と言います。
「それでは、収益との違いがよくわからない」と思ってしまう方も多いはずです。実は益金と収益には大きな違いはありません。同じような意味と捉えても間違いではないのです。
覚えておきたい違いは「どんなときに使われるか」という点。例えば、会社の税金を計算しなければならないときに「収益」という言葉は使いませんよね。
税金の計算には「益金」が用いられます。一方で、会社の会計を行う際に使用されるのが「収益」となっているのです。
損金とは
損金とは、法人税の計算を行う際に用いられる用語で「益金から差し引くことができる費用」のことを表しています。法人税を計算するときに使われる公式は「益金−損金=所得」となるわけです。
これでは、経費や費用と何が違うの?と思ってしまう方もいるかもしれません。
しかし「この領収書、経費で落とせる?」「ここは会社の費用で払うから大丈夫」と言った言葉は、よく耳にしますが「これは損金で落とせるだろう」「会社の損金で払える」とは言いませんよね。
損金は、法人税を計算するときに使用される言葉であり、意味としては「経費」や「費用」と同じと考えても問題ありません。しかし、イコールではないということは頭に入れておくべきです。
会計の上では「費用」として認められた項目であっても「損金」としては認められないケースもあります。益金と同じように、法律の上で使用される(税金を納める際など)用語が「損金」となり、会社の会計を行う際に用いられるのが「経費」や「費用」となるのです。
益金不算入とは?
益金と合わせて覚えておきたい用語のひとつに「益金不算入」があります。まず「不算入」があるということは「益金算入」もあるということです。これは、益金に含まれるものが「算入」であり、含まれないものが「不算入」と呼ばれることを頭に置いておきましょう。
まず「算入」は、会社で会計を行った際に「利益」として含むことができなかったものを、税金の計算のときに「益金」へと計上することです。このケースでは、取り引きをした際にその場で益金算入するわけではなく、取り引きの種類によって時期が異なります。
益金不算入とは、会社の会計の上では「収益計算」が行われる一方、法人税としては計上できないものを指す言葉です。次の3つが代表的なものとなっています。
- 株式の配当金
- 税金の還付金
- 資産の評価益
配当金に関しては、二重課税となってしまうことを考慮したものとなっています。そもそも益金不算入の制度が設けられたきっかけが、この二重課税を防ぐ目的だったのです。
これにより、配当金を支払う側からも税金が徴収され、受け取る側からも徴収されることがなくなりました。
また、全てが不算入となるケースだけではなく、一部のみ不算入になる場合もあるため注意しなければなりません。
損金にならない6つのケース
会計上では「経費」として扱われることになる場合でも、税法上は「損金」には当たらないケースが存在しています。ここからは、経費がそのまま損金とはならない事例について確認していきましょう。
- 税金
- 建物(土地を含む)の評価
- 高額過ぎる役員報酬や役員の退職金
- 限度額をオーバーしている交際費
- 限度額をオーバーしている減価償却費
- 寄付金
ひとつずつ解説していきます。
税金
損金にならないケースの1つ目は、税金です。ここで言う税金には「法人税」や「地方税」「自動車税」や「固定資産税」などが含まれており「延滞税」も算入できることになっています。(損金不算入)
また、税金ではありませんが、罰金や遺産金を支払うことになった場合も損金にはなりませんので覚えておくと安心です。
建物(土地を含む)の評価
2つ目のケースは、建物や土地の評価額が下がった場合です。不動産価格は上下しやすく、一時的に価値が下がったとしても、その金額は確定しているわけではなく実際に損失が出ているわけではありません。
その後、不動産価格が上昇する可能性も大いにあり得ます。価値が下がったタイミングで損益に計上することはできませんが、実際に不動産を手放すときに損失が発生していれば、損金算入できることを頭に入れておきましょう。
また例外があり、台風や地震などの自然災害によって被害を受けた場合などには「損金」として計上できるよう定められています。
高額過ぎる役員報酬や役員の退職金
3つ目のケースは、役員報酬や役員の退職金です。多くの企業では、役員報酬や役員の退職金を自由に設定できる場合が多くなっています。
「自由に設定できる」からこそ、損金不算入の制度が取られているのです。会社の役員が、法外な報酬・退職金を受け取ったとして、それを損益として計上してしまうと企業としての利益を操ることが可能となってしまいます。
これを防ぐために、役員報酬や退職金には、さまざまなルールが取り決められているのです。
限度額をオーバーしている交際費
4つ目のケースは、限度額をオーバーしている交際費です。一言で「交際費」といっても、その用途はさまざまで接待費や機密費なども含まれています。
限度額に関しては、それぞれの企業によって異なり、例えば資本金の額が1億円以下の会社の場合には「800万円まで交際費として損金算入できる」と取り決められているのです。
また、資本金の額が1億円以上の企業である場合には「飲食代の50%までを損金算入できる」ことになっています。
限度額をオーバーしている減価償却費
5つ目のケースは、限度額をオーバーしている減価償却費です。
例えば、企業の資産となる大型設備を1,000万円で一括購入し、5年間で償却した場合「1年間200万円」が会計上の「費用」となります。一方で、税法上の耐用年数は10年の設備でした。この場合、損金算入できる減価償却費は「100万円」が限度額となります。
残った「100万円」に関しては損金不算入となってしまうのです。設備は、大型機械だけでなく、パソコンなども含まれます。国税庁のホームページから「耐用年数表」を確認することができますので、ぜひご活用ください。
寄付金
6つ目のケースは、寄付金となります。基本的に、寄付金自体は損金算入に該当している項目です。しかし、寄付金の場合「節税対策」として使用される可能性が高いため、上限が設けられています。
一方で、寄付金の上限が設定されていないというケースもあるので要注意です。それは「地方公共団体や国への寄付金」と「指定された特定の寄付金」となります。また、日本赤十字社や私立学校振興団体への寄付金に関しても、上限が広く設定されているという例外を覚えておきましょう。
損金扱いになる経費一覧
損金不算入になる項目について確認してきましたが、ここからは損金算入となるものについて詳しく見ていきましょう。
- 通信費
- 交通費や旅費
- 保険料
- 修繕費
- 支払利息
- 水道光熱費
- 給与
- 研究開発費
- 宣伝広告費
- 事務用品費
- 地代家賃
上記が損金算入可能となっている項目です。すべてにおいて「原価」「費用」「損失」のいずれかに当てはまることがわかります。この3つに該当するものであれば、基本的に損金扱いとなります。
上記で掲載した項目については、会計上の「費用」と同じ金額を「損金」として計上できることになっているのです。
まとめ|益金・損金の内容を理解してスムーズな会社経営を!
今回の記事では、益金・損金の意味や算入・不算入について、またそれぞれの勘定科目などについて詳しく解説してきました。
益金は、会計の上での「収益」と同じような意味を持っていましたが税法上の言葉であることがわかりましたね。また、損金においては「経費」や「費用」と似たような意味合いであり、損金算入をすることによって節税できるケースが多くなっています。
分類の仕方がわからなかったり悩んだ際には、税理士など専門家への相談がおすすめ。税金のルールは非常に細かく、特に益金・損金では算入できるものとできないものだけでなく、一部算入できるケースやタイミングによってばらつきがあるなどさまざまです。
ミスしてしまえば、税務調査のときなどに罰金を支払うことになったり、大きなトラブルへと発展してしまう可能性もゼロではありません。
益金・損金のルールは変更されることもあります。その都度、最新の内容を正しく理解して、スムーズな対応ができるよう心がけましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。