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PBRとは?PERやROEとの違いやメリット・デメリットなどを解説!

最終更新日:2024-03-30
PBRとは

企業の財務状況を見極めるのに使える指標はいくつか存在します。

その中でもPBRは、株価が割安か割高かを判断するためのものです。また似た指標であるPERやROEなど違いやそれぞれどういう意味なのかなどをこの記事では解説していきます。

PBRとは

PBRは、Price Book-value Ratioの略称で、日本語では株価純資産倍率と言います。

これは企業が持つ純資産と、株価との比率を示す指標です。これが高ければ株価は割高、低ければ株価は割安と検討する材料になります。

PBR は、株式の時価が1株あたりの純資産の何倍に相当なのか測る事ができるため「経営の状態」「市場での評価」「今後の成長」などによって、見極めることができます。

株価を1株あたりの純資産で割って計算するため、銀行などからの借入などの負債は関係しません。したがってその会社の純資産が投資家にどのような評価を受けているかを表します。

PBRは株価とどう関係するのか

PBRは、その企業の純資産に対する株式の時価の割合を示しています。

そのため、PBRが1倍の場合では、会社の資産価値と株価は同じと言え、これを適正価格と表現します。一般的にはこれを基準として1倍を超えると会社の資産より株価が高い事になるため割高と言え、一方1倍を下回ると割安と言えます。

しかし通常はPBRが高い銘柄の会社が、何かしらの理由でPBRが下がったような場合でも割安と表現する事もあります。

経営不振や赤字などによりPBRが低下しているような場合もあり、正しく判断するには、単純に割安と評価する前にその会社について調べる必要があるでしょう。

PERやROEとの違い

ここまではPBRについて解説してきましたが、いくつか類似の指標を紹介します。

PBRとPERの違い

PERは、Price Earnings Ratioの略称で日本語では株価収益率と呼ばれています。これは以下の計算で求められます。

株価 ÷ 1株あたりの純利益(EPS) = PER(倍)

上記の式で求められます。これは株価と利益を比較して株価が割安か、割高かを判断するための指標です。

一般的な目安は15倍で、これを上回れば割高、下回ると割安とされています。しかし平均は、業種や業界によって変わるため同業他社との比較やその企業の過去数年との比較が大切と言えるでしょう。

またPERは、当期純利益が赤字の場合は計算式にマイナスの数値が加わることによりPERがマイナスになる事があります。

マイナスの場合は正常に比較するのが難しいです。

しかしマイナスのPBRだからといって投資するべきではないかと言えばそうではないのが、難しい点で企業が通常行っている業務での利益である経常利益は黒字だったが、何らか特別な事情で生じた特別損失によって当期純利益が赤字になりマイナスとなっている場合があります。

これはその時だけ赤字が出てしまっているような場合には投資を控えるのが必ずしも正しいとは言えない点には注意が必要です。

そのため何故PERがマイナスになったのか原因を推測して、投資判断を行う必要があります。またその他の指標と合わせて判断する事が大切でしょう。 

PBRとROEの違い

ROEは、Return On Equityの略称で日本語では自己資本利益率と呼ばれています。これは以下の計算で求められます。

当期純利益 ÷ 自己資本(純資産) = ROE(倍)

上記の式で求められます。これは当期純利益に対してどれだけ利益をあげられているかを測る指標です。当期純利益は、1会計期間の会社の最終的な利益を指します。

企業がどれだけ効率良くお金を稼げるかを示す財務諸表で、ROEが高いほど資本を効率よく使って効率よく利益を上げている会社という事です。逆にROEが低ければ経営効率が悪く、資金効率が悪い会社だと言えます。

一般的には、ROEは10%を超えると投資価値のある優良企業であるとされていますが、こちらもPBRなどと同じく業種で平均が変わるため、同業他社などとの比較が大切です。

またROEについては、ROE(自己利益資本率)とは?計算方法と分析方法・目安や改善法を解説の記事で詳しく解説しています。

PBRの計算方法

PBRは以下の計算によって求める事が出来ます。

株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS) = PBR(倍)

もしくは

時価総額 ÷ 純資産 = PBR(倍)

で求められます。

1株あたりの純資産(BPS)は、純資産÷発行済み株式数で求められます。これは企業の安定性を測る指標です。またこの指標は、企業が解散や清算を行った場合に、株主に分配される資産です。

そのため、これを解放価値と呼ぶ事もあります。そしてこれを1株あたりで表すものが1株あたりの純資産(BPS)です

PBRの計算例

計算例を2つあげます。

  1. 「株価が5,000円で1株あたりの純資産が2,500円の会社の場合」

5,000 ÷ 2,500 = 2倍

  1. 「株価が5,000円で1株あたりの純資産が10,000円の会社の場合」

5,000 ÷ 10,000 = 0.5倍

このようにPBRを計算できます。 

PBRの目安

PBRの一般的な基準は1倍です。これは先ほど解説した株価が1株当たりの純資産(BPS)が等しいという意味で、これは会社が解散した場合、株主に株価に等しい資産が分配されるため1倍が1つの基準です。

そのためにPBRが1倍〜1.5倍付近であれば適正と判断され、1.5倍を越えると割高、それを下回るような場合は割安と言われています。

しかし、この目安は一般的に言われているもので、業種や業界によって平均PBRは大きく変わります。

したがって参考にする際には同業他社との比較や同じ企業でも過去のPBRと見比べて判断する必要がある点には注意が必要でしょう。

PBRの活用方法

PBRの一般的な目安は1倍ですが、これはその会社が解散した場合にその株価と同等の資産が残るという視点での判断方法です。それ以外の視点での活用方法について解説していきます。

同業種での比較

PBRは、業種や企業の成長性など市場の環境により様々です。そのため同じ業種の企業同士やその市場全体の平均PBRと比較して、現在の株価が割高か割安かを測ることができます。

同じ業種の企業は、一般的に類似した環境や、ビジネスモデルになる事が多いため、収益のモデルや成長性、リスクといった部分が似ている事も多いです。

そのうえ、投資家は企業の評価を業界自体の成長性などを元に評価する事が多く、似ている企業は同じような評価軸で判断される事が多いです。

そのため近い業種のPBRは、似たり寄ったりな数値である場合が多いです。その中で比較検討を行い投資リスクなどの評価を行う事で、正しい投資判断に活用できるでしょう。

時系列での比較

次の活用方法は、同じ企業のPBRを過去数年と比較する方法です。過去の状態と見比べる事で今の状態や、過去の状態を加味して現状の判断に活用する方法です。

この指標を過去数年分比較する方法は、この後解説する、似た指標PERなどを使い判断する場合でも有効な方法なので覚えておきましょう。

PBRを活用する際の注意点

PBRは、株価の妥当性を測るのに重要な指標になっていますが、気を付けなければいけない点もあります。

短期的な株価の変動に対応していない

まず1つ目は、短い期間の株価の動きが反映されていないという点です。これは純資産の数字が更新されるのは1年に1度行われる企業の決算か、もしくは四半期毎の決算によって変動します。

なので何らかの問題を起こした事により短期的に株価が変動しているような場合では、正しく見分ける事が出来ないため注意するべき点です。

割安の理由にも気を付ける必要がある

2つ目は、PBRが低い場合、その理由によっては買うべきではないという点です。

これは赤字ではないが利益が伸びずに留まってしまっている企業であったり、もしくは何かしらの問題点やリスクがあるような企業であったり、または上場廃止になる可能性がある株などについてはPBRが低い状態でも、割安という点だけを評価し判断するのは危険性が高いため注意が必要です。

また業種によっては、純資産が小さく変動の影響が大きく反映される。

このような企業の成長性などは考慮されない指標であるため、売り上げが伸びている企業や将来の成長が見込まれる企業への投資、いわゆる成長株投資を検討するのにあまり向いていないため注意が必要です。

純資産より将来性を評価している場合

3つ目は、一般的にスタートアップ企業は、投資の負担が大きくなる傾向にありその結果、純資産がマイナスになってしまう場合が多々あります。

このようなスタートアップ企業の純資産がマイナスになったとしてもその事業で生み出される新しいサービスや技術に将来性が期待できる場合には、上場した際に見込まれる利益の期待値での株価を売り出す事が出来ます。

また反対に、純資産が十分にある場合であっても、縮小傾向の市場で事業を行っているような場合は、今後業績が悪化すると予想されてしまい株価が下落して、PBRは1倍を下回る場合もあります。

この指標は、投資家がその事業の将来性をどう評価しているか表しているという事です。このようにとても便利な指標ですが、注意しなければいけない点もいくつかあります。

まずPBRは、1倍が基本的な目安でそれ以下なら割安で1倍以上であれば割高と簡単に判断できますが、業界により平均PBRに差があります。したがって同業他社との比較やその他指標と合わせて活用することが大切でしょう。

まとめ│PBRは純資産から見た株価の割安性を示す

ここまでPBRについて解説してきました。PBRは、純資産から見た株価を示す指標です。

一般的な目安は1倍でこれを下回れば割安、上回れば割高というように判断することができます。しかし業種ごとに平均PBRは、変わるため時系列での評価や、同業他者との比較をすることによりもっと正確に状態を測ることができます。

またその他の指標と組み合わせることにより、より正しい投資判断が行えるでしょう。PBRについて正しく把握し、上手に活用することで投資のリスクを抑える事ができます。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。