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親族外承継とは?親族内承継との違いやメリット・デメリットについて解説!

最終更新日:2024-03-30
親族外承継 親族内承継

経営者の高齢化が進み、事業承継を考え始めたときに、親族に後継者を見つけられないケースが増えてきています。

これが深刻な「後継者問題」です。少子化による影響や事業の将来性への不安、後継者対策の遅れなど、さまざまな要因が考えられています。

そういった状況に陥った際に「親族外承継」を検討することになるのです。親族外承継とは、親族以外の役員または従業員などを後継者に指名し、事業承継を行います。

そこで今回の記事では、親族外承継とはどういったものなのか。親族内承継との違いや、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

親族外承継を検討している方の参考になると幸いです。

親族外承継とは?

親族外承継とは「事業承継」の方法のひとつで、親族(子供や血縁関係のある人物)以外の第三者に、事業を引き継ぐことです。

会社内の役員や従業員に対して事業承継を行う場合には「内部昇格」「MBO」「EBO」の3種類に分類されています。

MBOやEBOについての詳しい内容につきましては、是非バイアウトの意味とは?4つの種類やイグジットとの違いを徹底解説!の記事を参考にしてみてください。

また、それ以外の外部の人材へ事業を継承するケースにおいては「外部招聘」「M&A」と呼ばれるのが一般的です。

M&Aについては、個人M&Aとは?メリット・デメリットや成功させるコツを徹底解説!の記事で解説しています。

事業承継は、上記の図のように分類されています。

親族外承継と親族内承継の違いとは?

親族内承継と親族外承継の違いについて、しっかりと確認しておきましょう。この2つの大きな違いは、子供や兄弟などの親族へ事業を引き継ぐのか、親族以外の人に継承するかの違いです。

まず、親族内承継では自分の子供や親族などに事業を引き継いでもらうことを指しています。以前は「親族内承継」が一般的であり、子供が親の仕事を継ぐことが当たり前であるといった風潮がありました。

しかし現在では、少子化に拍車がかかっていることや今後の経営の見通しが時代に沿っていないなどの理由から、親族内承継が非常に少なくなっているのが現状です。2020年現在の統計では、親族内承継の割合が34%となっています。

近年は、親族外承継の方が多くなっており、会社の役員や従業員へ事業承継するケースが増えています。事業承継できる子供や兄弟がいる場合においても、引き継ぐ意思がないときには、親族外承継が用いられるのです。

また、混同しやすい言葉の中に「第三者承継」があります。親族外承継と第三者承継の違いは、親族以外の人に事業を継承してもらう点では同じです。

しかし、親族外承継が役員や従業員などの「社内への承継」と「社外への承継」に分類される一方で、第三者承継では「社外への承継」のみとなっているのが特徴です。第三者承継は「M&A」と呼ばれることも多くなっています。

親族外承継の方法

親族外承継の方法(手法)について確認していきましょう。親族外承継は2つの方法に分けることができます。

  • 経営だけを承継する
  • 経営だけでなく株式も全て承継する

順番に確認していきましょう。

経営だけを承継する

ひとつ目の方法は、会社の経営権のみを承継する方法です。この場合、会社の株式に関しては、それまでの経営者や親族などが保有したままになります。

株式は、前経営者が保有することとなるため、会社に対しての影響力や支配力は引き続き持ち続けることとなるのです。「代表取締役」という地位を引き継ぐ形となります。

新しく事業を引き継ぐことになる社長は、意思決定などを一存で行うことはできません。

経営だけでなく株式も全て継承する

2つ目の方法は、経営権だけではなく、自社株式も全て継承する方法です。この場合、それまで経営を続けてきたオーナーは、完全に引退することとなります。

会社を保有している人と経営を行う人が同一であるため「所有と経営の分離」は起こりません。

親族外承継では、経営権だけ引き継ぐ方法に比べて、全ての自社株式も合わせて事業承継する割合が多くなっているのが特徴です。

親族外承継のメリット

親族外承継のメリットは、大きく分けて3つです。

  • 後継者の選択する幅が広がる
  • 企業や業務に精通している
  • 従業員だけでなく取引先からも理解を得やすい

順番に解説していきます。

後継者の選択肢が広くなる

ひとつ目のメリットは、後継者の選択肢が広がる点です。親族の中だけで跡継ぎを決めなければならない場合、適任者がいないことも少なくありません。また、経営への意欲が低いケースもあるでしょう。

しかし親族外承継では、社内の従業員や役員だけでなく、外部から優秀で信頼のおける人材を探すこともできるのです。多くの選択肢の中から、もっとも適した人材を指名することができるので、今後の会社の発展も期待できるでしょう。

企業や業務について精通している

メリットの2つ目は、会社の業務についてしっかりと理解している点です。これは、社内の役員や従業員に事業承継をする場合になります。長期にわたって勤務していた従業員や役員であれば、経営方針や業務内容はもちろん、今後目指して行くべき方向なども理解しているでしょう。

引き継ぎの面でも、かなりスムーズに行うことができるので、大きなメリットと言えます。

従業員や取引先からの理解を得やすい

3つ目のメリットは、従業員や取引先からの理解を得やすい点です。これも、長年会社を支えてきた役員や従業員が事業を引き継いだケースになります。従業員たちからも、能力や意欲を認められている場合が多いため、受け入れられやすくなるでしょう。

また、取引先とも顔見知りであることが多いため、理解を得やすくなるのが特徴です。

親族外承継のデメリット

続いて、親族外承継のデメリットについて解説していきます。デメリットは大きく分けると2つです。

  • 後継者に自社株式を買い取るための資金力が必要になる
  • 経営者保証の引き継ぎが問題になることもある

ひとつずつ、見ていきましょう。

後継者に自社株式を買い取る資金力が必要

デメリットの1つ目は、後継者となり得る候補者に、自社株式を買い取る資金力が必要となる点です。

経営権のみを承継するケースでは問題ありませんが、株式も承継する場合には、それを買い取る資金力が必要となります。これは非常に大きな金額となることもあるため、金融機関などを用いて融資で賄うことができるか検討しなければなりません。

経営者保証の引き継ぎが問題となることもある

デメリットの2つ目は、経営者保証の引き継ぎが問題になることもある点です。これは、会社に債務があり、その債務が前経営者の個人保証であることがあります。前経営者の債務だったものが、そのまま新しい後継者に引き継がれてしまう可能性もあるのです。

事前に確認を怠って個人保証を引き継いでしまうと、大きなトラブルになるのはもちろん、多額の債務がのしかかることも考えられます。

親族内承継のメリット

それでは、親族内承継のメリットについても確認しておきましょう。年々、数が減ってきてはいますが、今もなお中小企業において親族内承継が選ばれることが多くなっています。

大きなメリットは、事業承継の準備に多くの時間をかけることができる点です。例えば、自分の子供に事業を継いでもらいたいと考えた場合、少しずつノウハウや経営学などを教えることができます。

後継者の育成には10年近く時間を要するとも言われていますが、しっかりと準備する期間を確保できるのが魅力です。子供自身も、幼少期から「いずれ父親の会社を継ぐことになる」といった意識も芽生えやすく、スムーズな親族内承継ができるでしょう。

また、親族が後継者になることで、社内での協力も得やすくなることに期待が持てます。年々少なくなってきた親族内承継ですが、以前からの風潮も根強く残っているため、親族が事業を引き継ぐことに対して好意的な取引先も多いのも事実です。

親族内承継のデメリット

親族内承継のデメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。まず大きなデメリットは、後継者候補が親族の中に複数名いた場合、親族間でトラブルに発展してしまう恐れがあることです。後継者に指名されなかった親族が、相続などに関して不満に感じるケースも少なくありません。

また後継者としての力量が足りない人物が事業を引き継ぐ場合には、今後の経営も不安ですし、周囲からの風当たりも強くなってしまう可能性があります。後継者が「意欲的でない」「経営について理解していない」といったときには、会社内の士気も低下してしまうでしょう。

事業承継を行う際にはM&Aもおすすめ

「親族に適任者がいない」「社内に経営を任せられる人材がいない」というケースもあるかもしれません。そんな時にはM&Aがおすすめです。M&Aであれば、後継者不在の問題も解決できますし、親族間や会社内のトラブルに発展するリスクも削減できます。

経営状況があまり良くない状況の場合には、M&Aを行うことで、シナジー効果にも期待ができるため一気に改善されることも少なくありません。売却益も期待できるため、事業承継について検討する際には、視野に入れておくことをおすすめします。

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まとめ|親族外承継は事業承継のひとつ!自社に合った方法で後継者を見つけよう

今回の記事では、親族外承継とはどういったものなのか。また、親族内承継との違いやメリット・デメリットなどについて詳しく解説してきました。

親族外承継には後継者を選ぶ選択肢が広がる点や引き継ぎがしやすいなどのメリットがある一方、後継者に資金力が必要になってしまうことや、経営者保証の問題に発展する恐れもあるなどのデメリットもありました。

経営者にとって、後継者を決めることも大きな仕事のひとつです。今後の経営や従業員・取引先のことも考慮して、自社に合った事業承継を行いましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。