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M&A 事例・コラム

PMIとは?企業統合を行う重要性やリスク・手順と効果などを解説!

最終更新日:2024-03-30
PMI


PMIとは、M&Aを行った後に統合を行うプロセスの事です。

これは、経営方針や業務のやり方、企業風土などの意識の面も統合するものです。この統合プロセスが上手くいかないと、M&Aを実施したものの思ったほどの相乗効果を得られなかったり、M&A自体が破談になってしまう場合などもあります。

ここではPMIの流れと重要性や、成功のためのポイントなどを解説していきます。

PMIとは

PMIとは、Post Merger Integrationの略称で、ポストマネージャーインテグレーションと読みます。また日本語では合併後の統合という意味です。

これはM&Aを実施した後に行う統合プロセスの事です。3つのステップがあり、まず経営統合、次に業務統合、最後に意識統合という流れで進んでいきます。

M&Aによって生まれる想定されるシナジーや投資効果などを最大限に受けるためで、PMIはM&Aの成功に欠かせないものです。

PMIが上手く実施できないとあまり成果が上げられなかったり、M&Aそのものが破談になったりする場合もあります。

PMIの重要性について

M&Aは成約した時点で成功と思われがちですが、実際にM&Aが成功するか失敗するかは、企業の統合(PMI)の結果次第です。

企業が統合を行うと、その過程で両社ともに混乱する場合が多いのが現状です。この混乱によって、業務統合が上手くいかず普段の業務に支障が出てしまったり、社員の反発を買ってしまったり、内部で対立してしまったりするなどのリスクが生じます。

そのため、いかにスムーズにPMIを行うかが成功のカギを握っていると言えるでしょう。

そのため統合する上で障害になりそうな点や社風の違いなどを考慮したうえで、組織の統合を行っていく事でいい関係性を構築し、それがスムーズな統合に繋がります。

また相互に理解し、同じ方向を目指せれば更なる組織の成長やシナジーを期待することができます。

PMIで考えられるリスク

PMIで発生しうる統合時のリスクをいくつか紹介します。

従業員の不安や不信

M&Aが行われる際には、基本的に従業員は不安を感じてしまいます。雇用が失われるといった不安や環境または待遇の低下などの不安が主な要因です。

この不安によって、それなら転職を検討する従業員も現れてしまい、人材の流出につながってしまいます。またM&Aの実施そのものに不満を感じて辞めていくケースも存在します。

しかしM&Aの交渉を行っている時は、どうしても財務面に注目しがちです。

このような不安を感じている従業員を放置すると離職に繋がってしまいます。しかし、待遇面が変わらない事や向上する可能性もあると説明することで不信感を払拭できるのです。

そうすることでM&Aについて理解してもらえ、従業員が混乱する事を抑えることができるでしょう。

契約内容が曖昧で後々問題になる

M&Aを行うと企業のブランドであったり従業員の待遇であったり、経営方針などが大きく変わる事も少なくありません。そのため具体的なM&Aの手法や問題が起きた時の対応などもある程度想定して契約する事が重要です。しかし、M&A慣れしている経営者や起業の数はあまり多くありません。

契約時の想定が甘く、契約を行ってからあとで問題が頻発してしまう場合が多いです。これを防ぐためにも、M&Aに詳しい人に相談を行いそのようなリスクを低くすることが大切です。

簿外債務を発見できなかった

M&Aが失敗する原因として、簿外債務と言われる貸借対照表には反映されていない、債務が存在する場合があります。M&Aで簿外債務が発覚する事自体は少なくありません。

しかしM&A後に巨額の簿外債務が発覚した場合には、M&Aの成功からほど遠くなってしまう事になります。簿外債務の主な例は、残業の未払分や買掛金、退職給付引当金や訴訟リスクなどです。

M&Aが進行するにつれて、簿外債務が発覚した場合の問題が大きくなるため、事前に詳細な調査を行い、できる限り見落としをしない様に入念な調査をして検討する事が大切です。

PMIの実施項目

PMIの実施項目は主に次の3つに分けられます。「経営統合」と「業務統合」と「意識統合」の3つです。それぞれ解説していきます。

経営統合

まず最初は、経営統合です。これは主に、経営体制の統合と制度の統合の2つがあります。

それぞれ企業の経営理念や企業文化には差があるため、これらの違いを無視して統合する事は、いずれ何らかの問題を引き起こす原因となる可能性があります。

そのため買収を行った企業と買収先の企業の経営体制や組織の統合は、とても重要です。

PMIでは、組織に対立や反発が起きてしまわないように、統合後どのような経営体制を取るのかや意思決定プロセスや組織体制をどのように行うかを適切に決めていく事が大切です。

また企業の様々な制度も統合する必要があります。これは法務や人事、総務などの統合を行う事が非常に大切です。

どのような混乱が起きるか想定し、どのようにマネジメントするかを考えなければなりません。また具体的には両社の人事評価制度や研修制度などの制度について話し合い、双方の制度の違いを認識して意見をすり合わせて最終的には認識を一致させる事が成功の鍵と言えるでしょう。

業務統合

続いて業務統合です。この項目は、費用や手間がかかる事が多いです。

業務システムやインフラの統合が、PMIにおいてとても大切な要素です。業務システムを統合する際には、優先順位や実施時期などを決めると効果的です。

また統合を進める際に業務に支障をきたして、顧客に迷惑をかけてしまった場合、客離れにつながってしまい結果として売上や利益が低下してしまう事になります。

他には、新たな業務システムによって従業員が不満を覚えてしまうと業務の成果の低下につながります。そのため統合する時期の検討や新たなシステムについての説明、現場の声を拾い上げて改善するなどの対策が必要になるでしょう。

意識統合

最後に意識統合です。これは譲受企業と譲渡企業がお互いの企業文化について経営者同士が話し合い、新たな会社の企業文化を決めます。

意識統合は、主に譲受企業の企業文化に合わせていく事が多いですが、譲渡企業側の文化とギャップが大きいと反発され従業員に離職されてしまう可能性があります。そのため良い落としどころを見つけて上手く融させる必要があるでしょう。

また経営方針も統一される事が多いです。これは買収された企業によっては、一時的にやりにくい状態になってしまいますが、経営方針を統一する事は、PMIの効果を最大化するために必要なので経営方針を統一する事は特に大切な要素と言えるでしょう。

PMIの実施手順

M&Aを実施してPMIを実施するまでには、主に以下の5つの手順があります。

  1. デューデリジェンスを元にしたPMIの検討
  2. ランディング・プランを策定
  3. 具体的なプラン(100日プラン)の作成
  4. M&Aの実施
  5. 統合の実施進捗と効果の検証

上記の手順をそれぞれ解説します。

デューデリジェンスを元にしたPMIの検討

PMIを行う場合は、基本的にデューデリジェンス(DD)と言われる企業を精査した結果を元に、実施されるのが一般的です。

PMIの内容は、DDによって明らかになった譲渡企業の財務リスクや統合後に期待されるシナジー効果などを踏まえてPMIの内容に反映させます。どのような手順を踏んでどのような方法で進行していくかの統合方針を決定します。

またDDについて詳しく知りたい方は、DD(デューデリジェンス)とは?意味や種類、実施するタイミングについて解説の記事にて詳しく解説しています。

ランディングプランを策定

これは買収後3〜6ヶ月の間に優先的に取り組む必要のある課題についてのスケジュールを決定します。

DDによって発見されたリスクや課題などを元にして計画を練ります。具体的に事業面では、原価や販売費、管理費などの見直しです。

管理面では組織や規定についての見直しや、財務・経理の見直し、人事・労務の見直しなどです。

具体的なプラン(100日プラン)の作成

ここまでに行ってきた手順で決めた統合の方針や計画を元に、100日プランと言われるものを作成します。

先ほどのランディングプランでは主に短期的な課題の解決を目指しますが、これは中長期的な問題について解決するために作成されます。主に3ヶ月程度(100日)で行える経営改革の計画や中期経営計画を作成するものです。

この計画は、大きく会社が変わるタイミングです。また計画を適切に遂行するために、具体的な目標やKPIの設定、実行計画の設計を行う必要があります。

M&Aの実施

100日プランを元に、M&Aを実施します。この100日プランに盛り込めなかった実施事項は、100日プランの取り組みが完了した後で実行計画を作成して取り組むと良いでしょう。

具体的な行動計画に基づいて施策を実施し、そのうえで進捗を管理し達成情報を検証することが大切です。またこのプランは、中・長期的な活動のため、この施策を実施する側のモチベーションを維持する事も大事な要素です。

これは、社内でのビジョンの共有などを行い、実際に出た成果などを説明してPMIによる効果を実感してもらう事で当事者意識を持って臨んでもらう事ができるでしょう。

統合の実施進捗と効果の検証

PMIの最後の方法は、実施進捗確認とその効果の検証です。

最初に作成した統合計画や100日プラン、実行計画などの進捗を確認し、どのような効果が出たかの検証を行います。

この検証で、改善すべき点や、対応する必要のあるトラブルが明らかになった場合には、追加の改善案を検討し実施します。またM&Aの実施後6ヶ月や1年という節目と言える時点で、譲受企業と譲渡企業の関係性や統合状況について話し合う事がとても大切です。

その時点で現状を確認し、今後どうすれば更なるシナジー効果を得られ企業の価値が高められるのかを検討し、今後の計画や方針を改善する事ができます。

PMIの効果

M&A後のPMIには主な効果が2つあります。以下で解説していきます。

シナジーを最大限に発揮できる

PMIが成功した場合、シナジーを最大限に発揮できます。事業で重複している部分などを整理して、事業の効率化やコスト削減をすることができます。また優れたノウハウや販売網などを相互に活用したりする事も効果的です。

PMIの計画をしっかり行い統合効果の高い部分から計画し改善していけば、より短い時間で

シナジーを最大限に発揮する事ができます。またその他に、買収後に発生しうるリスクや問題に対処する事も大切です。

従業員の不安や疑問を払拭できる

M&Aにより経営陣が変わり、職場環境が変わってしまうのは、売手側の従業員にとってとても大きな出来事です。新たな環境についてや、その後の経営方針などについての説明が足りないと、従業員に不信や不満がたまり離職に繋がってしまいます。

そのため、M&Aを実施した後はなるべく早く説明会などを行い、理解してもらうことで不安と疑問を解消する事が大切です。

PMIを行う際の注意点

統合を成功させるために気を付けるべき事がいくつかあるため解説していきます。

投資回収を急がない

譲受側がM&Aを実施するのは、主に自社の成長を目的とした投資と言えます。そのため投資額を回収する期間やその可能性などはとても重要な問題です。

しかし投資回収ばかりに目が行ってしまって短絡的な改革を実行してしまい、PMIの失敗や事業そのものが傾いて、結果として投資回収が遠のいてしまう場合があります。

M&A実施後に事業が成功しその効果を十分発揮するためには、譲渡側の企業との協力と理解が必要不可欠です。

したがって、PMIを実施する前から両社の関係を深めて粘り強く今後の展開やビジョンなどを共有し理解を深める事が大切です。

認識の違いを意識する

もともとは別に事業運営を行っているため、その事業では当たり前と思われているルールや暗黙のルールについて認識する必要があります。

M&Aは一般的に譲受企業の方が規模が大きい場合がほとんどで、経営や業務システムが整っている事が多いです。その環境やルールが当然と考え押し付けてしまうと譲渡側企業には不信感が募ってしまう可能性があります。

そのため信頼関係を構築するためにも双方の考え方を共有して、変更しなければならない場合は、その合理性や目的などを説明する必要があります。

PMIの意味やビジョンを共有する

PMIの意味やビジョンを経営陣から現場の従業員まで広く共有する事が大切です。

これが浸透できていないと、M&Aの効果が薄くなってしまったり違う方向に進んでしまったり、M&A自体が破談になってしまう場合があります。そのためまず経営陣がPMIの意義についてしっかり理解し、それを徐々に広げていき最終的に現場レベルまで浸透させていく事が大切です。

まとめ│PMIはM&Aを成功させる鍵

ここまでPMIについて解説してきました。これはM&Aを実施した後の統合プロセスを指します。

これに失敗すると、顧客離れや業績悪化に繋がってしまいます。

M&Aを通じて成長するはずが、逆に悪化してしまっては元も子もありません。しかし反対に上手にPMIを行えれば、期待していた以上のM&Aの効果を発揮したり、自社のシステムやルールの更なる効率化に繋がります。

そのためPMIは、M&Aを成功させる鍵となりますので、事前の入念な調査と綿密な計画が大切と言えるでしょう。

またPASONでは、M&Aのマッチングやサポートを行っております。

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監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。