不動産を生前贈与する際の注意点とは?メリット・デメリットや流れについて徹底解説!
最終更新日:2024-03-30相続税の対策として、よく耳にする「生前贈与」という言葉。
聞いたことはあるけれど、実際の手続きやメリット・デメリットなどについては、深く理解できていないという方も多いでしょう。両親が元気なときに、しっかりと話し合いを行っておくべき問題のひとつ。
なぜなら不動産は、名義人の変更などの手続きがありますので、預金や現金のように簡単には贈与することができないからです。
そもそも不動産の生前贈与は、本当に相続税の対策になり、メリットが多いものなのでしょうか?また、相続との違いも気になるところです。
そこで今回の記事では、生前贈与とはどういったものなのか?メリット・デメリットや不動産の生前贈与を行う手続き、相続とどちらが得なのかについて詳しく解説していきます。
今後、生前贈与を検討している方の参考になると幸いです。
目次
生前贈与とは?
生前贈与とは、生きている間に自分の子供または孫に対して、保有している財産を譲り渡すことです。通常であれば、亡くなった人の財産を相続する場合に「相続税」がかかることになります。
しかし、元気なうちに贈与を行うことで、本来必要だった相続税の負担を軽減することができるのです。
生前贈与の多くは「暦年贈与」を用いて行われることになります。暦年贈与とは、1年間に贈与する金額を110万円までとする方法です。110万円までの贈与であれば、基礎控除の対象となるため、税金がかからずに済みます。
不動産の生前贈与における3つのメリット
不動産の生前贈与には、大きく分けて3つのメリットがあります。
- 自分の好きなタイミングで希望の相手に贈与することができる
- 相続税の軽減につながる
- 短い期間で財産を渡すことができる
ひとつずつ確認していきましょう。
自分の好きなタイミングで希望の相手に贈与することができる
メリットの1つ目は、好きなタイミングで贈与したい相手に渡せるという点です。この場合、身内でなくても贈与できるのがポイント。
相続人ではない「お世話になった方」などにも贈与することができるのです。もしも、遺言書を残すことなく生前贈与もせずに亡くなってしまったときには、法律で定められた人物にだけ、財産が渡ることになります。
希望の相手に財産を渡したいと考えている場合には、生前贈与を検討するのが望ましいでしょう。
相続税の軽減につながる
2つ目のメリットは、相続税の軽減につながる可能性がある点です。不動産にかかる相続税は、購入時の価格ではなく、贈与時の価格によって計算されます。
昨今、不動産が急速に値上がりしていることも考慮して、時価が低いうちに贈与を行なうのもひとつの方法です。
短い期間で財産を渡すことができる
メリットの3つ目は、短い期間で財産(不動産)を渡すことができることです。亡くなった後に不動産を相続する場合、手続きが煩雑で長い時間を要してしまうことが多くなります。
相続人が多いときには、遺産分割協議が思ったように進まず、トラブルにまで発展するケースも。手続きだけでなく、話し合いがまとまらずに時間がかかることもあるのです。
しかし、生前に贈与契約を結んで不動産の名義変更を行っておけば、わずか1ヶ月程度で手続きが完了することも可能でしょう。
不動産の生前贈与における2つのデメリット
続いて、不動産を生前贈与する際に起こり得るデメリットについて確認していきます。デメリットは、大きく分けて2つです。
- 贈与税がかかる場合に相続税より高額になってしまうこと
- 不動産取得税がかかってしまうこと
順番に解説していきます。
贈与税がかかる場合に相続税より高額になってしまう
デメリット1つ目は、贈与税がかかる場合に相続税よりも高額になってしまう点です。
贈与にかかる税金は相続税に比べて非常に高額となっており、累進課税になっているため、価値が高いほど税金の額も大きくなってしまうのです。
相続税が10%なのに対して、贈与税は40%の負担を強いられてしまいます。相続税に関しては、基礎控除がありますので、生前贈与が適していないケースもあるでしょう。
不動産取得税がかかってしまう
デメリットの2つ目は、不動産取得税がかかってしまうことです。
贈与税だけでなく、不動産においては不動産取得税や登録免除税など、さまざまな税金が課せられることとなります。
贈与してもらった不動産によっては、税金だけでもかなり大きな金額となってしまうケースがあるため、生前贈与を行わないほうが良いこともあるのです。
不動産は生前贈与と相続どちらが良い?
生前贈与と似たような意味を持つ言葉に「相続」があります。不動産の場合、生前贈与と相続を比較すると、どちらを選択するのが良いのでしょうか?
生前贈与が「生きている間に特定の相手に財産を渡す」ことに対して、相続は「亡くなった後」に行われます。亡くなった人の希望通りに財産が分配されるかどうかは、わからないのです。
しかし「手続き」だけに注目すると、相続の方が手軽で簡単になっています。なぜなら、生きている間に行われる手続きは、一切必要ないからです。
どちらが得か?という点については、それぞれの状況によって変わってきますので一概には言えません。生前贈与がおすすめなケースは下記の通りです。
- 子供や孫が多く贈与したい相手が多い場合
- 特定の人物に贈与したい場合
- 早い段階で財産を渡したいとき
- 価値が上がる可能性の高い不動産を所有しているとき
また、相続の方が適しているのは次の通りです。
- 子供や孫など、贈与したい相手がいないとき
- 贈与税の控除を使うことができない場合
- 死期が間近に迫っているケース
生前贈与がおすすめなケースは、贈与したい相手が明確に決まっている場合や、早く財産を贈与したいときなどが一般的です。
また、子供や孫など、贈与したい人が多い際には「年間110万円まで基礎控除の対象」になるため贈与税の枠が増えることとなります。
多くの財産を保有していても、その分、贈与相手も多いのであれば将来的に相続税を小さくできるでしょう。
価値が上がる可能性の高い土地や建物を保有している場合も例外ではありません。贈与税や相続税は、相続時の価格で計算されます。
例えば1,000万円で購入した不動産が、現在2,000万円になっており、自分が他界する頃には3,000万円まで値上がりしそうという場合。
不動産の価格が上昇する前に贈与することができれば、低い価格で税金を納めることができます。
一方、相続が適しているケース1つ目は、子供や孫・配偶者などが居ない場合です。なぜなら、生前贈与を行うメリットを受けることができないため。
生前贈与は大きな「贈与税」がかかってしまいますが、その控除制度の対象にならないからです。ただし、子供や孫がいない場合でも、兄弟や姪っ子・甥っ子などへの暦年贈与を使うことは可能となっています。
また、死期が間近だとわかっている場合も相続の方が適しているでしょう。これは、3〜7年以内に行われた生前贈与には、相続税の対象財産とみなされてしまうためです。
不動産を生前贈与する際の注意点
不動産を生前贈与する際には、トラブルになる可能性があることも考慮しなければなりません。生前贈与は、自分が贈与したい相手に確実に渡すことができる方法です。
しかし、相続できる人が複数人いるケースも多いでしょう。その中で、高額な不動産を受け取ることができた相続人は、それ以外の相続人たちから非難される可能性もゼロではありません。
また、他の相続人たちによって「遺留分」について言及される恐れもあります。遺留分とは、法律によって定められたものであり、一定の相続人に対して遺言でも奪えない遺産の最低限の範囲を請求できる権利のことです。
不動産は、財産の中でも大きな割合を占めます。受け取ることのできなかった他の相続人たちが「面白くない」と思うこともあるでしょう。親族間の大きなトラブルへと発展するケースも多いため、十分に注意しなければなりません。
それ以外にも、贈与税が高額になってしまった場合、せっかく譲与してもらった不動産を売却して支払わなければならないといったことも考えられます。贈与税は現金での支払いが義務付けられていますので、用意できなかった時には、不動産を売却して支払うことになるのです。
不動産の生前贈与を行う流れ
最後に、不動産を生前贈与する際の流れについて確認してみましょう。大きく分けて4つのステップに分かれています。
- 不動産贈与契約の締結
- 不動産贈与契約書の作成
- 法務局で名義人の変更手続きを行う
- 最後に税務署で贈与税の申告手続きを行う
まずは、不動産贈与契約を締結することです。これは「誰に、どの不動産を贈与したいのか」を明確に示すものとなっています。続いて贈与契約書の作成です。
口約束ではなく、後にトラブルに発展しないよう、しっかりと契約書を交わすことが重要です。
記入する際の注意点は、実印を使用し、直筆での署名を行うことです。続いて、法務局での名義人の変更手続きに移ります。
このとき、自宅近くの法務局ではなく「贈与する不動産を管轄している法務局」での手続きとなりますので注意しましょう。
すべての手続きが完了した後、最後に税務署において、贈与税の申告をします。申告には期間が定められており、贈与された翌年の「2月1日〜3月15日」までに、贈与された側の人が所轄の税務署において手続きを行うこととなります。
まとめ|不動産は生前贈与が得になるとは限らない!事前にシミュレーションしよう
今回の記事では、不動産を生前贈与する際のメリット・デメリットや相続との違い、注意点や流れについて詳しく解説してきました。
生前贈与は、自分の好きなタイミングで希望の相手に贈与を行えることや相続税の軽減につながるといったメリットがある一方、多額の税金を課せられる可能性があったり相続人同士でのトラブルへと発展してしまう恐れもあることがわかりましたね。
生前贈与と相続、どちらが適しているのかを、事前にしっかりとシミュレーションすることが大切です。大切な資産を大切な人に残してあげたいときには、家族間での話し合いも重要なポイントになります。元気なうちに、何度も話し合いを重ねて、最善の方法を選ぶようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。