正味現在価値の意味とは?内部利益率との違いやメリット・デメリットを解説!
最終更新日:2024-03-30正味現在価値の意味とは?内部利益率との違いやメリット・デメリットを解説!
M&Aを検討するときや新たに投資を行う際に耳にする言葉で「正味現在価値」があります。「まったく聞きなれない言葉で、どのような意味なのかわからない」「正味現在価値と内部利益率の違いはあるの?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
また、正味現在価値を計算したいとお考えの方であれば「計算サイト」の情報も気になるところです。
そこで今回の記事では、正味現在価値にはどのような意味があるのか?内部利益率との違いや正味現在価値の計算サイト、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
正味現在価値について深く理解できる内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
正味現在価値の意味とは?
正味現在価値とはNPV(Net Present Value)とも呼ばれており「この投資を行うことによって、どのくらいの利益を獲得できるのか?」を指し示すものとなります。未来の「収入」と「支出」を割り出したものです。
正味現在価値(NPV)は、M&Aを行う際や新規に投資を始めるときの指標として、広く知られています。投資をするべきか?やめておくべきか?の判断材料として用いられるのです。
意思決定をする際に、欠かせないものとして活用されています。
例えば、これから事業投資を行うか否か検討中の場合、その投資費用に2億円必要だったとします。そこで、正味現在価値(NPV)を計算し、未来の予想収益は現時点で3億円だったとしましょう。このケースだと、3億円−2億円=1億円が正味現在価値(NPV)となるのです。
正味現在価値が「正(プラス)」であれば、投資を行うべきだと判断します。そのプラスになった数字が大きいほど投資する価値は高くなるということです。
反対に、この数字が「負(マイナス)」であれば、投資すべきではないと考えます。いくつかの投資案件でどの案件を購入すべきか迷っている時には、正味現在価値(NPV)が「正(プラス)」且つ、1番大きいものを選ぶのが賢明と言えるでしょう。
正味現在価値と内部利益率の違いとは?
正味現在価値と似たような意味を持っており、間違いやすい言葉として「内部利益率(IRR)」があります。IRRとはIntemal Rate Returnを略した言葉です。正味現在価値と内部利益率にはどのような違いがあるのでしょうか?
この2つの言葉はどちらも、投資において利益をもたらすかどうかを判断するものです。しかし、大きく異なることが1つあります。それは「評価の対象」となるものです。
正味現在価値(NPV)は、M&Aや投資を行おうと検討した際に「獲得できる利益の総額」なのに対して、内部利益率の場合は「得られる年間の利回り」となります。
内部利益率は、例えば新規で投資をしようと思ったときに、初期投資として「300万円」支払いました。それから1年が経過した際に「360万円」を受け取ります。
この場合の内部利益率(1年間での利回り)は「20%」です。未来に受け取ることができるお金を、現時点での価値に置き換えて利回りを計算することが内部利益率となります。
正味現在価値が「利益の総額」を求めるものであり、内部利益率が「利回り」を求めるものということになるでしょう。
正味現在価値の計算サイト(無料)
正味現在価値には計算式があります。「計算式はわかるけれど、複雑で難しい」と思っている方も多いはずです。
現在価値から投資する金額を引いたものが正味現在価値となりますが、現在価値を洗い出すためには関数を用いた計算方式となるため、手間に感じてしまう人も居るでしょう。
正味現在価値を自動で計算し、その数値を算出してくれる便利なサイトもあります。期数や初期投資額などを入力するだけで正確な数字を割り出してくれて、誰でも無料で利用できますので、ぜひ参考にしてみてください。
<Keisan>
1つ目は、現在価値(PV)や正味現在価値(NPV)を、数字入力のみで計算してくれる便利サイト「Keisan」です。新しい投資案件を検討する際や、不動産投資をスタートするときにもおすすめ。
https://keisan.casio.jp/exec/user/1351601122
<自動計算>
2つ目は、自動計算サイトの「自動計算」になります。10年後の正味現在価値まで計算してくれますので、長期的なNPVを把握したい方にも最適です。
https://calculator.jp/money/npv/
<毎日の電卓|NPV電卓>
3つ目の無料計算サイトは「毎日の電卓」です。自分が正味現在価値(NPV)を知りたい時はもちろんのこと、複数の人たちと結果を共有することも可能。
NPVだけでなく「IRR(内部利益率)」や「MIRR(修正内部収益率)」などの計算もできます。
http://dailycalculators.com/ja/node/16
正味現在価値を無料で手軽に計算したい時には、ぜひ利用してみてください。
NPV(正味現在価値)の計算式の前提知識
NPVによって投資がどれだけ収益を上げるのかを計算する際には、どれだけ儲けが出るのかを測るための前提条件を決めなければいけません。
NPVを計算する際に必要な要素は「フリーキャッシュフロー」と「割引率の設定」の二つです。この二つの前提条件を誤ってしまうと正しいNPVを計算することができないので、詳しく見ていきましょう。
フリー・キャッシュ・フロー
フリーキャッシュフロー(FCF│Free Cash Flow)とは日本語で純現金収支と言います。フリーとは企業が自由に使用できるという意味でのフリーです。設備投資や借入金の返済などに使用できるキャッシュの事を指します。CFは企業が活動していく中で動いていくお金の流れの事です。
また企業のCFと言ってもいくつか種類があります。まず営業活動によるCFです。これは本業の営業活動によるお金の出入りの流れです。
企業の根幹をなす部分で、ここがマイナスの場合は本業が赤字と言えます。次に投資活動によるCFの事です。これは設備投資や有価証券などへの投資状況を表しています。次は財務活動によるCFです。
これは、固定資産の売買や設備投資などで発生するお金の流れを指します。そして最後にFCFです。これは営業活動によるCFと投資活動のCFを合わせたもので、企業が自由に使える現金を表します。
このようにFCFとはCFの一つです。計算方法は以下のように求められます。
FCF = 営業CF + 投資CF
割引率(利率)
FCFは求められましたが、次に必要なのは割引率または利率を決める事です。ここで定める利率は1%変わるだけでも相当な影響があるので正しく求める必要があります。
利率を求める方法は状況や場面によって変わりますが、M&Aで使われる企業価値の算定方法は、WACCという指標が用いられます。
WACCはWeighted Average Cost of Capitalの略称で、日本語では加重平均資本コストと言います。これは、例えば1円調達するのにいくらコストが必要なのかを表すものです。
企業の負債コストと株主資本コストを負債と株主資本の割合に応じて加重平均したものです。WACCコストは以下の計算式で求められます。
WACC = rE × E / (E + D) + rD (1 – T) × D / (E + D)
rE:株主資本コスト/rD:負債コスト(実効税率前)/E:株主資本/D:負債 T:実効税率
で求められます。
NPVの計算式
NPVは以下の計算式で求められます。
NPV=t年後に見込めるCF ÷ (1 + 割引率) – 初期投資額
この計算式から更に、求めたい年数分の「t年後のCF ÷ (1 + 割引率) t乗」を加えます。最終的に出た数値から初期投資額を差し引きして結果がプラスであるなら投資の検討の余地があり、マイナスであれば投資が合理的でないと判断する事が出来ます。
計算例
実際どのように計算されるのか実例を挙げて説明していきます。
初期投資金額:2000万円
割引率:5%
FCF:100万円
想定期間:3年
NPV={100 ÷ (1+0.05)^1 + 100 ÷(1+0.05)^2 + 100 ÷(1+0.05)^3}- 2,000万円=-1,728
この場合は計算結果がマイナスなので投資を行うのは合理的ではないと言えます。違う例も見ていきましょう。
初期投資金額:2000万円
割引率:5%
FCF:1200万円
想定期間:3年
NPV={1200 ÷ (1+0.05)^1 + 1200 ÷(1+0.05)^2 + 1200 ÷(1+0.05)^3}- 2,000万円=1,268
この場合は計算結果がプラスなので投資価値があると判断できます。このように計算で大まかに投資価値があるかどうか判断する事が出来ます。
しかし実際のM&Aにおいては、収益は変動し、投資にかかるコストや潜在的な評価価値によって左右されます。したがって大まかな投資判断に利用すると良いでしょう。
正味現在価値のメリット
正味現在価値におけるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。正味現在価値には、大きく分けて3つのメリットがあります。
- 投資やM&Aで迷ったときの意思決定を後押ししてくれる
- 複数の案件で悩んでいる時に、正確な比較ができる
- 事前に「リスク」まで把握することができる
順番に確認していきましょう。
正味現在価値のメリット①|投資やM&Aで迷ったときの意思決定を後押ししてくれる
正味現在価値のメリット1つ目は、新規の投資案件やM&Aを行う際に、意思決定を後押ししてくれる点です。大きなプロジェクトとなるM&A(合併と買収)や新規投資案件を決定する際には、慎重になるのはもちろんですが、決断力が鈍ってしまうことも。
しかし、正味現在価値で導き出した数字が「正(プラス)」であれば利益が出る「負(マイナス)」であれば損をするということがわかっているため、意思決定の判断材料として最適です。
その「正(プラス)」の値が大きいほど、実行に移すべきだと言うことになりますので、決断を後押ししてくれるでしょう。
正味現在価値のメリット②|複数の案件で悩んでいるときに正確な比較ができる
正味現在価値のメリット2つ目は、複数の案件で悩んでいるときに正確な比較ができるという点です。
企業としては、少しでも「利益」が大きい投資案件を選びたいはず。いくつかの新規投資案件があるケースでは、その中で最も収益性の高いものを選択しなければなりません。
純粋な利益がどのくらいの金額になるのかが正確にわかるため「この案件に投資する価値があるのか」を先入観や情報だけにとらわれず、的確に判断できます。比較対象が複数に及ぶ場合であっても、有効に活用できるでしょう。
正味現在価値のメリット③|事前に「リスク」まで把握することができる
正味現在価値のメリット3つ目は、事前にリスクを把握することができる点です。
投資を行う前に危険を察知し、リスクを回避できることは、投資を行う際に大きなメリットとなります。
正味現在価値(NPV)は、どれだけの収益を得られるか?についてわかるだけではなく「どれだけ損をするのか」も同時にわかるので、計算で導き出された数値がマイナスであったり予想した利益よりも少なかった場合は投資を見送ることができるのです。
正味現在価値のデメリット
続いてデメリットについても確認していきます。正味現在価値には、投資やM&Aを行う上で多くのメリットがありました。しかし、この数値だけに頼り切ってしまうと、失敗してしまう可能性もあるのです。デメリットは大きく分けて3つです。
- 割引率の設定が難しい
- 「正」か「負」かの2択になってしまうので、他の指標と併用しなければ厳密な判断はできない
- プロジェクトが長期にわたるものには向いていない
ひとつずつ見ていきましょう。
正味現在価値のデメリット①|割引率の設定が難しい
正味現在価値のデメリット1つ目は、割引率の設定が難しいということです。
計算して数値を導き出すためには、必ず「割引率」を入力するのが必須。この割引率の設定が非常に難しく、少しでも数値が違っていれば正確な評価ができなくなってしまうのです。
割引率では「未来の価値」を計算します。しかし「未来」と「現在」では、さまざまな価値が異なっていることも予測できるため、割引率の設定には悩んでしまう人も多いでしょう。
正味現在価値のデメリット②|「正」か「負」かの2択になるため、厳密な判断をするには他の指標との併用が必要
正味現在価値のデメリット2つ目は、数値がプラスかマイナスかによって投資を行うべきか決めることとなるため、正しい判断となっているのか疑問が残ります。
あくまでも仮説に基づいた数字であるため「NPVがプラスだった」という結果だけを意識してしまうと、予想外の事態が起こった時に対処できなくなってしまうのです。
より正確に「投資を行うか否か」を決定する際には、内部利益率(IRR)などを併用し慎重な判断を行う必要があるでしょう。
正味現在価値のデメリット③|プロジェクトが長期にわたるものには向いていない
正味現在価値のデメリット3つ目は、プロジェクトが長期にわたるものには向いていないということです。短期的な投資案件で収益を上げることに向いているので、中期・長期間にわたるものには十分に対応できません。
正味現在価値には「正(プラス)」の値が最も大きな案件に注目し、利益の大きさに固執してしまう傾向があります。したがって、長期的な投資を行った際に、大きな収益を期待できる案件を見逃してしまうというデメリットも頭に入れておかなければなりません。
まとめ|正味現在価値の数値は重要!しかし数字だけにとらわれずに柔軟な対応を
今回の記事では、正味現在価値とはどのような意味なのか?内部利益率の違いや正味現在価値の計算サイト、メリット・デメリットなどについて詳しく解説してきました。
新規で投資を行う際やM&Aを検討する際に、正味現在価値は非常に重要な役割を果たすことがわかりましたね。正味現在価値を用いれば、どのくらいの収益を得ることができるのか、またはそれだけ損をしてしまうのかが把握できます。
「投資をするか否か」を決定する際に重要な役割を担ってくれるでしょう。
しかし、デメリットでも記載したように、その数字だけに固執してしまうと将来的に大きな収益が見込める投資案件を見逃してしまう恐れもあるのです。
内部利益率などとの併用で、チャンスを逃さないよう、慎重な判断と多くのシミュレーションを行うよう心がけましょう。
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