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副業している場合の年末調整は?対象になる条件や確定申告が必要な場合を解説!

最終更新日:2024-03-21
副業 年末調整

年末調整とは、所得税の過不足を精算する手続きの事です。会社は従業員が一定の条件を満たしている場合は、年末調整を行う義務があります。

会社員が副業をしていてその所得が20万円を超えると年末調整を受けた後に、自ら副業の所得を含めた確定申告を自分で行う必要があります。

ここでは年末調整の対象になる条件や必要書類、受けられる控除などについて解説していきます。

年末調整とは

年末調整とは、会社員である給与所得者が、源泉徴収された税額の年間の合計額と年税額を一致させる精算の手続きの事です。

源泉所得税の概算額は多めに設定されている事が多く還付される場合が多いですが、逆に不足していて徴収される場合も存在します。

年末調整の対象となるのは、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人です。しかし給与の収入金額が2,000万円を超えるなどの一定の要件を満たした人は、年末調整の対象にはなりません。

また年末調整では、生命保険控除や扶養控除などの各種控除の清算も行います。

年末調整の対象になる人とならない人

年末調整の対象になる人とならない人の条件を具体的に解説していきます。

年末調整の対象となる人

年末調整の対象となるのは、正社員のみならずアルバイトなどの正社員以外の雇用形態でも対象になる場合があります。

対象となる人は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した納税者で、給与収入が年間2,000万円以下で災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税と復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けていない場合は、基本的に年末調整の対象になります。年末調整の対象となる条件は、以下のとおりです。

  • その年を通じて勤務している人、あるいは中途で就職し採用後年末まで継続して勤務した人
  • 死亡によって退職した人、または心身などの障害によって中途で退職して、その年のうちに再就職が見込めない人
  • パートやアルバイトで働いていた人が退職し、その年に受け取る給与の総額が103万円を超えない人
  • 12月中に給与を受けた後に退職した人
  • その年の中途で海外の支社などに転勤することになり、非居住者となった人

上記に該当しない退職者については年末調整の対象にはなりません。

そのため該当しない人は、確定申告を行う必要があります。また副業による所得が20万円超の場合は、年末調整を受けても本業の給与所得と副業の所得について確定申告する必要があります。

具体的には、扶養控除等申告書を提出した会社で年末調整を受けたあと自分で副業の収入を合わせた確定申告を行う流れです。

年末調整の対象とならない人

年末調整の必要がない場合は、以下のとおりです。

  • その年の給与所得が2,000万円を超える人
  • 災害被害を受けて「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」によって、その年の源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けている人
  • 副業も給与所得で、他の雇用主の会社で年末調整を受ける人
  • 日本国内に居住しておらず非居住者に該当する人
  • 年の中途で退職して、その年度内に再就職の見込みがある人
  • 日給9,300円以上で、雇用主が事業者で継続勤務2ヶ月以内の日雇い契約の労働契約結んでいる人 

年末調整の対象とならない人は、主にその年の12月31日時点で会社に在籍していない退職した人です。年の中度で転職などをした場合では、転職先の会社で年末調整を行うこととなります。

年収103万円以下でも年末調整が必要になる場合

パートまたはアルバイトの雇用形態で働いている人は、年収103万円以下であれば基礎控除と給与所得控除を受けることができるため所得税額はかかりません。

しかし場合により、年収が103万円以下でも給与から所得税が差し引かれる場合があります。この源泉所得税は毎月の給与から差し引かれますが、これは源泉所得税額表にもとに算出されています。

具体的には、扶養控除等申告書を提出している従業員は、社会保険料等を控除したその月の給料が8万8千円未満の場合であれば源泉所得税が0円です。

しかし8万8000円を超えた場合は源泉徴収の対象です。そのため年収が103万円以下の場合でも給与が8万8000円以上になる月があった場合、その月は所得税を払う事になります。

これは、その年の年収が103万円以下であれば、年末調整を行うことで源泉徴収された金額はすべて還付される事になります。

副業をしていても年末調整が行えるのは1か所だけ

本業の会社で給与収入を得ながら、副業でほかの会社から収入を受けている場合でも年末調整を行える会社は1つのみとなっています。

年末調整を受けるのに、基本的には雇用主に給与所得者の扶養控除等申告書を提出しなければなりません。

しかしこの書類を提出できるのは1枚までと決められています。これは仮に複数提出して、年末調整を行うと所得控除が重複することとなり納税額を正しく計算する事ができなくなる事を防ぐためです。また一般的に年末調整を受ける会社は1番給料を受け取っている会社に対して申請する事が多いです。

年末調整で提出する必要がある書類

年末調整で提出する必要がある書類は以下の3つです。

  1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  3. 給与所得者の保険料控除申告書

上記の3つ書類が必要となります。またこれまでは紙の書類で提出が行われてきましたが、近年は年末調整の電子化にともない、控除証明書などの書類をクラウド上で受理して年末調整を行う会社も増えてきています。

副業をしていて確定申告が必要になる場合

副業の収入が20万円を超える場合は、年末調整の対象になる年の翌年の2月中旬から3月中旬までに確定申告をする必要があります。また副業で得られる所得区分になる事が多い所得は、以下の通りです。

  • 給与所得 – アルバイトやパートなどの雇用によって勤務先から受ける給料や賞与などの所得
  • 事業所得 – 農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業を営んでいる人がその事業で得た所得
  • 不動産所得 – 土地や建物などの不動産や借地権などの不動産の権利の貸付などにより得た所得
  • 雑所得 – 他の所得のいずれにも該当しない所得

上記の4種類が主に副業で得られる所得です。事業所得や不動産所得、雑所得などは副業で得た収入などから必要経費を差し引いた金額の事です。

事業所得や不動産所得の場合は、青色申告での確定申告が可能となり最大65万円の控除を受ける事ができます。

また副業の所得が20万円超あるのに、確定申告を行わないと脱税とみなされてしまいます。そうなってしまうと本来納税するべき金額のみならず、無申告加算税や延滞税などを支払うことになってしまうため注意が必要です。

副業の税金について詳しく知りたい方は会社員が副業でかかる税金とは?確定申告が必要な場合や所得の種類による違いを解説!で解説しています。

年末調整と確定申告で受けられる控除

住宅借入金等特別控除所得控除には15種類の控除があります。その中には年末調整での控除計算が認められないものがあり、確定申告が必要なものもあります。

年末調整で受けられる控除と確定申告で受けられる控除に分けて解説していきます。

年末調整で受けられる控除

年末調整で受けられる控除は以下のとおりです。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • ひとり親控除、寡婦控除
  • 勤労学生控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 住宅借入金等特別控除(2年目以降、初年度は確定申告が必要)

年末調整では、上記の控除を受ける事ができます。

確定申告で受けられる控除

確定申告で受けられる控除は以下のとおりです。

  • 寄附金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 住宅借入金等特別控除初年度(初年度は確定申告が必要、2年目以降は年末調整)

確定申告では、上記の控除を受けることができます。住宅借入金等特別控除は初年度に確定申告を行う必要がありますが、2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。

年末調整で住宅ローン控除を受ける場合

2年目以降に、年末調整で住宅ローン控除を受ける場合は、年末調整で必要書類に加えて以下の書類を提出する必要があります。

  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(残高証明書)

上記の書類を提出し年末調整を受ける必要があります。また3年目以降も同じ流れで年末調整で住宅ローン控除を受ける事ができます。

年末調整のスケジュール

年末調整は、多くの場合10月下旬〜11月頃から始まり、1月下旬までに法定調書の作成をし提出を行います。具体的な流れは以下の通りです。

  • 10月〜11月 – 会社は申告申告書類を配布し、従業員から必要書類と添付書類を回収しチェック
  • 12月 – 年末調整の計算と源泉徴収票の作成
  • 1月 – 法定調書合計表の作成と提出、支払調書の作成と提出、源泉徴収票の提出、給与支払報告書の作成と提出

一般的に上記のスケジュールで年末調整が進みます。従業員から回収した申告書が誤っていると、年末調整自体をやり直すことに繋がってしまうため、回収後に記載内容の確認をする必要があります。

そのため期日までに必要書類の回収が行えなかった場合には、年末調整が行えないため、従業員が自分で確定申告する事になってしまうことがあるため注意が必要です。

年末調整をしないとどうなるか

年末調整は、所得税法によって定められた雇用主の義務です。企業が年末調整を行わなければ、還付金など払いすぎた税金などが受け取れないことになってしまいます。

そのため年末調整を正しく行っていない企業には、以下の罰則が課せられます。

  • 年末調整を行わずに、従業員から正しい税額を徴収しなかった場合は、

1年以下の懲役または50万円以下の罰金(所得税法第242条)

  • 年末調整は行ったが、追加の徴収額を納付をしなかった場合は、

10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方(所得税法第240条)

上記のような罰則が定められています。しかし年末調整を行えない理由が企業ではなく、書類の紛失や期日までに間に合わないなどの理由が従業員側にある場合は、3月15日までに従業員が確定申告をすることで対応できます。

しかし面倒ともいえる税額計算を従業員が自分でやる事になるため、年末調整を行うように指導する事が大切です。(令和6年2月時点)

まとめ│年末調整を受けても副業の確定申告が必要な場合もある

ここまで年末調整と副業について解説してきました。年末調整は、その年に本来支払う正しい所得税額を計算して、給与から差し引かれた現徴収額との差額を清算する手続きです。

実際の税金額が源泉徴収額より多ければ追加で差額を納付し、逆に少ない場合は多く収めた分の還付を受ける事ができます。

年末調整を受けても副業の所得が20万円を超える場合は、自分で確定申告する必要があります。副業の所得が20万円以下の場合でも、住民税の申告は、しなければなりません。

また申告の必要があるのに申告を行わずにいると、本来払う納税額に加えて無申告加算税や延滞税、重加算税などが課される場合があるため注意が必要です。

会社が行う年末調整にも時間がかかるため、必要書類を早めに準備しておくとスムーズに進めることが出来ます。また確定申告を行う場合も同様に準備を行う事で、余裕を持った確定申告ができるため、早めの準備が肝心です。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。