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遺言の作成でスムーズな事業承継を!相続手続きについて解説

最終更新日:2024-03-30
遺言 相続

経営者の中には、事業承継について不安や悩みを抱えている方も少なくありません。その中のひとつに「財産」の引き継ぎもあるはずです。

会社のことはもちろん、家族や後継者のことも十分に考えて、スムーズ且つ円満に財産を引き継ぐ方法を取りたいところ。

事業承継に関係する相続は、家族間だけの問題ではありません。会社や、そこで働く従業員にとっても大きく関わってきます。そこで重要になってくるのが「遺言書」の作成です。

本記事では、経営者が遺言書を残すべき理由や作成しない場合のリスク、遺言作成時の注意点などについて詳しく解説していきます。

経営者が遺言書を残すべき理由とは?

経営者が「相続問題対策」として、遺言書を作成しておくことは、非常に重要なポイントとなります。

遺言書を残すべき理由は大きく分けて下記の3つです。

  • 会社の乗っ取りを防ぐため
  • 株式が分散してしまうことを回避するため
  • 事業用の資産を今後も使用するため

ひとつずつ確認していきましょう。

会社の乗っ取りを防ぐため

まずひとつ目の理由が、大切な会社の乗っ取りを防ぐためです。経営者の多くは、会社の株式を保有していることが多いでしょう。もちろん、株式にも大きな価値があるため、相続する際の対象となります。

株式を保有していることによって、遺産分割が行われたときに株式が分割されてしまえば、本意ではない人物に会社が乗っ取られる可能性もあるのです。

株式が持つ力は非常に大きいので、過半数の株式を持っていると、重要事項も全て独断で決めることができます。

これを踏まえて、経営者はスムーズに相続が進むよう、遺言書を作成しておく必要があるのです。

株式が分散してしまうことを回避するため

2つ目の理由は、株式の分散を回避することです。上記でも解説したように、株式が持つ資産価値は大きいため、遺産分割の際にトラブルに発展してしまうケースが多く見られます。

遺産に「株式」が含まれる相続において、遺言書がない場合は「法定相続分」に応じて、分割することが定められています。

遺言書を作成する前に、経営者(被相続人)が亡くなってしまった場合、複数の相続人に株式が分散する恐れもあるのです。これによって、経営権が分散してしまい、意思決定が複雑になる可能性もあります。

相続人同士が対立することも十分に考えられますので、注意しなければなりません。

事業用の資産を今後も使用するため

3つ目は、事業用の資産を今後も使用するためです。

大企業ではあまり多くはありませんが、中小企業において、経営者が所有する個人的な資産を「事業用」として使用するケースは珍しくありません。

万が一、会社存続に反対する相続人がいた場合には、個人で所有していた事業用の資産を利用できなくなる可能性もあります。

例えば、経営者名義の不動産をオフィス(事務所)として使用していたり、経営者の個人資産を会社に貸し付けしている場合は注意が必要です。

遺言書を作成せずに経営者が死亡してしまうと、会社にとって必要不可欠な資産や財産が失われてしまいます。

株式を100%保有している経営者にとっては、会社の資産も全て「自分の所有物」という感覚があるかもしれません。

しかし、すべての資産を私物化できるわけではないため、遺言書の作成が重要となるのです。

遺言書がある場合の相続手続きとは?

それではここからは、遺言書を作成していた場合の「相続手続き」について確認していきます。

  • 遺言書の存在をしっかり確認する
  • 遺言書によっては検認が必要なケースもある
  • 遺言執行人が就ている場合は、手続きを委ねる

ひとつずつ見ていきましょう。

遺言書の存在をしっかり確認する

もし、被相続人が作成した遺言書の存在を知っている相続人がいる場合には、その事実をほかの相続人にも伝えなければなりません。

「知られると不利になる」「できれば秘密にしたい」と考えて、存在を隠してしまったときには、相続する権利を失う可能性もあります。

また、被相続人が秘密裏に遺言書を作成しており、誰にも知らせていないケースもあるでしょう。その際は、亡くなった後に、遺品を調べて遺言書の有無を確認することになります。

一言で「遺言書」と言っても「自筆証書遺言書」「秘密証書遺言書」「公正証書遺言書」の3種類があり、それぞれ証人の必要性や保管方法・作成の仕方や費用が異なるものです。

被相続人が生前、法務局の「保管制度」を利用していたときには、遺言書保管所から通知を受け取ることもあります。(自筆証書遺言書の場合)

検認が必要なケースもある

「検認」とは、自筆証書遺言を家庭裁判所に提出し、開封・確認作業を行うことです。このとき、相続人の立ち会いが必要となります。万が一、検認が必要な遺言書を勝手に開封してしまったときには、法律違反となり罰金が課せられることもありますので注意しましょう。

検認が必要となるのは「自筆証書遺言書」を本人が保管していた場合(法務局を利用しているときには不要)と「秘密証書遺言書」です。

「公正証書遺言書」と法務局で保管された「自筆証書遺言書」に関しましては、検認が必要ありません。

遺言執行人が就ている場合は、手続きを委ねる

遺言書において「遺言執行人」が指定されているケースもあります。指定された人物が、就任について承諾したときには、手続きのすべてを遂行することとなるのです。

遺言執行人に就任した際にやるべきことは、下記のものになります。

  • 相続人を確定する
  • 相続財産を調べる
  • 財産目録を作成する
  • 任務が完了したときには通知書の作成

対応の仕方がわからない場合には、専門家へ依頼するのがおすすめです。

執行人が指定せずに、遺言書を作成することもできます。この場合、相続人が遺言の内容に従いながら手続きを行うことになります。

しかし、相続人同士の関係が必ずしも「良好」ではないケースも多いはず。また、それまでは良好な関係だった場合でも、遺産相続になると仲がこじれることも少なくありません。

遺言執行人を指名しておくことで、トラブルを事前に回避することができるのです。スムーズで正確且つ適切な遺言執行を行うために、専門家に執行人を依頼するのが良いでしょう。

遺言書を作成せずに死亡した場合

もし、遺言書を作成する前に経営者が死亡してしまった場合には、どのようなことが起こるのでしょうか。

  • 遺産分割協議が発生する
  • スムーズな事業承継が行えない

順番に確認していきましょう。

遺産分割協議が発生する

まずひとつ目は、遺産分割協議が発生してしまうことです。これは、相続人全員で「遺産の分け方」を話し合いで決めるもの。

相続人は、民法で定められており、具体的には「配偶者」「子供」「兄弟」「姉妹」「父母」などが該当します。

会社の後継者候補が、自社株を承継することができれば問題はありませんが、そう簡単にはいきません。

話し合いがこじれ、多くの時間も必要となる可能性が高くなります。また、相続人同士のトラブルに発展するケースも多いのが現状です。

遺産分割協議は、対象の相続人「全て」の合意がなければ成立しませんので、複雑化してしまう恐れもあります。

スムーズな事業承継を行えない

2つ目は、スムーズな事業承継を行うことができず、会社経営に支障をきたす点です。

遺産分割協議が進まなければ、事業がストップしてしまうこともあります。上記でも解説した通り、遺産分割協議は、相続人全ての合意がなければ成立しません。

その間、自社株式は相続人のそれぞれが「分割して保有する」ものではなく、すべての株式が「共有」されている状態となります。

相続人同士の経営方針が同一であれば、会社経営を続けていくことも可能ですが、決してそういったケースばかりではありません。

トラブルに発展することも多く、事業承継は長期化し、会社運営を続けていくのが困難になることも考えられます。

経営者が遺言書を作成する際に気をつけるべきポイント

経営者にとって、遺言書を作成しておくことが非常に重要になることがわかりましたが、作成時に気をつけるべきポイントはどのようなことでしょう。

作成する際の注意点は下記の2つです。

  • 遺留分に注意すること
  • 事前に家族間で話し合いを行う

ひとつずつ見ていきましょう。

遺留分に注意すること

ひとつ目の注意点は、遺留分に注意することです。「遺留分」とは、たとえ遺言を残した場合でも奪うことのできない、最低限保証された遺産を取得する権利のこと。

スムーズな事業承継や自社株式の分散を回避するために、後継者に指名したい相続人に株式を集中させてしまうと、遺留分を侵害する可能性があります。その場合、ほかの相続人が「遺留分侵害額請求」を行い、大きなトラブルに発展することも。

対策方法として、全体の遺産における「自社株式」の割合を低くするようにするのが効果的です。遺産の大半が「自社株式」または「事業用の資産」であれば、スムーズな相続は難しくなってしまいます。

遺留分については、事業承継における遺留分とは?民法特例の適用条件や適用する手順を解説で詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

事前に家族間で話し合いを行う

気をつけるべき注意点の2つ目は、事前に家族間で話し合いをしておくことです。

円滑な事業承継を意識するあまり、大切な家族の気持ちを優先させることができなくなる場合もあります。

株式の評価額が大きければ、遺言だけでは解決することができないケースも。その際は、上記でも解説した通り、遺留分侵害のトラブルが起こってしまう可能性も十分に考えられます。

事前に家族間で話し合いを繰り返し、理解を得ることも大切です。家族が納得してくれることによって、経営者の意思が詰まった遺言を尊重してくれることにもつながります。

事業承継で悩んでいるときにはM&Aも視野に入れる

経営者の中には、今後の事業承継にお悩みの方も多いはずです。後継者が不在であったり、自分が亡くなった後の経営に不安を抱いている人もいるでしょう。

そんなときには、M&Aを視野に入れることもおすすめです。会社をそのまま残すことができるため、従業員の雇用も守られるだけではなく、まとまった売却益を得ることもできます。

PASONは、M&Aに特化したマッチングプラットフォームを展開中です。オンラインで数多くの買い手と繋がることができ、サポート体制も充実しています。

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まとめ|スムーズな相続を実現させるために遺言書の存在は重要

本記事では、経営者が遺言を残すべき理由や遺言書がある場合の相続手続き、作成時に気をつけるべきポイントなどについて詳しく解説してきました。

経営者にとって、遺言書を作成することは非常に重要であることがわかりましたね。遺言書の存在がなければ、事業承継がスムーズに行えないことはもちろん、相続人同士のトラブルに発展する可能性も十分に考えられます。

遺産分割協議や遺留分侵害請求など、さまざまな対立を引き起こし、長期化することも。その場合、事業がストップする恐れもありますので注意しなければなりません。

事前に家族間で話し合いの場を設けることも効果的です。また、M&Aを検討するのもひとつの方法と言えるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

笹本 拓実
笹本 拓実

2016年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後5年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、株式会社Joblabにて管理部長に就任、コーポレート部門全般を管掌。2023年に共同代表である板井 理と株式会社PASONを設立。
代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。