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持株会社を活用した事業継承の流れ|メリット・デメリットや株価についても解説

最終更新日:2024-05-17
事業承継 持株会社

事業承継の方法のひとつに「持株会社」を活用することがあるのをご存知でしょうか。

一言で「事業承継」といっても、その選択肢はさまざまです。

経営者の高齢化や後継者不在の問題などで、事業承継がスムーズに行ないことが多い現在、持株会社を利用したスキームが注目を集めています。

また「そもそも持株会社とは?」と頭を悩ませている方も多いかもしれません。

本記事では、持株会社を活用した事業承継についてやメリット・デメリット、手順や流れなどについて詳しく解説していきます。

事業承継でお悩みの方の参考になると幸いです。

持株会社とは?

そもそも「持株会社」とは、どのような会社のことを指しているのでしょう。

持株会社は、他の会社を支配する目的を持って、対象の会社の株式を保有している会社を表した言葉です。

別名「ホールディングカンパニー」と呼ばれており、主に「子会社」の株を保有することが多くなっています。

持株会社の種類は、下記の3種類に分けられており、それぞれ目的や事業形態が異なります。

  • 純粋持株会社
  • 事業持株会社
  • 金融持株会社

持株会社についての詳細については、持株会社とは?持株会社のメリット・デメリットや設立方法を解説!で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

事業承継において持株会社を活用するメリット

事業継承のために「持株会社化する」と判断した場合、どのようなメリットが生まれるのでしょうか?メリットは、大きく分けて次の4つです。

  • 節税効果がある
  • 資金調達しやすくなる
  • 株式が分散してしまうのを防ぐことができる
  • 先代経営者が利益を得られる

1つずつ確認していきましょう。

節税効果がある

メリットのひとつ目は、節税対策につながる点です。事業承継における「相続」や「贈与」では、税金が非常に高額になってしまうケースが多くなります。

税金の支払いを懸念して、事業承継に納得しない後継者も珍しくありません。

しかし、持株会社(ホールディングス経営)を活用すれば、多額の贈与税や相続税が発生することもないのです。

例えば、元の経営者が持株会社に株式を譲渡します。この場合、およそ20%の「譲渡益課税」が発生してしまいますが、後継者が支払う贈与税や相続税は「最高55%」です。

この数字からもわかるように、大きな節税効果につながると言えるでしょう。

資金調達がしやすくなる

メリットの2つ目は、資金調達がしやすくなる点です。

事業承継では、まとまった資金が必要となります。銀行やその他の金融機関から融資を受けたいと考えた場合、どれほどの返済能力があるのか提示しなければなりません。

後継者個人の場合、資金調達が難しくなるケースも多いですが、持株会社を活用した事業承継において返済者は「個人」ではなく「会社」です。

子会社からの「配当金」が返済能力と見なされる為、スムーズな資金調達が実現できます。

本来であれば経営者が交代するので、今後の経営について、信頼性が低くなるのが一般的。取引先や顧客との関係も、今まで通りにはならない事態も考えられるのです。

しかし、確実に「配当金」が入ることが保証されているので、融資を受けやすい状況と言えるでしょう。

株式が分散するのを防ぐことができる

メリットの3つ目は、株式の分散を未然に防げる点です。事業承継において、相続人が複数人いる場合は、後継者が十分な株式を保有できないケースもあります。

株式がそれぞれの相続人に分散してしまい、経営権の集約が困難になってしまうのです。

しかし、持株会社をうまく活用できれば、株式は「持株会社」がまとめて買い取ることができます。

また、元の経営者が以前に手放している株式については「現金化」での相続となるため、複数の後継者がいる場合でも安心です。

先代経営者が利益を得られる

持株会社を活用した事業承継のメリット4つ目は、先代経営者が現金を得られる点です。

一般的に、中小企業においては、元の経営者が自社の株式を保有しています。それを持株会社に譲渡することとなるので、手元には、まとまった現金が残ることになるのです。

親族内承継などにおいては譲渡益を得られないため、先代経営者にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

事業承継において持株会社を活用するデメリット

持株会社を活用した事業承継には、さまざまなメリットがありましたが、デメリットも把握しておかなければなりません。

  • 配当金の金額によっては返済が難しくなる場合もある
  • 相続税がかかるケースもある
  • 譲渡益に税金が発生する

順番に確認していきましょう。

配当金によっては返済が難しくなることもある

デメリットのひとつ目は、配当金の金額によっては、返済が困難になるケースもある点です。

「配当金」があることで、銀行や金融機関から融資を受けることができても、事業を行っている会社の業績が悪化すると「配当金」の額は少なくなってしまいます。

当初に立てた計画通りに返済できれば問題ありませんが、予想していた金額の配当金が受け取れない場合、返済が困難になってしまうのです。

返済が滞るようなことになってしまうと、会社の負債が膨らみ、大きな利息を支払う結果となります。

節税効果以上の負債を抱える場合もありますので、注意しましょう。

相続税がかかるケースもある

2つ目のデメリットは、相続税がかかるケースもある点です。

持株会社の設立は、主に「節税対策」として行われることが多いため、税務署から厳しく追及されることもあります。

万が一、脱税行為と判断されてしまった場合には、追徴課税を支払うだけでなく相続税も納めなければなりません。

持株会社化を検討するときには、事前に「目的」をはっきりさせておくことが大切です。「資金調達をスムーズに行うため」「複数の相続人がいるので、株式の分散を防ぐため」など、税務署にも容認してもらえる理由を準備しておきましょう。

譲渡益には税金が発生する

デメリットの3つ目は、元の経営者が受け取った譲渡益には、税金が発生してしまうことです。

「譲渡所得」に対して、およそ20%の譲渡益課税がかかることとなります。まとまった金額を支払うことになるため、事前に計算しておく必要があるでしょう。

事業承継において持株会社を設立する流れ

それではここから、持株会社を活用した事業承継の流れについて解説していきます。

  1. 後継者が新会社を設立する
  2. 資金の調達を行う
  3. 前経営者から持株会社へ株式の譲渡が行われる
  4. 譲渡承認の請求
  5. 持株会社の取締役会において承認の手続きが行われる

1.後継者が新会社を設立する

設立の流れ1つ目では、まず後継者となる人物が新会社の設立を行います。ここで注意すべきポイントは「必ず、後継者が100%出資する」こと。

これは、持株会社が子会社の株式を譲受するための必須事項となります。

2.資金調達を行う

設立の流れ2つ目は、資金調達です。子会社から株式を買い取るためには、まとまった資金が必要となります。

後継者に資金力がある場合には、融資を受けなくても問題ありませんが、一般的には銀行からの融資を利用するケースが多いでしょう。

このとき、子会社の経営状態に気になる点がなければ、スムーズに融資を受けられる可能性が高くなります。

3.前経営者から持株会社へ株式の譲渡が行われる

無事に資金調達ができた際には、前経営者から持株会社へ株式の譲渡が行われることになります。

調達した資金で、前経営者から子会社の株式を全て買い取ることになるのです。

このとき、株式譲渡契約書を交わします。

後継者は、税金も発生することなく、会社として資金調達できるため個人による負債を抱える必要もありません。

後継者問題のひとつに「まとまった資金を用意しなければならない」という問題が挙げられますが、持株会社を活用した事業承継においては、回避することが可能となります。

4.譲渡承認の請求

次は譲渡承認の請求です。子会社の株式が「譲渡制限株式」の際には承認手続きが必要になるケースも少なくありません。

多くの中小企業において、第三者からの悪意ある買収を未然に防ぐ目的で「譲渡制限株式」にしているのです。

5.持株会社の取締役会において承認手続きが行われる

会社法において、承認手続きを行う場合は「取締役会」で承認を得なければなりません。承認を得た際には、相手に承認通知を送り、持株会社を活用した事業承継は完了となります。

ここから、銀行などから借入した融資の返済がスタートしますので、計画通りに返済するようにしましょう。

持株会社で事業承継した場合、株価はどうなる?

100%の株式を保有した持株会社は、純粋持株会社となります。そのため、かなり収益性が低くなるのは避けられません。

このとき、子会社の株価は引き下げられるのが一般的です。収益性の少ない純粋持株会社の支配下に、高い収益をもたらす子会社がある場合、子会社の株価上昇をストップする効果があります。

株価が下がることによって、長期的な節税対策にもつながることが、持株会社を上手に活用した事業承継と言えるのです。

まとめ|持株会社化する際には「目的」を明確にしておこう

本記事では、持株会社を活用した事業承継のメリット・デメリットや流れについて詳しく解説してきました。

事業承継で持株会社をうまく活用できれば、大きな節税効果につながることがわかりましたね。また、株式を買い取る際の資金調達をスムーズに行える点や、相続人が複数いる場合の株式分散を防ぐ効果もありました。

しかしその一方で、注意しておきたいポイントも。主に節税対策の一環として行われることが多い「持株会社の設立」では、目的を明確にしておかなければなりません。

万が一、税務署に納得してもらえない時には、追徴課税が課せられるだけでなく相続税を支払わなければならないことも。

事前に持株会社を作る目的を明確にしておけば、回避できることですので、十分気をつけましょう。

事業承継を検討した際には、専門家への依頼がおすすめです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

監修者情報

板井 理
板井 理

2018年度公認会計士試験に合格後、EY新日本有限責任監査法人札幌事務所に入社、その後3年間法定の会計監査業務に従事。
2022年に退職し、2023年に共同代表である笹本 拓実と株式会社PASONを設立。代表取締役に就任し、小規模M&Aに特化したマッチングプラットフォームサービス「PASON」を運営している。